スターバックスはマネできない

スターバックスがロシアから撤退後、ロシアは新しいコーヒー店をオープンさせました。
その名はスターコーヒー。
マークもやたら似ています。

●スターコーヒー

従業員はそのまま正規雇用となり、同じようなメニューを顧客に提供しスタバだった店舗を「スターコーヒー」として運用していくようです。
新オープンにはたくさんの客が並んだそう。

お店づくりという点に関しては、他店をマネするということはよくあること。
ただこの場合、商標が酷似しているのでほぼ違法でしょう。
スタバも静観を保っています。

クリティカルコアという言葉があります。
これは、「他社がマネできないほど非合理な核心」という意味です。

スターコーヒーがいくら店の外観・内観をまね、商品をまねても所詮はスターバックスになることはできないということです。
果たして、下記のスタバのクリティカルコアをまねできるでしょうか。

  1. 売れなくなったコーヒーを2週間で破棄し、チャリティーに回せるのでしょうか。
  2. 顧客のメニューにない注文をスタッフがわざわざ受け入れてくれるでしょうか。
  3. コーヒー以外のランチやディナーを出さずに運営していけるでしょうか。
  4. 店内のBGMや壁にかかった絵画をわざわざオリジナルでつくって展開できるのでしょうか。
  5. 従業員に自社株を持たせるというモチベーション維持はできるんでしょうか。
  6. タバコを吸う人を一切入れないという決まりを維持できるでしょうか。

上記を遂行するのはかなり難しいのではないでしょうか。
これがスターバックスの持つクリティカルコアだからです。
これをマネしても、あまりに不利なことが続いてしまいます。

普通のコーヒー店の経営者だったら以下のことを考えてしまいます。

  1. 売れなくなったコーヒーを2週間で破棄し、チャリティーに回すなんてもったいない。
    利益を出すために、半年はコーヒーは在庫として使うべきだ。
    お客は2週間の味でも1年の味でもわからないから大丈夫だ。
  2. 顧客のメニューにない注文をわざわざ受け入れるだと? 入れる氷の量を調整する? ホイップをコーヒー味にする? ココアパウダーを振りかける?
    そんな面倒なことはしたくない。今あるメニュー以外は提供なしだ。スタッフの効率化を考えればいい。
  3. コーヒー以外のランチやディナーを出さないだと? ゆったりコーヒーを飲める空間を保つのも理解できるが、うちは利益重視だ。
    ランチやディナーのメニューもたくさん出して客単価を上げないと。
    多少ワイガヤするけど、その方がにぎやかな空間になって逆にいいだろう。
  4. 店内のBGMや壁にかかった絵画をわざわざオリジナルでつくる?
    そんな非効率的なことはしたくない。絵画はそれらへんで売っているポスターでも貼っておけ!
    BGMは有線(ロシアにあるはわからないですが)を使え。それで十分だ。
  5. 従業員に自社株を持たせるだと。会社が儲けた利益は我々経営者のものだ。
    スタッフはバイトでいい。一番安い時給でいいぞ。
  6. タバコを吸う人を一切入れないだと。ロシア人は喫煙率が高いんだ。
    ロシアは喫煙者は男性6割の女性2割の、世界トップレベルの喫煙大国なんだぞ。
    最低でも喫煙ルームは確保しろ。

とまあ、こんな調子を続けると、うわべだけマネしても中身は全然スタバでなくなるでしょう。
そのうち、ウオッカも出して、フツーのコーヒー屋である上に居酒屋と化すでしょう。

これがクリティカルコアの「ライバルのうわべだけマネしても決して追いつくことはできない」理由なんです。
店が長く続き、お送りのファンを抱えているブランドにはクリティカルコアがあるんです。

2.日本の小売店のクリティカルコア

今までVMDの会社20年やってきましたが、よくあるのが、
「ユニクロのような店舗にしたい」
「ドン・キホーテのようにしたい」
「イケアみたいな家具屋にしたい」
と、うまくいっているブランドの売場をまねたい経営者の言葉です。

売場を詳しく分析すればある程度まねることはできと思います。
床・壁・天井・什器・照明などの構造や素材・意匠、ディスプレイの仕方、POPの作り方などを解析し、似せることはできるでしょう。

しかし、そこまでです。うわべは似ていても中身はマネすることはできないのです。
逆にマネをしてしまうと、ライバルである同店に客はどんどん流れてしまい、まねた自店は自滅の道をたどることになるでしょう。

ロシアみたいにスタバがなくなったので、仕方なくスターコーヒーに行く、という客は残るでしょうが、日本からユニクロやドン・キホーテの店がなくなるということは考えられません。

あるとき、「もちクリーム」という和菓子ブランドが話題になったことがありました。
デパ地下に出店すると週に数百万を売るブランドで、全国の百貨店で引く手あまた。
たちまち直営店も増えていきました。

ウインドウには色とりどりのおいしそうな大福が並んでいて、中身はあんこだけでなく、メロンやイチゴ、チョコなどいろいろなフレーバーのクリームがきっしり入った、大福のようなお菓子です。

数か月たち、従来の和菓子店の中で、似たような商品を出す店が出てきました。
デパ地下のその店のガラスケースには、もちクリームのような大福のサンプルが並びました。
しかし、その店は程なくして、もとの姿に戻りました。

もちクリームのクリティカルコアは、下記です。

  • それだけ販売している単商品のみの店である
  • 冷凍して販売し解凍して食べる商品である
  • 冷凍しても風味が変わらない独自のソースを自社工場で開発している
  • フランチャイズではなく直営店のみを出している
  • 短周期で新フレーバーを出し続けていく持続性がある

まだあるかもしれないですが、少なくても上記は決して一介の和菓子メーカーはマネをすることはできないでしょう。

冷凍でも風味を閉じ込める特許技術が必要な上に、単品売りだけで商品を売り続けていくというむずかしさ。大福を凍らせるだけでは餅と中身の風味が落ちしまう。
だいふくをイチゴの色をつけてピンクにしたとしても、その鮮度や風味はけた違いに違うものになるはずです。

しかも、冷凍庫をガラスケース下に設置しなければならない手間とコストがかかります。
餅クリームをGケースに置いた分、他の商品は置けなくなりますからリスクも半端ないでしょう。

次第に店の売上が下がっていき、耐えきれなくてもとに戻したのだと思います。
このような事例はよくあることだと思います。

クリティカルコアを持つことは、他店の追随を許さないどころか、模倣した他店を大きく引き離すことができます。

3.話題のものがうまくいっているとは限らない

24時間、世界中のあらゆる情報が自由に手に入るようになった今、表面的な判断でものごとを決めないほうがいいと思います。
特には、店舗DXですね。

コロナ禍の今、流通企業のすべてがDXを導入しています。
無人レジ、売らない店、ライブコマース、VR店舗、スマートショッピングカートなどなど、話題は事欠きません。
テレビCMもコロナ前よりIT会社の放映が多くなったような気がします。

しかし、DXの話題すべてがうまく行っているいるわけではありません。
例を見ていきましょう。

  • アメリカのb8ta(ベータ)が日本上陸し、売らない店として店舗を拡大
  • アマゾンがECサイトと連動したリアル書店をチェーン化推進
  • セブン&アイがセブンペイをリリース、オムニチャンネル加速

など、近年始まった華々しい話題も下記のようになりました。

  • コロナで来店客が伸びなくなり、b8taは全米すべての店舗を撤退
  • アマゾンは今年、英国と米国で始めたリアル書店68店をすべて閉鎖すると発表
  • セブンペイの撤退は一昨年ありました。みんなよく知っているから話すこともないでしょう

b8taは日本事業はうまくいっているようなので、日本は問題ないです。
日本は丸井がb8taに出資していて、丸井だけでなくSCにも出店しているのですが、これはまだ成功しているかどうかはわかりません。
なのに、この「売らない店」を救世主とばかりにわが店舗に導入しても、うまくいくかはわかりません。

このように、マスコミで話題に載っていることがすべてうまくいくとは限らないことに注意しましょう。
「他店がDX化しているのでヤバい!!乗り遅れないようにわが社も導入しよう」と決める前に、本当にその方向がよいのかPLANする必要があります。

新規の話題は多いものの、その後の経過についてはあまり話題に上がらないので注意しましょう。
または、企業が広告をたくさん打っているからといって、その商品やサービスが売れているとは限らないのです。

4.オリジナルVMDを開発しよう

そもそもVMDには4つの分野があり、これを相関させながらオリジナルなノウハウにしないと、店舗ブランド(メーカーの場合は売場ブランド)としてやっていけないと思います。

4つの分野とは

  • 品ぞろえと展開
  • ショップデザイン
  • ディスプレイ
  • 体験販促

です。

●VMD4つの分野とは

こんな話が昔ありました。お茶店の改装をすることになり、設計士を呼んで打合せしました。
すると設計士は「お茶店だから{「富士山と茶畑」の写真をどかんと壁に設置しますか」と言いました。
その後、設計士は交代、他の設計士によい店舗を作ってもらいました。

新しい設計士と茶店とお茶工場をつぶさに見学、歴史や社員の人柄などいろいろヒヤリングしながら、コンセプトを作り出しました。品ぞろえも変え、店舗も変え、2階で体験ができるように工夫し、ディスプレイも美術館と提携してその店でしかできないものをつくりました。

こういうのがオリジナルと言えるでしょう。そう、ブランドは他社にない独自のVMDを開発すべきだと思います。

店舗や売場にVMDを導入するとき、どこそこの店のVMDを研究するのはいいとして、そっくりそのまま導入しても、所詮二番煎じ、顧客は定着しないでしょう。
または衰退の一途をたどるかもしれません。
VMDのオリジナリティがないからです。

VMDをクリティカルコアまで昇華する必要はないけれど、やっぱりマネだとお客様はすぐにわかってしまいます。
ぜひ、あなたの店ならではのオリジナルVMDをつくってください。

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

にわかVMD講師を脱出するための7か条

今回はVMD講師の受講生への伝え方についてお話しします。

VMDインストラクターとは、売場づくりを教える人のことです。
もう870名以上の方が文字通りVMDの先生として活躍しています。
ある人は企業のVMD担当として。ある方は独立して。

私自身は、2003年にVMDの会社をつくったのですが、実際に講師として教壇に立ったのはそれから3年後です。
それまでVMDプランナーとしていろいろな売場やお店をつくっていましたが、「VMDの話をしてほしい」という依頼が次第に増えてきました。
そうして教壇に立つ日が多くなりました。

最初のうちは、自分のつくった売場の事例を話していました。
その方が楽だからです。
事実を述べればいいので、誰でも出来る事だと思います。

でも話していくうちに、事実だけ話してもあまり聴講者のためにはならないな、と思うようになりました。
私のやったことをただ聴講者がマネしてもうまくいかないと思ったからです。
アパレルショップのVMD事例を話しても、家電VMD担当者はそのまま事例をコピペできません。

どんな業種・業態・取扱商品でも、マネすることができる理論というのが必要だと考えましてた。
そしてその理論を発揮する場が売場塾だったんです。

あなたは、他人の理論を工夫しないでそのまま活用していませんか?
セミナーがワンパタに陥っていませんか?
他人と違う、自分だけのオリジナルを持ちたいと思っていませんか?
そんな方のために、題して「にわか講師を脱出するための7か条」をお教えします。
始まり始まり~。

1.自分の考えを言う

あなたが何かの本を読んだとします。
またはセミナーに参加したとします。
「この本のこの理屈、すごくためになった」
「この先生、いいこと言っているな」
こんな瞬間はあるでしょう。

でも、その理論の本質を知らずに形だけ汲み取って、それを受講生に話しても、単なる本や他社のセミナーの紹介になってしまいます。

例えば、「パラダイムシフト」という言葉があります。
物の見方を違う角度から考える事なんのですが、「7つの習慣」という本にも書いてあります。
でも、本に書いてあることをそのまま言っても仕方がないです。
その本を紹介すればよいからです。

私はこう思う。
私はこう解釈した。

と自分の考えを付け加えましょう。
そうすることにより、他人の理論にあなたという個性の血と肉が加わり、自身の考え方として説得性が出て来るんです。

例えば、私はこの「パラダイムシフト」をホノルル空港で見たディスプレイの体験を元にブログで論じています。
●顧客目線にパラダイムシフトしよう

ディスプレイ制作者にはディスプレイに見えても、他人にはゴミに見えるという言い回しです。
これこそが「自分の考えを言う」に他ならないのです。

2.腑に落ちない理論を話しても、よさは伝わらない

まだ腑に落ちていない理論でも、腑に落ちないまま生徒に言っていませんか
世の中には人気の理論がたくさんあります。

  • アイドマの法則
  • 群化の法則
  • ブルーオーシャン戦略
  • ペルソナ etc

こんな感じで、トレンディな法則用語が次から次に世に出てきます。
トレンディな自分を演出するために、直観を信じて「この法則を使うといいよ」と生徒に薦めていませんか。
自分でその法則を試してもいないのに、直感だけでいい理論と思い、生徒に薦めても説得力はありません。

例えば、「群化の法則」いう理論。
これもデザイナーなどにウケているデザインの法則で、いろいろなデザイン従事者がインターネットで推薦しています。

この理論、当然VMDにも活用できると思いました。
ただ、その段階で生徒に群化の法則の話をしても、いまいちピンと来ないだろうなと思いました。
それが果たしてVMDに本当にマッチするか、ど具体的にう使うのか確証がないからです。

だからすぐに受講生に薦めないで、確証することにしました。
試しに群化の法則を利用したディスプレイをコーヒーテーブルでつくってみました。
●「群化の法則」活用の仕方

6の「面積の法則」がよくわからなかったのですが、珈琲茶碗でつくってみたら「なーるほど」と思いました。
そして、商業施設で撮影したディスプレイに面積の法則が使われていないか、過去のディスプレイの写真を振り返ってみました。

すると、あるわあるわ。
あのVPも、あのPOPも、あの什器レイアウトも、すべて面積の法則にかなっている!!
「共同運命」も「閉合」もすべて自分の経験や体験に当てはめて考えることができました。
ここまで腑に落ちたら、もう大丈夫。
実を持って、受講生に教えることができるんです。

3.他人の定義をうのみにしない

世の中にはいろんな情報が氾濫しています。
ブログでも本でもセミナーでもいつでもどこでも情報を手にできます。
ですが、そのまま情報をうのみにして「その理論は正しい」と思っていませんか。

理論は情報のひとつで生き物のよう。
なので時間が経つにつれ、変わっていきます。
社会トレンドや政治情勢、ライフスタイル、自然現象なども理論を変える要因になります。

さてここでは、理論を定義と置き換えてお話しすることにします。
定義って次第に変わっていくと思いませんか?
女性の定義、会社員という定義、学校という定義。
これらはもう変わってきていますよね。
コロナという定義さえコロコロ変わっていると感じていると思います。
このように、定義はその時々や国、会社、個人等の変化に合わせて変わっていくんです。

例えば、VP,PP,IPというディスプレイの定義があったとします。
これって、すべてのお店に当てはまる定義ではないんです。
VPやPPがつくれるのはほとんどアパレル店舗で、それ以外の業態、ドラッグストアやコンビニなどはあまり当てはまりません。
なのに、あなたはコンビニに対し、VPやPPをつくるべきだ、と唱えていませんか。
(そもそも、PPとIPは和製用語ですので、外国ではVPという定義しかありません)

  • コンビニにVPとPPの概念はいらないから、こことは展示物と陳列物という定義に置き換えよう
  • POPをディスプレイの一部と考えてもいいのではないか
  • ドラッグストアではポスターがPPの役割をするので、ここではポスターがPPである
  • 入口付近は「店頭PP」といい、店内は「店内VP」と言おう。PPという言葉は使わない

などと、あなたなりの解釈を加えて自分オリジナルにしてもいいんです
定義というものは、あなたやあなたの受講生が使えるように変えなければいけないのです。

4.一段一段、理論の精度を上げていく

あなたは、同じセミナーを繰り返し行うことがあるでしょう。
売場塾も毎回同じ講座を繰り返しています。
しかし、理論の精度は上げていっています。
毎回、全く同じ理論を繰り返して伝えるのではなく、理論は更新してさせていくものなのです。

  • 「もしかしたらこのように話した方が伝わりやすいのでは」と思って比喩を取り入れて話してみる
  • 「この話のこの部分は必要ないな」と思ったら、次は外して理論を簡素化する
  • 「ここに売場のこういう写真を入れたら、理解が深まるな」と、写真を添付してレクチャーする

などなど、理論の精度を上げていってください
するとあなたの理論は研ぎ澄まされていき、受講生はますます理解しやすくなります。
納得度も上がるはずです。

やることは、レクチャー終わった後に必ず振り返りをすること
振り返って理論やレクチャーの精度をアップさせるんです。
すると、次回セミナーは、さらに受講生に理解しやすくわかりやすい内容になっているはずです。

5.引き出しを徐々に増やしていく

人は経験を重ねることによって日々事例を増やしていきます。
いいことも悪いこともケーススタディとして積みあがっていくんです。
同じようなケーススタディが積みあがっていくと、やがてそれらはひとつの引き出しにまとまり、法則として人に発信できるようになります。
この法則というのは、テクニック・ノーハウ・ハウツーと言われるものです。

私事で言えば引き出しを増やしていくうちに、ディスプレイ改善指導の引き出しは多くなりました。
売場塾で何百回も生徒のディスプレイを直していくうちに、直し方がひとつのパターンに集約されてきます。
すると、「この直し方は法則化できるな」と思い、その都度名前をつけるようにしています。

  • ダイヤモンド・テクニック
  • ディメンショナル・テクニック
  • パイリング
  • 菜の花展示テクニック などなど。

ネーミング、なんか笑っちゃいますよね。
こんな感じで勝手に名前をつけて自分で遊んでいます。(笑)
でも少しの時間をかけて、しっかり法則のパターンにまとめてキチンと理論化しています。
すると、生徒にテクニックとして教えることができるようになりました。
テキストの1ページとして加えることもできました。

どんな細かい直しでもその場のアドリブやその場しのぎで直すことはあると思います。
でも「これは行ける!」と思った理論は、そのままスルーことなく自分の引き出しに入れて忘れないようにしてください
いつかその引き出しを使って、人に物事を教える機会をつくれるからです。

巷に言う「あの人は引き出しが多い」というのは、実はケーススタディを積み重ねていって、きちんと頭の引き出しに整理し、いつでもその引き出しを出し入れできる、そんな人のことを言うのだと思います。

6.いつもと違うやり方を試みる

皆さんは、自社でVMDセミナーを定期的に開いたり、クライアントにお伺いしてVMD研修をされていると思います。
けれど、毎回ワンパターンで同じことの繰り返しにしていませんか
確かにその方が楽だし、事前準備もかかりません。
でも、ワンパタというのはいつか個人や会社に合わなくなっていくし、理論の厚みも増えません。
いつも違う考え、違うやり方を加えていくと、個人や会社のニーズに合っていくし、理論の厚みも増します。

ロングセラーの本でも中身は100%創刊当初と同じではないし、歌手でも昔と違う歌い方をします。
理論というものは、いつもまったく前と同じではないんです。

米国オンライン靴販売のザッポスの社長の言葉ですが、「毎日1%変える努力をしよう」と社員に言い続けているそうです。
ワンパタを続けていっていつも同じ・いつも変わらない、だと企業や人は成長しないと言うことを言いたいのだと思いました。

私自身も売場塾を17年運営していて、もう85期同じ講座を繰り返しています。
でも、レクチャーやワークショップ、テキストや進行の仕方は毎回変えています。
テキストは年間最低3%は変わるし、レクチャースライドの中身も変わります。
毎回同じではないんですね。
例えば、

  • グーグルインドアビューでレクチャーしてみる
  • 動画を取り入れてみる
  • ワークショップに絵葉書を入れてみる
  • フレームワーク用語の言い方を変えてみる

など、新しいことを毎回加えていて、ひとつとして同じ繰り返しのレクチャーはないんです。
確かにクライアントは「前と同じでいい」というけれど、それでも最低1%は変えます
何らかの新しい試みや改良を加えています。
でないと、自分自身がおもしろくないんです。
同じことのワンパタ。これのどこが面白いのでしょうか。

あなたのセミナー、無理に変える必要はないけれど、新しいチャレンジ・新しいアイデアを必ず1%加えることをお勧めします。

7.マッシュアップしながら理論を組み立てていく

マッシュアップとは、曲をつくる際に、いくつもの楽譜から徐々に組み立てていき、一つの楽曲をつくることをいいます。
エンヤがそうですね。
彼女、自分の音声やコーラス、ピアノ、シンセサイザー、自然音を幾重にも組み合わせて1つの曲を組み立てています。
あまりにマッシュアップが複雑なために、リアルでコンサートを開いたことは一度もないとか。すごいですね。
エンヤ好きの私としてはいつかは生で聴きたいと思っていますが、それも夢となりました。

あなたは、自分オリジナルの理論をつくるときに、時間をかけてつくっていませんか。
それは時間の無駄というものです。
確かに生半可な理論で受講生にレクチャーしたくない、というのはわかります。
でも、きちんと理論化できるまで人に話したくない、というのはナンセンス。
理論というものは人に話しながらブラッシュアップするものです。

お酒を飲みながら知り合いに自論を披露してもいいし、ツイッターでつぶやいてもいい。
人の反応や意見を聞きながら次第にブラッシュアップしていくのが理論というものです。
ある意味、組み立て前の理論は間違っていてもいいんです。

私は、思いついたアイデアを出し惜しみすることなく人に伝え、このツイッターでも書いています。
また、コールドコールと言って、いきなり人に電話して自論の感想を聞くこともあります。
そうすることによって、「こんな解釈があるんだな」「この人のアドバイスも貴重だな」と感じて理論を改訂していくのです。
これを理論のマッシュアップと呼んでいます。

あなたは自論を長い間温めていませんか。
人に伝えないで温めたままだと、レンジに置きっぱなしのおかずのように萎えて食べられなくなります。
ぜひ、人に伝えたりSNSで発信して、理論をブラッシュアップしてください。
すると、いつかはちゃんとした理論としてあなたのセミナーの一部に加えることができます。

最後に

わかりましたでしょうか。
にわかVMD講師を脱出するための7か条。

もっと聞きたい~と言う方は、相談会を実施しています。
VMDの先生になって成功するための相談会を毎月実施しています。
もちろん、VMDインストラクターでない方、売場塾受講していない方でも歓迎です。(^^)
セミナー形式になっているので、ただ聴講するだけでもいいですよ。
リアルとオンラインで行っていて、オンラインは顔出しする必要はないのでさらに気軽です。

●VMDインストラクターで起業・副業 相談会
ご参加、お待ちしております!!

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

売場編集とはVMDインストラクターの仕事


1. 売場づくりにはいろいろなタイプがある

今回は、売場編集というVMD用語について触れます。

上記黒板を見てください。
売場づくりっていろいろな言葉があるんです。

売場づくりといっても「いろいろな売場づくり」があるんです。
売場づくりにエントリーしている人、専門家を例にとって、「売場をつくる」という動詞がどう変わるのか、お話ししましょう。

●動詞 → 専門家
という書き方にしています。
「売場」は「店」に置き換えてもOKです。

●売場を装飾する →デコレーター
百貨店や専門店等のウインドウのディスプレイをつくる人のこと。
プロップスというディスプレイ用品を使うのが特徴。
クリスマスやハロウインなどモチベーション期間に店内装飾をすることも多い。
造作と言って、クリスマスツリーや人形のオブジェを手作りすることもある。

●売場を施工する →施工会社
施工は、店の新装・改装をするときに使う言葉。
床・壁・天井・什器・照明等大道具の取り付け工事することを言う。
多くは施工会社が設計をし、什器メーカーが製作、大工・左官・板金・看板といった職人が取り付ける。

●売場を設計する →設計士
売場や店の設計図を書く人。企画設計と実施設計があり、企画設計は店主に見せる店舗の概略設計図。
実施設計は企画設計に材料の仕様など細部を書き込んだ設計図。

売場を制作する →SP会社
売場を制作するとは、デザインをするに近しい言葉。
SPとはセールスプロモーションの略で、販売促進という意味。
SP会社はデザイン会社、または社内デザイン部と連携して、什器・POP・電飾など販促物を制作する。
小売店の店頭をSP用スペースとして、そこで商品の体験キャンペーンなどを打つ。

●売場を製作する →什器メーカー
売場を製作するとは、機械や部品を使って売場の調度品をつくることを指す。
製作はオブジェの他、什器製作・家具製作が多い。
したがって、什器メーカーや家具メーカーがその役割を果たす。

●売場をデザインする →店舗デザイナー
店舗デザイナーという言葉は設計士とニュアンスが違う。
設計士は図面を書くことが主なのに対して、店舗デザイナーはパースで勝負する。
店舗や売場のイメージをわかりやすく店主に提案する人だ。

●売場を編集する →VMDインストラクター
売場を改善したり、商品の入れ替え等で売場を変更することを編集という。
売場編集はMDプラン、つまり売り物が主体になっている。
雑誌や新聞のように、打ち出し商品によってレイアウトを変えたり、ディスプレイや販促物を変えたりする。
売場の編集者とはVMDインストラクターなのである。

2. 売場編集の特徴

わかりましたでしょうか。
売場づくりとひとことで言っても、いろいろな売場づくりがあり、専門性で多方面の職業人がいるというわけです。
私がVMDインストラクターという職業を提唱するのは、「売場を編集する」という行為を広めたかったためです。
それは、店舗デザインをするのではなく、売場を装飾するのではなく、施工工事をするのでもありません。

専門店、百貨店、スーパー、ホームセンターなどほとんどの業態の売場は1年52週で動いています。
週ごとに打ち出し商品も違いますし、新商品も入ってきます。
さらに催事、キャンペーン、セールなどの機会もあります。
毎週変わる売場は、そのたびに施工したり、店舗デザインを変えたり、什器をつくるわけではないのは明らかです。

売場編集は他の売場づくりと比べて、コストがかからないという特徴があります。

ハードのコストは不要
施工や製作がなく、什器レイアウトや陳列・展示の変更、販促物の設置といった作業がメインになりますので、ほとんどハードのコストはかからない。

●人的販売からセルフ販売へ
店舗人員をプロ化したり、キャンペーン係を配置するなどの接客強化と違い、商品そのものの見え方を変えて売りやすくするのが、売場編集です。
打ち出し商品が明確になり、売場が魅力的に見えるので、接客は不要。
人件費もかからない。

POPなど販促物変更だけでOK
セルフが主体なので、説明POPや演出POPなどのPOPツール、ライザーやかごなどの商品陳列や展示をする道具のみで、売場を劇的に変身できる。

3. 売場編集の具体的な項目

編集は具体的には、下記の様な作業になります。

  • MD分類
  • VMD分類
  • ゾーニング
  • 什器レイアウト
  • 導線変更
  • リレーション
  • 色の絞り込み
  • MDテーマ設定
  • ディスプレイテーマ設定
  • VP・PP・IP
  • POP編集 etc

売場を編集する、とはどういうことかわかったと思います。
VMDインストラクターとは、売場を編集できる職業人。
売場の編集長と言ってもよいでしょう。
そして、実際に売場を編集する作業は店舗スタッフになります。
VMDインストラクターが店舗スタッフに売場の編集を教え、売場づくりを指揮することによって毎週、売場はいつも目新しいものになるのです。

売場の再編集「リバイス」についてはこちら。
売上を上げるには完全リバイス!

売場の再編集「リバイス」サービスについてはこちら。
リバイス

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)


コロナ禍の売場づくりはマップラバーが有利

分類サイン

■マップラバーとヘイターとは

maploverは、地図を好む人と言う意味です。
お店に入ったら、店頭のフロアレイアウトでだいたい行く売場を決めて、お目当ての売場に行き、モノを買う。
時間をかけて店内を回遊するよりも、短時間で効率的に買い物したい人のことを言います。

maphaterとは、地図が嫌いな人、と書きます。
とりあえず、お店に入っていろいろな売場を物色し、ゆったりともの探しをして、買って帰る人のことを言います。



■マップラバーに対しての売場づくり

マップラバーに対しての売場づくりは、店内案内板や売場インデックスをしっかりつくることです。
天井から下がっている大分類サインや、什器上の中分類サイン、棚の中の仕切り版の小分類サインが文字通り、目的の売場への道しるべになりますので、これら案内POP・サインのフロア設置がとても重要になります。

什器レイアウトもわかりやすくします。
什器がまっすぐ整列されていて、主通路・副通路が見ただけでわかり、分類サインも高低差・前後のグリッドが合っていて、売場の番地を探しやすくします。

■マップヘイターに対しての売場づくり

一方、マップへイターは、店内案内板や売場の分類サイン・POPに目もくれずに我が道を行きます。サインやPOPを見るのが面倒で、カンや雰囲気で歩いているのですが、最後にはちゃんと目的のものを見つけます。

こういう人は、雑貨店やクラフトショップなど、売場がきれいに整列していないお店でも大丈夫です。なんとなく、行きたい方向に行ってなんとなくモノを探します。
マップへイターにとって重要なのはリレーションになります。

つまり、売場と売場のつながり、モノとモノのつながりです。ワイン売場の横に食器売り場がある、食器売り場の横にレシピ本やグルメ本がある・・・・そんな売場配置です。


■コロナ禍の売場づくりはマップラバーが有利か

さて、コロナ禍の今、お客様の店内滞在時間が下がっています。
凸版印刷の調査では、買い物客の滞在時間は下記の様に変化しています。

数値は コロナ前 → コロナ後
・20分未満の客の割合 ・・・32% → 46%
・30分以上の客の割合 ・・・32% → 21%
・毎日買い物する割合 ・・・22% → 12%

コロナ禍においては、なるべく買い物に行かない、行ってもあまり店内に長居したくないようです。

さっと店に入ってさっと帰るという購買形態では、やはりマップラバー型の売場づくりが有利。
当社のフレームワークでは下記を有効に活用するといいです。

・見通しの良い店内
・通路はまっすぐ
・PPや分類サインが目につく
・商品の陳列くくりが明確
・導線は単純に
・商品フェイスを多くする


などです。

あなたのお店の来店客はマップラバー、マップへイター、どちらですか?
買い物客を考察して、どちらを取りこんだら自店に有利か、一度考えてみましょう。

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)