コロナ後のVMDはバーチャルマーチャンダイジングとの併用

アフターコロナの新しい生活様式が模索される中、今日はコロナ後の売場づくりはどうなるかについてお話しします。

私が書いているVMDの書籍では冒頭で、「体験はリアルな売場でしかできない」と述べていました。
セミナーの冒頭でもよく口にする言葉でした。

●オーバルリンクのVMD書籍

最近は同じ様な体験が家でもバーチャルにできるようになってきました。
すなわち、バーチャルマーチャンダイジングの登場です。

体験はリアル、バーチャルどちらでしても顧客は「買う行為」はできるようになってきました。
今後は二つのVMDが両立するようになるでしょう。
買い物は下記のような構造になると考えます。

●VMD=ビジュアルマーチャンダイジング
場所/ 店舗
体験/ リアル体験
体験の3要素/
・買う
・交わる
・学ぶ

●VMD=バーチャルマーチャンダイジング
場所/ 店舗以外・主に家
体験/ バーチャル体験
体験の3要素/
・買う
・交わる
・学ぶ

チャートにすると上記になります。

ビジュアルマーチャンダイジング、バーチャルマーチャンダイジング、この二つのVMDを両立させることがこれからのVMDの在り方だといえます。
店舗で何かを買うことは体験そのものですが、体験はリアル体験とバーチャル体験のタイプがあり、両方とも3つの体験の要素があります。
まず、リアル体験から述べていきます。

●●●● リアル体験の買う・交わる・学ぶ ●●●●

買う Pharchase Experimece

買うというのは、単に金を払うだけでなく、店内を歩いていろいろな売場に接し、たくさんの種類の中から好きな商品を選ぶという行為で、それはまさに体験です。
例えば下記のようなものです。

  • 心地よいBGMをバックに店内をそぞろ歩く
  • 素敵なディスプレイに目を見張る。
  • いろいろな柄の中から自分の好きなものを選ぶ

交わる Communication Experience

交わるというのは、ショップスタッフの接客もありますし、顧客同士が交わるということもあります。
交わることによって商品のよさがわかったり、使い勝手も理解でき、ファンの育成・持続にもなります。

  • ショップスタッフから説明を聞く (通常の接客)
  • サロンに通されて話をじっくり聞く (VIPな接客)
  • 生産者・設計者から話を聞く (専門家のトークショー)
  • 顧客同士の交流 (ファンの集い・試食イベント)

例えば、酒店はワイン試飲会を店舗のカウンターで行っていて、たくさんの顧客の交流を促進しています。
バイク店は試乗会を開いてバイク好きなファンの交流と育成を行っています。

学ぶ Knowledge Experience

学ぶというのは、商品と商品を取り巻くものについて学ぶということです。
コーヒーひとつ、アロマひとつとっても、学ぶことによって知識を深め、商品を使ってよりよい生活に結び付けていくというのは現代人の買い方と言えます。
学ぶとは、StudyというよりもKnowledge、つまり知識を得るための行為と考えてみてください。

  • グローサラント化したスーパー店内の料理人からレシピを学べる
  • 美容部員を通じて自分の健康増進策を化粧品店美容カウンターで学べる
  • コーヒー淹れ方POPパネルで、コーヒーの抽出法を学べる

これらリアル体験の3要素、買う・交わる・学ぶは、コロナ下の昨今、店外のバーチャル空間に引っ張ることが必要になってきています。
今度はバーチャル体験の3要素を見ていきます。

●●●● バーチャル体験の買う・交わる・学ぶ ●●●●

買う Pharchase Experimece

アマゾンや楽天などを利用して最初からネットで買う行為とは別に、店とネットで連動する買い方とは下記のようなものがあります。

  • 店内で試着・試飲して、専門店サイトで後で買う (ショールーミング)
  • 持ち帰りのものと、重いもの・かさばるものは分けて買う (ネットスーパー)
  • 店頭で興味が沸いた商品のQRコードをスマホに記録して、後で検討して買う (家電店のQR・POP)

交わる Communication Experience

コロナ下で、ZoomやMeetsを使ってショップスタッフとやり取りしたり、ファン同士を集いが交わる機会が加速しています。

  • 店頭での肌のお手入れプロモーションをネットで中継する (ライブコマース)
  • ソムリエと顧客同士のワイン試飲会 (Zoomによるウエブミーティング)
  • 車メーカー設計者によるネット交流会 (Meetsによるウエビナー)

学ぶ Knowledge Experience

上記の「交わる」には「学ぶ」要素も含まれており、買う・交わる・学ぶはリンクするものと考えてください。
いろいろな業態のうち、専門店は特にこれら体験の3つの要素を深く用いていますが、コンビニでさえも、RFIDやQRコードで商品情報をゲットできるので、店を出た後でゆっくりスマホで閲覧して商品を学ぶことができます。
しかもわからないころがあれば、ライン等で店とすぐにつながり面と向かって質問もできるようになりました。

買う場は、リアル・バーチャルどちらでもよい

ビジュアルマーチャンダイジングでは、いかに通行人を店内に導きモノを買わせるかに重点を置いてきました。
買わせることがVMDの最終目的だったわけですが、必ずしも店内で買わなくてもよい時代になりつつあります。
これからは買うスペースはリアル・バーチャルどちらでもいいのです。
こんな時代、VMDインストラクターはどのように売場づくりを行えばよいのでしょうか。
デジタルの専門知識も携えなければダメなのでしょうか。

答えはNOです。
あくまでビジュアルマーチャンダイジングはリアル店舗のノウハウなので、バーチャルの方は別の担当・専門部署に任せればよいでしよう。
ただし、ある程度の知識を身につれることと、別の担当や専門部署との連携は必要です。

大事なのはバーチャル部署との連携

リアルはリアル部署、バーチャルはバーチャル部署だけで販売業務を行うよりも、それらをリンクさせた方が相乗効果が期待できます。
いわゆる、OMOやオムニチャネルの考え方ですが、二つのVMD理論は、二つの担当部署あるいは担当者の連携という、ヒューマンリソースを土台にした理論だと思ってください。

つまり、今まではオンラインはIT部、またはCRM部に任せきりで、店舗はそれの販促をちょっとやるというスタンスでしたが、リアルVMD←→バーチャルVMDは担当者同士、相互依存の形で進まないといけないです。
例えば、今後考えられる施策を二者がどのように連携したらよいか、下記に述べてみます。

例1 グーグルストリートビューによる連携
インドアビューで店内を見ることができる昨今、店舗に行く前または後で店内商品を吟味することができるようになります。
アプリFlic360を使用すれば、ビュー内の写真をクリックすればそのまま買うことが出ます。
この場合のリアルVMD・バーチャルVMD担当の連携の仕方は下記になります。

・リアルVMD担当は、インドアビュー店内の導線・マグネット売場・オーケストレーションをプランし、打ち出し商品に目が行くように店内インスタレーションを行う。
・バーチャルVMD担当は、画面の商品クリックから自社の購買サイトにシームレスに移行する軌道をつくり、効果測定をする。
ビュー内歩行距離とクリック数、コンバージョン数などの測定を図り、効果が薄い時はVMD担当と話し合い、導線や什器レイアウト、ディスプレイなどを変えていく。

例2 facebookとインスタグラムのShops機能による連携
アメリカでは今年、facebookとインスタグラムにて店舗オーナーが無料で販売サイトをつくることができるようになります。
機能アプリ「Shops」をダウンロードして、売りたい商品写真を画面上に自由にレイアウトし、そこから自社の販売サイトに導くことができます。
この場合のリアルVMD・バーチャルVMD担当の連携の仕方は下記になります。

・リアルVMD担当は、打ち出し商品をVP,PP,テーブルプレゼンテーションに展示し、そこに「Shops対応商品」という名目でShopsカタログ商品掲載ページののQRコードを設置する。
・バーチャルVMD担当は、自社のfacebook、インスタグラムで店の展示を紹介するとともに、画面下に「Shopsカタログボタン」を設置し、クリックすることにより商品ページにジャンプでき購入できるようにする。
店頭QRコードからの購買率とバーチャルのみの購買率を比較することによる効果測定をし検証する。

このように、コロナ後の世の中は、二つのVMD、ビジュアルマーチャンダイジングとバーチャルマーチャンダイジングをセットで考えて行くことが必要になってきます。
VMDインストラクターの皆さん~、そんな世の中に対応できるように情報武装していきましょう!!

来週行われる「オンライン大阪売場塾VMDなるため説明会」では、これからのビジュアルマーチャンダイザーはどうあるべきか?も語ります。
興味ある方はぜひご参加ください。

●オンライン大阪売場塾VMDなるため説明会

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

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