VP,PPは必ずしも必要ではない

1.VP,PPが必要でない店

以前、PPには明確な定義が必要と書きました。
●ディスプレイの定義をつくろう

しかし、それ以前にVP,PPが必ずしも必要ではない業態は多いです。
例えば下記です。

  • コンビニ
  • ドラッグストア
  • ホームセンター
  • カー用品店
  • 家電量販店
  • ディスカウント店

これらは、店舗オペレーションが合理的・かつ低コストで運営できるように制約されている点と、生活必需品を販売しているところが特徴です。
VP,PPはそれなりにスキルのある人材が必要で、専用スペースも取ります。
そのため、人やスペースにコストを掛けられないコンビニは不向きです。
アパレルでも、ユニクロや無印良品でさえも、エキナカの小スペースで運営されている場合はVPまたはPPがないケースがあります。
その場合は、演出POP(いわゆるポスター)をPPの代替わりとして活用しているケースが多いです。

ただし、コンビニでもナチュラルローソンのような、「美しく健康で快適なライフスタイルを身近でサポートするお店」を標榜している店は、FC本部がPPを推奨しています。
ローソンでは、びんを置いただけのワイン売場なのに、ナチュラルローソンになると、ブドウのつるやテーブルクロスを利用したワイン食卓のPPをエンドに設けていたりします。

ドラッグストアでも、マツモトキヨシはIPのみですが、「女性が 1 時間楽しめるお店「Enjoy 1 hour with us」」を掲げるアインズアンドドルペのようなセレクトショップは、PPぽいディスプレイが多く見受けられます。

生活用品のお店でも、ライフスタイルショップ寄りの店は、店内演出としてPPが重宝されるのです。

2.VP,PP,IPというものはあいまいな用語

実を言うと、PP,IPは和製用語です。
海外のVMD関係者には無縁の用語といえます。
海外では、日本でいうVP,PP,IPをひっくるめてVPと言っています。
このVP、下記の意味で使っているのです。

●フロアやゾーン、MDグループのフォーカルポイント(注目点)になっているディスプレイのこと

日本では、VPとPPは商品の見本展示、IPは陳列と定義されています。
簡単に言うと、VPとPPはそのままレジに持って行くことはできない、
IPはレジに持って行ける商品、と考えてよいでしょう。

しかしながら、フロアのフォーカルポイントとなっているものは、展示・陳列が混合したカタマリとしてのディスプレイになっていることが多いです。
明確に、これはPPでこれはIPと区別できないケースが多いのです。

例えば、写真はホノルルクッキーカンパニーのクリスマスバージョンのフォーカルポイントです。
中央の赤くなっている売場がそうです。
テーブルと背後のラックがとても目立ちます。
テーブルのディスプレイは陳列状態ですが、ラックは展示ぽくなっています。
でも、テーブルもラックも、商品はそのまま掴んでレジに持って行けそうです。

確かにラックはPPぽいのですが、IPとも言えます。
これを、手前のテーブルはIPで後のラックはPP的なIPと言えば正論かもしれませんが、聴く人が混乱するだけです。
外国のように「赤い売場はVPだ」と片付けてしまうと効率がいいように思います。

3.VP,PP,IPで使いにくかったら、展示と陳列で区別する

私はドラッグストアの研修ではあえて、VP,PP,IPという用語を使わずに、展示・陳列の2語でディスプレイを使い分けるように教えています。
理由は二つあります。

1.店舗オペレーションの問題でわざわざVP,PPをつくるのが困難な店だから。
棚の空いたところに展示をつくる事が多い。

2.先ほどのホノルルクッキー売場のように、PPとIPの区別がしにくい。

このドラッグストアは、女性に好まれるオシャレな店舗にしたい、特定の商品を展示でクローズアップしたい、との希望があるので、陳列の少し空いたスペースに展示を入れる方法を教えています。
ほとんどの展示物がPOP付きで、化粧品の効果・効能を謳っています。

例えば、雪肌精やトワニーなど、店側にとってただパッケージを並べて売りたくない、商品の魅力を訴えたい。
そんな場合は棚に商品展示をPOP付で設置するようにしています。

デパ地下のガラスケースでスイーツを販売しているお菓子店はどうでしょう。
Gケース内に置いている商品はIPでしょうか、PPでしょうか。
これも判断むずかしいですよね。

ショートケーキのような生菓子はIPと言えます。
客が掴むことは出来ないけれど、店舗スタッフが掴んで客に差し出してくれます。
イチゴ、メロン、モンブラン・・・などといろいろなショートケーキから自分の好みを選択・購入できます。
だからIPと言えます。

ところが、焼き菓子が入っている箱入りアソートギフトのGケースは、見本展示です。
値段別に並んでいて、客は選択購入できるけれど、Gケースの中の展示品を包むわけではなく、背後のストック棚の商品を包みます。
すると、Gケース内商品群はIPでなくPPなのでしょうか。
たちまち、頭がこんがらがってしまいます。

このように、デパ地下のスイーツ店でVP,PP,IPを特定することは困難です。
しかし、あえてVP,PP,IPを使っても悪くはありません。
きちんと定義すればよいのです。

私の場合、ある店では、Gケースの中の生菓子および見本展示商品はすべてIP、お菓子の盛り付け例はPPと定義しています。
そしてカウンター背後の壁面ディスプレイをVPと定義しています。

このようにIP,PP,VPは業種・業態・取り扱い商品によって見方は違ってきます。
IP,PP,VPは実にあいまいなものなので、用語を使う場合は、VMDインストラクターがしっかり定義することをお勧めします。
展示と陳列、という2語で処理しても、もちろんよいです。

4.VMD用語は記号論で処理する

記号論という理論があります。
言葉は記号である、という考え方です。

日本では、蝶と蛾の区別はあるけれど、フランスにはありません。
フランスは蝶も蛾もpapillon(パピヨン)と言います。
日本では「うさぎ」というけれど、イギリスでは「ラビット」と「ヘアー」の2種類に区別されています。

参考)外国のVMD担当にVP,PPと言っても通じない

このように、用語は使い方次第でどうにでも変わります。
あなたのブランドや店で、スタッフが理解しやすいように定義するとよいでしょう。

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

新年の言葉「時は流れない。それは積み重なる」

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。

三が日、どう過ごしましてますか。

元旦は荒川沿いをジョギングしてきましたよ。
天気がよくて晴れ晴れ~とした感じでした。
元旦なので、野球やサッカーチームが試合していなくて、土手はすいていました。

さて、今年でオーバルリンクは創業21年を迎えます。
今日は私の好きな言葉を披露します。

Chapter1 「時は流れない。それは積み重なる」

これ、サントリー・クレストの、ショーンコネリーが出演したテレビCMのコピーです。
私がまだ平成初期、広告代理店にいたころのCMです。

●サントリー・クレストCM

このコピー、いいですね。
それまでは下記のコピーもスキでした。

As Time Goes By.

アズ・タイムゴーズ・バイという、映画「カサブランカ」の名シーンで流れるピアノ曲です。
邦題で「時は流れる」という意味です。

この曲はジャズの名曲にもなっていますが、サントリーのCMに出会うまでは時は、流れるものだと思っていました。
積み重なるという感覚は、この頃の私にはありませんでした。

で、もうひとつ。

Tomorrow Is Another Day.

これは私が好きな映画「風と共に去りぬ」のラストシーンで、スカーレット・オハラが言ったセリフの一部です。
和訳だと「明日は明日の風が吹く」というコピーです。

これは、時が積み重なるどころか、吹き飛んでいくという解釈です。
なんか、ひょうひょうとしていていいですね。
リラックスできます。

「GONE WITH THE WIND」自体も、風と共に文明は去っていくという意味で、「明日は明日の風が吹く」というコピーと変わらない気がします。
この言葉、小説の本文で1回だけ出て来た文節でした。

Chapter2 積み重なりは振り返りの連続

元旦のブログで、いきなり「振り返ろう」と言う話もなんだと思いました。
しかし、あえて言うと、積み重なりは振り返りの蓄積でもあります。

私のパソコンの中に「振り返り」というフォルダーがあります。
これは何かというと、会社をつくってから事あるごとに振り返っている、個々の仕事の反省文なんです。

フォルダーは5つに分かれています。

1.売場塾
2.セミナー
3.旅行
4.商空間スタイリスト
5.OJT,リバイス他

各々のフォルダーごとに個々の仕事の振り返のメモを積み重ねています。
さっき数えたら、825回振り返っていました。
この20年で825回振り返っていた!!
この事実は、「意外と少なかったな」という感想です。
もっと振り返ってもいいくらい。(^^)

Chapter3 「振り返っちゃだめだ。未来だけ見ろ」

これはウソだと思います。
過去を振り返ることによって、人間は反省する。これに尽きると思います。
そうして、「次回はもっといいものにしよう」と心新たになります。

だから、振り返りを積み重ねることによって、物事はカイゼンされていく。
もっといいものになっていく。

それは仕事だけではなくて、旅行や趣味、英会話、友達との付き合い方、なんでもいいと思います。

例えば先ほど紹介した私のフォルダーに「旅行」というものがあります。
ここ15年、ほとんどハワイか軽井沢にしか行っていない私にとって、2泊から10泊の旅行はかけがえのないものです。
「ハワイに行ってよかった」と言える毎回にしたいために、振り返りメモ2014年から書き始めました。

振り返りは、子供の頃、キライなもののひとつでした。
私の両親は厳しくて、友達とキャンプやサイクリングに行った後は、振り返りレポートを両親に提出しなければいけませんでした。
その時は仕方なくテキトウに書いていました。
美辞麗句を並べれば、両親は満足してくれるだろう、と。
しかし今は「まじめに書いておけばよかった」と反省しています。

Chapter4 ジャズのソロパート

ただただ流れに沿って生きる、のもひとつの路かもしれません。
ただ、やっぱり川のよどみに留まって振り返りをした方がいいと思います。

「立ち止まってはだめだ。前進あるのみ」

これは、大企業の社長でも、戦争中の国民でも言っている言葉ですが、一回立ち止まって振り返ってみるといいのでは?
すると、会社の落潮も戦争もなくなるかもしれません。

ジャズの演奏で「ソロパート」があります。
これは曲の間に、ソロのアドリブを入れることです。
ソニーロリンズの定番ともなっているソロパートは、とても長い。
とくにベースは音が小さいので、ベースのソロの時だけボリュームを大きくします。

ソロパートに売った時、ソロをしている以外の演奏者は振り返りをすることができます。
ソロ奏者の音を聞いて、次はどうする?といったような構えができます。
そしてトリオやカルテッド演奏に戻った時、もっといい調子になっていることも少なくないでしょう。

こんな感じでたまには、立ちどまって他人のしていることを外から眺めてみるのもいいと思います。
すると、自分はこうあるべき、とかこうすれば自分らしいかな、と振り返ることができます。

Chapter5 正月は振り返りにいい

正月三が日のただなかですが、休日があったらぼーっと振り返るのもよいですね。
そして思い立ったら何かに書いてみるといいかも。

書くことによって、記憶や考えが整理され、こんまりの整理整頓のように人生変わるかも。
私の人生日記も15巻になりましたよ。
35歳の時から書いています。
毎年9月の連休になると1日家に閉じこもって、あれやこれや私事と仕事のことを書いていました。
30代の時は書いたこと90%は実現していました。
それは転勤、CM作品、ドラマや音楽の番組、TOEICの点数、すべてです。
会社をつくってから怠るようになり、今は人生日記ならぬ会社の戦略・戦術日誌になっています。

ぜひ、今後のやりたいこと、なりたいこと書いてみてください。
そしてそれは「振り返り」が出発点になるのです。

それではよい年を。
新年の言葉でした。

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)