売場編集とはVMDインストラクターの仕事


1. 売場づくりにはいろいろなタイプがある

今回は、売場編集というVMD用語について触れます。

上記黒板を見てください。
売場づくりっていろいろな言葉があるんです。

売場づくりといっても「いろいろな売場づくり」があるんです。
売場づくりにエントリーしている人、専門家を例にとって、「売場をつくる」という動詞がどう変わるのか、お話ししましょう。

●動詞 → 専門家
という書き方にしています。
「売場」は「店」に置き換えてもOKです。

●売場を装飾する →デコレーター
百貨店や専門店等のウインドウのディスプレイをつくる人のこと。
プロップスというディスプレイ用品を使うのが特徴。
クリスマスやハロウインなどモチベーション期間に店内装飾をすることも多い。
造作と言って、クリスマスツリーや人形のオブジェを手作りすることもある。

●売場を施工する →施工会社
施工は、店の新装・改装をするときに使う言葉。
床・壁・天井・什器・照明等大道具の取り付け工事することを言う。
多くは施工会社が設計をし、什器メーカーが製作、大工・左官・板金・看板といった職人が取り付ける。

●売場を設計する →設計士
売場や店の設計図を書く人。企画設計と実施設計があり、企画設計は店主に見せる店舗の概略設計図。
実施設計は企画設計に材料の仕様など細部を書き込んだ設計図。

売場を制作する →SP会社
売場を制作するとは、デザインをするに近しい言葉。
SPとはセールスプロモーションの略で、販売促進という意味。
SP会社はデザイン会社、または社内デザイン部と連携して、什器・POP・電飾など販促物を制作する。
小売店の店頭をSP用スペースとして、そこで商品の体験キャンペーンなどを打つ。

●売場を製作する →什器メーカー
売場を製作するとは、機械や部品を使って売場の調度品をつくることを指す。
製作はオブジェの他、什器製作・家具製作が多い。
したがって、什器メーカーや家具メーカーがその役割を果たす。

●売場をデザインする →店舗デザイナー
店舗デザイナーという言葉は設計士とニュアンスが違う。
設計士は図面を書くことが主なのに対して、店舗デザイナーはパースで勝負する。
店舗や売場のイメージをわかりやすく店主に提案する人だ。

●売場を編集する →VMDインストラクター
売場を改善したり、商品の入れ替え等で売場を変更することを編集という。
売場編集はMDプラン、つまり売り物が主体になっている。
雑誌や新聞のように、打ち出し商品によってレイアウトを変えたり、ディスプレイや販促物を変えたりする。
売場の編集者とはVMDインストラクターなのである。

2. 売場編集の特徴

わかりましたでしょうか。
売場づくりとひとことで言っても、いろいろな売場づくりがあり、専門性で多方面の職業人がいるというわけです。
私がVMDインストラクターという職業を提唱するのは、「売場を編集する」という行為を広めたかったためです。
それは、店舗デザインをするのではなく、売場を装飾するのではなく、施工工事をするのでもありません。

専門店、百貨店、スーパー、ホームセンターなどほとんどの業態の売場は1年52週で動いています。
週ごとに打ち出し商品も違いますし、新商品も入ってきます。
さらに催事、キャンペーン、セールなどの機会もあります。
毎週変わる売場は、そのたびに施工したり、店舗デザインを変えたり、什器をつくるわけではないのは明らかです。

売場編集は他の売場づくりと比べて、コストがかからないという特徴があります。

ハードのコストは不要
施工や製作がなく、什器レイアウトや陳列・展示の変更、販促物の設置といった作業がメインになりますので、ほとんどハードのコストはかからない。

●人的販売からセルフ販売へ
店舗人員をプロ化したり、キャンペーン係を配置するなどの接客強化と違い、商品そのものの見え方を変えて売りやすくするのが、売場編集です。
打ち出し商品が明確になり、売場が魅力的に見えるので、接客は不要。
人件費もかからない。

POPなど販促物変更だけでOK
セルフが主体なので、説明POPや演出POPなどのPOPツール、ライザーやかごなどの商品陳列や展示をする道具のみで、売場を劇的に変身できる。

3. 売場編集の具体的な項目

編集は具体的には、下記の様な作業になります。

  • MD分類
  • VMD分類
  • ゾーニング
  • 什器レイアウト
  • 導線変更
  • リレーション
  • 色の絞り込み
  • MDテーマ設定
  • ディスプレイテーマ設定
  • VP・PP・IP
  • POP編集 etc

売場を編集する、とはどういうことかわかったと思います。
VMDインストラクターとは、売場を編集できる職業人。
売場の編集長と言ってもよいでしょう。
そして、実際に売場を編集する作業は店舗スタッフになります。
VMDインストラクターが店舗スタッフに売場の編集を教え、売場づくりを指揮することによって毎週、売場はいつも目新しいものになるのです。

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(VMDコンサルタント 深沢泰秀)


改善アドバイスは、「本来あるべき姿」でアドバイスする

VMDインストラクターであるあなたは、自社の売場、またはクライアントの売場に赴いて売場改善アドバイスをされていると思います。
売場改善アドバイス、的確にされていますか。
的確にアドバイスしていないと、店やクライアントがVMDの本質を理解する機会を逸してしまいます。

では、的確なアドバイスとはなんでしょうか?クイズを出します。
下記のアドバイスはいいのでしょうか。それともダメでしょうか?
メガネ店に現場アドバイスすると仮定します。

●この壁面はPPがないからダメですね。メガネのPP置いてください。
●この什器、もっと格好いい什器に変えないとダメです。
ルイ・ヴィトンみたいな格好いい什器にしましょう。
●手書きPOPはダメです。パソコンでPOPつくってください。
●テーブルディスプレイにお花を沿えると華やかになります。
●2,000円のメガネフレーム、ボリュームありすぎるので棚から半分外してください。
●子供メガネ売場はアニメーションを流しましょう。立ち止まる子供が多くなります。
●今流行りのPCグラスもMDとして取りいれないと流行に乗り遅れている店になってしまいます。
●店内の内装がイマイチなので、コンセプトを見直した方がいいでしょう。
最近ではナチュラルとかモダンな店舗が流行っています。
●サングラスのVPに貝殻を置いてビーチみたいな雰囲気にすると、サングラス売場ぽくていいです。


答えを言います。上記のアドバイスは全部ダメでした。~
どこがダメかというと、ダメなタイプ、4つに分けられると思います。

1.単なるアイデア出しになっている
2.本部と協議しなければならないような課題を言っている
3.教科書理論を必要十分条件にすり替えている
4.特定の店舗環境の理論をすべてに当てはめている



上記9つの間違ったアドバイスを、1から4に振り分けてみます。


1.単なるアイデア出しになっている

●テーブルディスプレイにお花を沿えると華やかになります。
●サングラスのVPに貝殻を置いてビーチみたいな雰囲気にするとサングラスぽくていいです。
●子供メガネ売場はアニメーションを流しましょう。立ち止まる子供が多くなります。
●サングラスのVPに貝殻を置いてビーチみたいな雰囲気にするとサングラスぽくていいです。


2.本部と協議しなければならないような課題を言っている

●店内の内装がイマイチなので、コンセプトを見直した方がいいでしょう。
最近ではナチュラルとかモダンな店舗が流行っています。
●今流行りのPCグラスもMDとして取りいれないと流行に乗り遅れている店になってしまいます。


3.教科書理論を必要十分条件にすり替えている

●この壁面はPPがないからダメですね。メガネのPP置いてください。
●2,000円のメガネフレーム、ボリュームありすぎるので棚から半分外してください。


4.特定の店舗環境の理論をすべてに当てはめている

●手書きPOPはダメです。パソコンでPOPつくってください。


5.自分の好みを正当化している

●この什器、もっと格好いい什器に変えないとダメです。
ルイヴィトンみたいな格好いい什器にしましょう。



当社は、売場塾で行っているVMDインストラクターの試験の他に、いろいろな企業のVMD社内資格と試験をつくっています。
VMDコーディネーター、VMDアドバイザーなど、すでに1,100名以上のVMDの試験問題をつくってきました。

記述式試験では、上記1~4の間違った解答が実に多いんです。
VMDを初めて習うので仕方がないと思いますが、にわかVMDコンサルタントとしての解答が多いんです。(^^)


アドバイス、どこがどのように悪いのか詳しく解説しましょう。
1から解説していきます。


1.単なるアイデア出しになっている

一番上の図を見てください。
私たちVMDインストラクターは店舗のどこが悪くてどう直せばいいのか、店舗関係者に話をします。
その時に、アイデアを盛り込んでしまうと、「本来あるべき店舗の姿」がぼやけてしまいます。

現在の店舗の状況が悪いのはマイナス部分があるということです。
VMDコンサルは、マイナスをどう直してゼロにするかをまず初めにアドバイスします。
「本来はこうあるべきだけど、ここがマイナスですね」と話します。

その時、それを飛び越えてアイデア部分、つまり「こうあるともっといいですね」を言ってしまうと、「本来あるべき姿」が相手に伝わらなくなります。

アイデアマンであること自体はとてもいいことなのですが、それは二の次。
まずは「あるべき姿」を伝えて、ゼロの状態に直してから、プラスのアドバイス提案をします。
図のように、VMDコンサルは二段階方式で行います。
単なるアイデア出しでは、何がよくて何が悪いのかがはっきりしません。


2.本部と協議しなければならないような課題を言っている

コンセプトという言葉が独り歩きしているせいか、この言葉、みんな使いたがります。
コンセプトは、商品コンセプトとか企業コンセプト、ブランドコンセプトなどいろいろありますが、これはもう本部案件。
その場で考えるようなものではありません。
市場調査をして顧客像を決めて、競合とのポジショニングを決めて、社内で稟議をとって・・・などと慎重に決めるような案件です。
現場アドバイスでは、コンセプトという言葉はなくて、テーマとかテイストとかトーンアンドマナーとか、その場で対応できる言葉を使います。

また、PCグラスが流行っているからと言って、品ぞろえまで決めつけてしまうのもナンセンス。
これも本部の商品部や店長に確認、協議してから決めるようなことです。
なので、「流行りとしてPCグラスを置いている店舗が多いです」くらいにとどめておきましょう。


3.教科書理論を必要十分条件にすり替えている

教科書でPPを習ったからといって、「IPにはPPを入れなければいけない」というのは単なる決めつけです。
教科書とはオムニバスなものです。
つまり、いろいろな業種・業態・取扱商品、ブランドに対応すべくつくったものなので、教科書に書いてあることをそのまま鵜呑みにするのはナンセンス。

コンビニやドラッグストアに「PPがないとダメ」とアドバイスしても始まりません。
その業種・業態・取扱商品、ブランドに対応できそうなフレームワークを選択するか、加工しましょう。

また、「展開商品は少ない方がカッコよく売場が見える」というのも間違い。
2,000円のメガネフレームの展開数量を半分にすれば、高級そうに売場が見える・・・というのは、「定量」を間違って理解している影響からでしょう。
棚の商品点数を少なくすることが「定量」ではありません。
用語の本質を理解してください。


4.特定の店舗環境の理論をすべてに当てはめている

「手書きPOPは恰好悪いからダメ」というアドバイスも多いです。
手書きPOPにする理由を相手に訊かずに、一方的にダメと決めつけるのはやめましょう。
手書きPOPにしている理由があるはずです。
まずそれを店やクライアントに訊いてください。

●手書きPOPにしている理由

訊いてみたら、「なんとなく」「流行りだから」などというあいまいな返答があったら、手書きPOPにするべき上記の理由を説いてから、パソコン文字にすることをお勧めするとよいです。


5.自分の好みを正当化している

これはもう論外。
ルイ・ヴィトンが好きなのはわかりますが、好みを押し付けてもお客様は納得しないでしょう。
たとえ、ルイ・ヴィトンで新しい什器を入れて成功した事例があっても、それは什器のデザインがよかったかどうかわかりません。
ましてやそれが貴社に充てはまるとは到底考えられません。
成功事例の本質が理解できていないと、いくらルイヴィトンみたいな什器デザインを提案してもそれは押し付け以外の何物でもありません。


全国のVMDインストラクター、VMDコンサルタントのみなさん、的確なアドバイスとは何か、わかりましたでしょうか。
改善アドバイスは、「本来あるべき姿」でアドバイスしてくださいね。
でないと、店舗側やクライアントはますますVMDの本質を理解できなくなります。


(VMDコンサルタント 深沢泰秀)