
0.大阪万博に行ってきた
子供の頃、大阪万博に行ったとき三菱未来館に感動したのを覚えていて、今回も
張り切っていきました。
月日が経っても「映像中心の万博」は変わっていなかったです。
残念だったのは昔は奇抜な装いのパビリオンが多かったけど、今回はそんなでもないこと。
ただ大屋根リングは圧巻で、太陽の塔に匹敵するくらいの崇高な建築物でした。
また、待ち時間がほとんどないことはよかったです。
1970年の暑い夏日の下、1時間以上三菱未来館に入るのを待っていたのを覚えていたからです。
帰りの地下鉄も空いていてゆっくり座れました。
1.アースマーケットのわかりやすい展示
さて、観光とは言ってどうしてもVMD目線で見てしまう各国のパビリオン内展示。
今日は、わかりやすい表現とは何かについて振り返ることができました。
表現とはディスプレイや映像、パネルグラフィックスなど全般的なデザインを指します。
普段、私たちは商品やサービス、ブランドというものをデサインを介してなるべくわかりやすく消費者に伝えています。
今回はその参考になればと思います。
A.世界の人々はどのくらい卵を食べているか
下の写真はシグネチャーパビリオン「アースマーケット」の内部。
未来の食を考える視覚型・体験型のパビリオンで、世界の食事情が理解できます。
まずは卵のシャンデリアを見てみましょう。

卵のシャンデリア、とてもおもしろいです。
上から吊るされた卵が下の目玉焼きにじょうごのように降り注いでいます。
じょうごの落ちる先に目をやると、巨大な目玉焼きに着きつきます。
この目玉焼き、日本人1人が一生食べる卵の量で、なんと24,000個だそうです!!
そこのフライパンには、各国の1年間の卵の消費量がディスプレイされていました。
シャンデリアは24,000個の卵からできていると想像がつくでしょう。

上のフライパンを見て感じるのは、日本って中国の次に卵食べているんですね。
アメリカの人口は日本の2.7倍なのに、日本人の方が米国人より卵食べているんですね。
AIで調べると、日本はすきやきや卵がけご飯など生卵を食べたり、弁当文化がある国民からだとか。
納得です。
B.世界の家庭の食量

上は、世界の世帯食品消費量を表したパネル写真群。
標準的な1世帯の1週間の食料をディスプレイしています。

これは中国のある世帯。

これはイギリスのある世帯。

これはチャド。
す・すくな!!
少なすぎるのが一目瞭然です。
AIで調べると、チャドは日本の3.4倍の国土面積ですが、最貧国のひとつになっていました。
紛争・難民・気候変動・教育不足などが影響しているようです。
中国はヘルシーな気がしました。
野菜がたくさん見えるからです。
イギリスは、もうスーパーマーケットと密接に関わっているという感じ。
中国と比べて野菜が少なく、加工食品多いですね。

これは、1人の日本人が食べる10年分の食量。
ねぶた仕様のスーパーのカゴで表現しています。

これは各国の1人が食べる10年分食量のカゴ比較。
中国人は、日本人二人分は食べているのがわかります。
だから太った人多いんですかね。
コンパニオンさんが「中国人は食べ残しが多いから」と言っていました。
もったいないです。
エチオピアは日本人の半分の量。
AIで調べてみると下記でした。やはり栄養が不足しています。
●一人当たり年間食品消費量(カロリー)
・日本 約 2,700~3,000 kcal
・エチオピア 約 1,300~1,500 kcal
理由は、経済水準、農業中心、食文化、インフラ流通など。
食文化の中に「テフ」という穀物があり日本のコメと同じく主食だそうです。
●世界の発酵食探訪
知らなかったです。
勉強になりました!

これは一週間分の世帯の食料の品目別サイズ。
スーパーのレシートさながらに各国を比較展示しています。
手前はスーダン。
紛争国の一つなんですが、ファバ豆をよく食べているみたいです。
AIで調べたらギリシャ料理で有名らしいです。
左から4つ目はメキシコ。レシート短いです。
やっぱハラペーニュ、つまり唐辛子入っていました。
このように、料理の原材料に何を使っているのか、各国の買い物詳細がわかりました。
C.食卓のイワシの希少性

上写真はイワシの大群のディスプレイ。
キラキラしていて素敵なディスプレイですね。
天井にたくさん渦を巻いて吊るしてあります。
イワシは日本人の食卓の人気者。

上の写真を見てください。
そのイワシが生まれてから、食卓に上がるまでの一生を展示しています。
まず、1匹のイワシが10万個の卵を産みます。ここからスタート。
卵から稚魚が孵り、成長魚になり、人間に捕まえられて流通に載り、スーパーに陳列され、家庭の食卓に上がるまでの数量の変遷が展示されています。
結論から言うと、10万個の卵のうち3匹しか食卓に上がらないです。
こ・これはスゴイ!!たったの3匹です。
下の写真でイワシの数を比較してください。


これはわかりやすい!!
なんでこんなにイワシが死ぬのか、コンパニオンが説明してくれました。
・孵化率で10万が5万に
10万個のうち半分は孵らない。そのまま死ぬか、孵化直後に他の魚に食べられる。
・稚魚の生存率5万が千匹に
魚の他にクジラや鳥に食べられる。病気や栄養不良になるのもいる。
・成魚へ成長するのは1000匹のうち10匹
・漁獲・加工後の収穫で10匹が5匹に
この時点で稚魚5万のうち5匹しか捕れない。
港でアジ釣りをしているおじさんは貴重なのか?。
・5匹のうち食卓へは3匹
つまりイワシの卵が産み落とされてから0.003%しか食卓に載らないということになります!!!
もうこれを見たお子さんは、「魚きらーい」と言ってられないですね。
食卓にイワシがいても食べない場合は、貴重な0.003%を捨てるということになります。
これは、日本人でなくても「もったいない」精神が再び体内に沸き起こりますね。

このディスプレイはグッドアイデア。
イワシのシルエットにもうぜんと襲い掛かる海鳥の姿が光で表現。

ディスプレイ素材としての工夫は、反射板をくりぬいてつくってありました。
室内クーラーの風にゆらゆら揺れています。
グッドアイデアですね。
2.お店のディスプレイもわかりやすくしよう

さあー、それでは実際の売場のディスプレイを見てみましょう。
上はヨドバシカメラのシュレッダー売場。
裁断くずが宙に浮いています。
実際に紙を展示品で裁断したものを袋に入れて見せています。
これ、わかりやすいです。
ただ、万博ディスプレイのように細かく数値化するとなおいいでしょう。
各製品ごとのくずボックス容量と同じサイズのビニル袋を吊るすとよかったです。

これはノジマのPOP。
下のティファールのクッカーで実際に作った料理を写真で見せています。
ノジマのスタッフが作りました、とのことなので説得力はあると思います。
材料用意してクッカーに入れれば、こんな料理ができるということです。
わかりやすい!!
万博ディスプレイのように、細かく数値化するとなおいいでしょう。
作ったノジマスタッフの料理歴を提示するとなおよいでしょう。
料理初心者でもできるんだー、というのがわかります。
3.わかりやすい店舗診断シートとは
わかりやすさとは、ディスプレイやPOPだけの問題ではありません。
普段私たちが読む新聞や雑誌、社内企画書、プレゼン資料は、数字をいかにわかりやすく伝えるかにあります。
イラストや写真、グラフやチャートなどを駆使して分かりやすく伝えましょう。

上は日韓国交正常化60年における国民の意識調査。
朝日新聞がつくったグラフです。
各国のアンケートの数字が拮抗しているのがわかります。
「心の距離」、確かに近づいてますね。タイトルにあるように。

当社も「わかりやすい店舗診断書」とは何かを追及してきました。
上の写真を見てください。
最初はこんな感じでした。テキストのみ。
日報みたいな書き方で、店のどこがどう悪いのかじっくり読まなければ分かりませんでした。

次に改良したのはこれ。
店舗の写真を撮って悪いところが映っている写真をピックアップし、それを表とグラフにまとめていました。
この場合、こちらが口頭で説明するとわかりやすいのですが、表がグラフとどうリンクしているのかわかりづらかったです。

そして改良版。
上のタイプになりました。
先ほどの店舗診断シートは色分けがされていないのと、表の大・中・小分類が見にくかったです。
表をフレームワーク用語でソートして色分けして、分類ごとにフォントの強弱をつけてわかりやすくしました。
人間ドックの健診診断表のようにしたので、「お店の健診表」と読んでいます。
表を左から右に読んでください。
一発でお店のどこがどう悪いかがわかります。
表の左を見れば、「このお店の半分はIPが悪いんだ」、
「残りの半分は「POP・サイン」「PP,VP」そして「ゾーニング」が悪いんだ・・・」
ということがすぐにわかります。
そして、今度は右に目を移すと、
「IPは「フェイシング」「くくり」が主に悪いんだ」
「POPは「POPの編集」つまり、POPの置き方が悪いんだ」
「PP,VPは、「テーマ設定」「ディスプレイ用品」「ディスプレイ構成」などが複合的に悪いんだ」
こんなことが表を見ると一目瞭然になります。
※店舗診断サービスはこちらを参考にしてください。
●店舗診断

さらに最近は、上図のような「簡易店舗診断シート」をクライアントに配付しています。
4店舗の土産店売場写真2532枚のうち、悪い売場写真が281枚あり、それをフレームワーク別の写真枚数に置き換えています。
これを見ると、「フェイス」の改善が一番優先的な直しというのがわかるでしょう。
なんせ65枚も悪い写真が上がっているからです。
ゾーニングの直しは34枚で、リレーション(売場のつながり)を直す箇所が16箇所というのもわかります。
実はこれはスタッフ研修用につくったもので、研修前にスタッフに渡して「これらのフレームワークを今日覚えれば、店舗の悪い個所はすべて直すことができます」ということを表しています。
店舗診断シートが研修のゴールをも示しているのです。
こんなわけでわが社も、店舗診断シートにしろ、ガイドらラインにしろ、マニュアルにしろ、わかりやすい表現を心がけて、日々更新しています。
4.わかりやすい表現 5つのポイント
今までのことを整理してみましょう。
分かりやすい表現とは、下記のポイントになります。
a.グラフで比較する
棒グラフや円グラフだけでなく、グラフを絵になぞらえた表現にする。
たとえば、イワシの漁獲高グラフの棒をイワシの絵にする。
b.ディスプレイに造形する
家庭の食量を買い物カゴのディスプレイで表現したように、グラフを立体的なものに展示造作して、分かりやすく表現する。
d.写真比較する
同じアングル、同じトリミングの写真を左右・前後にリピートさせることにより、比較がわかりやすいように表現する。
VMDセミナーのリバイス事例もBefore Afterで比較させると効果的。
e.色分けをする
当社の店舗診断シートのように表や文字を色分けして、パッと見、わかりやすいようにする。
当社の場合は陳列はオレンジ、展示はブルーなどと明確に色を決めている。
d.まんがや動画にする
つまりストーリー仕立てにする。これに関しては下記を参照のこと。
●マンガで見るVMDの手法
VMD担当のみなさーん、ディスプレイもPOPも、報告書も店舗診断シートも、見る人がわかりやすいように制作してくださいね。
大阪万博の展示会なみにわかりやすいデザインを心がけましょう。
そうすれば、部下や上司、店舗スタッフに伝わりやすくなり、プレゼンやセミナーでも相手がすぐに理解してくれます。
ちなみに、
当社はわかりやすい公開VMDセミナーを、オンラインは毎月、リアルは3か月に1回、開催していますので、ぜひお越しください。(^^)
(VMDコンサルタント 深沢泰秀)