
コロナ禍で家にいることが多くなったころ、私は家で音楽を聴く機会が多くなりました。
ジャンルはジャズ・フュージョンですが、その1つの理由はレコードプレーヤーを買ったことが大きかったです。
実家から昔のレコードを取り寄せ、夜1時間くらい聴いていましたが、コロナ禍が終わってもそれが習慣になりました。
2つ目の理由は、ジャズ好きの友達と会う機会が増えたからです。
近年は二人で中古レコード店を探し回るのもしばしば。
時々LINEで情報交換しています。
3つ目の理由は、仕事でした。
リサイクル店舗のVMDコンサルの依頼が頻繁にあった年があり、そこにはレコード売場があって、コンサルに行くたびにレコードを買って帰ってきたのでした。
あるとき友人が、「「ヤフーオークション」や「メルカリ」で探してあげる」と言ってきました。
「キースジャレットの「ケルンコンサート」、アルディメオラの「スーパーギタートリオ」がほしい」と言うとたちまち購入してくれ、送ってきてくれました。
あっけなかったです。
お茶の水のDISC UNIONにたびたび訪れていてもなかったアルバムが、瞬時に手に入りました。
ネットショッピングできるおかげで、時間をかけずに好みのものをいつでも買える世の中になったのを実感しました。
1.ネットですぐに手に入るのは楽しくない
コロナ禍以降、ネットショッピングは拡大していて、レコードを含めた書籍・音楽ソフトのネット売上額は55%に。
リアル店舗の売上を逆転しています。
衣料品ではコロナ禍前は14%だったネット購入高も今は25%に増加しました。
買い物客も賢くなっていて、リアルな売場で商品を吟味し、ネットで購入するスタイルが定着しました。
家電品などはそうですね。
ですが、私にとっての問題は「ネットですぐに手に入ってしまう」ことなんです。
レコードの他にも、食器、インテリア、服、フィギュアなどもネットですぐ手に入ってしまい、おもしろくありません。
例えば、机の卓上ライトを探していた時のことです。
うちの妻が「これらはどう?」と、ズラーっとiPad画面に並んだいろいろなメーカーの卓上ライトを示してくれます。
私がやったことは、ヨドバシ・ドット・コム、イケア、イデー、アクタスの中からよさそうなライトを指定し、絞り込み妻に購入を頼むという15分の作業でした。
あとは家に届くのを待つだけでした。
また、フィギュアの「昭和ラドン」を探していた時、そのぼやきをLINEで聞きつけた友達がヤフーオークションで選んで購入してくれました。
すごく早いので、買う労力はとても省略されました。
ただ、それがいいかどうかというと、「?」です。
実はレコードもフィギュアも、インテリアも食器も、すぐに買えなくてもいいんです。
私的には、夫婦や友達とお店を回って、「このレコードよさそう」とか、「こんな服は似合うかな」と吟味しながら、買う方が楽しい、ということです。
この買い方は、以前お話しした「快楽客」モデルになるということです。
●お客様は実用客?それとも快楽客?/ PART1 買い方が違う2タイプ
では何が快楽なのか?
レコード店に行くと、中古のジャズ版がずらりと棚に収まっています。
私はその中から、一つずつジャケットを引っ張り出してはタイトルを眺め、また引っ張り出しては眺め、を繰り返します。
最終的に1000枚の棚の中からよさそうなものを5.6枚残して、「うーん」と考えて2.3枚に絞り込む。
2000円以上のものは、視聴してから、よさそうだったら買う。
これが私の快楽なのでした。

2.セレンディピティとは「商品との偶然な出会い」
セレンディピティ(Serendipity)とは、「偶然の出来事から、思いがけない価値ある発見や幸運を得ること」という意味です。
下記の例がそうです。
- 散歩中にたまたま入った本屋で、人生を変える一冊に出会う
- 仕事で調べ物をしていたら、新しいビジネスアイデアを発見する
- 旅行先で偶然知り合った人が、後に大切な仕事仲間になる
星飛雄馬が大リーグボールを発見したのもセレンディピティです。
ところがセレンディピティがいらない買い物場面もあります。
- 期日までにどうしても間に合わせなくてはいけない商品がある
- これがないと毎日が続かない
- すぐに欲しい商品がある
こんな場合は、偶然の出会いを待つよりも、計画的に急いでネットやコンビニで買った方がいいです。
しかし先ほど言ったような、レコード、食器、インテリア、服、フィギュアなどは、1個もない場合は別ですが、そんなに急がずとも大丈夫。
のーんぴり、楽しみながら店を探訪してセレンディピティを待てばいいんです。
だから、秋葉原の商店街で怪獣のフィギュアを探して歩くのは楽しいし、なかったらなかったでいいんです。
3.三省堂はセレンディピティがいっぱい

先週、三省堂書店がリニューアルオープンしたので、行ってみました。
何が面白いかというと、什器レイアウトです。
1階は特に面白く、谷の底から書棚の崖を見るような什器レイアウトになっていました。

こうなると崖の上に登ってみたくなります。
そこは「特集売場」になっていのでした。
村上春樹の新作を買う場合はネットでいいと思います。
でも、「何かおもしろい本ないかな」という買い方は、この谷間から崖の上まで登ってみて発見すればいいんです。

3階の什器レイアウトはこんな感じ。
円の中心を目指すように並んだ什器レイアウト、とてもユニークです。
図書館のように効率を重視するよりも、迷路という非効率さを逆手に取って、客をそぞろ歩きさせるという趣旨があるのでしょう。
結果、私はこの本に出会うことができました。

なんでこの本買ったかというと、偶然「まんがの書き方」のコーナーを眺めていて、この「動きとシワがよくわかる」というフレーズにピンときたからです。
「そういえば、服をレイダウン(テーブルに服を置いてコーディネートするディスプレイ方法)するときに、服のシワを意図的に演出すればいいかも」と。

これがセレンディピティというものです。
アマゾンでは決して出会うことのできない買い方といえましょう。
4.偶然の出会いをVMDで強化する
セレンディピティは意図的に計画することができます。
偶然の出会いがたくさんできるように、VMDの力を使いましょう。
それには、下記のVMDフレームワークが必要です。
●VP,PP
●リレーション
●什器レイアウト
●フェイシング
今回は、上記を私の趣味の話として解説します。(^^)
都内の中古レコード店に行くと、わかりにくいのが「映画音楽」の売場。
まず、売場名が「サウンドトラック」になっているんですね。
しかも英名「SOUND TRACK」になっています。
また、アニメと実写映画、日本の映画と海外の映画が離れている場合が多く、リレーション(売場の関連付け)が、なっていません。
ほとんどの店で「映画音楽はどこにあるのか」店員さんに聴いています。
フィギュアもそうです。
下記を見てください。

一昨日、スターウォーズ「マンダロリアン&グローグー」を見に行き、面白かったのでフィギュアを館内グッズコーナーで探すことにしました。
しかし・・・。
スターウォーズ売場がとびとびになっている上、あまり関連のなさそうな漫画アニメの間に、埋まっていました。

写真で見てわかるように会議机を、空いているスペースにバラバラに置いていました。
グッズコーナーは什器デザインの統一もなく、キャラクターの世界観もありません。
商品フェイスもわかりづらかったです。
これは他の映画館のグッズ売場ですが、ガボラの顔が見えません。

確かにセレンディピティは「商品との偶然な出会い」ですが、これでは出会う確率は低くなります。
実際のところ、他の中古キャラクターグッズ店に行ってもこんな感じになっています。

いちいち店員に「ガラスケースを開けて見せてほしい」というほどでもなく、あきらめて次の店に行くしかありません。
これは店にとっても大きな損失です。
お店のみなさん、まずは商品が魅力的になるようにフェイシングしてください。
なお、キャラクター売場作りに関しては下記リンクも参考にしてください。
5.セレンディピティ型だと買い物に失敗する確率は減る
このようなセレンディピティ型買い方モデルのもうひとつの利点は、失敗が少ないということです。
- リアルな売場で商品が見られる
- 商品が試せる
- 店員に訊くことができる
からです。
ネットで買う場合は、商品画像から判断しなけれいけません。
ネットで買って失敗した例は、みなさんもよくあるでしょう。
私も服とおもちゃで失敗しました。
以前、ヒステリックグラマーのトレーナーを買ったんですが、ピンクの色が画像で見たイメージと異なっていたんです。
また、室内用プラネタリウムを買った際は、とても失望しました。
映写した星座群がただの光の穴ぼこだったからです。
プラネタリウムはすぐにブックオフに売却、7000円の損失でした。
たとえそれが書籍でも失敗はありました。
今年、「生き延びるためのデザイン」という本をアマゾンで買ったのですが、届いた本がカビだらけ。
臭くてとても読めません。
中古本を購入したのですが、すぐに廃棄し新品を買いました。
1500円の損失でした。
服にしても本にしても、リアルだと材質や色が確認できますし、プラネタリウムもどんなイメージの星空なのか、店員に確かめることができます。
こだわる商品ほど、リアルで買い物した方がよいし、失敗もなくなります。
5.まとめ
セレンディピティ型買い方モデル、いかがですか。
ネットで買い物が便利になった分、買い物がつまらなくなることもあるんです。
要は、
- 必要商品
- 低嗜好商品
- 比較選別型商品
- 寛容商品
に関しては、あまり買い方にこだわらず、ネットでもOK。
逆に
- 不急不要商品
- 高嗜好商品
- 快楽購入型商品
- 非寛容商品
なら、リアルな売場で買う「セレンディピティ型買い方」をおススメします。
用語解説します。
2.低嗜好・高嗜好商品とは、好きなジャンルの商品かどうかということです。
低嗜好商品は、消しゴムやマスクのように、あればなんでもいい商品。
高嗜好商品は、バッグや服、化粧品のように、こだわる商品をいいます。
これは人によって違い、文具女子などは、例え消しゴムでも高嗜好商品になるということです。
3.比較選別型商品と快楽購入型商品とは、じっくり買うか、その場の雰囲気で買うかということです。
比較選別型商品は、車や家電、化粧品のように、性能・効果・効能などを価格と比べて絞り込んで買う商品のこと。
快楽購入型商品は、店やブランドの雰囲気がよく衝動買いしたり、店員の勧めでつい買ってしまう商品のことです。
4.非寛容商品と寛容商品とは、買って失敗したくない度合いのこと。
寛容商品は、「失敗してもいいや」と思って気軽に買うこと。
ビールやお菓子、書籍やノートがそうでしょう。
非寛容商品は「失敗したくない」商品。
掃除機や洗濯機、スキンケア商品や大型家具などはそうでしょう。
私にとってレコードやフィギュアは非寛容商品ということになります。
最後のまとめは、学術的で硬くなってしまいました。(笑)
ちなみに、セレンディピティ型モデルを意識しているのは、他でもないバーバリーです。
バーバリー・ジャパン社長は過去日経MJのインタビューで、リアル店舗の価値を「セレンディピティ(偶然の発見)」に求める趣旨の発言をしていました。
セレンディピティ型買い方、楽しいですね。
買い物が楽しい銀座の街でVMDセミナーやっています。
楽しい売場のあり方、勉強に来てください~。
リアルセミナーは3か月に一度やっています。
(VMDコンサルタント 深沢泰秀)






































