大阪万博で見る、わかりやすい表現とは

大阪万博 パビリオン

0.大阪万博に行ってきた

子供の頃、大阪万博に行ったとき三菱未来館に感動したのを覚えていて、今回も
張り切っていきました。
月日が経っても「映像中心の万博」は変わっていなかったです。
残念だったのは昔は奇抜な装いのパビリオンが多かったけど、今回はそんなでもないこと。
ただ大屋根リングは圧巻で、太陽の塔に匹敵するくらいの崇高な建築物でした。

また、待ち時間がほとんどないことはよかったです。
1970年の暑い夏日の下、1時間以上三菱未来館に入るのを待っていたのを覚えていたからです。
帰りの地下鉄も空いていてゆっくり座れました。

1.アースマーケットのわかりやすい展示

さて、観光とは言ってどうしてもVMD目線で見てしまう各国のパビリオン内展示。
今日は、わかりやすい表現とは何かについて振り返ることができました。

表現とはディスプレイや映像、パネルグラフィックスなど全般的なデザインを指します。
普段、私たちは商品やサービス、ブランドというものをデサインを介してなるべくわかりやすく消費者に伝えています。
今回はその参考になればと思います。

A.世界の人々はどのくらい卵を食べているか

下の写真はシグネチャーパビリオン「アースマーケット」の内部。
未来の食を考える視覚型・体験型のパビリオンで、世界の食事情が理解できます。
まずは卵のシャンデリアを見てみましょう。

アースマーケット- 卵のシャンデリア1

卵のシャンデリア、とてもおもしろいです。
上から吊るされた卵が下の目玉焼きにじょうごのように降り注いでいます。
じょうごの落ちる先に目をやると、巨大な目玉焼きに着きつきます。
この目玉焼き、日本人1人が一生食べる卵の量で、なんと24,000個だそうです!!
そこのフライパンには、各国の1年間の卵の消費量がディスプレイされていました。
シャンデリアは24,000個の卵からできていると想像がつくでしょう。

アースマーケット 卵の消費量

上のフライパンを見て感じるのは、日本って中国の次に卵食べているんですね。
アメリカの人口は日本の2.7倍なのに、日本人の方が米国人より卵食べているんですね。

AIで調べると、日本はすきやきや卵がけご飯など生卵を食べたり、弁当文化がある国民からだとか。
納得です。

B.世界の家庭の食量

アースマーケツト 世界の世帯食品消費量

上は、世界の世帯食品消費量を表したパネル写真群。
標準的な1世帯の1週間の食料をディスプレイしています。

アースマーケット 中国

これは中国のある世帯。

アースマーケット イギリス

これはイギリスのある世帯。

アースマーケット-チャド

これはチャド。

す・すくな!!
少なすぎるのが一目瞭然です。

AIで調べると、チャドは日本の3.4倍の国土面積ですが、最貧国のひとつになっていました。
紛争・難民・気候変動・教育不足などが影響しているようです。

中国はヘルシーな気がしました。
野菜がたくさん見えるからです。
イギリスは、もうスーパーマーケットと密接に関わっているという感じ。
中国と比べて野菜が少なく、加工食品多いですね。

アースマーケット カゴ

これは、1人の日本人が食べる10年分の食量
ねぶた仕様のスーパーのカゴで表現しています。

これは各国の1人が食べる10年分食量のカゴ比較。
中国人は、日本人二人分は食べているのがわかります。
だから太った人多いんですかね。
コンパニオンさんが「中国人は食べ残しが多いから」と言っていました。
もったいないです。

エチオピアは日本人の半分の量。
AIで調べてみると下記でした。やはり栄養が不足しています。

●一人当たり年間食品消費量(カロリー)
・日本 約 2,700~3,000 kcal
・エチオピア 約 1,300~1,500 kcal

理由は、経済水準、農業中心、食文化、インフラ流通など。

食文化の中に「テフ」という穀物があり日本のコメと同じく主食だそうです。
●世界の発酵食探訪

知らなかったです。
勉強になりました!

アースマーケット レシート

これは一週間分の世帯の食料の品目別サイズ。
スーパーのレシートさながらに各国を比較展示しています。
手前はスーダン。
紛争国の一つなんですが、ファバ豆をよく食べているみたいです。
AIで調べたらギリシャ料理で有名らしいです。

左から4つ目はメキシコ。レシート短いです。
やっぱハラペーニュ、つまり唐辛子入っていました。

このように、料理の原材料に何を使っているのか、各国の買い物詳細がわかりました。

C.食卓のイワシの希少性

アースマーケット ぐるぐるイワシ

上写真はイワシの大群のディスプレイ。

キラキラしていて素敵なディスプレイですね。
天井にたくさん渦を巻いて吊るしてあります。
イワシは日本人の食卓の人気者。

アースマーケツト イワシ2

上の写真を見てください。
そのイワシが生まれてから、食卓に上がるまでの一生を展示しています。

まず、1匹のイワシが10万個の卵を産みます。ここからスタート。
卵から稚魚が孵り、成長魚になり、人間に捕まえられて流通に載り、スーパーに陳列され、家庭の食卓に上がるまでの数量の変遷が展示されています。

結論から言うと、10万個の卵のうち3匹しか食卓に上がらないです。
こ・これはスゴイ!!たったの3匹です。
下の写真でイワシの数を比較してください。

これはわかりやすい!!
なんでこんなにイワシが死ぬのか、コンパニオンが説明してくれました。

・孵化率で10万が5万に
10万個のうち半分は孵らない。そのまま死ぬか、孵化直後に他の魚に食べられる。
・稚魚の生存率5万が千匹に
魚の他にクジラや鳥に食べられる。病気や栄養不良になるのもいる。
・成魚へ成長するのは1000匹のうち10匹
・漁獲・加工後の収穫で10匹が5匹に

この時点で稚魚5万のうち5匹しか捕れない。
港でアジ釣りをしているおじさんは貴重なのか?。
・5匹のうち食卓へは3匹

つまりイワシの卵が産み落とされてから0.003%しか食卓に載らないということになります!!!

もうこれを見たお子さんは、「魚きらーい」と言ってられないですね。
食卓にイワシがいても食べない場合は、貴重な0.003%を捨てるということになります。
これは、日本人でなくても「もったいない」精神が再び体内に沸き起こりますね。

アースマーケット イワシ4

このディスプレイはグッドアイデア。
イワシのシルエットにもうぜんと襲い掛かる海鳥の姿が光で表現。

アースマーケット イワシ5

ディスプレイ素材としての工夫は、反射板をくりぬいてつくってありました。
室内クーラーの風にゆらゆら揺れています。
グッドアイデアですね。

2.お店のディスプレイもわかりやすくしよう

ヨドバシカメラのシュレッダー売場

さあー、それでは実際の売場のディスプレイを見てみましょう。
上はヨドバシカメラのシュレッダー売場。
裁断くずが宙に浮いています。
実際に紙を展示品で裁断したものを袋に入れて見せています。

これ、わかりやすいです。
ただ、万博ディスプレイのように細かく数値化するとなおいいでしょう。
各製品ごとのくずボックス容量と同じサイズのビニル袋を吊るすとよかったです。

これはノジマのPOP。
下のティファールのクッカーで実際に作った料理を写真で見せています。
ノジマのスタッフが作りました、とのことなので説得力はあると思います。
材料用意してクッカーに入れれば、こんな料理ができるということです。
わかりやすい!!

万博ディスプレイのように、細かく数値化するとなおいいでしょう。
作ったノジマスタッフの料理歴を提示するとなおよいでしょう。
料理初心者でもできるんだー、というのがわかります。

3.わかりやすい店舗診断シートとは

わかりやすさとは、ディスプレイやPOPだけの問題ではありません。
普段私たちが読む新聞や雑誌、社内企画書、プレゼン資料は、数字をいかにわかりやすく伝えるかにあります。
イラストや写真、グラフやチャートなどを駆使して分かりやすく伝えましょう。

日韓正常化のチャート

上は日韓国交正常化60年における国民の意識調査。
朝日新聞がつくったグラフです。
各国のアンケートの数字が拮抗しているのがわかります。
「心の距離」、確かに近づいてますね。タイトルにあるように。

店舗診断報告書1

当社も「わかりやすい店舗診断書」とは何かを追及してきました。
上の写真を見てください。
最初はこんな感じでした。テキストのみ。
日報みたいな書き方で、店のどこがどう悪いのかじっくり読まなければ分かりませんでした。

次に改良したのはこれ。
店舗の写真を撮って悪いところが映っている写真をピックアップし、それを表とグラフにまとめていました。

この場合、こちらが口頭で説明するとわかりやすいのですが、表がグラフとどうリンクしているのかわかりづらかったです。

店舗診断シート サンプル

そして改良版。
上のタイプになりました。

先ほどの店舗診断シートは色分けがされていないのと、表の大・中・小分類が見にくかったです。
表をフレームワーク用語でソートして色分けして、分類ごとにフォントの強弱をつけてわかりやすくしました。
人間ドックの健診診断表のようにしたので、「お店の健診表」と読んでいます。

表を左から右に読んでください。
一発でお店のどこがどう悪いかがわかります。

表の左を見れば、「このお店の半分はIPが悪いんだ」、
「残りの半分は「POP・サイン」「PP,VP」そして「ゾーニング」が悪いんだ・・・」
ということがすぐにわかります。

そして、今度は右に目を移すと、
「IPは「フェイシング」「くくり」が主に悪いんだ」
「POPは「POPの編集」つまり、POPの置き方が悪いんだ」
「PP,VPは、「テーマ設定」「ディスプレイ用品」「ディスプレイ構成」などが複合的に悪いんだ」

こんなことが表を見ると一目瞭然になります。

※店舗診断サービスはこちらを参考にしてください。
●店舗診断

簡易店舗診断シート

さらに最近は、上図のような「簡易店舗診断シート」をクライアントに配付しています。
4店舗の土産店売場写真2532枚のうち、悪い売場写真が281枚あり、それをフレームワーク別の写真枚数に置き換えています。

これを見ると、「フェイス」の改善が一番優先的な直しというのがわかるでしょう。
なんせ65枚も悪い写真が上がっているからです。
ゾーニングの直しは34枚で、リレーション(売場のつながり)を直す箇所が16箇所というのもわかります。

実はこれはスタッフ研修用につくったもので、研修前にスタッフに渡して「これらのフレームワークを今日覚えれば、店舗の悪い個所はすべて直すことができます」ということを表しています。
店舗診断シートが研修のゴールをも示しているのです。

こんなわけでわが社も、店舗診断シートにしろ、ガイドらラインにしろ、マニュアルにしろ、わかりやすい表現を心がけて、日々更新しています。

4.わかりやすい表現 5つのポイント

今までのことを整理してみましょう。
分かりやすい表現とは、下記のポイントになります。

a.グラフで比較する
棒グラフや円グラフだけでなく、グラフを絵になぞらえた表現にする。
たとえば、イワシの漁獲高グラフの棒をイワシの絵にする。

b.ディスプレイに造形する
家庭の食量を買い物カゴのディスプレイで表現したように、グラフを立体的なものに展示造作して、分かりやすく表現する。

d.写真比較する
同じアングル、同じトリミングの写真を左右・前後にリピートさせることにより、比較がわかりやすいように表現する。
VMDセミナーのリバイス事例もBefore Afterで比較させると効果的。

e.色分けをする
当社の店舗診断シートのように表や文字を色分けして、パッと見、わかりやすいようにする。
当社の場合は陳列はオレンジ、展示はブルーなどと明確に色を決めている。

d.まんがや動画にする
つまりストーリー仕立てにする。これに関しては下記を参照のこと。
●マンガで見るVMDの手法

VMD担当のみなさーん、ディスプレイもPOPも、報告書も店舗診断シートも、見る人がわかりやすいように制作してくださいね。
大阪万博の展示会なみにわかりやすいデザインを心がけましょう。

そうすれば、部下や上司、店舗スタッフに伝わりやすくなり、プレゼンやセミナーでも相手がすぐに理解してくれます。

ちなみに、
当社はわかりやすい公開VMDセミナーを、オンラインは毎月、リアルは3か月に1回、開催していますので、ぜひお越しください。(^^)

●わかりやすいVMDセミナー

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

ディスプレイすれば生活は潤いになる

今年もあとわずかになりました。
皆さん、今年はどんな年でしたか。

パリオリンピックや大谷選手の活躍があったとはいえ、世の中は混乱を極めています。
私が驚いたのは、SNSによる影響大の選挙でした。

クリスマスの朝、コーヒーを飲んでいるときにふと思いました。

「クリスマスの朝なのになんかパッとしないな・・・」

テーブルの上はこんな感じでした。

ティッシュとリモコンが中央に鎮座している、物足りない食卓。
日差しは気持ちいいのに、よどんでいました。

もっと華やかにしたいなと思い、100円ショップで買ったプロップスでテーブルを3分で飾りました。
ほとんどテキトーです。

でも経った3分で下記のような食卓になりました。

赤いランチョンマットを黒い物の上に載せて、中央にダイソーのポインセチアをセット。
それでも、物足りないのでにせものの果物と棚からワイングラスを出して飾りました。

これがBefore After。

これだけで、クリスマスの朝らしくなりました。
とても気持ちいいです。

私たちはふだんVMDという仕事をしていて、いろんなブランドの店や売場を「快場」に変えています。
快場とは、ショッピンクが快い売場という意味です。

●快場とは

思えば、自分の空間、つまり家も快場にしないといけないですね。
積水ハウスではないけれど、「家に帰れば~快場~」。

ほっとする空間、らしい空間、家族が集える空間、創造的な空間。
あなたらしい快場がちょっとディスプレイを変えるだけで出現するんです。

黒と白のコースター・ランチョンを使えば、あなたの好きなパンダになるし。

青いつぶつぶ置けば、ツリーになるし。

大掃除でいらなくなったコードを使ってもいいです。

ゴミになるはずのネスレの箱を使って花時計をつくってもいいです。

私の書斎の書棚は、怪獣が大暴れしています。(^^)

書斎に入ると楽しくなります。

ということで、世の中いいことも悪いことも来年も起こると思います。
憂鬱な日もあるかもしれませんが、生活のうるおいは保ちましょう。
それが心の余裕を与えてくれます。

ほんの小さなディスプレイ、生活の中につくってみませんか。
お仕事忙しいみなさーん、来年もこれからもぜひ心の余裕を持ってくださいね。

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

演出POPでアートな売場をつくろう

このブログは、VMDインストラクター協会ブログ「月刊VMD 売場づくりの知恵広場」の続きです。
先達、「演出POPでブランド空間を演出する」を掲載しました。

●演出POPでブランド空間を演出する

演出POP、実際に私の家のリモートルームで掲示してみたので、それを参考にしてください。(^^)
でははじまり、はじまり~。

1.リニアスキームを活用して演出POPを掲示する

ブランドショップやセレクトショップのような店は、インテリアディスプレイとしてポスターを掲示しています。
風景ポスターや絵画を、自店を家と見立てて、文字通りセンスよく額として壁に掲示します。
住宅展示場やモデルハウスで見るように、アート的にPOPを掲示します。

それには、リニアスキームのハウツーを使うとよいです。
リニアスキームとは、構造線を策定することです。
構造線を策定して演出POPを貼れば、たちまち壁面は美術館の壁に早変わりします。
以下にリニアスキームを使ったフレームの掲示方法を指南します。

※リニアスキームとは

2.横のグリッドを揃えて等間隔に掲示

上の図は、横のグリッドラインありなしを示しています。
もうわかりますよね。
上図の〇の方が気持ちいいですよね。

人は「陳序」が感じられる方が好きなんです。
誰でも×のように秩序のない部屋やお店嫌ですよね。

今度はフレームサイズの違うものの掲示の仕方です。
上を見てください。構造線を2通り策定しました。
フレームの底辺で揃えたものと、上下中央で揃えたものです。
各々のフレームは、サイズが違っていても等間隔にしてください。

実例です。
これはアラモアナのバーバリー。
演出POP、底辺のクリッドで揃っているのがわかります。

3.十字にグリッドを揃える方法

今度は少しアート的にフレーム配置をしてみましょう。
上の図を見てください。
十字の構造線になっています。

実際に線を入れてみましょう。上図がそうです。
十字に沿って額が掲示されいるのがわかります。

事例を見てみます。
上はグランフロント大阪の専門店。
こちらはシンメトリーで十字架の構造線になっています。

4.枠でグリッドを揃える方法

今度は枠のリスアスキーム。(上図)
左は四角く囲ったもの、右は楕円に囲ったものです。

構造線を入れると上図になります。

コツは枠の内側を意識してフレームをまとめるとよいです。
実際の店舗のフレームを見てみましょう。

上はイオン幕張新都心。
待ち合わせスペースの額です。
奥のフレームが円、手前が半円になっているのがわかります。

5.家の壁掛けに応用しよう

自分のリモートルームで実際に演出POPを掲示してみました。
テーマをハワイとし、私がハワイで撮り溜めした写真をレイアウトしてみました。
上がドア横のスペースです。
十字のグリッドラインにしています。

ハワイぽさを出すためにモンステラとアレカヤシをディスプレイしました。

こちらはデスクの上部分の壁。
こちらも十字のリニアスキームを使いました。

おかげさまで、クライアントとリモート会議するときにハワイ気分でゆったりと臨めます。
BGMにTスクエアの「楽園」をかけています。(^^)
仕事にストレス感じないっていいですね。

今回はアート的な演出POPの掲示方法でした。
ブランドVMD担当の皆さん、演出POPでぜひお店を美術館のようにしてくださいね。

なお、演出POPを含めたPOP6種類の使い方は、キンドル本「商空間ディスプレイ教本」を読むと詳しくわかります。
第7章に載っています。

●キンドルVMD本「商空間ディスプレイ教本」

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

サブテーマでディスプレイをわかりやすくする

1.サブテーマってなに?

今回はサブテーマの設定の仕方をお話しします。
VMDでよく出る用語として、下記があります。

  • テーマ
  • コンセプト
  • トーンアンドマナー
  • テイスト
  • ルック

これらはみんな混同しがちなので、まずは十分用語を理解してください。
用語忘れた方は、下記のサイトで復習しましょう~。

●コンセプト、テイスト、トーン&マナー

●テーマ

●ルック

さて、本題「サブテーマ」に戻ります。

サブテーマとは何かというと、テーマのサブのこと。
副題、補助テーマ、第2テーマ・第3テーマ・・・のことです。

テーマがあってサブテーマがあるってどういうこと?
と疑問に思うかもしれませんが、これディスプレイや小分類位の売場の商品決めに役に立つんです。

テーマって何のためにあるのか?考えてください。
ズバリ、商品を絞り込むためにあるんです。

上図を見てください。
これをサブテーマのファネルと言います。
ファネルとはじょうごのこと。何かをろ過するために使いますよね。
このじょうごで、テーマをろ過するんです

インテリアショップVMD担当のあなたが、ディスプレイをつくるとします。
テーマは「リビングの小物」です。
「できた~」と言って、あなたはこんな感じのディスプレイをつくります。

三角構成になっているし、バランスもいい。満足~。

でも待てよ。
これ、色も形もバラバラだからもう少し整理するしようかな。
そう思ってサブテーマを先ほどの図の様に設定しました。

  • サブテーマは「青」
  • サブサブテーマは「丸い部分があるもの」
  • サブサブサブテーマは「フチのあるもの」

そうして、サブテーマのファネルを通して商品を集め、下記のディスプレイをつくりました。

どうですか?
改めてサブテーマありなしを比べてみましょう。

明らかに右の方がまとまっていますよね。
サブテーマで、色や形、デザインを絞り込んだから、まとまってきたんです。

2.サブテーマがないディスプレイとは

上の写真は空港で見たディスプレイです。
テーマは、「ハワイ州推薦のお土産」。
上の方にポスターがあり、「このマークはハワイ州推薦のおみやげ品」とあります。

しかし英語が読めない日本人は、これなんだろう?としか思いません。
缶詰やら瓶やら袋やらが、たくさん集積されているからです。

※この写真は「顧客目線でパラダイムシフトしよう」でも紹介されています。

かろうじて、テーマは「ハワイのお土産」と分かっても、それ以上はわかりません。
かろうじてわかるのは、右側のバナナポテトチップス。
それ以外は、じっくりみないと、はちみつなのか珈琲なのかわかりにくいです。

そこで、ホノルル空港VMD担当であるあなたはサブテーマを設定します。

  • サブテーマ ・・・旅行者に人気の商品トップ20以内の商品
  • サブサブテーマ ・・・コミック本サイズ以上の大きなパッケージのお土産品
  • サブサブサブテーマ ・・・中身がきちんとわかるパッケージのお土産品

と絞り込み、さらに下記の様にフェイシングのレギュレーションを決めます

  • フェイスは3個以上並べる
  • 皿やカップに盛り付けられる中身は、盛り付け例も入れる
  • コントラスト配色になるように展示する

●コントラスト配色とは
※上記ページの中の項目「カラー商品展開」をご覧ください。

こうすると、写真の展示はかなりわかりやすくなると思います。
誰もが「ハワイのお土産だ~」と思うに違いありません。

3.サブテーマ設定事例

さて、実戦編です。上記写真を見てください。
あるお店のガラスケース内。

・MDテーマは「ガラス食器」

確かに~。
しかしこれで満足してはいけません。

VMDインストラクターにサブテーマをつけてリバイスしてもらいました。
下の写真を見てください。

  • MDテーマは「ガラス食器」
  • サブテーマは、上棚が飲み物用、下棚がおかず用

どうですか。
Beforeは、飲み物も小鉢も皿も一緒くたになっていましたが、サブテーマですっきりとしたディスプレイになりましたね。
フェイシングのレギュレーションは下記にしたので、さらにバランスがよいディスプレイになっています。

・ツインシンメトリーに置く

今度は、売場塾のワークショップ生徒作品例を見てみましょう。
テーブルディスプレイです。

  • テーマ「会社のビルで屋上バーベQ」
  • サブテーマ「アーバンマリン」
  • サブサブテーマ「ボーダーときれいめボトムス」
  • サブサブサブテーマ「コントラスト・コーデ」

テーマ、面白いですね。
サブテーマで色や柄もまとまっています。

ディスプレイのレギュレーションは下記です。

  • IPとPP
  • シンメトリー
  • コーディネート

こんな感じで、アパレルディスプレイにとても役立つサブテーマです。

4.家のディスプレイにも使えるサブテーマ

最後におまけです。
きのう、書斎の壁面にフレームを入れました。
写真はすべて私の撮ったもので、キヤノンのカメラで撮りました。

上の壁面フレームは下記がテーマ。

  • テーマ「ハワイ」
  • サブテーマ「ホテルライフ」

下の壁面フレームは下記がテーマ。

  • テーマ「ハワイ」
  • サブテーマ「自然」

どうですか。
壁に貼るフレームでも、テーマとサブテーマを設定すればまとまるのがわかったと思います。
お店でも家でもどこにつくっても、サブテーマはツカエルディスプレイテクなんです。

VMDインストラクターのみなさん~、
売場づくりやディスプレイ制作にぜひサブテーマ活用してくださいね。
サブテーマで商品を絞り込んで、見る人に何のテーマかわかりやすくしましょう。

ディスプレイテーマ設定に関しては、オンラインセミナー「センスアップセミナー」で詳しく教えています。
●センスアップセミナー「商品展示」

興味ある方は、ぜひご参加ください。(^^)

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

VP,PPは必ずしも必要ではない

1.VP,PPが必要でない店

以前、PPには明確な定義が必要と書きました。
●ディスプレイの定義をつくろう

しかし、それ以前にVP,PPが必ずしも必要ではない業態は多いです。
例えば下記です。

  • コンビニ
  • ドラッグストア
  • ホームセンター
  • カー用品店
  • 家電量販店
  • ディスカウント店

これらは、店舗オペレーションが合理的・かつ低コストで運営できるように制約されている点と、生活必需品を販売しているところが特徴です。
VP,PPはそれなりにスキルのある人材が必要で、専用スペースも取ります。
そのため、人やスペースにコストを掛けられないコンビニは不向きです。
アパレルでも、ユニクロや無印良品でさえも、エキナカの小スペースで運営されている場合はVPまたはPPがないケースがあります。
その場合は、演出POP(いわゆるポスター)をPPの代替わりとして活用しているケースが多いです。

ただし、コンビニでもナチュラルローソンのような、「美しく健康で快適なライフスタイルを身近でサポートするお店」を標榜している店は、FC本部がPPを推奨しています。
ローソンでは、びんを置いただけのワイン売場なのに、ナチュラルローソンになると、ブドウのつるやテーブルクロスを利用したワイン食卓のPPをエンドに設けていたりします。

ドラッグストアでも、マツモトキヨシはIPのみですが、「女性が 1 時間楽しめるお店「Enjoy 1 hour with us」」を掲げるアインズアンドドルペのようなセレクトショップは、PPぽいディスプレイが多く見受けられます。

生活用品のお店でも、ライフスタイルショップ寄りの店は、店内演出としてPPが重宝されるのです。

2.VP,PP,IPというものはあいまいな用語

実を言うと、PP,IPは和製用語です。
海外のVMD関係者には無縁の用語といえます。
海外では、日本でいうVP,PP,IPをひっくるめてVPと言っています。
このVP、下記の意味で使っているのです。

●フロアやゾーン、MDグループのフォーカルポイント(注目点)になっているディスプレイのこと

日本では、VPとPPは商品の見本展示、IPは陳列と定義されています。
簡単に言うと、VPとPPはそのままレジに持って行くことはできない、
IPはレジに持って行ける商品、と考えてよいでしょう。

しかしながら、フロアのフォーカルポイントとなっているものは、展示・陳列が混合したカタマリとしてのディスプレイになっていることが多いです。
明確に、これはPPでこれはIPと区別できないケースが多いのです。

例えば、写真はホノルルクッキーカンパニーのクリスマスバージョンのフォーカルポイントです。
中央の赤くなっている売場がそうです。
テーブルと背後のラックがとても目立ちます。
テーブルのディスプレイは陳列状態ですが、ラックは展示ぽくなっています。
でも、テーブルもラックも、商品はそのまま掴んでレジに持って行けそうです。

確かにラックはPPぽいのですが、IPとも言えます。
これを、手前のテーブルはIPで後のラックはPP的なIPと言えば正論かもしれませんが、聴く人が混乱するだけです。
外国のように「赤い売場はVPだ」と片付けてしまうと効率がいいように思います。

3.VP,PP,IPで使いにくかったら、展示と陳列で区別する

私はドラッグストアの研修ではあえて、VP,PP,IPという用語を使わずに、展示・陳列の2語でディスプレイを使い分けるように教えています。
理由は二つあります。

1.店舗オペレーションの問題でわざわざVP,PPをつくるのが困難な店だから。
棚の空いたところに展示をつくる事が多い。

2.先ほどのホノルルクッキー売場のように、PPとIPの区別がしにくい。

このドラッグストアは、女性に好まれるオシャレな店舗にしたい、特定の商品を展示でクローズアップしたい、との希望があるので、陳列の少し空いたスペースに展示を入れる方法を教えています。
ほとんどの展示物がPOP付きで、化粧品の効果・効能を謳っています。

例えば、雪肌精やトワニーなど、店側にとってただパッケージを並べて売りたくない、商品の魅力を訴えたい。
そんな場合は棚に商品展示をPOP付で設置するようにしています。

デパ地下のガラスケースでスイーツを販売しているお菓子店はどうでしょう。
Gケース内に置いている商品はIPでしょうか、PPでしょうか。
これも判断むずかしいですよね。

ショートケーキのような生菓子はIPと言えます。
客が掴むことは出来ないけれど、店舗スタッフが掴んで客に差し出してくれます。
イチゴ、メロン、モンブラン・・・などといろいろなショートケーキから自分の好みを選択・購入できます。
だからIPと言えます。

ところが、焼き菓子が入っている箱入りアソートギフトのGケースは、見本展示です。
値段別に並んでいて、客は選択購入できるけれど、Gケースの中の展示品を包むわけではなく、背後のストック棚の商品を包みます。
すると、Gケース内商品群はIPでなくPPなのでしょうか。
たちまち、頭がこんがらがってしまいます。

このように、デパ地下のスイーツ店でVP,PP,IPを特定することは困難です。
しかし、あえてVP,PP,IPを使っても悪くはありません。
きちんと定義すればよいのです。

私の場合、ある店では、Gケースの中の生菓子および見本展示商品はすべてIP、お菓子の盛り付け例はPPと定義しています。
そしてカウンター背後の壁面ディスプレイをVPと定義しています。

このようにIP,PP,VPは業種・業態・取り扱い商品によって見方は違ってきます。
IP,PP,VPは実にあいまいなものなので、用語を使う場合は、VMDインストラクターがしっかり定義することをお勧めします。
展示と陳列、という2語で処理しても、もちろんよいです。

4.VMD用語は記号論で処理する

記号論という理論があります。
言葉は記号である、という考え方です。

日本では、蝶と蛾の区別はあるけれど、フランスにはありません。
フランスは蝶も蛾もpapillon(パピヨン)と言います。
日本では「うさぎ」というけれど、イギリスでは「ラビット」と「ヘアー」の2種類に区別されています。

参考)外国のVMD担当にVP,PPと言っても通じない

このように、用語は使い方次第でどうにでも変わります。
あなたのブランドや店で、スタッフが理解しやすいように定義するとよいでしょう。

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

土産店・キャラクターショップの売場づくりのコツ

映画館のお土産コーナー

先週から、外国人の入国規制緩和、そしてGoToの全国旅行支援と観光地も盛り上がってきました。
ディズニーランド、ユニバーサルスタジオもいいが、個人的にはゴジラが好きなので、西武ゆうえんちにぜひ行ってみたいです。

ということで、今日はテーマパークや観光地の土産店やキャラクターショップのVMDについて話します。
当社の経営するVMDの学校「売場塾」にもたくさんのキャラクターショップのVMD担当が学びに来ています。
日本はキャラクターの聖地なので、キャラクターグッズのメーカー・卸・小売店の方はVMDが大事。
世界中から集まるが外国の方を売場に引き付け、買わせるVMDを学びましょう。

では、さっそくキャラクターグッズのVMDフレームワーク行ってみましょう。
売場の改善点の主なものは、ざっと下記になります。

  • フェイシング
  • オーケストレーション
  • ディスプレイ構成
  • テーマ設定
  • PP,IPの設置方法
  • くくり
  • VMD分類
  • 什器デザイン
  • 什器レイアウト

この中から外せないものをいくつか選んでお話ししましょう。

1. フェイシング

この前、映画館に行ったとき、キャラクターグッズコーナーを覗きました。
シンウルトラマン、面白かったです。(シンウルトラセブンもぜひ作ってほしいです)
まずは上の写真のガボラとネロンガを見てみましょう。
ガボラは一番左。ネロンガは右。

これ、袋に入っている上に怪獣が寝ています。
これだと、怪獣の顔がよく見えません。
ぬいぐるみを起こして顔が見えるようにした方がいいでしょう。

左から三番目のネロンガのフィギュアは立っていますが、タグで肝心の顔が隠れています
これだとただのトカゲにしか見えないですね。。。

これは別の映画館。
ジュラシックパークを見に行った時の売場ですが、やっぱり左上のぬいぐるみはほとんどわからなかったです。
ステゴザウルスはなんとなくわかるかな。。。
最初、これポケモンの怪獣だと思いましたよ。

商品の顔をきちっと見せることをフェイシングといいます。
キャラクターの顔は見えるように置くようにします。
ガボラの場合はサヤに顔が入っているのと、入っていないのと2種類フェイシングするとよいでしょう。
後はやっぱりビニルが反射して中身がよく見えないので、袋から出して展示見本(PP)をつくるといいでしょう。

これはハワイの土産店で見たぬいぐるみ売場。
やっぱりぬいぐるみは顔がきちっと見え、体のシルエットも分かりやすい方がよいですね。

2. VMD分類とくくり

キャラクターグッズは棚に載せればいいと思ってはいけません。
展開が大事です。展開とはVMD分類のことです。

例えば、あなたがウルトラセブンの売場をつくったとします。
ウルトラセブン、味方の怪獣、怪獣、宇宙人、武器、戦闘機などに分類したほうがいいかもしれません。
バービーは、バービーのフィギュア、着せ替え用の服、服飾雑貨、家族、友達、家の中、街の中、旅行などに分類した方がいいかもしれません。

そのように分類したら、その分類がわかるように陳列をくくるんです。
くくりがわかると分類がわかり、お客様が選択しやすく、買いやすくなります。

これはハワイの土産売場。1スパン、ドナルド・トランプグッズです。
見るからにくくり、わかりやすいですよね。
くくりの線を入れてみます。

5つのグッズに分類されているのがわかります。
一番上のペンは2棚、他は1棚ずつ横にくくられているので、とてもわかりやすいです。

来月、中間選挙ですね。中間選挙でトランプが勝つとこれ売上倍増するかもしれません。
パーーンチ!! (^^)

3. 什器デザイン・什器レイアウト

商品がどどーっと入荷したりすると、あわてて什器を売場に足すお店があると思います。
その時に、会議机にただ布を掛けて什器代わりにしていないでしょうか。

キャラクターって世界観があるので、什器やディスプレイ用品のデザインは大事です。
さっきのネロンガの売場も会議机の上でした。
やっぱりそれだと、商店街のガラガラの景品置き場にしか見えないかな・・・。

私のハワイの好きな店のひとつにココ・コーヴというのがあります。
ここのキャラクターグッズ売場見てみましょう。
パイナップルキャラ、いいですね。
マルシェ風に什器を配置して、ライザー(木箱のこと)に商品を投げ込み陳列しています。
雰囲気いいですよね。ハワイの風が吹いている感じ。
什器やライザーがウッディでナチュラル。
白い木の箱も釘が見えていてクラフトぽいです。

什器レイアウトも、ただ壁際に置いただけではなく、アイランド(島)形式でぐるっと回って買い物できるようにレイアウトされています。
これだと、ハワイに来た~って感じで来店客が注目してくれそうです。

4. オーケストレーション

オーケストレーションは壁面の集合ディスプレイのことで、これはハワイのディズニーストアの店内。
壁面いっぱいに商品を陳列・展示することで、キャラクターの世界観を醸し出せるんです。
こんな感じで、遠くからも壁面のディスプレイが見えるので、お客様は壁面に寄ってきてくれます。
壁面が白いままだと、遠くから見て白い壁が目立ち、下記の点で魅力が半減します。

  • 展示ディスプレイが見えない。
  • 壁の白が目立つ。
  • キャラクターの世界観が醸し出せない。
  • 何の売場かわからない。
  • 壁面自体がデザインにならない。

例えば、セブンイレブンを見てください。店奥の壁が白いですよね。
コンビニはオーケストレーションやらなくていいんです。
目的買いの人が多く、さっと入ってさっと出るお店だからです。

でも、お客様に楽しく店内回遊してキャラグッズを探させたいお店は、壁が白いままだとダメなんです。
オーケストレーションで壁面いっぱいにディスプレイしないと。
特に、下記の店は壁面いっぱいにオーケストレーションするといいでしょう。

  • アパレルショップ
  • バラエティショップ
  • 玩具店
  • 雑貨店
  • スポーツショップ
  • ライフスタイルショップ

5. キャラクターの世界観とは

おまけとして、ゴジラのディスプレイ作ってみました。
どこかの売場でぜひこういうPP(展示のこと)作ってほしいです。
怪獣フィギュア売場、盛り上げてください~!!

と、いうことで、今回はキャラクターグッズのVMDを論じました。
お話しできなかったフレームワークは他のブログ見るとわかります。

ディスプレイ構成

テーマ設定

だいたいわかりましたでしょうか、お土産売場の改善の仕方。
キャラクターグッズ売場、玩具店VMDを担当している方は、ぜひ当社セミナーでディスプレイのセンスをアップしてください。

●VMDセンスアップセミナーは毎月開催

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

売場づくりにツカエル!「閉合」の法則

「閉合」という言葉をご存じでしょうか。
群化の法則7のうちの一つの法則です。
●群化の7つの法則

閉合とは、上図のように何かを閉じるということです。
インターネットで検索すると、グラフィックの事例が多く出てきます。
ホームページのボタンをデザインするときや、文章をまとめる際に役に立つ法則です。

しかし、この閉合、売場づくりにツカエルこと多大です。
下記の様に使うことができます。

  1. 特設コーナーを作るときに使える
  2. ブランドのインショップを作るときに使える
  3. 待合スペースを作るときに使える
  4. 商品展示の整理に使える
  5. フォーカルポイントを作るときに使える

ひとつひとつお話ししていきます。

1.特設コーナーを作るときに使える

母の日コーナーやバレンタインコーナーを小売店が作るとします。
しかし、ただ単純にお菓子の什器の上に「バレンタインコーナー」とPOPを掲げるだけでは、閉じたコーナーになりません。
什器をコーナーにしなければいけないのです。
まずはL字型の什器配置にしましょう。
いわゆる入隅(いりすみ)という什器配置です。
そうすることによって、2方向からお客様が来るので、角でぶつかり客だまりができやすくなります。

上図のようにコーナーは閉じています。
これが本当のコーナー(かど)です。
さらに、コーナーの前にテーブルを置きます。
すると、コーナーはエアポケットのようにますます閉じてきます。

これに通り化を加えましょう。(上図)
奥に向かって浅草の境内通りのように、左右に什器が並んで閉じていますよね。

このように、什器配置を閉合することによって、特設コーナーを際立たせることができるんです。

2.ブランドのインショップを作るときに使える

ブランドの店内店は、ABCマートなどでよく見ると思います。
ナイキの売場、アディダスの売場はショップインショップになっています。

メーカーは、小売店のフロア内のショップインショップをつくるときに、デザインエレメンツで売場を閉じればよいのです。
サインやPOP等のデザインを統一し、それらで売場を囲えば閉合になります。

上図を見てください。

「ビタミンワッキー」のキャラクターラインを柱や什器にデザインします。

すると、柱周りの売場は「ビタミンワッキー」の店内店になりました。

3.待合スペースを作るときに使える

クリニックやコンタクトレンズの待合い、カーディーラーやヘアサロンの待合いスペースは、オープンよりもクローズした方が人目にはばかることなく、落ち着きます。

そこで、

  • 観葉植物で閉合する
  • 置物ラックで閉合する
  • ついたてで閉合する

などした方が、閉合された空間となり、他と区別ができます。

4.商品展示の整理に使える

商品陳列を棚で閉合すると、商品のVMD分類がわかりやすくなります。

下の写真を見るとわかります。
木のボックスで壁面売場をつくっています。
商品が区画整理されているので選びやすいです。

また、商品ディスプレイを閉合することによって、商品分類を明確にできます。
下の写真を見てください。

丸いランチョンマットでディスプレイが閉合されているので、とてもメリハリがついています。
特にテーブルの上の商品展示を整理するのにおススメです。

5.フォーカルポイントを作るときに使える

自動販売機で「ぜひこの商品に目を留めてほしい」という依頼があった場合、あなたはどうしますか。

下の写真のように閉合してしまえばよいです。
「ほっとあたたかーい」という帯POPで、温かいドリンクが閉合されています。
遠くから自販機を見たときに、このくくりがとても目立つフォーカルポイントになります。

フォーカルポイントとは、客の目をある一点に引き付けることを言います。
●フォーカルポイントとは

まとめ

閉合の使い方、だいたいわかりましたでしょうか。
群化の法則って便利ですね。

今後も追及していきたいと思っています。

なお、群化の法則セミナーは、年に2回センスアップセミナーで行っています。
タイミングありましたら、ぜひお越しください。
●センスアップセミナー 群化の法則

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

よいディスプレイ構図の見分け方

今回はディスプレイの構図についてお話しします。
まず写真から行きますね。
上の二つの写真について、どちらの構図が優れていると思いますか。
最初の写真をA、2枚目の写真をBとします。

答えは~、Aです。

なぜAの構図がいいのか、それは下記の要素が関係しています。

  • 等分割パターン
  • 構造線
  • リーディングライン
  • ストッパー

各要素を詳しく解説します。

等分割パターンとは

等分割パターンとは、写真や絵を等分割に区切って、その間に人物や静物、背景などのエレメンツを配置していく手法です。
等分割になっていると、人は安心します。
誰でもバームクーヘン切るとき、当分使に切りますよね?
それはバランスがよく安定しているからなんです。

同じように、ディスプレイや絵や写真も、構成要因が等分割になっていると、バランスは安定するので、見る人は気持ちよく鑑賞できるんです

例えば、このゴジラのディスプレイ、安定して見えるのは等分割になっているからなんです。
線を入れてみます。

下記を見てください。正確に言うと、縦6分割・横3分割になっているディスプレイでした。
テーマは「ゴジラ砲撃開始」。

さて、先ほどの写真に等分割線を入れてみます。
下の写真2枚を比べてください。どちらも縦4分割・横5分割です。

上の1枚目Aの写真を解説します。
カレンダーが縦2/3、そして上半分にほぼ収まっています。
手帳は中央の縦3枠、そして下半分に収まっています。
グラスはちょうど縦1/5に収まっていますね。つまりバランスがいいということです。

2枚目のBはどうでしょうか。
カレンダーは、縦4枠・横4/3の中に納まっています。手帳は全体が見えませんが、縦4枠・横1/4に収まっているのがわかります。
グラスはAと同じく縦1/5に収まっています。
つまりこちらもバランスがいいです。

A,Bとも等分割に関してはイーブンでした。

構造線とは

今度は構造線について解説します。構造線とは、ディスプレイのエレメンツ(構成物)に線を感じることです。
線がほどよく配分されていると、そのディスプレイはバランスよく安定して見えます。
構造線を配分することをリニアスキームといって、ディスプレイ構成のテクニックひとつです。

リニアスキーム、忘れた方はこちらをご覧ください。
●リニアスキームとは

さて、Aに構造線を書き込んでみました。線が赤いグラスに向かっていくのがわかりますか。
カレンダーの有色のラインが斜め下に落ちていくのがわかります。
手帳の上部分とカレンダーの裾の線もグラスに注がれています。
そしてペンもグラスに向かっていますよね。

この写真は構造線のバランス、とてもいいです。

今度はB。
構造線はAと同じようなラインを保っているのがわかります。
つまり、これも赤いグラスが帰結点になっています。

構造線に関しても二つともよくて、今度も引き分けです。

リーディングラインについて

今度はリーディングライン(視線をリードする線)で比較します。
こちらも忘れた方は下記をご覧ください。
リーディングライン

実はAの写真の中には、グラスよりも大きなフォーカルポイントがあります。
それは、カレンダーです。背景が暗いのに、カレンダーは日光を浴びて明るく、コントラストがついています。
しかも、2という数字が大きく目立ちます。
だから人の目は、最初にこの2の部分を含めたカレンダーに行くんです。

そして、リーディングラインが注がれていく赤いグラスに視線は移動します。
すると、今度はグラスの下からニョキッと突き出ているペンに気づきます。
人の視線は思わず、斜め左下に動きます。

さて、この後、視線はどこに行くのか?
手帳のふちが上に跳ね上がっていますよね。
だから、人の目も上に跳ね上がって行きます。

そしてどこに行くかというと、観葉植物の葉っぱに行くんです。
そしてその葉はカレンダーを向いています。
ここで人の目はディスプレイを一周したことになります。

お客様がこれだけディスプレイを見てくれたら、ディスプレイ制作者はうれしいですよね。

写真Aはとてもよいリーディングラインを持っています。
人の目を、時間をかけてディスプレイをなめるように誘導するからです。

今度はBを見てみましょう。
Aと同じように、カレンダー→グラス→ペン・・・と視線はリードされているんですが、ストッパーがないために写真の外に視線は逃げてしまいます

つまり、ディスプレイを見る時間がAよりも短くなってしまうんです。
観葉植物も陰になっていて目立たないですよね。

つまり、リーディングラインに関して言うと、BよりもAの方が優れていたんです。
結果、Aの方に軍配が上がるのでした。

まとめ

今日は、構図についてお話ししました。
このような構図の配置は、ショーウインドウでディスプレイを制作する際に非常に役に立ちます。
構図をうまく作れば、お客様の視線を長い間くぎ付けできるからです。

この続きは、「センスアップセミナー ディスプレイ構成4」で詳しく語ります。興味ある方は、ぜひお越しください。オンライン開催です。(^^)

●センスアップセミナー ディスプレイ構成4

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

テイストミックスが個性をつくる

ルックアンドテイストとは、着た時に他人が見た服の感じ方です。ルックは正統派のスタイル、テイストはルックの一部を取り入れた〇〇ぽいという感じをいいます。

例えば、サファリルックとは、下記です。

  • 色は茶色・カーキ・サンド
  • 柄はゼブラ、レパードなどアニマル柄
  • パッチポケット付きジャケット
  • キュロット(半ズボン)
  • ハンチングシューズ

サファリテイストは、サファリぽいという感じですので、着ている服の中に上記の要素がいくつか入っている状態を指します。

あなたが服を買う時、リビングルームの家具を選ぶとき、ポスターのデザインをするとき、意識するしないに関わらず、何らかのテイストを持っていることでしょう。

テイストとは感じ方をいいます。

それは別に

  • ストリート
  • マリン
  • カントリー
  • ガーリー

みたいなファッション用語のような感じ方でなくても、

  • ホテルぽい
  • 野性味のある
  • 鉄のように冷たい
  • 人工的な

みたいに、感覚的な感じ方でもいいです。

私たちVMDインストラクターは、こうしたルック言葉やテイスト言葉を企画書やディスプレイ指示書、あるいは店舗改装パースなどに使って、どんな広告にするのか、どんなコーディネートにするのか、どんな店にするのかプレゼンしています。

その方が、クライアントにデザイン意図が伝わりやすいからです。

売場づくりをする際にテイストを統一した方がいいということは以前に下記で述べました。
●わかりやすいアパレルショップとは

しかしながら、単一ルックや単一テイストだけだと個性がありません。

そこで、テイストミックスという手法を使って、出来上がりをより個性的にするとよいです。

例えば、マリン一つとっても、いろいろなマリンがつくれます。

  • ストリート・マリン
  • エレガント・マリン
  • スポーティ・マリン
  • トラッド・マリン など。

どういう風に作るかというと、各々のテイストパーツをミックスすればいいんです。
テイストパーツとは、テイストを構成する部品という意味です。

例えば、マリンとストリートのテイストパーツは下記です。

●マリンのテイストパーツ

  • 色はネイビーと白
  • 柄はボーダー
  • ピージャケット
  • デッキシューズ
  • パーカー
  • キャンバス地

ストリートのテイストパーツ

  • 色はカーキ、モスグリーン
  • デニム生地
  • カーゴパンツ
  • スタジャン
  • ジャージー

上記パーツをそれぞれミックスします。

●ストリート・マリン

  • 水色とモスグリーンのボーダーTシャツ
  • 白いカーゴパンツ
  • カーキのパーカー
  • ダンガリーシャツ

すると、見た目はストリート・マリンというミックススタイルになります。
要は各々のテイストのパーツを上手に足していけばいいんです。

例えばこれは、エレガントとナチュラルのミックス。
ピンクのエレガント柄の食器に、コルクや枝という自然素材を使っています。

これはエレガントとマリンです。
グラデのある和紙と青と白のシンプルなボーダーの組み合わせです。

これはクラシックとモダン。
柄はすべてクラシックですが、アクリルプレートがモダンになっています。

このように、色や柄、素材やカタチのそれぞれテイストが違うものを組み合わせれば、あなたオリジナルのデザインテイストになります。
テイストミックスをしていけば、きっとセンスアップすること間違いなし!!

さらに成長したい方はセンスアップセミナーにお越しください。~(^^)
●オンライン・センスアップセミナー

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

コロナ禍の売場づくりはマップラバーが有利

分類サイン

■マップラバーとヘイターとは

maploverは、地図を好む人と言う意味です。
お店に入ったら、店頭のフロアレイアウトでだいたい行く売場を決めて、お目当ての売場に行き、モノを買う。
時間をかけて店内を回遊するよりも、短時間で効率的に買い物したい人のことを言います。

maphaterとは、地図が嫌いな人、と書きます。
とりあえず、お店に入っていろいろな売場を物色し、ゆったりともの探しをして、買って帰る人のことを言います。



■マップラバーに対しての売場づくり

マップラバーに対しての売場づくりは、店内案内板や売場インデックスをしっかりつくることです。
天井から下がっている大分類サインや、什器上の中分類サイン、棚の中の仕切り版の小分類サインが文字通り、目的の売場への道しるべになりますので、これら案内POP・サインのフロア設置がとても重要になります。

什器レイアウトもわかりやすくします。
什器がまっすぐ整列されていて、主通路・副通路が見ただけでわかり、分類サインも高低差・前後のグリッドが合っていて、売場の番地を探しやすくします。

■マップヘイターに対しての売場づくり

一方、マップへイターは、店内案内板や売場の分類サイン・POPに目もくれずに我が道を行きます。サインやPOPを見るのが面倒で、カンや雰囲気で歩いているのですが、最後にはちゃんと目的のものを見つけます。

こういう人は、雑貨店やクラフトショップなど、売場がきれいに整列していないお店でも大丈夫です。なんとなく、行きたい方向に行ってなんとなくモノを探します。
マップへイターにとって重要なのはリレーションになります。

つまり、売場と売場のつながり、モノとモノのつながりです。ワイン売場の横に食器売り場がある、食器売り場の横にレシピ本やグルメ本がある・・・・そんな売場配置です。


■コロナ禍の売場づくりはマップラバーが有利か

さて、コロナ禍の今、お客様の店内滞在時間が下がっています。
凸版印刷の調査では、買い物客の滞在時間は下記の様に変化しています。

数値は コロナ前 → コロナ後
・20分未満の客の割合 ・・・32% → 46%
・30分以上の客の割合 ・・・32% → 21%
・毎日買い物する割合 ・・・22% → 12%

コロナ禍においては、なるべく買い物に行かない、行ってもあまり店内に長居したくないようです。

さっと店に入ってさっと帰るという購買形態では、やはりマップラバー型の売場づくりが有利。
当社のフレームワークでは下記を有効に活用するといいです。

・見通しの良い店内
・通路はまっすぐ
・PPや分類サインが目につく
・商品の陳列くくりが明確
・導線は単純に
・商品フェイスを多くする


などです。

あなたのお店の来店客はマップラバー、マップへイター、どちらですか?
買い物客を考察して、どちらを取りこんだら自店に有利か、一度考えてみましょう。

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)