サブテーマでディスプレイをわかりやすくする

1.サブテーマってなに?

今回はサブテーマの設定の仕方をお話しします。
VMDでよく出る用語として、下記があります。

  • テーマ
  • コンセプト
  • トーンアンドマナー
  • テイスト
  • ルック

これらはみんな混同しがちなので、まずは十分用語を理解してください。
用語忘れた方は、下記のサイトで復習しましょう~。

●コンセプト、テイスト、トーン&マナー

●テーマ

●ルック

さて、本題「サブテーマ」に戻ります。

サブテーマとは何かというと、テーマのサブのこと。
副題、補助テーマ、第2テーマ・第3テーマ・・・のことです。

テーマがあってサブテーマがあるってどういうこと?
と疑問に思うかもしれませんが、これディスプレイや小分類位の売場の商品決めに役に立つんです。

テーマって何のためにあるのか?考えてください。
ズバリ、商品を絞り込むためにあるんです。

上図を見てください。
これをサブテーマのファネルと言います。
ファネルとはじょうごのこと。何かをろ過するために使いますよね。
このじょうごで、テーマをろ過するんです

インテリアショップVMD担当のあなたが、ディスプレイをつくるとします。
テーマは「リビングの小物」です。
「できた~」と言って、あなたはこんな感じのディスプレイをつくります。

三角構成になっているし、バランスもいい。満足~。

でも待てよ。
これ、色も形もバラバラだからもう少し整理するしようかな。
そう思ってサブテーマを先ほどの図の様に設定しました。

  • サブテーマは「青」
  • サブサブテーマは「丸い部分があるもの」
  • サブサブサブテーマは「フチのあるもの」

そうして、サブテーマのファネルを通して商品を集め、下記のディスプレイをつくりました。

どうですか?
改めてサブテーマありなしを比べてみましょう。

明らかに右の方がまとまっていますよね。
サブテーマで、色や形、デザインを絞り込んだから、まとまってきたんです。

2.サブテーマがないディスプレイとは

上の写真は空港で見たディスプレイです。
テーマは、「ハワイ州推薦のお土産」。
上の方にポスターがあり、「このマークはハワイ州推薦のおみやげ品」とあります。

しかし英語が読めない日本人は、これなんだろう?としか思いません。
缶詰やら瓶やら袋やらが、たくさん集積されているからです。

※この写真は「顧客目線でパラダイムシフトしよう」でも紹介されています。

かろうじて、テーマは「ハワイのお土産」と分かっても、それ以上はわかりません。
かろうじてわかるのは、右側のバナナポテトチップス。
それ以外は、じっくりみないと、はちみつなのか珈琲なのかわかりにくいです。

そこで、ホノルル空港VMD担当であるあなたはサブテーマを設定します。

  • サブテーマ ・・・旅行者に人気の商品トップ20以内の商品
  • サブサブテーマ ・・・コミック本サイズ以上の大きなパッケージのお土産品
  • サブサブサブテーマ ・・・中身がきちんとわかるパッケージのお土産品

と絞り込み、さらに下記の様にフェイシングのレギュレーションを決めます

  • フェイスは3個以上並べる
  • 皿やカップに盛り付けられる中身は、盛り付け例も入れる
  • コントラスト配色になるように展示する

●コントラスト配色とは
※上記ページの中の項目「カラー商品展開」をご覧ください。

こうすると、写真の展示はかなりわかりやすくなると思います。
誰もが「ハワイのお土産だ~」と思うに違いありません。

3.サブテーマ設定事例

さて、実戦編です。上記写真を見てください。
あるお店のガラスケース内。

・MDテーマは「ガラス食器」

確かに~。
しかしこれで満足してはいけません。

VMDインストラクターにサブテーマをつけてリバイスしてもらいました。
下の写真を見てください。

  • MDテーマは「ガラス食器」
  • サブテーマは、上棚が飲み物用、下棚がおかず用

どうですか。
Beforeは、飲み物も小鉢も皿も一緒くたになっていましたが、サブテーマですっきりとしたディスプレイになりましたね。
フェイシングのレギュレーションは下記にしたので、さらにバランスがよいディスプレイになっています。

・ツインシンメトリーに置く

今度は、売場塾のワークショップ生徒作品例を見てみましょう。
テーブルディスプレイです。

  • テーマ「会社のビルで屋上バーベQ」
  • サブテーマ「アーバンマリン」
  • サブサブテーマ「ボーダーときれいめボトムス」
  • サブサブサブテーマ「コントラスト・コーデ」

テーマ、面白いですね。
サブテーマで色や柄もまとまっています。

ディスプレイのレギュレーションは下記です。

  • IPとPP
  • シンメトリー
  • コーディネート

こんな感じで、アパレルディスプレイにとても役立つサブテーマです。

4.家のディスプレイにも使えるサブテーマ

最後におまけです。
きのう、書斎の壁面にフレームを入れました。
写真はすべて私の撮ったもので、キヤノンのカメラで撮りました。

上の壁面フレームは下記がテーマ。

  • テーマ「ハワイ」
  • サブテーマ「ホテルライフ」

下の壁面フレームは下記がテーマ。

  • テーマ「ハワイ」
  • サブテーマ「自然」

どうですか。
壁に貼るフレームでも、テーマとサブテーマを設定すればまとまるのがわかったと思います。
お店でも家でもどこにつくっても、サブテーマはツカエルディスプレイテクなんです。

VMDインストラクターのみなさん~、
売場づくりやディスプレイ制作にぜひサブテーマ活用してくださいね。
サブテーマで商品を絞り込んで、見る人に何のテーマかわかりやすくしましょう。

ディスプレイテーマ設定に関しては、オンラインセミナー「センスアップセミナー」で詳しく教えています。
●センスアップセミナー「商品展示」

興味ある方は、ぜひご参加ください。(^^)

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

VMDコンサルのサービス内容

VMD研修の様子

1.VMDコンサルビジネスは3つからできている

今回はVMD専門会社、オーバルリンクのサービス内容を紹介します。

当社の宣伝というよりも、VMDインストラクターや他のVMDプロのお仕事の参考になると思います。
店舗トレーニングや臨店指導、起業したときのVMDビジネスの参考にしてください。

オーバルリンクのサービスはたったの4つ。

・売場塾
・店舗診断
・リバイス
・リモデル

リバイス(その場で売場改善するサービス)は店舗診断の延長みたいなものなので、実質下記の3つだと思います。
・売場塾
・店舗診断~リバイス
・リモデル

この3つだけで20年会社を運営しています。(^^)
では簡単にVMDビジネスの本質をお話ししていきましょう。

2.VMDコンサルティングは抽象的なオファーから始まる

ほとんどの小売店は、下記のような漠然とした悩みがあります。

「なんかうちのお店、おかしい」
「店舗スタッフのスキルなんとかしたい」
「お店づくりのコツが知りたい」

ほとんどのメーカーは、下記のような漠然とした悩みがあります。

「なんかうちの売場、おかしい」
「営業担当のスキルなんとかしたい」
「売場づくりのコツが知りたい」

なので、当社に来るクライアントオファーの70%は下記です。

「うちの売場、なんとかしたい」

そう、クライアントのVMDに対するオファーは漠然としているんです。

「VMD研修して」
「店舗デザインを変えて」
「美しいディスプレイつくって」

という具体的なオファーはあまりありません。
すなわち、悩み解決のひとつとしてVMDが役に立つのでは?
と思って当社にメールや電話をしているのです。

オーダーは実にあやふや。
そんなクラアイントに対して

「VMDセミナーやりましょう」
「店舗ディスプレイつくりましょう」
「改装しましょう」

みたいに単純に返すことはありません。
それらはあくまで単発サービスの羅列にすぎません。
会社のサービス内容を言っているだけです。

「売場づくりに悩んでいる」

でも、どこがダメでどのようにしたらいいのかわからないので、なんとかしたいと言ってきているんです。
医者を思い出してください。
患者は「なんか最近体がだるくて」と言っていねのに、いきなり風邪薬出さないですよね。

VMDも医者と同じように問診するんです。

3.お悩みを問診する

なので、「どうしました?」とクライアントの話をじっくり聞き、
悩みはどうやったら解決できるのか話し合います。

下記の様に問診していき、解決に導きます。

「なんかうちの売場、おかしい」 → 「どうおかしいのか」「どう改善したいのか」
「営業担当のスキルなんとかしたい」 → 「今のスキルの程度はどうなのか」「どのレベルに達したいのか」
「売場づくりのコツが知りたい」 → 「どういうコツが知りたいのか」「コツを知ってどうしたいか」

などなど、悩みを問診によってほぐしていきます。
とはいえ、クライアントから「どうおかしいのか」と聞いても「なんかおかしいです」と具体的な答えは返ってきません。
商品のこと、サービスのこと、店内販促のこと、いろいろ問診したあと、おおまかなことは掴めますが、核心は持てません。

一番いいのが、写真を20枚くらい見せてくれるとありがたいです。
なければ、レントゲン写真を撮ります。

4.売場のレントゲン写真を撮る

レントゲン写真とは、店内というカラダのレントゲン写真です。
つまり、店内の写真を撮るんです。
胃カメラも撮りますよ~。
棚の隅々まで撮るんです。

我々VMDプロは、売場の写真をレントゲンを見る医者さながらじっくり見ます。
すると、悪い個所が見つかり、それを直すにはどうすればよいのか、明確になっていきます。

レントゲンを撮らずに、売場を回ってここがおかしい、ここが悪いという指導はできますが、それだと漏れがたくさんあります。
売場は広いのでたまたま目に入らなかった部分が多いからです。
全体俯瞰だけでなく、棚の陳列、POPのデザインや文句、什器の位置や通路、照明など見るところはたくさんあるんです。
30坪の店舗に対しては平均200枚くらい写真を撮ることになります。
人間ドックならぬ、店舗ドックを行うと考えてください。

5.店舗診断は売場の人間ドック

どんなにキレイに見える売場でも50は直し箇所があります。
それを全体ソートして一覧表にしたのが店舗診断シートです。
それは健診表と処方箋で構成されています。
これがオーバルリンクの「店舗診断」です。

●店舗診断

単なるあらさがしと違うのは、ブランディングの要素が入っていること。
事前に問診でショップブランドや商品ブランドなどをお聞きするので、そのブランドの世界観や店舗コンセプトに店の状態が合致しているかも健診表に現れます。

なので処方箋は、この企業やブランドに沿ったものになるということです。
コンビニだったらセブンイレブンとローソンのショップブランドは違いますし、ドラッグストアだったらマツキヨとアインズ&トルペのショップブランドはかなり違います。
ドラッグストアだったらどこも同じというわけではないのです。

ブランディングを店に落とし込むってどういうこと?と思った方は下記のサイトを参考にしてください。
●自店の店舗デザインはどうあるべきか

6.リバイスは店舗診断の延長線

リバイスとは、短時間で売場を直すことを言います。
店舗診断で処方箋が出ますので、それに沿って行うのが順当ですが、品揃えをチェンジする時、拡張や縮小をする時にタイミングよく行うこともあります。
その時は、店舗診断しなくても最低店舗の写真をいただき、悪いところはすべて直すようにしています。

●リバイス

リバイスは完全リバイスと部分リバイスがあります。
完全リバイスはフロアのゾーニング変更から、部分リバイスは1コーナーのみ。
店の面積と人員によって2種類に分けられます。
詳しくは下記をご覧ください。

●完全リバイスと部分リバイス

店の売上を上げたい場合は部分リバイスをお勧めします。
長年VMDをやっていますが昨今ディスプレイを変えただけではなかなか売上は上がりません。
やはり、品揃えや体験販促、売場デザインも変えないと売上が上がらない例が多いです。
ディスプレイを変えると有利なのは、売場の見てくれがよくなることです。
詳しくは下記です。

  • 商品フェイスがわかりやすくなる
  • 商品が選びやすくなる
  • 陳列がキレイになる
  • 空間を取ることで商品がそれなりに映える
  • カラーが美しくなる
  • POPの配置が整理整頓される
  • 棚編成がデザインになる

などです。
ディスプレイを変えるだけでもよいのですが、肝心のフロアレイアウトや導線、打ち出し商品などは変えていないので、VMD効果は最大にはなっていないです。

部分的な直しにしろ、全体的な直しにしろ、とにかくよくなった店舗を実感したい、というクラアイントにはおススメです。
数時間から1日でできますので、手軽に頼めるサービスと言えます。

このリバイスのいいところは、店舗スタッフが売場改善の仕方を会得出来ること。これにつきます。
我々コンサルが去った数日後、店が元の悪い姿に戻っていることはありません。
店員さんがキープしてくれるからです。
私たちは、ディスプレイをつくりに行くのではなく、売場改善の仕方を店員さんや幹部に教えに行っているんです。
ディスプレイはほぼ店員さんにやっていただいています。
そこがディスプレイスタジオと大きく違う、VMDコンサルの本質なんです。

7.売場塾でリバイスの技術が習得できる

売場塾はVMDの学校で、VMDインストラクターの資格を認定しています。
このVMDインストラクターはVMDを学んで何ができようになるのか?
それはズバリ、リバイスなんです。

売場改善のインストラクターとして、臨店指導や研修ができるようになります。
そしてもちろん店舗診断も。

先ほどのクライアントの悩みを思い出してみてください。

「なんかうちの売場、おかしい」
「営業担当のスキルなんとかしたい」
「売場づくりのコツが知りたい」

これらを自分たちで解決できるのがVMDインストラクターということです。
具体的には下記を力点としています。

・店舗診断
・リバイス
・ガイドライン制作
・研修

単にディスプレイがうまい人を育てるわけではなく、売場解決を前提にしたカリキュラムになっています。
なので、メーカーの方はより自分たちの商品が売場で売れる、小売店の方は自社ブランドらしいたたずまいと品揃えがキープできます。

VMD基本講座は3日間、専門1日講座は4つあります。
リーダーや幹部の方はぜひ4つの指導講座も受講してほしいです。
基本3日間をベースにして5日間、7日間じっくり学習した方がより深く知識やスキルを得ることができます。

売場塾の特記すべきところは「55の売場づくりの型」を教えていること。
空手やヨガに型があるように、VMDの基本形55を3日間で学べ、専門講座でその応用が習得できること。
これが当社のメソッドなんです。

詳しくは売場塾の資料をお求めください。

●売場塾資料請求

なお、当社の法人研修はこの売場塾がベースになっています。
サービス名を「オーダーメイド売場塾」と言います。

●オーダーメイド売場塾

ちなみに、「個人的に安くディスプレイだけ教わりたい」という方は、オンラインセミナーの「センスアップセミナー」を受講するとよいです。
毎月テーマが変わっディスプレイ制作にもトライできます。

●センスアップセミナー

8.リモデルはモデル店をつくるためのサービス

リモデルだけはコンサルではなく、プランニングサービスとなっています。
上記までは、「ノウハウを教える」というコンサルサービスだったのですが、リモデルは実際に店舗や売場を設計するサービスです。
もともと当社は、改装の依頼を受ける際、設計事務所に外注していたのですが、自社ですべて賄うようになりました。

コンセプトからパースモデル、定数定量のデータシートづくり、フロアレイアウト、什器デザイン、ディスプレイ、POP制作までVMDをトータルにプランします。
11のプラン項目からなり、改装の場合は店舗診断から始めます。

●リモデル

施工会社や設計会社とどこが違うのか。
それは、VMDプランをつくることです。
平面図や立面図に落とし込むだけではないのです。

VMDプランとは、VMD分類、ゾーニング、定数・定量、什器デザインとレイアウト、POPデザインと設置、IP,PP,VPなど11項目あります。

このサービスのいいところは、11プランひとつひとつ丁寧にプレゼンしていくこと。
企画書も重なっていきます。

VMDマニュアル

企画書は50ページくらいになり、最後はそれが店づくりのマニュアルになるところが特色。
実験店をつくりながら、リモデルノウハウも重ねていける、一石二鳥のサービスと言えます。

そんなわけで、ただ改装だけならは、当社でなく施工会社に頼むといいと思います。
リモデルは、コンセプトから店を変える、売り方から店を変える、実験店企画設計サービスと考えてください。

9.実際は各サービスの組み合わせとなる

いままで、4つのサービスをお知らせしてきました。
この4つのサービスは、モジュール化されていて、バラしたり統合したりできるんです。
企業がVMDプロジェクトを推進して、VMD部を発足したり、VMDノウハウをわが社のものにしたいなど、単発の研修やリバイスではなく、総合コンサルする場合にはこの4つか3つのサービスを統合します。

4つのサービスはパッケージになっているので、クライアントの業種・業態・取扱商品・ブランドに合わせカスタマイズし、年間計画で進行していく。
プロジェクトが終わった後は、VMD部が完成、またはブランドガイドラインが完成していることが多いです。

このサービスを数年前「VMD導入プログラム」と名付けました。

●VMD導入プログラム

4つのサービスに関心ある方はぜひ資料請求してください。
下記のページに行くと、いろいろ無料で資料がゲットできます。

●資料請求

どなたさまもお待ちしております。

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

VP,PPは必ずしも必要ではない

1.VP,PPが必要でない店

以前、PPには明確な定義が必要と書きました。
●ディスプレイの定義をつくろう

しかし、それ以前にVP,PPが必ずしも必要ではない業態は多いです。
例えば下記です。

  • コンビニ
  • ドラッグストア
  • ホームセンター
  • カー用品店
  • 家電量販店
  • ディスカウント店

これらは、店舗オペレーションが合理的・かつ低コストで運営できるように制約されている点と、生活必需品を販売しているところが特徴です。
VP,PPはそれなりにスキルのある人材が必要で、専用スペースも取ります。
そのため、人やスペースにコストを掛けられないコンビニは不向きです。
アパレルでも、ユニクロや無印良品でさえも、エキナカの小スペースで運営されている場合はVPまたはPPがないケースがあります。
その場合は、演出POP(いわゆるポスター)をPPの代替わりとして活用しているケースが多いです。

ただし、コンビニでもナチュラルローソンのような、「美しく健康で快適なライフスタイルを身近でサポートするお店」を標榜している店は、FC本部がPPを推奨しています。
ローソンでは、びんを置いただけのワイン売場なのに、ナチュラルローソンになると、ブドウのつるやテーブルクロスを利用したワイン食卓のPPをエンドに設けていたりします。

ドラッグストアでも、マツモトキヨシはIPのみですが、「女性が 1 時間楽しめるお店「Enjoy 1 hour with us」」を掲げるアインズアンドドルペのようなセレクトショップは、PPぽいディスプレイが多く見受けられます。

生活用品のお店でも、ライフスタイルショップ寄りの店は、店内演出としてPPが重宝されるのです。

2.VP,PP,IPというものはあいまいな用語

実を言うと、PP,IPは和製用語です。
海外のVMD関係者には無縁の用語といえます。
海外では、日本でいうVP,PP,IPをひっくるめてVPと言っています。
このVP、下記の意味で使っているのです。

●フロアやゾーン、MDグループのフォーカルポイント(注目点)になっているディスプレイのこと

日本では、VPとPPは商品の見本展示、IPは陳列と定義されています。
簡単に言うと、VPとPPはそのままレジに持って行くことはできない、
IPはレジに持って行ける商品、と考えてよいでしょう。

しかしながら、フロアのフォーカルポイントとなっているものは、展示・陳列が混合したカタマリとしてのディスプレイになっていることが多いです。
明確に、これはPPでこれはIPと区別できないケースが多いのです。

例えば、写真はホノルルクッキーカンパニーのクリスマスバージョンのフォーカルポイントです。
中央の赤くなっている売場がそうです。
テーブルと背後のラックがとても目立ちます。
テーブルのディスプレイは陳列状態ですが、ラックは展示ぽくなっています。
でも、テーブルもラックも、商品はそのまま掴んでレジに持って行けそうです。

確かにラックはPPぽいのですが、IPとも言えます。
これを、手前のテーブルはIPで後のラックはPP的なIPと言えば正論かもしれませんが、聴く人が混乱するだけです。
外国のように「赤い売場はVPだ」と片付けてしまうと効率がいいように思います。

3.VP,PP,IPで使いにくかったら、展示と陳列で区別する

私はドラッグストアの研修ではあえて、VP,PP,IPという用語を使わずに、展示・陳列の2語でディスプレイを使い分けるように教えています。
理由は二つあります。

1.店舗オペレーションの問題でわざわざVP,PPをつくるのが困難な店だから。
棚の空いたところに展示をつくる事が多い。

2.先ほどのホノルルクッキー売場のように、PPとIPの区別がしにくい。

このドラッグストアは、女性に好まれるオシャレな店舗にしたい、特定の商品を展示でクローズアップしたい、との希望があるので、陳列の少し空いたスペースに展示を入れる方法を教えています。
ほとんどの展示物がPOP付きで、化粧品の効果・効能を謳っています。

例えば、雪肌精やトワニーなど、店側にとってただパッケージを並べて売りたくない、商品の魅力を訴えたい。
そんな場合は棚に商品展示をPOP付で設置するようにしています。

デパ地下のガラスケースでスイーツを販売しているお菓子店はどうでしょう。
Gケース内に置いている商品はIPでしょうか、PPでしょうか。
これも判断むずかしいですよね。

ショートケーキのような生菓子はIPと言えます。
客が掴むことは出来ないけれど、店舗スタッフが掴んで客に差し出してくれます。
イチゴ、メロン、モンブラン・・・などといろいろなショートケーキから自分の好みを選択・購入できます。
だからIPと言えます。

ところが、焼き菓子が入っている箱入りアソートギフトのGケースは、見本展示です。
値段別に並んでいて、客は選択購入できるけれど、Gケースの中の展示品を包むわけではなく、背後のストック棚の商品を包みます。
すると、Gケース内商品群はIPでなくPPなのでしょうか。
たちまち、頭がこんがらがってしまいます。

このように、デパ地下のスイーツ店でVP,PP,IPを特定することは困難です。
しかし、あえてVP,PP,IPを使っても悪くはありません。
きちんと定義すればよいのです。

私の場合、ある店では、Gケースの中の生菓子および見本展示商品はすべてIP、お菓子の盛り付け例はPPと定義しています。
そしてカウンター背後の壁面ディスプレイをVPと定義しています。

このようにIP,PP,VPは業種・業態・取り扱い商品によって見方は違ってきます。
IP,PP,VPは実にあいまいなものなので、用語を使う場合は、VMDインストラクターがしっかり定義することをお勧めします。
展示と陳列、という2語で処理しても、もちろんよいです。

4.VMD用語は記号論で処理する

記号論という理論があります。
言葉は記号である、という考え方です。

日本では、蝶と蛾の区別はあるけれど、フランスにはありません。
フランスは蝶も蛾もpapillon(パピヨン)と言います。
日本では「うさぎ」というけれど、イギリスでは「ラビット」と「ヘアー」の2種類に区別されています。

参考)外国のVMD担当にVP,PPと言っても通じない

このように、用語は使い方次第でどうにでも変わります。
あなたのブランドや店で、スタッフが理解しやすいように定義するとよいでしょう。

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

土産店・キャラクターショップの売場づくりのコツ

映画館のお土産コーナー

先週から、外国人の入国規制緩和、そしてGoToの全国旅行支援と観光地も盛り上がってきました。
ディズニーランド、ユニバーサルスタジオもいいが、個人的にはゴジラが好きなので、西武ゆうえんちにぜひ行ってみたいです。

ということで、今日はテーマパークや観光地の土産店やキャラクターショップのVMDについて話します。
当社の経営するVMDの学校「売場塾」にもたくさんのキャラクターショップのVMD担当が学びに来ています。
日本はキャラクターの聖地なので、キャラクターグッズのメーカー・卸・小売店の方はVMDが大事。
世界中から集まるが外国の方を売場に引き付け、買わせるVMDを学びましょう。

では、さっそくキャラクターグッズのVMDフレームワーク行ってみましょう。
売場の改善点の主なものは、ざっと下記になります。

  • フェイシング
  • オーケストレーション
  • ディスプレイ構成
  • テーマ設定
  • PP,IPの設置方法
  • くくり
  • VMD分類
  • 什器デザイン
  • 什器レイアウト

この中から外せないものをいくつか選んでお話ししましょう。

1. フェイシング

この前、映画館に行ったとき、キャラクターグッズコーナーを覗きました。
シンウルトラマン、面白かったです。(シンウルトラセブンもぜひ作ってほしいです)
まずは上の写真のガボラとネロンガを見てみましょう。
ガボラは一番左。ネロンガは右。

これ、袋に入っている上に怪獣が寝ています。
これだと、怪獣の顔がよく見えません。
ぬいぐるみを起こして顔が見えるようにした方がいいでしょう。

左から三番目のネロンガのフィギュアは立っていますが、タグで肝心の顔が隠れています
これだとただのトカゲにしか見えないですね。。。

これは別の映画館。
ジュラシックパークを見に行った時の売場ですが、やっぱり左上のぬいぐるみはほとんどわからなかったです。
ステゴザウルスはなんとなくわかるかな。。。
最初、これポケモンの怪獣だと思いましたよ。

商品の顔をきちっと見せることをフェイシングといいます。
キャラクターの顔は見えるように置くようにします。
ガボラの場合はサヤに顔が入っているのと、入っていないのと2種類フェイシングするとよいでしょう。
後はやっぱりビニルが反射して中身がよく見えないので、袋から出して展示見本(PP)をつくるといいでしょう。

これはハワイの土産店で見たぬいぐるみ売場。
やっぱりぬいぐるみは顔がきちっと見え、体のシルエットも分かりやすい方がよいですね。

2. VMD分類とくくり

キャラクターグッズは棚に載せればいいと思ってはいけません。
展開が大事です。展開とはVMD分類のことです。

例えば、あなたがウルトラセブンの売場をつくったとします。
ウルトラセブン、味方の怪獣、怪獣、宇宙人、武器、戦闘機などに分類したほうがいいかもしれません。
バービーは、バービーのフィギュア、着せ替え用の服、服飾雑貨、家族、友達、家の中、街の中、旅行などに分類した方がいいかもしれません。

そのように分類したら、その分類がわかるように陳列をくくるんです。
くくりがわかると分類がわかり、お客様が選択しやすく、買いやすくなります。

これはハワイの土産売場。1スパン、ドナルド・トランプグッズです。
見るからにくくり、わかりやすいですよね。
くくりの線を入れてみます。

5つのグッズに分類されているのがわかります。
一番上のペンは2棚、他は1棚ずつ横にくくられているので、とてもわかりやすいです。

来月、中間選挙ですね。中間選挙でトランプが勝つとこれ売上倍増するかもしれません。
パーーンチ!! (^^)

3. 什器デザイン・什器レイアウト

商品がどどーっと入荷したりすると、あわてて什器を売場に足すお店があると思います。
その時に、会議机にただ布を掛けて什器代わりにしていないでしょうか。

キャラクターって世界観があるので、什器やディスプレイ用品のデザインは大事です。
さっきのネロンガの売場も会議机の上でした。
やっぱりそれだと、商店街のガラガラの景品置き場にしか見えないかな・・・。

私のハワイの好きな店のひとつにココ・コーヴというのがあります。
ここのキャラクターグッズ売場見てみましょう。
パイナップルキャラ、いいですね。
マルシェ風に什器を配置して、ライザー(木箱のこと)に商品を投げ込み陳列しています。
雰囲気いいですよね。ハワイの風が吹いている感じ。
什器やライザーがウッディでナチュラル。
白い木の箱も釘が見えていてクラフトぽいです。

什器レイアウトも、ただ壁際に置いただけではなく、アイランド(島)形式でぐるっと回って買い物できるようにレイアウトされています。
これだと、ハワイに来た~って感じで来店客が注目してくれそうです。

4. オーケストレーション

オーケストレーションは壁面の集合ディスプレイのことで、これはハワイのディズニーストアの店内。
壁面いっぱいに商品を陳列・展示することで、キャラクターの世界観を醸し出せるんです。
こんな感じで、遠くからも壁面のディスプレイが見えるので、お客様は壁面に寄ってきてくれます。
壁面が白いままだと、遠くから見て白い壁が目立ち、下記の点で魅力が半減します。

  • 展示ディスプレイが見えない。
  • 壁の白が目立つ。
  • キャラクターの世界観が醸し出せない。
  • 何の売場かわからない。
  • 壁面自体がデザインにならない。

例えば、セブンイレブンを見てください。店奥の壁が白いですよね。
コンビニはオーケストレーションやらなくていいんです。
目的買いの人が多く、さっと入ってさっと出るお店だからです。

でも、お客様に楽しく店内回遊してキャラグッズを探させたいお店は、壁が白いままだとダメなんです。
オーケストレーションで壁面いっぱいにディスプレイしないと。
特に、下記の店は壁面いっぱいにオーケストレーションするといいでしょう。

  • アパレルショップ
  • バラエティショップ
  • 玩具店
  • 雑貨店
  • スポーツショップ
  • ライフスタイルショップ

5. キャラクターの世界観とは

おまけとして、ゴジラのディスプレイ作ってみました。
どこかの売場でぜひこういうPP(展示のこと)作ってほしいです。
怪獣フィギュア売場、盛り上げてください~!!

と、いうことで、今回はキャラクターグッズのVMDを論じました。
お話しできなかったフレームワークは他のブログ見るとわかります。

ディスプレイ構成

テーマ設定

だいたいわかりましたでしょうか、お土産売場の改善の仕方。
キャラクターグッズ売場、玩具店VMDを担当している方は、ぜひ当社セミナーでディスプレイのセンスをアップしてください。

●VMDセンスアップセミナーは毎月開催

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

にわかVMD講師を脱出するための7か条

今回はVMD講師の受講生への伝え方についてお話しします。

VMDインストラクターとは、売場づくりを教える人のことです。
もう870名以上の方が文字通りVMDの先生として活躍しています。
ある人は企業のVMD担当として。ある方は独立して。

私自身は、2003年にVMDの会社をつくったのですが、実際に講師として教壇に立ったのはそれから3年後です。
それまでVMDプランナーとしていろいろな売場やお店をつくっていましたが、「VMDの話をしてほしい」という依頼が次第に増えてきました。
そうして教壇に立つ日が多くなりました。

最初のうちは、自分のつくった売場の事例を話していました。
その方が楽だからです。
事実を述べればいいので、誰でも出来る事だと思います。

でも話していくうちに、事実だけ話してもあまり聴講者のためにはならないな、と思うようになりました。
私のやったことをただ聴講者がマネしてもうまくいかないと思ったからです。
アパレルショップのVMD事例を話しても、家電VMD担当者はそのまま事例をコピペできません。

どんな業種・業態・取扱商品でも、マネすることができる理論というのが必要だと考えましてた。
そしてその理論を発揮する場が売場塾だったんです。

あなたは、他人の理論を工夫しないでそのまま活用していませんか?
セミナーがワンパタに陥っていませんか?
他人と違う、自分だけのオリジナルを持ちたいと思っていませんか?
そんな方のために、題して「にわか講師を脱出するための7か条」をお教えします。
始まり始まり~。

1.自分の考えを言う

あなたが何かの本を読んだとします。
またはセミナーに参加したとします。
「この本のこの理屈、すごくためになった」
「この先生、いいこと言っているな」
こんな瞬間はあるでしょう。

でも、その理論の本質を知らずに形だけ汲み取って、それを受講生に話しても、単なる本や他社のセミナーの紹介になってしまいます。

例えば、「パラダイムシフト」という言葉があります。
物の見方を違う角度から考える事なんのですが、「7つの習慣」という本にも書いてあります。
でも、本に書いてあることをそのまま言っても仕方がないです。
その本を紹介すればよいからです。

私はこう思う。
私はこう解釈した。

と自分の考えを付け加えましょう。
そうすることにより、他人の理論にあなたという個性の血と肉が加わり、自身の考え方として説得性が出て来るんです。

例えば、私はこの「パラダイムシフト」をホノルル空港で見たディスプレイの体験を元にブログで論じています。
●顧客目線にパラダイムシフトしよう

ディスプレイ制作者にはディスプレイに見えても、他人にはゴミに見えるという言い回しです。
これこそが「自分の考えを言う」に他ならないのです。

2.腑に落ちない理論を話しても、よさは伝わらない

まだ腑に落ちていない理論でも、腑に落ちないまま生徒に言っていませんか
世の中には人気の理論がたくさんあります。

  • アイドマの法則
  • 群化の法則
  • ブルーオーシャン戦略
  • ペルソナ etc

こんな感じで、トレンディな法則用語が次から次に世に出てきます。
トレンディな自分を演出するために、直観を信じて「この法則を使うといいよ」と生徒に薦めていませんか。
自分でその法則を試してもいないのに、直感だけでいい理論と思い、生徒に薦めても説得力はありません。

例えば、「群化の法則」いう理論。
これもデザイナーなどにウケているデザインの法則で、いろいろなデザイン従事者がインターネットで推薦しています。

この理論、当然VMDにも活用できると思いました。
ただ、その段階で生徒に群化の法則の話をしても、いまいちピンと来ないだろうなと思いました。
それが果たしてVMDに本当にマッチするか、ど具体的にう使うのか確証がないからです。

だからすぐに受講生に薦めないで、確証することにしました。
試しに群化の法則を利用したディスプレイをコーヒーテーブルでつくってみました。
●「群化の法則」活用の仕方

6の「面積の法則」がよくわからなかったのですが、珈琲茶碗でつくってみたら「なーるほど」と思いました。
そして、商業施設で撮影したディスプレイに面積の法則が使われていないか、過去のディスプレイの写真を振り返ってみました。

すると、あるわあるわ。
あのVPも、あのPOPも、あの什器レイアウトも、すべて面積の法則にかなっている!!
「共同運命」も「閉合」もすべて自分の経験や体験に当てはめて考えることができました。
ここまで腑に落ちたら、もう大丈夫。
実を持って、受講生に教えることができるんです。

3.他人の定義をうのみにしない

世の中にはいろんな情報が氾濫しています。
ブログでも本でもセミナーでもいつでもどこでも情報を手にできます。
ですが、そのまま情報をうのみにして「その理論は正しい」と思っていませんか。

理論は情報のひとつで生き物のよう。
なので時間が経つにつれ、変わっていきます。
社会トレンドや政治情勢、ライフスタイル、自然現象なども理論を変える要因になります。

さてここでは、理論を定義と置き換えてお話しすることにします。
定義って次第に変わっていくと思いませんか?
女性の定義、会社員という定義、学校という定義。
これらはもう変わってきていますよね。
コロナという定義さえコロコロ変わっていると感じていると思います。
このように、定義はその時々や国、会社、個人等の変化に合わせて変わっていくんです。

例えば、VP,PP,IPというディスプレイの定義があったとします。
これって、すべてのお店に当てはまる定義ではないんです。
VPやPPがつくれるのはほとんどアパレル店舗で、それ以外の業態、ドラッグストアやコンビニなどはあまり当てはまりません。
なのに、あなたはコンビニに対し、VPやPPをつくるべきだ、と唱えていませんか。
(そもそも、PPとIPは和製用語ですので、外国ではVPという定義しかありません)

  • コンビニにVPとPPの概念はいらないから、こことは展示物と陳列物という定義に置き換えよう
  • POPをディスプレイの一部と考えてもいいのではないか
  • ドラッグストアではポスターがPPの役割をするので、ここではポスターがPPである
  • 入口付近は「店頭PP」といい、店内は「店内VP」と言おう。PPという言葉は使わない

などと、あなたなりの解釈を加えて自分オリジナルにしてもいいんです
定義というものは、あなたやあなたの受講生が使えるように変えなければいけないのです。

4.一段一段、理論の精度を上げていく

あなたは、同じセミナーを繰り返し行うことがあるでしょう。
売場塾も毎回同じ講座を繰り返しています。
しかし、理論の精度は上げていっています。
毎回、全く同じ理論を繰り返して伝えるのではなく、理論は更新してさせていくものなのです。

  • 「もしかしたらこのように話した方が伝わりやすいのでは」と思って比喩を取り入れて話してみる
  • 「この話のこの部分は必要ないな」と思ったら、次は外して理論を簡素化する
  • 「ここに売場のこういう写真を入れたら、理解が深まるな」と、写真を添付してレクチャーする

などなど、理論の精度を上げていってください
するとあなたの理論は研ぎ澄まされていき、受講生はますます理解しやすくなります。
納得度も上がるはずです。

やることは、レクチャー終わった後に必ず振り返りをすること
振り返って理論やレクチャーの精度をアップさせるんです。
すると、次回セミナーは、さらに受講生に理解しやすくわかりやすい内容になっているはずです。

5.引き出しを徐々に増やしていく

人は経験を重ねることによって日々事例を増やしていきます。
いいことも悪いこともケーススタディとして積みあがっていくんです。
同じようなケーススタディが積みあがっていくと、やがてそれらはひとつの引き出しにまとまり、法則として人に発信できるようになります。
この法則というのは、テクニック・ノーハウ・ハウツーと言われるものです。

私事で言えば引き出しを増やしていくうちに、ディスプレイ改善指導の引き出しは多くなりました。
売場塾で何百回も生徒のディスプレイを直していくうちに、直し方がひとつのパターンに集約されてきます。
すると、「この直し方は法則化できるな」と思い、その都度名前をつけるようにしています。

  • ダイヤモンド・テクニック
  • ディメンショナル・テクニック
  • パイリング
  • 菜の花展示テクニック などなど。

ネーミング、なんか笑っちゃいますよね。
こんな感じで勝手に名前をつけて自分で遊んでいます。(笑)
でも少しの時間をかけて、しっかり法則のパターンにまとめてキチンと理論化しています。
すると、生徒にテクニックとして教えることができるようになりました。
テキストの1ページとして加えることもできました。

どんな細かい直しでもその場のアドリブやその場しのぎで直すことはあると思います。
でも「これは行ける!」と思った理論は、そのままスルーことなく自分の引き出しに入れて忘れないようにしてください
いつかその引き出しを使って、人に物事を教える機会をつくれるからです。

巷に言う「あの人は引き出しが多い」というのは、実はケーススタディを積み重ねていって、きちんと頭の引き出しに整理し、いつでもその引き出しを出し入れできる、そんな人のことを言うのだと思います。

6.いつもと違うやり方を試みる

皆さんは、自社でVMDセミナーを定期的に開いたり、クライアントにお伺いしてVMD研修をされていると思います。
けれど、毎回ワンパターンで同じことの繰り返しにしていませんか
確かにその方が楽だし、事前準備もかかりません。
でも、ワンパタというのはいつか個人や会社に合わなくなっていくし、理論の厚みも増えません。
いつも違う考え、違うやり方を加えていくと、個人や会社のニーズに合っていくし、理論の厚みも増します。

ロングセラーの本でも中身は100%創刊当初と同じではないし、歌手でも昔と違う歌い方をします。
理論というものは、いつもまったく前と同じではないんです。

米国オンライン靴販売のザッポスの社長の言葉ですが、「毎日1%変える努力をしよう」と社員に言い続けているそうです。
ワンパタを続けていっていつも同じ・いつも変わらない、だと企業や人は成長しないと言うことを言いたいのだと思いました。

私自身も売場塾を17年運営していて、もう85期同じ講座を繰り返しています。
でも、レクチャーやワークショップ、テキストや進行の仕方は毎回変えています。
テキストは年間最低3%は変わるし、レクチャースライドの中身も変わります。
毎回同じではないんですね。
例えば、

  • グーグルインドアビューでレクチャーしてみる
  • 動画を取り入れてみる
  • ワークショップに絵葉書を入れてみる
  • フレームワーク用語の言い方を変えてみる

など、新しいことを毎回加えていて、ひとつとして同じ繰り返しのレクチャーはないんです。
確かにクライアントは「前と同じでいい」というけれど、それでも最低1%は変えます
何らかの新しい試みや改良を加えています。
でないと、自分自身がおもしろくないんです。
同じことのワンパタ。これのどこが面白いのでしょうか。

あなたのセミナー、無理に変える必要はないけれど、新しいチャレンジ・新しいアイデアを必ず1%加えることをお勧めします。

7.マッシュアップしながら理論を組み立てていく

マッシュアップとは、曲をつくる際に、いくつもの楽譜から徐々に組み立てていき、一つの楽曲をつくることをいいます。
エンヤがそうですね。
彼女、自分の音声やコーラス、ピアノ、シンセサイザー、自然音を幾重にも組み合わせて1つの曲を組み立てています。
あまりにマッシュアップが複雑なために、リアルでコンサートを開いたことは一度もないとか。すごいですね。
エンヤ好きの私としてはいつかは生で聴きたいと思っていますが、それも夢となりました。

あなたは、自分オリジナルの理論をつくるときに、時間をかけてつくっていませんか。
それは時間の無駄というものです。
確かに生半可な理論で受講生にレクチャーしたくない、というのはわかります。
でも、きちんと理論化できるまで人に話したくない、というのはナンセンス。
理論というものは人に話しながらブラッシュアップするものです。

お酒を飲みながら知り合いに自論を披露してもいいし、ツイッターでつぶやいてもいい。
人の反応や意見を聞きながら次第にブラッシュアップしていくのが理論というものです。
ある意味、組み立て前の理論は間違っていてもいいんです。

私は、思いついたアイデアを出し惜しみすることなく人に伝え、このツイッターでも書いています。
また、コールドコールと言って、いきなり人に電話して自論の感想を聞くこともあります。
そうすることによって、「こんな解釈があるんだな」「この人のアドバイスも貴重だな」と感じて理論を改訂していくのです。
これを理論のマッシュアップと呼んでいます。

あなたは自論を長い間温めていませんか。
人に伝えないで温めたままだと、レンジに置きっぱなしのおかずのように萎えて食べられなくなります。
ぜひ、人に伝えたりSNSで発信して、理論をブラッシュアップしてください。
すると、いつかはちゃんとした理論としてあなたのセミナーの一部に加えることができます。

最後に

わかりましたでしょうか。
にわかVMD講師を脱出するための7か条。

もっと聞きたい~と言う方は、相談会を実施しています。
VMDの先生になって成功するための相談会を毎月実施しています。
もちろん、VMDインストラクターでない方、売場塾受講していない方でも歓迎です。(^^)
セミナー形式になっているので、ただ聴講するだけでもいいですよ。
リアルとオンラインで行っていて、オンラインは顔出しする必要はないのでさらに気軽です。

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ご参加、お待ちしております!!

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

売場づくりにツカエル!「閉合」の法則

「閉合」という言葉をご存じでしょうか。
群化の法則7のうちの一つの法則です。
●群化の7つの法則

閉合とは、上図のように何かを閉じるということです。
インターネットで検索すると、グラフィックの事例が多く出てきます。
ホームページのボタンをデザインするときや、文章をまとめる際に役に立つ法則です。

しかし、この閉合、売場づくりにツカエルこと多大です。
下記の様に使うことができます。

  1. 特設コーナーを作るときに使える
  2. ブランドのインショップを作るときに使える
  3. 待合スペースを作るときに使える
  4. 商品展示の整理に使える
  5. フォーカルポイントを作るときに使える

ひとつひとつお話ししていきます。

1.特設コーナーを作るときに使える

母の日コーナーやバレンタインコーナーを小売店が作るとします。
しかし、ただ単純にお菓子の什器の上に「バレンタインコーナー」とPOPを掲げるだけでは、閉じたコーナーになりません。
什器をコーナーにしなければいけないのです。
まずはL字型の什器配置にしましょう。
いわゆる入隅(いりすみ)という什器配置です。
そうすることによって、2方向からお客様が来るので、角でぶつかり客だまりができやすくなります。

上図のようにコーナーは閉じています。
これが本当のコーナー(かど)です。
さらに、コーナーの前にテーブルを置きます。
すると、コーナーはエアポケットのようにますます閉じてきます。

これに通り化を加えましょう。(上図)
奥に向かって浅草の境内通りのように、左右に什器が並んで閉じていますよね。

このように、什器配置を閉合することによって、特設コーナーを際立たせることができるんです。

2.ブランドのインショップを作るときに使える

ブランドの店内店は、ABCマートなどでよく見ると思います。
ナイキの売場、アディダスの売場はショップインショップになっています。

メーカーは、小売店のフロア内のショップインショップをつくるときに、デザインエレメンツで売場を閉じればよいのです。
サインやPOP等のデザインを統一し、それらで売場を囲えば閉合になります。

上図を見てください。

「ビタミンワッキー」のキャラクターラインを柱や什器にデザインします。

すると、柱周りの売場は「ビタミンワッキー」の店内店になりました。

3.待合スペースを作るときに使える

クリニックやコンタクトレンズの待合い、カーディーラーやヘアサロンの待合いスペースは、オープンよりもクローズした方が人目にはばかることなく、落ち着きます。

そこで、

  • 観葉植物で閉合する
  • 置物ラックで閉合する
  • ついたてで閉合する

などした方が、閉合された空間となり、他と区別ができます。

4.商品展示の整理に使える

商品陳列を棚で閉合すると、商品のVMD分類がわかりやすくなります。

下の写真を見るとわかります。
木のボックスで壁面売場をつくっています。
商品が区画整理されているので選びやすいです。

また、商品ディスプレイを閉合することによって、商品分類を明確にできます。
下の写真を見てください。

丸いランチョンマットでディスプレイが閉合されているので、とてもメリハリがついています。
特にテーブルの上の商品展示を整理するのにおススメです。

5.フォーカルポイントを作るときに使える

自動販売機で「ぜひこの商品に目を留めてほしい」という依頼があった場合、あなたはどうしますか。

下の写真のように閉合してしまえばよいです。
「ほっとあたたかーい」という帯POPで、温かいドリンクが閉合されています。
遠くから自販機を見たときに、このくくりがとても目立つフォーカルポイントになります。

フォーカルポイントとは、客の目をある一点に引き付けることを言います。
●フォーカルポイントとは

まとめ

閉合の使い方、だいたいわかりましたでしょうか。
群化の法則って便利ですね。

今後も追及していきたいと思っています。

なお、群化の法則セミナーは、年に2回センスアップセミナーで行っています。
タイミングありましたら、ぜひお越しください。
●センスアップセミナー 群化の法則

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

よいディスプレイ構図の見分け方

今回はディスプレイの構図についてお話しします。
まず写真から行きますね。
上の二つの写真について、どちらの構図が優れていると思いますか。
最初の写真をA、2枚目の写真をBとします。

答えは~、Aです。

なぜAの構図がいいのか、それは下記の要素が関係しています。

  • 等分割パターン
  • 構造線
  • リーディングライン
  • ストッパー

各要素を詳しく解説します。

等分割パターンとは

等分割パターンとは、写真や絵を等分割に区切って、その間に人物や静物、背景などのエレメンツを配置していく手法です。
等分割になっていると、人は安心します。
誰でもバームクーヘン切るとき、当分使に切りますよね?
それはバランスがよく安定しているからなんです。

同じように、ディスプレイや絵や写真も、構成要因が等分割になっていると、バランスは安定するので、見る人は気持ちよく鑑賞できるんです

例えば、このゴジラのディスプレイ、安定して見えるのは等分割になっているからなんです。
線を入れてみます。

下記を見てください。正確に言うと、縦6分割・横3分割になっているディスプレイでした。
テーマは「ゴジラ砲撃開始」。

さて、先ほどの写真に等分割線を入れてみます。
下の写真2枚を比べてください。どちらも縦4分割・横5分割です。

上の1枚目Aの写真を解説します。
カレンダーが縦2/3、そして上半分にほぼ収まっています。
手帳は中央の縦3枠、そして下半分に収まっています。
グラスはちょうど縦1/5に収まっていますね。つまりバランスがいいということです。

2枚目のBはどうでしょうか。
カレンダーは、縦4枠・横4/3の中に納まっています。手帳は全体が見えませんが、縦4枠・横1/4に収まっているのがわかります。
グラスはAと同じく縦1/5に収まっています。
つまりこちらもバランスがいいです。

A,Bとも等分割に関してはイーブンでした。

構造線とは

今度は構造線について解説します。構造線とは、ディスプレイのエレメンツ(構成物)に線を感じることです。
線がほどよく配分されていると、そのディスプレイはバランスよく安定して見えます。
構造線を配分することをリニアスキームといって、ディスプレイ構成のテクニックひとつです。

リニアスキーム、忘れた方はこちらをご覧ください。
●リニアスキームとは

さて、Aに構造線を書き込んでみました。線が赤いグラスに向かっていくのがわかりますか。
カレンダーの有色のラインが斜め下に落ちていくのがわかります。
手帳の上部分とカレンダーの裾の線もグラスに注がれています。
そしてペンもグラスに向かっていますよね。

この写真は構造線のバランス、とてもいいです。

今度はB。
構造線はAと同じようなラインを保っているのがわかります。
つまり、これも赤いグラスが帰結点になっています。

構造線に関しても二つともよくて、今度も引き分けです。

リーディングラインについて

今度はリーディングライン(視線をリードする線)で比較します。
こちらも忘れた方は下記をご覧ください。
リーディングライン

実はAの写真の中には、グラスよりも大きなフォーカルポイントがあります。
それは、カレンダーです。背景が暗いのに、カレンダーは日光を浴びて明るく、コントラストがついています。
しかも、2という数字が大きく目立ちます。
だから人の目は、最初にこの2の部分を含めたカレンダーに行くんです。

そして、リーディングラインが注がれていく赤いグラスに視線は移動します。
すると、今度はグラスの下からニョキッと突き出ているペンに気づきます。
人の視線は思わず、斜め左下に動きます。

さて、この後、視線はどこに行くのか?
手帳のふちが上に跳ね上がっていますよね。
だから、人の目も上に跳ね上がって行きます。

そしてどこに行くかというと、観葉植物の葉っぱに行くんです。
そしてその葉はカレンダーを向いています。
ここで人の目はディスプレイを一周したことになります。

お客様がこれだけディスプレイを見てくれたら、ディスプレイ制作者はうれしいですよね。

写真Aはとてもよいリーディングラインを持っています。
人の目を、時間をかけてディスプレイをなめるように誘導するからです。

今度はBを見てみましょう。
Aと同じように、カレンダー→グラス→ペン・・・と視線はリードされているんですが、ストッパーがないために写真の外に視線は逃げてしまいます

つまり、ディスプレイを見る時間がAよりも短くなってしまうんです。
観葉植物も陰になっていて目立たないですよね。

つまり、リーディングラインに関して言うと、BよりもAの方が優れていたんです。
結果、Aの方に軍配が上がるのでした。

まとめ

今日は、構図についてお話ししました。
このような構図の配置は、ショーウインドウでディスプレイを制作する際に非常に役に立ちます。
構図をうまく作れば、お客様の視線を長い間くぎ付けできるからです。

この続きは、「センスアップセミナー ディスプレイ構成4」で詳しく語ります。興味ある方は、ぜひお越しください。オンライン開催です。(^^)

●センスアップセミナー ディスプレイ構成4

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

売場編集とはVMDインストラクターの仕事


1. 売場づくりにはいろいろなタイプがある

今回は、売場編集というVMD用語について触れます。

上記黒板を見てください。
売場づくりっていろいろな言葉があるんです。

売場づくりといっても「いろいろな売場づくり」があるんです。
売場づくりにエントリーしている人、専門家を例にとって、「売場をつくる」という動詞がどう変わるのか、お話ししましょう。

●動詞 → 専門家
という書き方にしています。
「売場」は「店」に置き換えてもOKです。

●売場を装飾する →デコレーター
百貨店や専門店等のウインドウのディスプレイをつくる人のこと。
プロップスというディスプレイ用品を使うのが特徴。
クリスマスやハロウインなどモチベーション期間に店内装飾をすることも多い。
造作と言って、クリスマスツリーや人形のオブジェを手作りすることもある。

●売場を施工する →施工会社
施工は、店の新装・改装をするときに使う言葉。
床・壁・天井・什器・照明等大道具の取り付け工事することを言う。
多くは施工会社が設計をし、什器メーカーが製作、大工・左官・板金・看板といった職人が取り付ける。

●売場を設計する →設計士
売場や店の設計図を書く人。企画設計と実施設計があり、企画設計は店主に見せる店舗の概略設計図。
実施設計は企画設計に材料の仕様など細部を書き込んだ設計図。

売場を制作する →SP会社
売場を制作するとは、デザインをするに近しい言葉。
SPとはセールスプロモーションの略で、販売促進という意味。
SP会社はデザイン会社、または社内デザイン部と連携して、什器・POP・電飾など販促物を制作する。
小売店の店頭をSP用スペースとして、そこで商品の体験キャンペーンなどを打つ。

●売場を製作する →什器メーカー
売場を製作するとは、機械や部品を使って売場の調度品をつくることを指す。
製作はオブジェの他、什器製作・家具製作が多い。
したがって、什器メーカーや家具メーカーがその役割を果たす。

●売場をデザインする →店舗デザイナー
店舗デザイナーという言葉は設計士とニュアンスが違う。
設計士は図面を書くことが主なのに対して、店舗デザイナーはパースで勝負する。
店舗や売場のイメージをわかりやすく店主に提案する人だ。

●売場を編集する →VMDインストラクター
売場を改善したり、商品の入れ替え等で売場を変更することを編集という。
売場編集はMDプラン、つまり売り物が主体になっている。
雑誌や新聞のように、打ち出し商品によってレイアウトを変えたり、ディスプレイや販促物を変えたりする。
売場の編集者とはVMDインストラクターなのである。

2. 売場編集の特徴

わかりましたでしょうか。
売場づくりとひとことで言っても、いろいろな売場づくりがあり、専門性で多方面の職業人がいるというわけです。
私がVMDインストラクターという職業を提唱するのは、「売場を編集する」という行為を広めたかったためです。
それは、店舗デザインをするのではなく、売場を装飾するのではなく、施工工事をするのでもありません。

専門店、百貨店、スーパー、ホームセンターなどほとんどの業態の売場は1年52週で動いています。
週ごとに打ち出し商品も違いますし、新商品も入ってきます。
さらに催事、キャンペーン、セールなどの機会もあります。
毎週変わる売場は、そのたびに施工したり、店舗デザインを変えたり、什器をつくるわけではないのは明らかです。

売場編集は他の売場づくりと比べて、コストがかからないという特徴があります。

ハードのコストは不要
施工や製作がなく、什器レイアウトや陳列・展示の変更、販促物の設置といった作業がメインになりますので、ほとんどハードのコストはかからない。

●人的販売からセルフ販売へ
店舗人員をプロ化したり、キャンペーン係を配置するなどの接客強化と違い、商品そのものの見え方を変えて売りやすくするのが、売場編集です。
打ち出し商品が明確になり、売場が魅力的に見えるので、接客は不要。
人件費もかからない。

POPなど販促物変更だけでOK
セルフが主体なので、説明POPや演出POPなどのPOPツール、ライザーやかごなどの商品陳列や展示をする道具のみで、売場を劇的に変身できる。

3. 売場編集の具体的な項目

編集は具体的には、下記の様な作業になります。

  • MD分類
  • VMD分類
  • ゾーニング
  • 什器レイアウト
  • 導線変更
  • リレーション
  • 色の絞り込み
  • MDテーマ設定
  • ディスプレイテーマ設定
  • VP・PP・IP
  • POP編集 etc

売場を編集する、とはどういうことかわかったと思います。
VMDインストラクターとは、売場を編集できる職業人。
売場の編集長と言ってもよいでしょう。
そして、実際に売場を編集する作業は店舗スタッフになります。
VMDインストラクターが店舗スタッフに売場の編集を教え、売場づくりを指揮することによって毎週、売場はいつも目新しいものになるのです。

売場の再編集「リバイス」についてはこちら。
売上を上げるには完全リバイス!

売場の再編集「リバイス」サービスについてはこちら。
リバイス

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)


PPとインテリアディスプレイの見分け方


この写真をみてください。
ABCストアの酒売場です。
すごくきれいですね。

くくりはわかりやすいし、ハーモニゼーションもいいです。
(くくりとハーモニゼーション、忘れた方はこちら)

さて、クエスチョンです。

●最上段のディスプレイは、AまたはBのどちらでしょう。
A PP
B インテリアディスプレイ

答えは、「B」。

そう、最上段のボトルは単なるインテリアディスプレイなんです
PPと言っても間違いではないのですが、厳密に言うと、インテリアディスプレイなんです。

改めて、PPとインテリアディスプレイの定義を振り返りましょう。

●PP
ポイント・プレゼンテーションと言い、売場の商品ディスプレイのこと。
IP(陳列のこと)の商品を紹介するための展示物で、IPの上部の棚につくることが多い。
役割は、店内のお客様を回遊させるためにある。


●インテリアディスプレイ
店舗・売場・商品の世界観を醸成するために設えたディスプレイ。
商品や店舗ブランドのイメージを増幅させる働きがある。


もうひとつ、別のABCストアを見てみます。
この最上段にあるディスプレイは、PPでしょうか。

いいえ違います。
これもインテリアディスプレイなんです。

PPのルールを振り返ってみましょう。
IP(陳列のこと)の商品を紹介するための展示物で、IPの近くにつくる。
特に売場の最上部につくることが多い。

あなたはこう思うかもしれません。

いいや確かに、PPだ。
最上段のボトルはIP部分にもあるよ。
しかも什器の最上段にあるし。
だからこれはPPだ。

でも、PPの定義を振り返りましょう。
「役割は、店内のお客様を回遊させるためにある」

そう、PPは店内を歩いているお客様を売場に引き寄せる力がないとダメなんです。
さっきのお酒売場から8mは離れて撮影した写真を見てみましょう。

離れてPPを見てみると・・・。
そうだな~、びんがあるのはわかるけど、何が置いているかわからない・・・。
酒を売っている売場というのはわかるけど。

そう、このPPは遠くから見てもわからないんです。
原因は、商品が小さすぎることにありました。
だから、このPPはPP足りえないんです。

下の写真を見てください。
今度はこのPPをズームアップしました。

これでも何の商品を訴求しているか、わからないですよね。
それでいいんです。
これはインテリアディスプレイなので、お酒を飲んでいる楽しいシーンが感じられればいいんです。

このように、小さな商品はPPにそもそも不向きなんです。
8m離れてPPを見ても商品がよくわからないので。
酒、メガネ、スマホ、ジュエリー、目覚まし時計、カメラ、ワイングラス、化粧品・・・。
このような商品は小さいのでPPに不向きな商品なんです。

じゃあ、PPに向いている大きな商品て何なの?
その質問にお答えします。
今度は、別のABCストアのTシャツ売場のPPを見てみましょう。


このPPを6m離れてみてみます。

こちらはTシャツのPPが6m離れても、デザインとか色はわかりやいですよね。

わかりましたか。
ボトルとTシャツの違いは、商品の大きさです。
Tシャツの方がボトルより断然大きいので、遠目から見ても商品がわかりやすいんです。

なので、ボトルをPPとして最上段においても、遠目から何が置いてあるのかわからないため、インテリアディスプレイにしているんです。

今度はインテリアディスプレイの利点を見てみましょう。

1. 売場の商品の世界観を醸成する
2. 店舗デザインの一部にすることができる


ひとつひとつ、事例を挙げて説明します。

1. 売場の商品の世界観を醸成するインテリアディススプレイ

例えば、このお菓子のガラスケースのディスプレイ。
「ショコラ・オ・ウィスキー 」という、ウイスキーが素材として入っている生チョコのインテリアディスプレイです。


ガラスケースの中に、ショコラ・オ・ウィスキーの商品が展示されています。
でも目立つのは、商品よりも本とウイスキーボトル。
ジャムのびんのようなものが「ショコラ・オ・ウィスキー」なのですが、ほとんどディスプレイの主役になっていません。

そう、これはインテリアディスプレイなので、商品が目立たなくてもいいんです。
書斎でひとりゆっくり読書を飲みながらウイスキーを飲むシーンのような世界観を醸し出しています。
大人男子のチョコと言うことですね。

もしこの商品のPPを正しく作るならば、生チョコを主役にし、下記の商品特徴をディスプレイ表現しなければいけません。

●アルコール分の高いガナッシュ(生チョコ)
●世界の有名ウイスキーが素材として入っている
●スプーンですくって食べる


そのために、ガナッシュのソフトなペースト感が感じられるサンプル展示、または演出POPが必要ですし、商品が主役になるように、たくさん並べて商品ボリュームを出すことが必要でしょう。

しかし、この展示を見る限りでは、前出した3つの特徴はまったくわかりません。
「ウイスキーを販売しているのかな」「ウイスキー会社とタイアップしているのかな」
と思ってしまうのがオチです。

しかし、インテリアディスプレイと捉えるならば、これでよいのです。
なぜならインテリアディスプレイはイメージ訴求のためにあるからです。



これは「ファウンドリー」というお菓子屋さんですが、りんごが並んでいますよね
その下にフルーツを漬けてあるびんが並んでいます。

これは別にりんごを売っているわけではないです。
フルーツポンチを売っているわけでもないです。
そう、アップルパイをイメージしたインテリアディスプレイなんです。
このお店、この時期はアップルパイを看板商品にしているんですね。

このりんごとびんは、文字通り店内インテリアディスプレイになっています。


2. 店舗デザインの一部にすることができるインテリアディススプレイ


これは、タリーズコーヒーのインテリアディスプレイ。
これならインテリアディスプレイとわかると思います。
喫茶スペースの落ち着いていてノーブルなイメージを醸し出しているインテリア的なディスプレイです。

文字通り、店舗デザインの一部になっています。
店内の販売商品は絡んでいないので、純粋なインテリアディスプレイですね。


これはPP、それてもインテリアディスプレイ??



これはハワイのディーンアンドデルーカですが、このディスプレイ、微妙ですね。
一見、インテリアディスプレイぽいのですが、しっかりハワイ特製のオリジナルバックを訴求しています。

そう、これはPPなんです。
商品が主役になっていて、「HAWAII DEAN & DELUCA」という文字がばっちりわかります。
これはトートーバックのPPでした。

私もハワイに行ったときに、これゲットしました。
このトートー、お土産として人気高いです。


今回はインテリアディスプレイとPPの違いをお話ししました。
PPをつくる前に、本当にPPにするのか、インテリアディスプレイをつくるのか、はっきり決めて制作してくださいね。
あやふやなディスプレイは、お客様にその意図が伝わりにくいです。

関連ブログはこちら

●PPの役割

●PPは写真で代用もできる


(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

オーケストレーション設計の仕方

壁面ディスプレイの作り方
今日は、オーケストレーション設計の仕方について論じます。

銀座の東急プラザに行ってきたのですが、オーケストレーション設計がうまい店が何軒もありました。
売場塾卒業生が関わっている店も何軒かあり、とてもうれしく思いました。

まず、オーケストレーションとは何かということですが、
わかりやすく言えば、「壁面の集合陳列」のことです。

お店で何が一番目立つか知っていますか。
それは壁なんです。
建築用語で鉛直面といい、お客様は売場を見渡すときに
鉛直面、つまり垂直の面に目が行くんです。
垂直の面とはまさに壁なんです。

さて、このオーケストレーションですが、ただ商品を陳列してしまうと、倉庫の在庫置き場になってしまうんです。
「あのお店、なにかごちゃごちゃしているな」と思う理由は、壁の陳列が雑になっていることが多いです。

オーケストレーションをプランすることをオーケストレーション設計といい、VMDインストラクターの重要な仕事でもあります。
ショップデザインの要になりますので、しっかりした棚割りとスケッチで企画書をつくります。

オーケストレーションは下記の3つの要素を企画します。
それは、くくり、ハーモニゼーション、フェイシングです。

○くくり・・・陳列の分類のことです。
これがしっかりしていないと、お客様は商品が選びにくくなります。
くくりにはネガティブスペースとグリッドラインという要素があり、これをつくらないと、くくりがわかりにくくなります。

○ハーモニゼーション・・・商品をどのように置いていくかいうことです。
かっこいい置き方があり、下記の方法に分けられます。

  1. リピート陳列
  2. シンメトリー陳列
  3. ウエーブ型陳列
  4. タイト陳列
  5. 等間隔陳列

このうち、等間隔陳列は必須です。

○フェイシング・・・これは商品のフェイスをどうつくるかというプランです。
シェルビング、スリーブアウト、フェイスアウトがあり、ユニットフェイシングというやり方があります。
日本人が不得意でアメリカ人が得意なのは、このフェイシングという技術です。
アメリカの売場にいくとフェイスが優れているのがよくわかります。

この4つの要素に付け加えるのが、PPやインテリアディスプレイです。
PPは展示のことですが、PP固定棚方式にするかキャッピング方式にするか、決めなくてはいけません。
もしくはまったくPPやインテリアディスプレイを使わない、
ウオーターフォール陳列という方法もあります。

インテリアディスプレイとは、プロップスのみを使用した展示のことです。
プロップスとは小道具のことで、マテリアル(布のようなもの)、オーナメント(ガーランドのようなもの)、オブジェ(置物)があります。
これらは、商品やお店の世界感を醸成する役目があります。

ちょっと今日はVMD用語が多いのですが、お許しください。

オーケストレーションはかなりシステム化できるので、VMD担当の方はMDの期ごとに企画してみてください。
システム化できるということは、指示書にして全店に指導ができるということです。

VMD担当の方は、ぜひ壁面の集合陳列であるオーケストレーションをマスターしてくださいね。