プチコンサルで売れる営業をしよう

プレゼンする女子社員

今回はプチコンサルになるためのノーハウをお話しします。
売上をアップさせたい営業や販売の方、起業してクライアントをゲットしたい方にうってつけです。

1.プチコンサルで他社と差別化する

私はもともと広告代理店の営業でした。
当ブログで語ってきたとおり、まったくの新規開拓営業マンで飛び込み専門でした。
VMDの会社を起業した22年前もほぼ飛び込みで新規クライアントから仕事をいただいていました。

その頃の様子は下記ブログ参照ください。
●VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)専門会社をつくったワケ

さて、静岡の広告代理店に在籍していた私の売り物は「静岡新聞」と「SBS」がメインでした。
当時はマス媒体といって、テレビ・ラジオ・新聞がローカル広告代理店の売り物で、静岡県世帯普及率60%の静岡新聞と、静岡新聞が運営するSBSテレビ・ラジオをどこの代理店も売っていました。

売り物は、どこの広告会社も同じ。
こうなってくると、何か差別化しなければ新規開拓はできません。
他人と同じものを売っても、顧客に違いはわからないからです。
当然、競合広告会社と価格競争になり、20%しかないマージンをどんどん減らす消耗戦が繰り広げられていました。

それを避ける方法の一つに「差別化された商品やサービスを開発する」があり、それは別のブログで詳しく語りました。

●ネーミングによるブランド戦略
●マーケティングしなきゃ会社は始まらない

今回は、フツーの営業がフツーに飛び込みして、どのように他社と差別化を図り顧客をゲットできたのか、そのノウハウを違う角度から話します。

それはズバリ、プチコンサルタントになることでした。

2.顧客は情報が欲しい

「静岡新聞の広告どうですか」
「SBSラジオスポットの提供枠が空いているのでどうですか」

こんな営業をしたところで顧客はゲットできませんでした。
まったく飛び込み経験のない上役は「100軒飛び込みすれば、いつかは当たる」などと部下にハッパを掛けます。

これは今あなたがVMDを売り込むときに

「VMDいかがですか?アパレルはみんなやってます」
「VMDを導入すれば売場カッコよくなりますよ」

と言っているのと同じで、まったく説得力がありません。

広告マンである私はどうしたかというと、毎回飛び込み先に情報を持って行ったのです。
それは自家製「ホワイトペーパー」(ホワイトペーパーとは広報誌のこと)でした。

当時も今も、新聞やビジネス誌から為になる記事を片っ端からスクラップしていた私は、その中から顧客が喜びそうな部分をコピーして持って行きました。
そして、世の中のトレンドや話題をお話ししていました。

ただそれだけでした。
それだけで門前払いになる確率は減りました。
中には応接間に通していただき、じっくり話を聴く社長もいました。
毎回、広告勧誘の話は一切せず、ビジネス的な世間話をして帰っていくだけです。

しかし、それを続けていくとやがて小さい仕事が入りだしてきました。
1年も経つと小さい仕事がだんだん大きくなり、売上は上がっていきました。

「クライアントって、ちょっとした情報に喜んでくれるんだな」
と思い、それがどんなクライアントに対しても習慣になりました。

「東京のトレンディな店舗デザインを知りたい」
というクライアントがあれば、1日かけて渋谷や原宿にいき、店舗の写真を撮って差し上げました。

「商店街の活性化になんか方法はあるんだろうか」
というクライアントがあれば、両国国技館の商店街に行き、レポートを提出しました。

昭和の当時は、情報と言えば新聞や雑誌でしたので、トレンドはそこで掴んでいろいろと研究していました。
「スタバが日本に上陸した」とか「マツキヨが女子高生に流行っている」と聞けば、実際に現地に行っていました。

やがて別の広告会社に転職した時、私の情報量は上がりました。
会社は「日経テレコン」と「ビデオリサーチ・ダイジェスト」の会員でした。
好きに読み放題、データ使い放題になったのです。

●日経テレコン
欲しい情報のキーワードを入力すれば、それに見合う新聞記事をFAXで届けてくれるシステム。
今はオンラインになっている。

●ビデオリサーチ・ダイジェスト
ビデオリサーチとは、テレビやラジオの視聴率を調査している会社。
そこの月刊誌で、マス・OOHメディアの調査情報に長けているところが特長。

ここからも広告主が欲しい情報をピックアップし、チャート図を作って発表していました。
例えば、お茶のメーカーなら最新ドリンクのトレンドや、専門学校なら最近のカルチャー傾向やイチゴ世代のライフスタイル特性など。
(イチゴは今でいうとZ世代)

こうした何気ない日常の情報渡しが、顧客のパイプを太くしていくのでした。
中でもおもしろい話があります。

どこかの英会話学校を顧客にしようと、ベルリッツやらECCに営業で飛び込んでいたことがありました。
静岡に大手の英会話学校がたくさん進出していたころの話です。

各校に飛び込みをすると、広告担当が知りたいのは競合校の情報でした。
当時は「ケイコとマナブ」もないし、インターネットもありません。
私ができたことは客のフリして各校を周り、パンフやヒヤリングをしながら、競校の特徴一覧表を作り、狙った英会話学校に提出することでした。

その情報は重宝され、やがて1校から全面的に広告をもらうようになりました。
別のブログでも述べましたが、その後「マナ坊」という学校キャンペーンを企画展開して、英会話だけでなくほとんど著名な静岡内の各種学校の広告を一手に引き受けるようになりました。

こうして情報が私の強力な新規開拓営業のツールになったのでした。

3.顧客はアイデアが欲しい

もちろん、情報をただ持って行っただけでは単なる運び屋になり、それだけでは、他社から広告を切り替えてもらえません。
話はおもしろくてタメになるんだけど、広告代理店は替えない(というか、しがらみがあって簡単に替えられない)という顧客が多々ありました。

やはり決め手になったのは、プレゼンだったんです。
せっせと企画書を書いてプレゼンし、広告を競合から奪取するという派手なことをしていました。

決め手となった企画書は、ほとんど広告企画書ではありませんでした。
企画書の内容は下記だったんです。

・商品開発
・ブランディング
・ターゲッティング
・コンセプトメイキング

など、静岡新聞やSBSなどメディアを売り込む企画と全く違う経営戦略的な企画でした。

実際、お茶や釣り具メーカーに関しては、商品全体のカテゴリー整理と商品ブランディング、専門学校に関してはコンセプトメイキング、英会話学校に関しては講座開発などを行い、プチコンサルするような形で社長や専務など上層部を巻き込んでいったのです。

広告主、特に経営者は「うちの広告を安く出してくれる広告会社がほしい」わけではなかったんです。

「いかにわが社の商品を売れるようにしてくれるか」アイデアが欲しかったんです。
広告を出すことが目的ではありませんでした。

4.顧客はドリルでなくて穴が欲しい

上記のことは、ビジネス書によく書かれている、

「顧客が欲しいのはドリルでなく、穴である」(ドラッカー)
「顧客は早い馬が欲しいのではなく、早く移動したいのである」(フォード)

と同じことです。

これは私が会社を作って自ら経営者になったことで実感しました。
例えば当社に、印刷会社や販促会社が自社商品を売り込みに来ます。

「印刷費を安くします」
「とてもいい紙を使っているんです」
「早く迅速に印刷できますよ」

などとアピールします。
非常につまらない営業をしているな、と思います。

社長である私が欲しい情報は、例えば

  • 売場塾テキストをいろんな業種・業態に合わせられる、自動製本システム
  • テキスト印刷をデジタルテキストして管理する方法
  • テキストをページごとにバラしてワークシート化する方法
  • テキストをいかに全世界に発展させられるか、の翻訳システム

などです。

つまりテキストを印刷するのではなくて、

  • テキストをどう学校以外に活用できるか?
  • 普段書いている理論をどうテキスト化するか
  • 理論を製本することによってどんなサービスが生まれるのか

が知りたいのです。
早い話、印刷することでどういう風に儲けるか?なんです。

印刷会社が印刷をアピールするのは当たり前、私たちはそれ以上の情報が欲しいのです。

5.VMDアプローチもドリルと同じ

あなたがメーカー社員で、VMDを駆使して売場を活性化したいと考えているとします。
やみくもにVMDを導入すればなんとかなる、と考えない方がいいです。
ただ「VMDを導入する」は、ドリルの法則と同じで穴になりません。

具体的に事例を上げましょう。

あなたが生八つ橋のメーカー「聖護園」の販促担当だとします。
京都のドライブインでインショップを営んでいるが、なかなか売上が上がらない。
隣の別メーカー「夕子」や「おたべ」にやられている。

たまたまVMDセミナーに行き、ディスプレイの仕方を教わりました。
でもキレイなディスプレイを売場につくっても売上は上がらないでしょう。
「キレイなディスプレイをつくる」は穴にならないからです。

もしかしたら、価格戦略が違っているかもしれないし、パッケージや商品戦略が悪いかもしれません。

なので、売場のディスプレイを改善するだけでなく、商品ブランド別くくりに編成するとか、パッケージデザインを見直すとか、低価格帯の商品を除去するとかディスプレイと平行して考えられる手段を投入するといいと思います。

もちろん、あなたは会社員なので、商品ブランド別くくりや商品戦略は商品部に相談し、パッケージデザインは宣伝部と一緒にやるべきです。
他部署を動かすには、それなりの説得材料が必要ですが、それは面倒くさがらずに行えばいいと思います。

また、あなたがVMDプロで起業して顧客を得たいならば、顧客の「してほしいこと」を具体化するといいです。
新規顧客は往々にして「VMDを取り入れたい」と言ってきますが、それに対して「VMD研修を行う」という単純な対応にせず、何を欲しているのか「穴」を見つけるといいです。

例えば、メーカー販促部から当社への問い合わせで、「テレビCMなどマス広告でブランディングしているが、売場はいつも汚いのでなんとかしたい」というのがあります。

「売場はいつも汚いのでなんとかしたい」を鵜呑みにして、「掃除・整理整頓しましょう」というVMDを提案するのはナンセンス。
たぶん、上図のように広告や広報を含めた、顧客最前線のスペースブランディングを確立したいということなので、穴は

「来店前に顧客が抱いているブランドイメージを売場でもキープしたい」
ということになり、化粧品メーカーなら、

1.売場づくりをしている美容部員のVMDリテラシー強化
2.インショップブランドとしての売場デザインの確立
3.小売店と連携した売場の場所と形態の確保

というVMDプランが成り立ち、

1.に関しては
・美容部員のVMD研修
・ブランドガイドライン作成

2.に関しては
・什器デザインとその仕様のルール
・壁面・柱オーケストレーションプラン
・POPデザインと仕様の統一

3.に関しては
・小売店へのVMD提案活動
・小売店フロア担当へのVMD勉強会の実施

みたいな仕事に発展させることができます。
もちろん、全部が全部できない、という人はそれ相応の技術ある人とコラボすればいいでしょう。
または、できない部分は提案だけしてクライアントに委ねるのもいいと思います。

6.顧客にソリューションを提供しよう

ということで、静岡県で広告マンをしていたサラリーマンの私は、ほとんど静岡新聞・SBSを売らずに、クライアントの商品開発に明け暮れていました。
売上のほとんどかパッケージ関連と専門誌への出稿だった年を重ねていました。
しかし私が通常営業の2倍は売上を上げていた理由はここにありました。

もちろん、広告主のソリューションの中に静岡新聞が入っている場合は静岡新聞に出稿していましたし、会社のノルマで静岡新聞を買い切りしていた時は、静岡新聞を売っていました。
それは組織の一員だったからです。

VMD専門のオーバルリンクを経営している今は、私のソリューションはVMDのみとなりますが、VMD以外のアドバイスはよくしています。
店名を替えたり、取扱品目を変えたり、商品デザインを見直したりするお手伝いをする時もあります。

さて、プチコンサルをするコツを下記にまとめます。

●顧客は情報を欲しがっている
どんな情報が顧客のためになるか考えてみよう。
顧客のためになる情報を携えて営業しよう。

●顧客はソリューションを求めている
VMDを提案する前に、顧客の求めている結果を考えよう。
その結果に対して何ができるのか提案してみよう。

●経営者目線でモノを考える
社長になったつもりで考えてみよう。
どうすれば商品やサービスが売れるか考えてみよう。

そして、売場塾はVMDインストラクターという資格を認定・付与していますが、もちろん受講生は「資格がほしくて売場塾に来る」だけではなく、

・VMDプロとしてで起業して成功したい
・VMDプロとして社内で活躍したい
・VMDプロとして競合に勝ちたい

という皆様のソリューションは分かっていますので、どんどんアドバイスしますよ~。(^^)
そんな人のために下記の説明会や相談会、無料でやっています。
お気軽にお越しください。

●VMDインストラクターで起業・副業相談会

●売場塾&VMDインストラクター説明会

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

好きなことを仕事にするには?

映画のパンフレット

会社員であって自分にとって好きな仕事ができる。
これってすごくいいですよね。

先月書いたブログは「いかに自分のためになる仕事をするか」、その方法を書きました。

●インストラクターって必要なの?

今回は一歩進めて「自分の好きなことを仕事にするには」についてお話しします。
いつもながら赤裸々な自分の過去を振り返ります。
昭和時代からの話だから、ビデオやスマホがまだ登場していないので、世相に注意して読んでくださいね。(^^)
では始まり、始まり~。

1.始まりは8mm映画から

富士宮市の街中で過ごした子供時代に懐かしい場所があります。
それは家の近くにある「第一劇場」という映画館でした。

小6の時にテレビで「大脱走」を見て外国映画にハマり、家から歩いて300歩くらいの劇場によく映画を見に行ってました。
その劇場は「第一劇場」といい、燃えよドラゴン、ダーティハリー、未知との遭遇などアクション、SF作品をメインに見ました。
上の写真がそれらのパンフレットです。

高校時代には映画研究同好会に入り、親の8ミリカメラを借りて映画をつくりはじめました。
映画は作るのもおもしろく、見た人が感動するのを見て、いつかこの世界に入りたいと思うようになりました。

やがて月日は経ち、大学3年になりそろそろ就職の準備をしなければ、という時期になりました。
どうやって映画会社に入れるようになるのか、考えてみました。
映画作品を作ってそれをPRしたらどうか?
とりあえず、そのような結論に至りました。

しかし8ミリ映画はフィルム代とカメラのメンテナンスにも金がかかります。
資本金も何もない私は、まず親の仕送りをすべてフィルムに回した結果、毎日インスタントラーメンの日々になりました。

まずは脚本です。
「午後の天使」という題名で警備士の老人とタレント追っかけ少女を出来事にしたシナリオを1本作り友達に回し読みしてもらいました。
しかしあまりウケません。

そこで原作を探すことにしました。
ちょうどルームメイトに作家志向の人がいて、書きおろしを読ませてもらいました。
ホラー映画とコメディが一緒になったようなストーリーでした。
「これなら低予算でできそうだ」と思い、それを脚色しシナリオの形にしてみました。

次に出演者を募りました。
「なんかおもしそう」という理由で比較的時間に余裕のある人が集まりました。
すぐに出演者は決まったものの、なかなか前に進みません。
みんなほとんど遊びで参加してくるので、時間が合わなかったり途中でアキて役を降りたりと、調整するのに苦労しました。

出来上がった20分の短編映画はかなり厳しいものになりました。
「これはとうてい見せられないかも」ということで、就職用にPRするのは諦めて次を考えることにしました。

一番ほっとしたことは、インスタントラーメン生活から逃れられることでした。

2.まずは映画やテレビの裏方をバイトしてみた

これはもう自分ひとりで作るしかないかも、と思った私はドキュメンタリー映画をつくることにしました。
これならば出演者を使わなくて済みます。

ただ、ドキュメンタリーの制作知識はないので、とりあえず映画会社とテレビ局でバイトして、業界を知ろうというということにしました。

東宝舞台という大道具制作の会社にバイトで入り、TBSの番組の大道具を作っていました。
こういう力仕事はまったく私に合っていなかったんですが、仕方がありません。
担当番組は、東芝日曜劇場、クイズダービー、2年B組仙八先生などでした。
超深夜の仕事で夜8時出社の朝6時帰りです。
昼間は大学の授業があるので寝不足の日々が続きました。

もうひとつは、映画やCMのエキストラ。
刑事映画やテレビCMの群衆の一部をやりました。

いずれにしろ分かったことは、映画やドラマは時間をかけて大人数でつくるということでした。
エキストラにしてもロケの準備が遅れて5時間待たされるのは普通。
子役が深夜でもじっと待っているのに、こちらはしびれを切らしているのが恥ずかしくなりました。

床に落ちてゴミになっているシナリオを持ち帰って勉強したり、大道具・小道具などの使い方や美術も参考になりました。
驚いたのは、現場で見ると汚い大道具もブラウン管で見るとすごくキレイに見えるということでした。

シナリオで驚いたのは、ベストテンみたいな歌の番組でも司会のアドリブまで事細かに書かれていたということでした。
もちろんそのまま読んでいるとは思いませんでしたが、どの番組でもセリフがかなり作りこまれていました。

3.竹の子族のドキュメンタリー映画を作ってみた

そんなことで、バイトの日々は過ぎていき、何を題材にドキュメンタリーをつくるかシナリオ作成段階まで行きました。
その時点で大学4年生になっていたので、あと就職解禁まで半年しかありません。
(当時は大学4年生の10月が解禁日でした)

当時、原宿では竹の子族が流行っていたのでこれを取材することにしました。
竹の子族とは、ホコ天の竹下通りでグループで踊りを踊る人たちのことです。
ロックンロールなティーンの集まりでした。

まず親戚の高校生のつてを頼って、竹の子族に潜入レポすることにしました。
ソニーのカセットテープレコーダーと8mmカメラを抱えて現地に行きます。
踊りの輪に入りながら撮影していきます。
それが終わったらインタビューという日々を繰り返していきました。

台風が接近していたある日のこと。
さすがに踊っていた人いないだろうな、と思い現地に行ったところ、ズブ濡れになりながら踊っているツワモノがいました。
濡れているのでややシースルーになり、撮影をためらいましたが背中ならいい、ということになり無事撮影を終えました。

「こういう行動って、外国人はどう思っているのだろう?」と思い、当時通っていた英会話学校の外国人講師にインタビューしたりもしました。
「日本人は個性を発揮しようと思ってやっているだろうが、みんなやりだしてからはそれが没個性になってしまっている」という手厳しい評価でした。

取材したフィルムを切り張りして、それにナレーション・BGを加えて完成です。
友達何人かに見せましたが、好評でした。

3.就職に足りないのはコネだった

その後、就職シーズになり、映画会社やテレビ局を受けます。
結果はどうだったか?
ゼロでした。。。

当時は就職冬の時代で映画会社自体、募集をしていませんでした。
テレビ局に関してはバイトをしたくらいでは何のアドバンテージにもならないこともわかりました。

そして、ドキュメンタリー映画はどうなったか?
「映画を見るにはかんべんしてください」という面接官が多く、20分物のフィルムを見る余裕はない、という理由でことごとく却下されました。
一日何百人もの面接がある人事部にはそんな余裕はないということがわかったのです。

「テレビCMって映画を15秒にしたものだろうな」
こう気持ちを切り替え、広告代理店志望に気持ちを切り替えました。

しかし広告代理店就職も甘くはありません。
だんだん分かってきたのは、「コネがないと入れない」ということでした。
事実、受かった広告代理店2社はコネが功を奏しました。

あまりに業界の慣習がコネだらけだったので嫌気がさし、当時投稿していたしていた朝日ジャーナルにそれをぶちまけました。
私の投稿は内容がおもしろかったらしく、毎回朝日新聞から謝礼をいただきました。
中には反論する読者もいましたが、今にして思えばブログを書いているようなものでした。
昭和時代は新聞や雑誌の投稿欄でしか、他人とコミュニケーションは取れなかったんです。

4.広告代理店で好きなことを仕事にする

そんなことで、広告代理店のラテ課(ラジオ・テレビのこと)に入社した私は、300本はCMを作ったと思います。
当時はカードCMといって動かないCMもたくさんありました。

映画を撮っていた経験が役に立ったのは、言うまでもありません。
上司の仕事で自治体のドキュメンタリー映画をつくることになり、シナリオも書きました。
今度は16ミリ映画でした。
親戚のママさんバレーの様子をネタに練ったシナリオはプレゼンを通過し、映画は完成しました

CM制作の仕事で一番役に立ったのが、CMコンテだったと思います。
大学の時、映画を撮る前にアングルやシチュエーションを決めるため、マンガみたいなものを書いていました。
それをコンテと言います。
ヘタウマですがCMコンテを書く営業はいなかったので、かなり重宝され、他営業の手伝いもしました。

人間国宝とコラボしたCMはACC賞を取ることができ、広告作品のいくつかは業界誌や本に載るようになりました。
私はディレクターではなく営業だったのですが、企画・プロデュースという役割で掲載されました。
優秀なディレクターが周りにいたのも幸いしました。非常に感謝しています。

広告会社変わってからは、番組製作もするようになりました。
バラエティ番組やドキュメンタリーが主でしたが、映画製作の経験が大いに役に立ちました。
大学時代の映画製作よりラクだったのは、会社の信用でスポンサーを募ることができたらからです。
自腹を切ってインスタントラーメン生活をする必要はありません。

こんな感じでいろいろ好きなことをしてきましたが、仕事をする上で厳しい条件がありました。

5.好きなことをするにはリスクを取らないといけない

サラリーマンなので、死ぬほどのリスクはありませんが、番組制作は多少のリスクが伴います。

それは、言い出しっぺが責任を取らないといけないことです。
最初に作った1時間のドキュメンタリー番組は、ある程度スポンサーが想定されたのですんなり行きました。
女性の活躍を題材にした企業ドキュメンタリー番組でした。

2回目と3回目はラジオ番組でしかも、3カ月から1年のロング番組。
4月の改編に合わせて企画するので、2月にはスポンサーが決まっていなければいけません。

以前と違い、まったく新しい試みの番組でしたので、まったくスポンサーのアテはありませんでした。
次のような番組です。

●アースデザイン・マインドミュージック
野鳥の声など自然の音とフュージョンをリミックスする30分の環境番組

●ラジオインターネットマニア
インターネットの面白ネタを紹介・コメントしていく番組

この二つの番組企画はすんなりラジオ局に通ったものの、スポンサー探しは難航しました。
番組放映時間は押さえているのでやらないわけにはいきません。
ギブアップはできないんです。

しかも私は「またあいつが何かやっている」という風変わりなポジションを社内で確立していたので、誰も相手にしてくれません。
1人でやるしかないのです。

思ったのは、「映画のプロデューサーってこうなんだろうな」ということでした。
優れた映画企画を作っても資金提供者が集まらないと映画はできないのと同じなんです。

とにかく日々、いろいろな企業に飛び込みをしては、断られの連続でした。
しかし、仕事とはなんとかなるもの。
「これはおもしろいから協力します」と言ってくれるスポンサーが現れるものなんです。

失敗したら会社を辞めようと思っていた私は運がいいことに、そのあと何回か番組・イベント企画を作っては実施することができました。

そしてこれは会社をつくる時に資本金を募って株主を探すことと似ていました。
株主もおもしろそうな事業を考えている若者に出資してくれるもんなんです。

6.会社のノルマは最低条件

最後にもうひとつ、リスクではないのですが、好きなことをするには会社のノルマを優先した上で行う、ということが大事です。

広告代理店で言うと、担当クライアントの扱いをキープする、買い切りを埋める、イベントを全員総出で行うとか、いろいろなノルマがあるんです。

会社で雇われている以上以上、ノルマは仕方がありません。
会社員であることの最低条件といえます。

確かに最低限のノルマはやって後はプライベートを充実するという「静かな退職」の選択肢はありますが、仕事に好きなことを上乗せすれば、充実感は増すはずです。
しかも、それで会社も儲かるというWIN WINだったら給与もよくなります。
私の場合も年俸アップしてもらっていました。

会社もWINなのに、報酬がよくならなしい好きな部署に移れないとならば、その会社に交渉するか、転職を考えた方がよいでしょう。

7.VMDをやりがいに変えた売場塾生

売場塾生の中には、今まで述べたようにVMDをやりがいにして成果を出し、会社に認められて昇進した人たちがいます。

例えば、メーカーに所属してお得意先周りをしている営業マンの方は、売場のプチコンサルをして回っています。
VMDインストラクターということでお店の方に重宝がられて、パイプは太くなり営業成績もよくなり、社長賞をもらいました。
VMDの研修もするようになると、お得意先を減らしてもらって営業の傍ら半分の時間はVMD業務をするという理想的な環境になりました。

またあるメーカーの研究員の方は、VMD好きが高じてショールームのディスプレイを自主的に作っていました。
展示会では季節や新商品のディスプレイレシピを配付し、特約店に売場づくりをアドバイスしていました。
やがて、その方は研究所から本社商品企画部に転勤となりVMD業務も担当することになったのです。

こんな感じで、VMDを好きになり、仕事のやりがいにして働き方を変え、自立していく人たちは売場塾では多くいます。
もちろん私のように会社員辞めてVMDで起業した人もいます。

来週末売場塾交流会を開催するので、ぜひ個性的な方々と交わってみましょう。

●第17回売場塾交流会「VMD Cafe」10/12(土)

8.VMDに関しては「仕事を好きにする」だった

だいたいわかりましたでしょうか、好きを仕事にするコツ。
まとめてみると、下記です。

  • 計画を立て行動してみる
  • 1人何役でもやる
  • 自分で責任を負う
  • 会社のノルマを優先した上で行う

これを徹底すれば、運は必ずついてきます。
なぜなら、前いた会社をクビにならなかったし、つくった会社もつぶれていないからです。(^^)

会社では自分の好きなことができない、というあなた。
あなたにとって好きなこととは何か、まずは考えてみましょう。
それを整理した上で、計画を立て社内で実現してみるんです。

ぜひ自主的に動いて自分の可能性を探って見てください。
あるときにクライアントの社長が言った言葉が思い出されます。

「言ったことを実行する、それだけだ」

さて、ここで、
どうして私は映像一筋できたのに、いまVMDやっているの?
と疑問に思う方、いるかもしれません。

いいところに気がつきました。(笑)
VMDに関しては、「好きを仕事にする」のではなくて、「仕事を好きにする」だったんです。
これを機会あるときにお話ししようと思っています。

それまでしばしお待ちください。~

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

VMD理論のつくり方と活用の仕方

VMD理論を書いたビジネス誌

0.プロローグ

今回は理論のつくり方をお話しします。
私は広告代理店時代から多くのプレゼンをしてきました。

特に新規開拓がメインな私はプレゼンは必須で、競合からクライアントを奪取するには新しいアイデアによる提案業務が欠かせませんでした。

ある日、テレビCMのプレゼンを控えている中、同僚にこんなことを言われました。
「●●と同じようなCMを提案したらどうだろう」
「●●の企画書を少し改編して提案しよう」

非常につまらない考えだな~と思いました。
他人の考えや作品をコピペするのが嫌いな私は、
「いやいや、こういう方がおもしろいだろう」
と拒絶しました。

しかし、私担当のクライアントを同僚に引き継ぐ最中だったため、私は折れてそのコピペ案でプレゼンに臨みました。

結果は思った通り、
「よくあるパターンだね」と一蹴されました。

次回に代わりに私の案を提案したら、とても感激されて案は通り、予算もたくさんいただきました。

そんなわけで、私は自分オリジナルな考えがとても好きなんです。
他人の考えをコピペしてどこがおもしろいのでしょうか。

それは広告業務だけでなく、美術作品をつくったり、本を書いたりすることもいっしょです。
やっぱり自分オリジナルな考えがクライアント、ひいては世の中に認められたらうれしいと思います。

VMD講師としてたくさんのブランドVMDに授業をしている私ですが、実はアメリカのVMD理論をそのまま話しているわけではないんです。
売場塾の授業にしても2/3はオリジナル理論です。
例えば、「VMD4分野」にしても「IP・PPテーブル」にしても独自理論です。
たくさんのオリジナル用語もつくりました。

いまみんなが普通に使っている、
●オーケストレーション
●リレーション
●POP編集

なども私がつくった用語です。

オリジナル理論をつくると、他者と差別化できますし、新しいお客様も開拓できます。
なにより、あなたのファンになってくれるのです。

昨今、AIなど他人の考えをそのまま使う流れも加速していて問題にもなっていますが、効率を追及すると誰もが同じ理論になってしまいます。
それだと面白くないし、個性というものも発揮できません。
業界としての発展もないでしょう。

いろいろな理論がぶつかりあい、加工したりそぎ落としたりして新しい理論に発展させ、VMD業界も進化していく。
そして日本が先進のVMDを唱えていくことにより、世界のVMDをリードしていく。
そんな未来を信じてやみません。

それではオリジナル理論をつくる秘訣をお話ししましょう。

1. 普通のことに疑問を持つ

テレビのニュースを見ている時や、新聞を読んでいる時、「なんでこんなことになるのかな」とか疑問を感じたことはないですか。

例えば、

「どうしてインバウンドが増えているのに、海外旅行部門は赤字なのか」
「なんで最近は記憶喪失のドラマが多いのか」
「なんで昭和が若者に受けているのか」

など、?を感じる部分は多いと思います。
答えは新聞やテレビに出た評論家が言うケースが多いのですが、
その答えをそのまま鵜呑みにしてないですか?

例えば、「なんで最近は記憶喪失のドラマが多いのか」に対して、専門家はこう答えています。

「コロナ禍が長かったせいで、自分探しをする人が多くなった。記憶喪失とは一度自分をリセットすることだから」
という人もいれば、
「冬のソナタのように、記憶喪失は世界ヒット作には欠かせない要素。全局ドラマ輸出を見据えているから」
など。

私は「単なる偶然」だと思っています。
そういう理論もあるね、と留まりそのまま鵜呑みにすることはないです。

VMD理論もそうで、例えば「三角構成のディスプレイはいい」という考えがあります。
これも最初は疑問でした。

なんで三角形がよいのか、心にしっくりくる理由がなかったからです。
あるデパートのVMD担当はこう言っていました。

「古代の人間は狩猟が生き残る上で必要だった。高原の獲物を狙う時、密集した動物を狙うのがてっとりばやかった」

「なので、バッファローがバラバラにいる高原に矢を放っても効率は悪く、バッファローが固まって密集しているところに矢を放つ方が効率いい」

だから、人間は三角形にタイトに展示されているディスプレイを思わず見る習性がある、と唱えます。

確かにその通りです。
しかし、それなら三角形でなくて、団子のように丸くてもいいはず。
そんな疑問を感じていました。

そこ、VMD本ではなく、いろいろな美術本を読み三角構成の理論にたどり着きました。
絵画や写真の構図に近い方が自分自身が納得するなと思って、下記の理論を打ち立てました。

●なぜディスプレイは三角形がよいのか

さらに三角形の疑問は続きます。
「なぜ上から見ても三角形にしなければいけないのか」

そこで、オフィスでコップを使っていろいろ実験してみました。
そこで導き出した答えは下記でした。

●ディスプレイ、どうして上から見ても三角形にするのか?

こんな感じで、人から聞いた、メディアで見聞きしたものでも、自分なりに疑問を持ち、その答えを探すとよいです。
すると、新しい発見があります。

その発見が唯一無二の理論構築の土台になるんです。

2. 日頃からテーマを持つ

これからVMDで自分を伸ばしていきたい方は、日ごろからテーマを持つといいです。

テーマはなんでもいいです。

  • 道の駅が観光地化しているけど、どこが魅力なのだろうか
  • NTTドコモが店舗数を半減すると言うけれど、これからのケータイショップはどうあるべきか
  • イケアが都市型店補をたくさんつくっているけれど、郊外型と比べてどこが違うんだろう

など、テーマを持ったら、それを探求するとよいです。
関連本を買って読んでもいいし、店舗に足を運んでもいい。
知り合いがいるならお茶して疑問を尋ねてもいいし、電話して聞いてもいい。

とにかく行動に移して自分なりに解を見つけるといいと思います。
すると、何かが発見できます。

私は広告マン時代からテーマがあると下記の事をしています。

  1. お店に行ってみる
  2. 関連本を2.3冊は読んでみる
  3. 人に聞いてみる
  4. 理論を書いてみる

3と4を詳しく話しましょう。

3.人に聞いてみる

例えば、「本屋がすたれる中、TSUTAYAはどのような店舗を目指しているのか」というテーマが過去ありました。

どのようにしたかというと、直接CCCに電話し、取材をさせてもらいました。
そうすると、テーマが一気に深堀りできますよね。
CCC広報から六本木TSUTAYAの店長を紹介してもらい、いろいろそのテーマに対して聞くんです。

なぜ色々聞けるかというと、私は雑誌や本を執筆しているからなんです。
お店にとっては宣伝みたいなものなので、内容を詳しく教えてもらえます。
そういう知識が私の中に入ってくるので、テーマも深堀しやすい。

広告マン時代はどうしていたかというと、直接飛び込みをしていました。
関心がある店や会社に直接訪問し担当者を出してもらい、根掘り葉掘り聞くんです。
訪問する理由は適当に作りました。

「新聞広告の料金表をお持ちしました」
「今こういうテレビ番組を考えいるので協力してくれませんか」
「インターネット広告の情報を持ってきました」

など、理由は何でもいいんです。

こういう昭和時代の飛び込みは今でも続けていて、担当者をネットで探し当て電話1本で飛び込みをしています。
こういうやり方は、コールドコールと言います。
悪い言い方をすれば証券会社や保健会社の押し売りコールになりますが、私の場合は物売りをするわけではないので、割と気軽にやっています。

いまや売場塾生も1,000名以上になったし、社会人経験長いのでアウトルックの名簿を検索してまずはメールをし、必要に応じては電話をしています。
意外と人は対応してくれるものです。
対応してくれている売場塾生の皆様、たいへんありがとうございます。(^^)

皆さんもコールドコール、一回やってみてください。
もちろん私に対してでもいいですよ。(笑)

4.理論を書いてみる

こうしていろいろ本を読んだり人に聞いたりしながら、つらづらと理論を書いていくんです。
最初はツイッターを利用し、徒然なるままに書いています。

ツイッターのテキストは、ノートパッドに書いていますから書き終わったら全文が残ります。

今度はそれをブログに書いています。
起承転結にまとめるために、いつもマインドマップをつくっています。
●マインドマップとは

マインドマップで文章構成を整理したら、名とは何日かかけてブログの長さに作成します。
チャート図や写真も入れてみて完成です。

例えば、この前「オンスクの法則」というアイデアをブログにまとめました。
●オンスクの法則

セミナーでも2回くらい話して受講生の様子をみました。
もちろんまだ固まっていない理論なので、余談として話しました。
受講生の様子を見たらある程度よさそうなので、正式な理論にするかもしれません。

さて、こんな感じでブログにした後も、悶々と時間あるごとに理論を書き換えていき、これだ!という論文を完成させます。
それがとてもよい出来だったら、ビジネス誌の編集長に連絡をし、ビジネス誌に掲載し、読者の反応や編集委員会の感想を聞きます。

流通ネットワーキングに掲載したVMD理論

それが好印象だったら何か月か寝かせて、最終的には売場塾のテキストに組み込むか、本を出版するという流れになります。
そこまでしなくてもその理論を中心としたオープンセミナーをやって考えを披露したりしています。

例えば、昨年「バーチャルマーチャンダイジング」という理論を考えて、講演会で披露し、その理論を月刊VMDにまとめたものを視聴者プレゼントとして配付しました。
ネットのレスポンスを見ると悪くはないかな~という感じです。

●バーチャルマーチャンダイジング

とはいえ、理論には当たりはずれがあります。
そんな中、最近「これはとてもよくできている理論だ」と納得する理論がありました。
それが「POP活用体系」というものです。

「POPには6つの種類があり、それぞれに役割が違い、仕様も表現方法も設置方法も違う」という「POP活用体系」理論です。

この理論の出発は点、「POPには種類があるのではないか」という疑問から始まり、上記1から3の活動をしつつ、まとめた理論です。
理論化期間は3カ月くらい。

これ、自分でもよくできた理論だと思っています。
来月セミナーをしますので、ぜひご参加下さい。(^^)

●POP活用体系

5.理論を応用する

さて、理論はできたものの、これをどうやって会社や自分の収益にするかなんですが、広告マン時代は飛び込みで得た人脈で、テレビ番組やイベント提案をして媒体を獲得し収益にしていました。

今はVMDコンサルタントをしているので、下記のようにしています。

  • VMDプランにその理論を入れてみる
  • 研修プログラムにその理論を入れてみる
  • 場塾のテキストに入れて授業で講義する
  • VMDガイドラインに入れてみる
  • 専用のサービスをつくる

などです。
これをマッシュアップといいます。
もともとは音楽用語ですが、実用書を書いている人がよく行う手法です。

例えば、先ほどの「POP活用体系」理論は、もう何回もクライアントにてPOPセミナーを開催していますし、売場塾のテキストにも載せました。
クライアントにPOPデザイン案をプレゼンした時には、その理論を2.3ページに渡って挿入しました。

専用のサービス活用としては、ディスプレイプレイコンテストの中の項目にPOPコンテストをオプションで入れ込んでいます。
すでに家電店やケータイショップのPOPコンテストにも応用しました。

●ディスプレイコンテスト企画局

6.理論は本によって大成する

そうやって出来上がった理論はやはり、本として出版するのが最終ゴールだと思います。
売場塾の卒業生は、たくさん本を書いていますので、ここに紹介します。

●VMDインストラクターの書いた本

私は卒業生の書いた本はすべて読んでいます。
よくできているなと思います。
中には売場塾のノウハウを応用・発展したものもあり、売場塾が役に立っていてうれしいです。

ブログやインスタと違い、本こそオリジナル理論を1冊に凝縮し詳しく丁寧にまとめたものとして最高のメディアでしょう。
全国の書店に並んでたくさんの方に伝えられますし、印税として収益が出てきます。

私の場合、私の書いた本を千冊以上まとめてお買い上げいただいたクライアントもいますし、中国語に訳されて海外でも販売されました。

●オーバルリンクのVMD本

本を出すと箔がつきますし、クライアントへのPRにもなります。
自社の強力なPRにもなるので、おススメします。

出版の本の出し方は自費出版だと100万以上かかりますので、出版社に企画書を持ち込むとよいです。
下記の最初の本は企画を出版社に持ち込みました。

●「魅せて買わせる陳列と展示の法則」

書籍化に当たり多くの売場塾卒業生に協力をいただき、誠に感謝します。
この本、2,000冊くらいはいろいろな法人様にまとめてお買い上げいただきました。

7.まとめ

だいたいわかりましたでしょうか。
理論のつくり方。

アメリカの理論そのものをコピペするよりも自分独自のVMDを構築した方がよいというのがわかったと思います。
日本に合ったVMD、自分の業種・業態・取扱商品・ブランドに沿ったVMD理論を確立するのです。
起業している方は自分独自の理論をつくりましょう。

ヒントはお稽古ごとの守破離をベースにしている、フレームワーキングという考え方です。
大いに参考にしてください。
●フレームワーキング

さて問題は理論ってどうやってアイデアを捻出したらいいか、だと思います。
それは最初言った通り、常に疑問を抱いたり、テーマを持ち探求することです。

じゃあ、どうやって疑問を抱いたりテーマをつくればいいのか、それはまたの機会にお話しします。

それではみなさん、独自のVMD理論、お互いに構築していきましょう~。

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

セルフブランディングしよう

今回はセルフブランディングについて話します。
独立起業する方だけでなく、会社員の方にも役に立ちます。
それでははじまり、はじまり~。

1.サラリーマンとは

それは大学生のころでした。
東京の葛西に下宿していた私は、毎朝ぎゅうぎゅうの東西線に押し込まれるネクタイ姿のサラリーマンを見て「サラリーマンにはなりたくないな」と友達と言い合っていました。
同じようなグレーの背広にネクタイをしている会社員がなんだかむなしく思えたんです。
昭和かれすすきというか・・・。

それから4年、私は広告マンというサラリーマンになっていました。(^^;)
どちらかというと背広着なくていいCMクリエイターになりたかったんですが、昭和の超氷河の就職時代には営業という背広の似合う(!)会社員になってしまいました。

上写真の左の写真は新入社員当時の顔。
よく黎紅堂(れいこうどう)に通ってフュージョンを借りていました。

最初に入った地元ローカルの広告会社は老舗だったんですが、求人広告に力を入れている会社でした。
テレビ課に入ったのに1日100軒求人広告を取るために電話追い込みや飛び込みの日々が続きます。
昭和当時はスライドCMというのがあって動画じゃない動かないCMがありました。
2年で100本は作ったと思います。

2年後、バブルの時代になりヘッドハンティングされて大手広告会社に移りました。
それで知ったのはプレゼンのやり方でした。

2.デザインはきちんとする

新規開拓用プレゼン企画書を書く日々は徹底的に上司から書き方やプレゼントーク、資料のまとめ方を教えてもらいました。
山あり谷ありだった累計5年。特に最初の2.3年は徹底的に二人の上司に鍛えられました。
転職最初から他者からの引継ぎはまったくなく、100%新規クライアントが取れたのはプレゼンの賜物といって過言ではありません。

独立している今でも、何か打合せや提案事があると企画書をつくります。
売場塾でPOP指導講座をやっているせいもあり、書面には十分気を使います。

  • ヘッダーやキャッチの色はクライアントのコーポレートカラーを使う。
  • フォントやカラーは統一する
  • 行替えや段落替えをして読みやすくする。
  • 文章はツラ合わせをする。

そして企画フローは

  • 起承転結や序破急などリズムを付ける。
  • 章を設けて最後にまとめる。
  • 無駄は省いてシンプルにつくる。
  • 予算を最後に付ける。

などをしています。
企画書やメールの文面はその人を表す鏡みたいなもの。
会社員時代でも独立してもキチッとさは忘れないようにしています。

特に独立起業する人が気をつけた方がいいのは企画書だけではありません。

・メールの最後にフッダーがいつもついていない。
・クライアントの商品や会社名のマエカブ・アトカブを間違える。
・名刺のデザインがいつも違う。
・屋号のロゴが媒体ごとに違う。
・てにおはがなんかヘン。

研修スライドに関しても

・スライドごとにフォントが違う
・ヘッダーのあるなしがある
・箇条書きだが行替えがバラバラ
・ネットでひろった画像をそのまま使っている

などが目立っています。

まあ、私も聖人君子ではないので上記のことをさぼる時もあるかもしれないのですが、心がけとしては、零細企業でも大手ブランド並みのきちっとした体裁は心がけたいものです。
逆に言うと、大手ブランドに属している人でも独立起業すると上記のレベルになってしまう人もいるので注意しましょう。

3.何ができるのかを明確にする

今まで100名は下らないと思いますが、当社に自分を売り込んできたたくさんの方がいます。
ただ、企画書を付けてくる人はあまりいないんですよね。
ほとんどの人が、「こんな仕事をやっていました」と言ってディスプレイや店舗デザインの写真を見せます。

すばらしいディスプレイの写真やグラフィックはわかるんですが、伝わってこないんです。
私が知りたいのは「何ができるのか?」であって、「何をしました」というだけでは不足なんです。

1人だけ「私は空中ものが得意です」と言って、宙に浮いているディスプレイを提案してくれました。
ピアノ線やテグスでディスプレイ用品を吊るして立体的に商品を見せていました。
彼女は、3次元のディスプレイこうしたを4次元に変えるとどのくらい目立って集客できるかを事例と共に話してくれました。

企画書のデザインは大したことなかったです。(スミマセン)
が、彼女のプレゼンは非常に心に残り、その後本当に空中ものディスプレイを私のクライアント店舗でつくってくれました。

こんな感じで「自分は何ができるのか」を明確にするといいです。

SNSで発信する時もそう。
「こんなんやりました」とディスプレイをアップするだけでなく、

  • こんなところを工夫しました。
  • こんな効果がありました。
  • こういうノウハウが生きているんです。

などを付け加えると、投稿が生きてくると思います。

特にウインドウディスプレイなどは、

・ディスプレイプラン
・商品構成と調達
・プレゼン用デザイン
・グラフィックデザイン
・デコレーション

と分業されているケースが多いので、どこの部分を当人が担ったか私は知りたいです。
その上でこの人は、企画力があるのか、ディスプレイの構成スキルがうまいのか、造作物が得意なのか、知ることができます。
もちろん、総合的に企画から制作まで1人でやった方もいるとは思いますが、
「こんなんやりました」だけで作品集を出されてもピンとこないんです。

4.自分のオリジナルを持つ

サラリーマン時代はIP(パーソナル・アイデンティティ)を意識していました。
いまでいうセルフブランディングですね。
単なる広告マンではなく、「タレント職人」というコンセプトで仕事をしていました。

テレビや映画のタレントみたいに、「その人でないとできない!」というやつですね。
私は営業マンだったので、同業の営業たちと会うと

・いくら売上ている
・どこそこのクライアントをやっている

というのが話ネタになってしまう。
それだけだとつまらないなと思っていました。

根っからの企画好きだったので、誰もやらない企画を作り実行する。
そのほうが面白いと思っていました。

で、ほとんどの企画は自分の好きなことをしました。

  • バードウオッチングとジャズが好きなので、それらをリミックスする環境音楽番組をつくる
  • 英会話の勉強をしていので、英会話学校他スクールを集めたイベントをする
  • 釣りが好きなので、釣り具メーカーの広告や商品ブランディングを仕事にする

などなど片っ端からやってきました。
ほとんど全てが飛び込みからでした。
もちろん、営業なのでふだんの売上ノルマはあります。
それらをクリアした上でのことですが。

上記と同じように、自分が会社員としてどこかのブランドVMDでも、会社を辞めたら通用しなくなります。
在籍していた会社のブランド名や売上額ではなく、「何ができるのか」「その人でないとできないのは何なのか」が起業独立したら問われます。

実はそれが私が広告会社を辞めてVMDの会社をつくってもすぐに売上が上がらなかった理由です。
その期間、なんと10カ月!そう、10カ月1円たりとも仕事がなかったんです。
仕方がありません。
マス広告の実績が中心だったので、VMDの実績はほとんどなかったからです。

しかしその10カ月の間、オリジナル企画をつくって売上を上げ始めました。

・売場UP2サポート
売場ドッと混む
リモデルプラス
店舗診断
・ユニットVMD
・VMDサポーター

など、これは開業2年間で私がつくったVMDのパッケージサービスですが、今でも売場ドッと混むと店舗診断は独自のサービスにしています。
試しに上の「売場ドッと混む」と「店舗診断」をクリックして見てください。

要は、サラリーマンの延長でそのまま独立しても仕事はないということ。
前の会社の輝かしい実績は置いといて、自分に何ができるか開発しないといけないということです。

5.何が幸福か考える

広告代理店東京本社に来た時は毎日2.3時間睡眠、静岡時代でも最初の2年は布団に寝る事が少なかった時もありました。
こたつでそのまま寝ることが多かったです。

そんな昭和サラリーマンの私でも、さすが今は徹夜はしないです。
仕事より健康を優先にする、が今はモットーです。
毎日7時間は寝るようにして毎日ストレッチ、週一でランニングや筋トレをしています。
その中でできる範囲で仕事をして会社を存続させています

私の周りにいつも4.5時間睡眠しかとれず週末も忙しい人がいますが、健康には留意してほしいと思います。
仕事をあふれるようにやっているといつか限界が来ます。

私も広告会社の2.3時間睡眠時代は、徹夜で作った見積書の数字が大きく間違っていて会社に損害を与え、クライアント交代され、左遷の憂き目に会いました。
リゲインのCM「24時間働けますか」はもう死語なんです。

特に会社員の方はいつでも代替わりがいるので、プライベートな時間を削ってまで
仕事をする必要はないでしょう。
まあ、仕事好きすぎて休日も仕事はOK、という人は別ですが。

オーバルリンクの仕事ガイドラインで、「夜7時以降はメール禁止」というのがあります。
広告代理店やコンサルの方でも夜の12時以降にメールを送ってくる人がいますが、「こんなに一生懸命仕事しているなんてすばらしい」と思って受け取る人はいないでしょう。
むしろ「大変だな」と思うくらいです。

なので、私はどんなに忙しくても会社員時代は夜9時に会社を退社していました。
(それでも遅いですけどね)
その代わり、朝7時に出社していました。

東京本社に転勤した後も夜9時退社はなるべく守っていました。
ところが朝6時に出社する毎日になりました。。。。
それだけ当時は過酷でした。
働き方改革があの頃あったら、と思う今日この頃です。

6.まとめ

この間、売場塾の卒業生で今は大手会社の社長をしている方にビジネス誌の取材をしてきました。
彼女、転職した5年目で社長になったんですが、インタビューの中で心に残ることがありました。

・企画するのが好きでそれを実行することによって会社をV字にしてきた。
・夜10時に寝て朝6時に起きる。
・この業界に携われるのが好きだ。

企画するのは好きでも実行しないと始まらないということ、同感です。
当社も最近11月・12月と週休半ドンと2日制にしてうまく行きました。
来年は週休3日制にチャレンジします。

みなさーん、健康に留意して来年もがんばりましょう~。

なお、上記の話の続きを聞きたい方はお気軽に
「VMDインストラクターで起業、副業相談会」にお越しください。
お待ちしております~。(^^)
●VMDインストラクターで起業、副業相談

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

ビッグモーターはなぜ街路樹を切ったのか

ドライバー目線の街路樹の通り

1.街路樹通りを走っているドライバーの目

今日は、ビッグモーターはなぜ街路樹を切ったのか。
それはVMDにとても関係ある事柄でした。

私たちVMDインストラクターは、路面店にVMDを指南することがあります。
その時、街路樹が道路脇に連なっている光景をよく目にします。
上の写真のような感じですね。

オーバルリンクの店舗診断は、こんな風に店舗外観の写真を撮ることから始めます。
上の写真は道路を走っているドライバー目線で撮影したものです。
店舗診断用の写真撮影は、お客様の目線で撮りますので、路面店は当然ドライバー目線で撮ります。

ドライバー目線の街路樹の通り

上の写真を見てください。
「うまい鮨勘」という寿司屋の看板は見えますよね。
「FamilyMart」というファミマの看板も見えます。
度もその先は街路樹でお店の看板が見えません。

ファミマのずーっと先を目で追ってください。
赤字に白抜き文字の「IN」というサインがあるのがわかりますか。
でも店の看板は街路樹に隠れて見えません。
ここが店舗診断の対象のお店でした。

ドライバー目線の街路樹の通り

上野写真を見てください。車は60kmで走っています。
店の18m先に近づいてきました。
INの文字は大きく見えてきました。
でも店名サインは街路樹に隠れて見えません。

店はレンタルソフト屋さんなんですが、取扱商品も業種さえもわかりません。

ドライバー目線の街路樹の通り

8m手前に来ました。
でも街路樹に隠れてとうとう店名はわかりませんでした。

DVD・ビデオの文字も目に入るか入らないかです。
そして、ビデオの次の文字、CD・レンタル・・・・読みにくいですね。
そしてその次の文字は葉っぱに隠れている上、小さすぎて読めません。

というか、目で全部の文字を読もうとしたら、前方不注意で事故ってしまうでしょう。
車は60kmで走っているので、横の看板を首を左に振ってまで読もうとするドライバーはどこにもいないでしょう。

こんな感じで国道を走っているドライバーは、レンタルソフト店があると気づかずに店の前を通過していきます。
とうとう、ビデオ店の名前も取り扱い商品も満足に分からずじまいでした。

2.ビッグモーターが街路樹を切ったワケ

ここまで話ししてもうわかったでしょう。
そう、ビッグモーターは、店の看板を見せたいために街路樹を切ったのではないかと思います。
昨日、警視庁がビックモーターの9店舗に街路樹伐採の容疑で一斉に9店舗を家宅捜索しました。
すぐにこのことは明らかになると思います。

このように街路樹で店舗がわからず、ドライバーに意識されていない店舗はたくさんあります。
「店の看板を大きく出しているのに客は気づいてくれない」
「店の看板あるのに、お店はどこにあるの?」
という問い合わせ多い」
というような相談が、店舗診断時によく聞かれます。

そんなお店に対して、店舗診断シートを掲示して外観の直し方を伝授するんですが、「木を切れ」とはさすがに言わないです。

街路樹は公共のものですからね。
街路樹は街の雰囲気をつくっています。
表参道に行ってもわかるように、街路樹がある道はきれいでさわやかーな感じがします。
街があって店がある。
だから街路樹の設置は街優先で、店優先じゃないんです。

確かに、店の存在がわからないことでお客様に入ってもらえない店は多いです。
「こんなところに店あったの?」というお客様が多い店は、それだけで死活問題でしょう。

でも、街路樹があってもお店をわからせる技術がVMDにあるんです。

3.看板サインはドライバー目線でつくる

では、現状どうやって店の存在をドライバーに分からせたらいいのか?
実際に当社がリバイスした事例を今からお見せします。
下の2つの写真を見て下さい。

ドライバー目線の街路樹の通り

この二つの写真のうち、上の写真はBefore、下の写真はAfterです。
さっきの8m手前から見たドライバー目線の写真です。比較してください。
「パソコン」の文字が目の先に入ってますよね。

もう少し接近しますか。
8m手前。

ドライバー目線の街路樹の通り

今度は「DOS-V」という文字も視界に入ってきます。

もうわかりましたね。
看板の角度と文字を変えたんです。

ドライバーは一瞬しか店を見ないので、その時に文字が目立つように配置してんです。

  • サインの位置を窓の上ではなくて、窓に垂直につける
  • 取り扱い商品は単語で数個に分ける
  • タテ文字にする
  • タテ文字を大きく太くする

このようにすれば、街路樹があっても店名や取扱商品がわかるんです。(^^)
下図を見てください。こんな構造です。
サインは90度角ではないので注意ください。

ドライバー目線の看板設置方法

VMDインスタラクターの皆さんは、2車線の道路の上下線から、ドライバー目線のビデオで撮るか、10mずつ道路の真ん中を歩きながら写真を撮って、どのようにサイン設置したらいいか、ストーリーを考えてください。

この時は失敗したくなかったのでCG動画でシミュレーションもしましたよ。(^^)
ただ残念ながら、看板デザインはお店が看板屋さんに一任したので、下記写真のような感じ。
白地に黄色文字は遠目からまったく目立たないので注意しましょう。

ドライバー目線の看板

4.その他の注意点

わかりましたか、
路面店の看板の付け方。
ビッグモーターのように木を切らないでくださいね。

というか、社会マナーをきちっと守ってVMDを遂行してください。
私たちの願いです。

さて、備考として下記注意点明記しときます。
路面店の「何屋」かドライバーにわからせるための店舗外観のリバイス事項です。

●ショールームが見えるようにする

車販売店やリフォーム店はガラス貼りのショールームになっています。
のぼりやチラシ・ポスターなどの販促物でショールームを隠さないでください。
肝心の車やキッチンが見えないようであれば、何屋かわかりません。

●のぼりは同じデザインを4M~5M間隔で配置する

のぼりのデザインが3つあったら、同じデザインののぼりを少なくとも3つ、等間隔に設置してください。
その時、間隔が2Mと短くなっていると、ドライバー目線ではのぼりが1つのダンゴ状態に見えるので複数置く意味がありません。

のぼりは同じデザインを4M~5M間隔で配置すれば、60Kで走っているドライバーにとって繰り返し印象づけることができます。

なお、ディーラーのVMDについては下記で詳しく述べていますのでご覧ください。
●カーディーラー店頭演出のコツ

なお、看板の改善は店舗診断で指摘していますので、サービス内容知りたい方は下記から資料請求してください。。

●店舗診断

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

君たちはどう生かすか

1.プロローグ

人生日記もノート6冊目になりました。
1994年の9月10日に書き始めてからちょうど30年です。
自分の将来について行動プランをいろいろ書き溜めていました。
そのころは広告代理店のサラリーマンでした。

ちょっと1994年9月10日のライフプランを読み返してみましょうか。

  • 80歳で死ぬことになっている。
  • 老後は外国語の旅行ガイドやっていることになっている。
  • 60歳で年金生活始めることになっている。
  • 55歳でリタイヤして自分の会社を始めることになっている。
  • 44歳で東京本社に移ることになっている。
  • 45歳までCMプランナーとして大成することになっている。
  • 40歳で年収1,000万になっている。

などなど。
他のページでは、

  • 40~50歳まではスピルバーグ
  • 50~70歳まではクリントイーストウッド
  • 70~80歳まではショーンコネリー

みたいな雰囲気(あくまで雰囲気です)の男になりたいようなことも書いてありました。
そして自分の性格のいいところ、悪いところも書かれていました。(笑)

ブログが流行るかなり前に書いていたこの人生プランは、いつも9月の連休の一日を割いて一気に書いていました。
朝から晩までです。沈む夕日を見ながら書いていました。
だから日記というよりも、年記みたいなもんですね。

ただ、平素でも会社であったいやなこと、問題点やクライアント営業計画なども書いていました。
書くと思いが整理整頓されるし、解決策も書いていたので行動指標にもなりました。

また、普段やりたいこと、チャレンジしたいことも書かれていました。

  • 世界釣り旅行に行く。
  • マラソンで40K走る。
  • 英語堪能になる。
  • オイコットライフをする(週末は田舎で週中は東京)。

また、労働時間も計算していました。
そのころは、下記でした。

1年250日出勤 × 1日13時間の労働 = 1年3,250時間の労働

普通の人は、

1年250日出勤 × 1日8時間の労働 = 1年2,000時間の労働

でしたので、当時は普通の人の65%増しの仕事量でした。
働き方改革が叫ばれている昨今、これだと労働問題ですね。
というか、過労死ラインですね。。。

で、とりあえず、

年間250時間は節約し、3,000時間になるようにプランしてみました。

すると、家に夜8時に戻れることに気が付きました。
(月)(火)は友達に会ったり英語の学校に行ったり趣味に時間を生かせることに気がつきました。
(水)(木)(金)は家で夜のんびりできることにも気がつきました。

まるで企画書を書くように、物事が整理整頓できてきました。
9月に1年を振り返っては、公私共々ほぼ書いたこと7・8割は実現できていました。

明日を、来週を、来年を、10年後をどうしたいか、書くことはいいことだと自負しました。
書くと、明日、来週、来年をどう生きていけばいいのか、道が見えてくるからです。

会社も朝7時に出社するようにし、「今日は何をしたらよいのか」コーヒー飲んでゆっくり考えることができました。
このようにすると、今日の仕事ではなく、明日の仕事もスケジュールに入れることができ、番組制作などクリエイティブな仕事もつくれるようになりました。

公私の時間の使い方と適正な設計を日誌で学んだんです。

2.書いたことを実践するには

前いた広告会社を辞めオーバルリンクという会社をスタートさせてからは、プライベートがなくなったので日記内容はほとんど会社のことになりましたが、ここ10年くらいは、余裕がでてきたのでプライベートなことも書くようになりました。
つまり、サラリーマン時代の書き方にもどったのです。

ただ、書いたことを実行するには、他の時間を省略しなければいけません。
1日は24時間しかないので、何かを実行するためには何かをやらないようにしなければいけません。
例えば下記がそうでした。

・オフィスに行かないでほとんど家にいる
 →すると通勤時間が2時間節約できる

・会社のサービス項目を半分にする
 →すると時間が効率的になる

・他社のやらないことをやる
 →すると利益率が増えるので、むやみに営業しなくて済む

・デジタルマーケティングにする
 →訪問営業がなくなるので時間が節約できる

どうですか。
これって、コロナ禍になってみんな気づいてやり始めたことでしたよね。
私はすでにやっていたんです。

すると、

・寝る前に1時間はジャズを聴いてリラックスしたい
・週に2回は筋トレしたい
・毎日レアジョブで英会話したい

ができるようになりました。

3.始める日にちを決める

「これやりたいけど、できないだろうな、時間がないもの」
「あれやりたいけど、上司に怒られるだろうな、今忙しいもの」

などと、自分のやりたいことをあきらめていませんか。

まずはやりたいことを何かに書いてみましょう。
メモ帳でもノートでもいいです。
もちろん、スマホやパソコンでもいいですよ。

やりたいことを書いたら、次にどうすればそれができるようになるのか、時間を整理してみましょう。
先ほど言ったように、できる時間をつくるんです。
すると、思ったよりできるようになります。

そして、自分の大事なものが仕事や家事ではないことに気がつきます。
毎日を生活するには、「バランスが大事」ということに気がつくはずです。

4.仕事やプライベートはバランスと流れ

やりたいことができてくると、流れるように時間が使えることに気がつきます。

もちろん、毎日のルーティーンにしてしまい、きちきち時間を決めてその通りにやる。

これはけっこうなのですが、あまり四角しばって生活すると心の余裕がなくなります。
今プレゼンで忙しいのに、無理やり時間割いてジムに行く必要はありません。
要はバランスです。
忙しいときは全力でプレゼンに力を注ぎ、その時使った時間を後で筋トレに使えばいいのです。
人間は2.3週間筋トレしなくても大丈夫。
プレゼンの後に元の筋トレに戻って続けていけば、いつもたくましいあなたでいます。

結論として言うと、仕事やプライベートはバランスと流れなんです。
大事なのは、やりたい!と思ったことを続けることです。
そのバランスと流れを見極めましょう。

5.やりたいことは続けないと積もらない

よくあることなんですが、忙しさにかまけてやろうと思ったことを辞めてしまう人もいます。

・毎週筋トレしていたのに、忙しい日々が長く続いたので、いつのまにかやめてしまった。
・時間がとれなくなる日が多くなったので、英会話学校にいけなくなった。

これはVMDでもよくあることなんです。

・なかなか人が集まらないのでセミナーをやめてしまった。
・VMDの仕事が入らなくなったのでホームページ制作の仕事に切り替えた。
・メルマガを始めたけど時間に余裕がなくなったのでやめてしまった。

私が数字にこだわるのは、数字を重ねることによって持続が確認できるからです。

  • オーバルリンクは創業21年。
  • 書いた論文数は70論文。
  • VMDインストラクター資格者は900人。
  • 売場塾は90期。
  • 月刊VMDは3年目。
  • このメルマガは270通目。

などなど、決めたらその通りに鋭意実行するといいと思います。
「生活がうまくいかないな」という人は、途中であきらめてやらなくなってしまうから。

なんとなくやってみる。
他人がやるからやってみる。

のではなくて、まずは書きましょう。
書いたことは宣言になりますので、ふと思った、というよりも計画として書き下ろした感が強くなります。
計画したことは遂行したい気持ちになってくるのがわかります。

後は時間のバランスと流れにうまくオールを使って航海していけばよいのです。

ということで、今日は暑中見舞いの代わりでした。
ご清聴ありがとうございました。

●VMDインストラクター起業・副業相談会

VMDを自分のキャリアにしたい、と思う人は、VMDキャリアの蓄積の仕方、本職とVMD職のバランスと流れの取り方、いろいろお教えできます。
ぜひ、「VMDインストラクター起業・副業相談会」にお越しください。
最後は宣伝でした。(^^)

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

VMDコンサルのサービス内容

VMD研修の様子

1.VMDコンサルビジネスは3つからできている

今回はVMD専門会社、オーバルリンクのサービス内容を紹介します。

当社の宣伝というよりも、VMDインストラクターや他のVMDプロのお仕事の参考になると思います。
店舗トレーニングや臨店指導、起業したときのVMDビジネスの参考にしてください。

オーバルリンクのサービスはたったの4つ。

・売場塾
・店舗診断
・リバイス
・リモデル

リバイス(その場で売場改善するサービス)は店舗診断の延長みたいなものなので、実質下記の3つだと思います。
・売場塾
・店舗診断~リバイス
・リモデル

この3つだけで20年会社を運営しています。(^^)
では簡単にVMDビジネスの本質をお話ししていきましょう。

2.VMDコンサルティングは抽象的なオファーから始まる

ほとんどの小売店は、下記のような漠然とした悩みがあります。

「なんかうちのお店、おかしい」
「店舗スタッフのスキルなんとかしたい」
「お店づくりのコツが知りたい」

ほとんどのメーカーは、下記のような漠然とした悩みがあります。

「なんかうちの売場、おかしい」
「営業担当のスキルなんとかしたい」
「売場づくりのコツが知りたい」

なので、当社に来るクライアントオファーの70%は下記です。

「うちの売場、なんとかしたい」

そう、クライアントのVMDに対するオファーは漠然としているんです。

「VMD研修して」
「店舗デザインを変えて」
「美しいディスプレイつくって」

という具体的なオファーはあまりありません。
すなわち、悩み解決のひとつとしてVMDが役に立つのでは?
と思って当社にメールや電話をしているのです。

オーダーは実にあやふや。
そんなクラアイントに対して

「VMDセミナーやりましょう」
「店舗ディスプレイつくりましょう」
「改装しましょう」

みたいに単純に返すことはありません。
それらはあくまで単発サービスの羅列にすぎません。
会社のサービス内容を言っているだけです。

「売場づくりに悩んでいる」

でも、どこがダメでどのようにしたらいいのかわからないので、なんとかしたいと言ってきているんです。
医者を思い出してください。
患者は「なんか最近体がだるくて」と言っていねのに、いきなり風邪薬出さないですよね。

VMDも医者と同じように問診するんです。

3.お悩みを問診する

なので、「どうしました?」とクライアントの話をじっくり聞き、
悩みはどうやったら解決できるのか話し合います。

下記の様に問診していき、解決に導きます。

「なんかうちの売場、おかしい」 → 「どうおかしいのか」「どう改善したいのか」
「営業担当のスキルなんとかしたい」 → 「今のスキルの程度はどうなのか」「どのレベルに達したいのか」
「売場づくりのコツが知りたい」 → 「どういうコツが知りたいのか」「コツを知ってどうしたいか」

などなど、悩みを問診によってほぐしていきます。
とはいえ、クライアントから「どうおかしいのか」と聞いても「なんかおかしいです」と具体的な答えは返ってきません。
商品のこと、サービスのこと、店内販促のこと、いろいろ問診したあと、おおまかなことは掴めますが、核心は持てません。

一番いいのが、写真を20枚くらい見せてくれるとありがたいです。
なければ、レントゲン写真を撮ります。

4.売場のレントゲン写真を撮る

レントゲン写真とは、店内というカラダのレントゲン写真です。
つまり、店内の写真を撮るんです。
胃カメラも撮りますよ~。
棚の隅々まで撮るんです。

我々VMDプロは、売場の写真をレントゲンを見る医者さながらじっくり見ます。
すると、悪い個所が見つかり、それを直すにはどうすればよいのか、明確になっていきます。

レントゲンを撮らずに、売場を回ってここがおかしい、ここが悪いという指導はできますが、それだと漏れがたくさんあります。
売場は広いのでたまたま目に入らなかった部分が多いからです。
全体俯瞰だけでなく、棚の陳列、POPのデザインや文句、什器の位置や通路、照明など見るところはたくさんあるんです。
30坪の店舗に対しては平均200枚くらい写真を撮ることになります。
人間ドックならぬ、店舗ドックを行うと考えてください。

5.店舗診断は売場の人間ドック

どんなにキレイに見える売場でも50は直し箇所があります。
それを全体ソートして一覧表にしたのが店舗診断シートです。
それは健診表と処方箋で構成されています。
これがオーバルリンクの「店舗診断」です。

●店舗診断

単なるあらさがしと違うのは、ブランディングの要素が入っていること。
事前に問診でショップブランドや商品ブランドなどをお聞きするので、そのブランドの世界観や店舗コンセプトに店の状態が合致しているかも健診表に現れます。

なので処方箋は、この企業やブランドに沿ったものになるということです。
コンビニだったらセブンイレブンとローソンのショップブランドは違いますし、ドラッグストアだったらマツキヨとアインズ&トルペのショップブランドはかなり違います。
ドラッグストアだったらどこも同じというわけではないのです。

ブランディングを店に落とし込むってどういうこと?と思った方は下記のサイトを参考にしてください。
●自店の店舗デザインはどうあるべきか

6.リバイスは店舗診断の延長線

リバイスとは、短時間で売場を直すことを言います。
店舗診断で処方箋が出ますので、それに沿って行うのが順当ですが、品揃えをチェンジする時、拡張や縮小をする時にタイミングよく行うこともあります。
その時は、店舗診断しなくても最低店舗の写真をいただき、悪いところはすべて直すようにしています。

●リバイス

リバイスは完全リバイスと部分リバイスがあります。
完全リバイスはフロアのゾーニング変更から、部分リバイスは1コーナーのみ。
店の面積と人員によって2種類に分けられます。
詳しくは下記をご覧ください。

●完全リバイスと部分リバイス

店の売上を上げたい場合は部分リバイスをお勧めします。
長年VMDをやっていますが昨今ディスプレイを変えただけではなかなか売上は上がりません。
やはり、品揃えや体験販促、売場デザインも変えないと売上が上がらない例が多いです。
ディスプレイを変えると有利なのは、売場の見てくれがよくなることです。
詳しくは下記です。

  • 商品フェイスがわかりやすくなる
  • 商品が選びやすくなる
  • 陳列がキレイになる
  • 空間を取ることで商品がそれなりに映える
  • カラーが美しくなる
  • POPの配置が整理整頓される
  • 棚編成がデザインになる

などです。
ディスプレイを変えるだけでもよいのですが、肝心のフロアレイアウトや導線、打ち出し商品などは変えていないので、VMD効果は最大にはなっていないです。

部分的な直しにしろ、全体的な直しにしろ、とにかくよくなった店舗を実感したい、というクラアイントにはおススメです。
数時間から1日でできますので、手軽に頼めるサービスと言えます。

このリバイスのいいところは、店舗スタッフが売場改善の仕方を会得出来ること。これにつきます。
我々コンサルが去った数日後、店が元の悪い姿に戻っていることはありません。
店員さんがキープしてくれるからです。
私たちは、ディスプレイをつくりに行くのではなく、売場改善の仕方を店員さんや幹部に教えに行っているんです。
ディスプレイはほぼ店員さんにやっていただいています。
そこがディスプレイスタジオと大きく違う、VMDコンサルの本質なんです。

7.売場塾でリバイスの技術が習得できる

売場塾はVMDの学校で、VMDインストラクターの資格を認定しています。
このVMDインストラクターはVMDを学んで何ができようになるのか?
それはズバリ、リバイスなんです。

売場改善のインストラクターとして、臨店指導や研修ができるようになります。
そしてもちろん店舗診断も。

先ほどのクライアントの悩みを思い出してみてください。

「なんかうちの売場、おかしい」
「営業担当のスキルなんとかしたい」
「売場づくりのコツが知りたい」

これらを自分たちで解決できるのがVMDインストラクターということです。
具体的には下記を力点としています。

・店舗診断
・リバイス
・ガイドライン制作
・研修

単にディスプレイがうまい人を育てるわけではなく、売場解決を前提にしたカリキュラムになっています。
なので、メーカーの方はより自分たちの商品が売場で売れる、小売店の方は自社ブランドらしいたたずまいと品揃えがキープできます。

VMD基本講座は3日間、専門1日講座は4つあります。
リーダーや幹部の方はぜひ4つの指導講座も受講してほしいです。
基本3日間をベースにして5日間、7日間じっくり学習した方がより深く知識やスキルを得ることができます。

売場塾の特記すべきところは「55の売場づくりの型」を教えていること。
空手やヨガに型があるように、VMDの基本形55を3日間で学べ、専門講座でその応用が習得できること。
これが当社のメソッドなんです。

詳しくは売場塾の資料をお求めください。

●売場塾資料請求

なお、当社の法人研修はこの売場塾がベースになっています。
サービス名を「オーダーメイド売場塾」と言います。

●オーダーメイド売場塾

ちなみに、「個人的に安くディスプレイだけ教わりたい」という方は、オンラインセミナーの「センスアップセミナー」を受講するとよいです。
毎月テーマが変わっディスプレイ制作にもトライできます。

●センスアップセミナー

8.リモデルはモデル店をつくるためのサービス

リモデルだけはコンサルではなく、プランニングサービスとなっています。
上記までは、「ノウハウを教える」というコンサルサービスだったのですが、リモデルは実際に店舗や売場を設計するサービスです。
もともと当社は、改装の依頼を受ける際、設計事務所に外注していたのですが、自社ですべて賄うようになりました。

コンセプトからパースモデル、定数定量のデータシートづくり、フロアレイアウト、什器デザイン、ディスプレイ、POP制作までVMDをトータルにプランします。
11のプラン項目からなり、改装の場合は店舗診断から始めます。

●リモデル

施工会社や設計会社とどこが違うのか。
それは、VMDプランをつくることです。
平面図や立面図に落とし込むだけではないのです。

VMDプランとは、VMD分類、ゾーニング、定数・定量、什器デザインとレイアウト、POPデザインと設置、IP,PP,VPなど11項目あります。

このサービスのいいところは、11プランひとつひとつ丁寧にプレゼンしていくこと。
企画書も重なっていきます。

VMDマニュアル

企画書は50ページくらいになり、最後はそれが店づくりのマニュアルになるところが特色。
実験店をつくりながら、リモデルノウハウも重ねていける、一石二鳥のサービスと言えます。

そんなわけで、ただ改装だけならは、当社でなく施工会社に頼むといいと思います。
リモデルは、コンセプトから店を変える、売り方から店を変える、実験店企画設計サービスと考えてください。

9.実際は各サービスの組み合わせとなる

いままで、4つのサービスをお知らせしてきました。
この4つのサービスは、モジュール化されていて、バラしたり統合したりできるんです。
企業がVMDプロジェクトを推進して、VMD部を発足したり、VMDノウハウをわが社のものにしたいなど、単発の研修やリバイスではなく、総合コンサルする場合にはこの4つか3つのサービスを統合します。

4つのサービスはパッケージになっているので、クライアントの業種・業態・取扱商品・ブランドに合わせカスタマイズし、年間計画で進行していく。
プロジェクトが終わった後は、VMD部が完成、またはブランドガイドラインが完成していることが多いです。

このサービスを数年前「VMD導入プログラム」と名付けました。

●VMD導入プログラム

4つのサービスに関心ある方はぜひ資料請求してください。
下記のページに行くと、いろいろ無料で資料がゲットできます。

●資料請求

どなたさまもお待ちしております。

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

魅せる収納・イエナカディスプレイ

最近、キッチンや書斎をリノベしてディスプレイスペースをつくってみました。
時はイエナカ回帰。住空間を素敵に変えたい!という方が増えています。
「見せる収納」ということで、生活用品をキャビネットやクローゼットにしまうのではなく、店舗のように見せる方も増えています。

  • 見せるクローゼット
  • 見せるキッチン
  • 見せる本棚
  • 見せるガレージ

収納に関する本はあるけれど、「見せる収納」に関する本はあまりないので、ここで私事で「見せる本棚」を実際につくってみました。
いつもお店のVMDをやっていますが、家の中のVMDの仕方をお教えします。

まずは、Before Afterをお見せします。

見せる書棚 改善前

これがBefore。

これがAfterです。

ここで使われているVMDのディスプレイテクニックは下記です。

  • 陳列と展示
  • くくり
  • 棚の並べ方
  • 棚の並べ方
  • 壁面ディスプレイ
  • 繰り返し構成
  • テーマ設定の仕方
  • ディスプレイ構成
  • ルック&テイスト
  • フォーカルポイント
  • 展示台の使い方
  • プロップスの使い方

見せる本棚プランニングのフローは、売場リバイスと同じ進行です。
下記をご覧ください。

  1. 本棚診断・・・本棚をいろいろな角度から写真を撮る
  2. コンセプト・・・どんな本棚にしたいかキーワードをつくる
  3. MD分類・・・今ある本の分類をし、いらないものを破棄
  4. VMD分類・・・本を分類する
  5. データシート・・・定量を決める
  6. 什器デザイン・・・什器と棚編成を決める
  7. IP・・・棚割りをする
  8. PP・・・展示を決める

どうですか。
ほとんど売場づくりと家の本棚づくりは変わらないんです。
従来の収納学にないのは、データシート、IP、PP位でしょう。
ここらへんも踏まえて、家でできるディスプレイテクとプランニングと詳しく解説します。
上記の順番で進めていきます。

1.本棚診断・・・本棚をいろいろな角度から写真を撮る

まずは写真撮影と採寸です。
写真は、いろいろな角度から20枚くらい撮ります。
2つのラックがあるので、ラックずつ、棚ずつ撮り、引き出しの中、スライド棚の前後をすべて撮ります。
要は、お店のIPを什器ラックごとに撮影していると仮定してください。
収納も考えるので、文具が入った引き出しの中も撮影しました。

書棚の内容は趣味の本、ライフスタイル、ビジネス書、そして仕事の書類、雑誌など。
これらは種類ごとに固まってはいるものの、飛び飛びになっているところもありました。

書斎にいるときは音楽を聴いているので、ステレオがあり、ヘドラもありますね。その下はダンベル。
ダンベルはは筋トレ用のものですが、これが置く場所がなくて書棚に突っ込んでいました。
とても「見せる本棚」にはなっていませんでした。

2.コンセプト・・どんな本棚にしたいかキーワードをつくる

写真診断の結果、コンセプトは「趣味の本」としました。本当はビジネス本も入ってますが、仕事が趣味のようなものなので、趣味の本棚」としました。
写真は、コンセプトに従って改善するポイントを書いています。
写真の赤い線で囲ってある部分はすべて仕事の書類で本ではなく、ファイル類なので、すべてこれらを隠すことにしました。つまり、キャビネット棚にして仕事の種類は隠すのです。

3.MD分類・・・今ある本の分類をし、いらないものを破棄

いるもの、いらないものを仕分けしました。
いらないものは雑誌が中心です。
本をよく読む私は、昨年から「繰り返し読む価値のない本は捨てる」と決め、お盆と正月とGW(ゴールデンウイー)は、ばっさり本を捨てています。
本の分類は下記にしました。

  • 旅行
  • 海外旅行と美術館で買ってきた美術本
  • ビジネス書
  • 趣味(釣り・スポーツ・コーヒー・ワイン・ビール)
  • VMD本
  • ライフスタイル書
  • 英語
  • 流通ネットワーキング(雑誌)

4.VMD分類・・・本を分類する

さあ、これからが本番です。
MD分類に分けた本を、本棚に置く算段です。
分類しても、そのまま本棚に入らないからです。

上の写真を見てください。
とりあえず、MD分類に分けた本をひもで縛って、棚割りの参考にしています。

各々のひもくくりは、MD分類を下記の観点で棚に置くように分類したものです。
・同じシリーズの本
・同じ著者の本
・同じような課題の本(ビジネスならマーケ、経営、販売など)
・同じサイズの本
など。

特に重要視したのがサイズで、高さが同じものを揃えるようにしました。
その方が棚に本が並んだ時にデコボコに見えないからです。

5.データシート・・・定数・定量を決める

データシートとは、定数(什器の数)、定量(1棚に置ける商品の数)を計算するシートを言います。
ブランドショップに商品が棚にピタッと並んで美しいのは、この定数・定量が決められているからなんです。
定数が多すぎると店は什器で埋まってしまい、通路が狭くなり、店の見通しも悪くなり、窮屈な店に見えます。
定量が多すぎると、棚は商品でギュウギュウになります。

先ほどのBfore Afterの写真を見てください。
Beforeの写真は、ファイルが横になっていたり、棚の隙間に本を横に入れてたりしていて見てくれが美しくないです。
Afterの写真を見ると、棚はすっきりピタッと入っています。オブジェを飾る空間さえあります。
その空間を使って、書棚中央にジャズの展示スペースを設けるようにしました。

では、データシートをお見せします。

表の一番上のインデックスをみてください。
大分類・中分類に本が分けられています。

大分類は、

  • 仕事
  • 雑誌
  • 文庫本
  • 備品
  • 文具
  • ダンベル
  • スタジオ器具
  • 教材箱

です。

中分類は、サイズ別になっています。

中分類の右横のNoは、先ほどお見せしたひもくくりの、くくりの幅です。
つまり小分類と考えてください。
先ほどVMD分類のところでお話しした、
・同じシリーズの本
・同じ著者の本
・同じような課題の本(ビジネスならマーケ、経営、販売など)
・同じサイズの本
でくくった本のカタマリを立てたときの背表紙の合計サイズ、つまり棚にひとカタマリを入れたときの横サイズです。

Noの右横を見てください。
今度はmm単位でその横幅を表記しています。
例えば、大分類/ 本 → 中分類/F → No2は、横幅が225mmということです。

今度は、インデックス上の黄色い部分を見てください。
「総棚延長数」とは、分類ごとの本を並べたときの横幅をいいます。
例えば、大分類「仕事」→中分類「A 大型ファイル」→小分類「No1」の横幅は170mm、つまり17cmということです。

大分類「仕事」→中分類「A 大型ファイル」の横幅は1,428mm(1.428m)ということです。
つまり、大分類「仕事」のAの大型ファイルをズラッと横に並べるには1.428mの棚がいるということです。

同じように、大分類「本」をヨコにズラっと並べるには5.89mの棚がいるということです。

このように、本を横にズラッと並べた距離を「総棚延長数」といいます。
これはVMD担当が商品を棚に並べるときに行う計算方法です。

表の一番下を見てください。
本やファイルを横にズラッと並べた距離は、12.819Mあるということです。
なので、あなたが書棚を買う時に、「内にある本は書棚に全部入るかな?」と悩む必要はなくなります。
家具店で本棚を買う時に、メジャーを持って行き、棚の全体の長さを測ればいいのですから。

注意点は大分類の「ダンベル」~「教材箱」の本以外のものです。
これは、「見せない収納」ですので、収納スペースさえ確保できればいいので、大体の立方体(高さ・幅・奥行き)を明記します。

例えば、ダンベルですが、幅11.5cmで高さが59cm、奥行き25cmの立方体としてみなして、それが入るスペースを確保すればよいです。
下の写真をご覧ください。

6.什器デザイン・・・什器と棚編成を決める

什器デザインは、下記の要素で決めます。

  • 部屋のテイスト
  • サイズ
  • 素材
  • 機能

・部屋のテイスト
私の部屋は、白・茶・緑の3色の部屋なので、本棚は白と茶色を選択。
全体的に白なのですが、本棚中央は展示スペースにし、そこは茶色にしました。
VMDで言うと、IPとPP部分を区別したということです。

・色
先ほど述べたとおり、白・茶・緑の3色の部屋です。
カーテンも鳥のいる緑です。
カーペット見えないですが、これも緑。

・サイズ
これは、家具デザイナーにお任せしました。
データシートを渡して、本がきちんと入るように設計いただきました。
CGを3回くらいつくっていただき、検討しました。
キャビネットの数、棚の数なども打合せしました。
データシートがあるので定数定量は確信でき、不安は全くありません。

この写真はパース図。

この写真は設計図。

これは、データシートの総棚延長数を元に、デザイナーが設計した本棚に本が入るかどうか確認した図です。

・素材
素材は白と茶ですが木目にしました。
素材はメラミンですが凹凸があり、本物の木に見えます。
いわゆる樹脂合板ってやつですね。
今回収納ラボさんに頼んだんですが、素材見本など丁寧に提供してくれました。
ここ「見せる収納」(下の写真)が展示してあってまさにVMDやる人にとって参考になるラボでした。

・機能
ここでいう機能は「収納機能」です。
本以外のモノがきちんと入るかのチェックです。
下段のキャビネ部分のドアヒンジとか、ガチャ受け棚のサイズとかも決めました。
ほとんど、店をつくる際の什器チェックと同じです。

棚編成ですが、キャッピングにしました。
格子編成だと面白みがないからです。
格子編成とは、タテヨコ一線に区切る方法です。
下図左がそうです。

下図右がキャッピング。
棚を上下左右にずらして壁に動きをつけるVMD手法です。
無印良品がよくやっていますね。

キャッピングに関しては下記を参考にしてください。
●店舗視察のコツ~お菓子店事例

7.IP・・・棚割りをする

棚割りは、VMD分類にすでにわけてあるひものくくりをキャッピングした棚に載せるだけ。
その場合、リレーションと言って近くの棚には似たジャンルの本を置くようにします。
その方が探しやすいからです。
例えば、「マーケティング」の横に「VMDの本」、その横は「インテリア」の本というように、内容が近しい本のくくりを隣同士に置きます。

肝心なのは、棚に隙間があるからと言って、関係ない本を置くことはよくないです。
VMD分類が乱れてしまいます。
関連本のみの棚とし、関係ない本は棚区画から排除します。
すると、棚に隙間はでるのですが、大丈夫。
オブジェを置けばいいんです。
私は招き猫が好きなので、それをオブジェにしました。
なんかいいですね。

8.PP・・・展示を決める

最後は、本棚中央の展示スペースをつくります。
展示スペースは書棚中央の茶色い部分。
フォーカルポイントになりました。

下記の要領で進めます。

  • テーマ
  • 展示器具
  • プロップス

・テーマ
テーマはJAZZとしました。
ジャズが好きで毎日聴いているので、展示棚にオーディオを設置しました。

・本
テーマがJAZZなので、ジャズ・フュージョンのCDと本を並べます。

・展示器具
ライザーという展示台やブックスタンドを使用。
ひな壇をつくり、そこにCDなどを置きました。

・プロップス
プロップスはアイビー。
部屋が緑と白と茶色で出来ているので、緑を加えたいところ。
そこでアイビーを下に下らせて、青々しい感じにしました。
アイビーはジグザグの構造線に。
絵葉書も同様にジグザグ。
こうすると動きが出ます。
構造線を考える事をリニアスキームと言い、これ覚えておくとあなたの部屋のディスプレイ、いきいきしますよ。

ちなみに、いろいろテーマを変えてつくった事例を写真に上げます。
プロップスにテーマを持たせました。
まずは私の好きなマリメッコで行きますか。

やっぱ、ゴジラかな。

時計も展示できる!と思いました。

だいたいわかりましたか。
VMDのスキルを活用した、イエナカディスプレイ。
見せる収納好きな人は、ぜひVMDを勉強してくださいね。
毎月、オンラインでディスプレイワークショップを開いています。

●センスアップセミナー 毎月開催

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

売場づくりにおける多能工人材戦略とは

今日は、以前書いた未公開論文を披露します。
文体が論文調ですが、ぜひお読みください。

星のやに見る多能工型人材

多能工とは、早い話、歌って踊れる人材ということだ。
ひとつの役割だけでなく、二つ以上の役割を担う人材のことである。
この言葉を使っているのは(株)星野リゾートが有名で、星のやの人材育成イコール多能工型人材育成となっている。

従来の旅館業は、中居、料理人、掃除人、売店販売員など仕事によって人材も分けられていたが、非効率だった。
各人が専業だと稼働時間がそれぞれ違い、暇な時間ができてしまう。
時間が空いた人は、忙しい部門の仕事を手伝うことで、人材の時間効率がよくなり、作業もスムーズにいく。
しかも人的コストが浮く。
これが多能工の考え方だ。

私は毎年星のや軽井沢に泊まっているが、確かにそうだ。
中居が部屋に案内したと思ったら、夕食を持ってきたのは違う人だった。
ところが次の日にタクシーで近くのレストランまで送ってくれたのは、中居だった人だ。

星のやは確かに一人三役以上をこなしている。
星のやは、多能工制を取り入れて、時間を効率的に管理している。その中居らしき人は、毎日の私たちのスケジュールを詳しく私に訊く。いつ、部屋を留守にして、いつごろ戻るのか、夕食は何時ころかなど・・・。
このわけは、時間別人材配置をスケジュール化している表れである。
なるほどと思った。

さて、私の専門はVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)なので、今回は売場づくりの人材について話したい。
VMDとは、アメリカから来た売場づくりのノウハウのことだ。
VMDをプランしたり実施したりする人のことをビジュアルマーチャンダイザーという。
アパレルブランドに必要な専門職だが、最近は、雑貨店はもとより、惣菜店舗やカーディーラーなどVMDを担当する人は多くなってきている。

昔のビジュアル・マーチャンダイジング

もともと、日本のビジュアルマーチャンダイジングの仕事は、ディスプレイ制作業務が多かった。
VMDは1970年代に日本に入ってきて1980年に広まっていったのだが、これがデパート全盛の時代に合致する。
つまり、デパートのウインドウの演出の仕方にVMDの手法が生かされてきたわけであり、VMD担当はウインドウのディスプレイを作ったり、ショーケースの商品インスタレーションが主な業務だった。

ところがGAPやZARAなどのファストファッションが日本中に拡散していった1990年代、VMDはウインドウだけにとどまらず、店内のすべてのディスプレイ演出を行うスキルにグレードアップした。
ファストファッション各社は、社員が店内すべてのディスプレイ制作・管理を担うようになっていた。
店舗のVMDスペシャリストとして、本部の発信した売場づくりのガイドラインに従い、それを店内で実行するという職種が社内に出来上がった。
これが店舗VMDという担当者である。
(本部にいてガイドラインを作る係は本部VMDという)

もうひとつは、ウインドウ重視の時代は去り、ラックやパイプハンガー、テーブルやキャビネットなどのシステム什器を使った売場面積の効率化と、商品の展開と個性的な陳列方法によるブランドの世界観演出が重視され、ウインドウは売場構成の一部になった。
ウインドウで人を引き寄せるというよりも、店舗全体で人を引き寄せるトータルディスプレイ戦略が、ウインドウ需要を降下させたのである。
また、買い物の主軸が百貨店からショッピングモールに移ったため、ほとんどの店はそもそもウインドウがない。
雨が降っても大丈夫な全天候型フロアのテナントだからだ。

社内人材をVMD担当に仕立て上げる

そんなわけで、VMDの担い手はディスプレイをつくる専門職から一般社員に移ってきた。
いまや美大卒でも服飾専門学校卒でもない、普通のOLがアパレルメーカーに入社して、見よう見まねでVMD担当になっているのだ。
先輩社員の教える売場づくりのスキルを吸収して一人前になっていくのだが、手っ取り早く、VMD学校に行くケースも目立つ。
実際のところ、当社はVMD学校「売場塾」を開催しているのだが、多くのアパレルメーカーの指定校になっていて、毎年新人OLが当校の門をたたく。

もともとメーカーでも小売店でも、何かのノウハウの伝承というものは先輩社員が担ってきた。
営業、接客、企画、提案、そして売場づくり・・・と、会社のノウハウはベテラン社員が持っていて、それを新人に教えていくという流れだった。
ところが、終身雇用制の崩れた今、データ化、マニュアル化が進み、いつ何時誰が辞めても後任に支障がないような仕組みが社内に出来上がった。
そこで売場づくりのナレッジ化が各企業で推進され、VMDのガイドラインづくりが定型化した。
VMDの集合教育・現場教育は、ガイドラインを更新して教えるための役目をしている。

今やディスプレイだけ美しくしてもモノは売れないことは、昨今の百貨店から見て取れるだろう。
ディスプレイに加えて、ショップデザイン、品ぞろえ、店頭販促までも含めて日々調整し、ガイドライン化するのがVMD担当の役目になった。
VMD担当の多能工時代の始まりなのである

多能工型のVMD

日本のメーカーや小売店のVMD担当は多能工だ。
大抵のVMD担当は起業の販促部にいてVMDを兼業としている。
日々、販促活動をやりながら、VMDの仕事をこなしている。
企業の販促活動というのは、主に下記から成り立っている。

  • 新商品の年間販促・広告プランニングと実施
  • 新商品の展示会の企画立案、実施
  • 百貨店やGMSなど商業施設内店舗の営業支援

これに加えて、前述の集合教育・現場教育・ガイドラインの更新業務が加わる。
この3つを販促の立場から解釈するとエデュケーショナル販促ということになろう。

エデュケーションナル販促とは、売場づくりを教育すること自体をメーカーの販売促進にするということである。
どういうことかというと、メーカーのVMD担当が、お得意先である百貨店やGMS、専門店に対して売場づくりの研修を行うということである。
過去にいろいろなエデュケーションナル販促を事例として掲げてきたが、もう一度ひも解くと下記のようになる。

  • 家電メーカーのVMD担当はGMSや時計専門店などのチェーン店に時計の売場づくりを教えている。
  • スポーツ用品メーカーのVMD担当は、スポーツ用品専門店にお店づくりを教えている。
  • 学生服メーカーのVMD担当は、学生服専門店に対してお店づくりを教えている。

いずれも自社商品の売場づくりを兼ねて行う。

そうして、メーカーは店内の売場の拡大を図ることができるのだ。

VMDの教育を行う人のことをVMDインストラクターという。
VMDインストラクターは独立したフリーランスの人だけでなく、メーカーや小売店の社員に多い。
メーカーや小売店の社内先生をつくることにより、自社のガイドラインをもとにテキストが作れる。
または日々の売場改善報告書からケーススタディを作って、それを蓄積しガイドラインとして後輩に教えることができるのである。
このように、ここ15年の間で、VMD担当は販促やディスプレイ業務だけでなく、教育者としての業務もこなす多能工となってきたのである。

ますます増えていく多能工

多能工が増えていく原因に、IT化がある。
VMDを空間のデザインと捉えると、ITの進化で、平面と立体のデザインが取り崩されてきている。
平面はPOPやサイン、立体は床・壁・天井デザインであるが、POPが壁に組み込まれて壁紙になったり、床がPOPになったりしている。
POPデザイナーは立体デザインもやらないと自己を伸長することができなくなってきている。

事務職や管理作業がコンピュータで誰でもできるようになった今、事務職、管理職という人種もそれほどいらなくなっているに違いない。
だから、事務もできて営業もこなす人材がこれからは重宝されていくかもしれない。
会社は、社内人材を器用な人材に養成していく時代なのである。

当社もそんな歌って踊れるVMDの人材を育成することをサービスとしてやっていきたいと思っている。
今後の売場塾に期待してほしい。

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

VMD部の仕事の進め方

前回は、兼任VMDの仕事はどのようなものか解説しました。
今度は、専門部署としてのVMD部の業務はどうあるべきかをお話しします。
まず、専門部署としてのVMD業務を体系化すると下記になります。

●PDDC
・Plan
VMDをプランする。計数管理をしたり企画を練る。
・Design
棚割りをする。展示をする。POPをつくる。店舗デザインをする。
・Do
デザインされた空間でモノを販売してみる。
・See
VMD目標はどうだったのか振り返る

売場づくり、店づくりの順番から言うと、下記のPDDCになります。

  • コンセプト
  • MD分類&VMD分類
  • 定数・定量
  • ゾーニング
  • 什器レイアウト
  • VP,PP
  • IP
  • サイン
  • POP

その他、展示会やPOPアップショップなどプロジェクトの仕事もあります。
今回は上記レギュラー業務を中心に話していきます。
ただし、VP,PP,IPはどこかの誰かのブログでよく見ると思いますので、今回は省きました。
組織が大きい場合は他部署との共同になりますので、他部署との連携の仕方もお話しします。

●コンセプト

VMD部の業務としては、策定したコンセプトを店や売場のデザインに落とし込む作業です。
広告部主体だと、カッコいい言葉づくりに終わってしまいがちです。
VMD部はその言葉をデザインテイストに落とし込み、トーンアンドマナーに反映させます。
トーンアンドマナーはともすればテレビやネットなどのマス広告に傾倒しがちで、売場はノーマークということが多いです。
これはメーカーに顕著です。

VMD部の役目は、広告だけでなく空間もブランド化すること。店の床・壁・天井といった構造物、什器・照明・サインといった大道具、POPという販促物までコンセプトが反映されるようにトーンアンドマナーを決めていきます。
トーンアンドマナーとは、デザイナーが守らなければいけないデザインのルールです。

========= 他部署との連携の仕方

(経営企画部、マーケティング部、広告部などと連携)
コンセプトワードを決めるのが経営企画部や広告部の役目だとすると、VMD部はそれを空間デザインへ落とし込むのが業務となります。
プライスカードひとつに目を光らせて管理してください。

●MD分類&VMD分類

ほとんどの企業は分類をPOS管理していますが、何がいくつ売れた位の統計しか管理していないケースが多いです。
VMD部は、単なる仕入れ先別またはアイテム別のPOS分類を、顧客目線の分類にプランします。
すなわち、VMD分類です。

プランをするためのPOS売上分析は大きく分けて二つあり、グルーピング分析と時系列分析です。
(これに関しては後日お話しします)
分析によりVMD分類が確定したら、ゾーニング→什器レイアウト、棚割りを変えていきます。
これをリバイス(売場の再編集)と言います。

52週というリバイス時期においては、VMD分類の時系列売上曲線に同調するように売場の強弱を考えていきます。
強弱の施策は、什器レイアウト、フェイス、POP、ディスプレイ、棚割りに反映します。
例えばディスプレイにおいて、VMD分類グループが導入期の場合は、服はフェイスアウトにしコーディネート展開。
成熟期になったらフェイスアウトとスリーブアウトを多用してPPはリピテーションにする。
など時期にフィットするリバイスをしていきます。

========= 他部署との連携の仕方

(商品部、MD部、プロダクツ部などと連携)
仕様品を仕入れたり、作るのが商品部の役目だとすれば、VMD部は商品の売場展開を考えるのが業務となります。
売場展開は、ゾーニング、什器レイアウト、フェイス、POP、ディスプレイ、棚割りに影響していきます。

●定数・定量

商品部は自分たちの開発または調達した商品をなるべく多く店頭に置きたいでしょう。
販売部はなるべくたくさんの商品をどさっと並べて売りたいと思っています。
また、店舗開発部は商品をどのくらい置くのかを考えずに平面図をつくることが多いです。
平面図には商品展開数は表現されていないからです。

そこでVMD部が定数・定量を定めて、売場の佇まいをコントロールします。
「佇まい」とはスペースブランディングのことです。
空間の余裕があるなしで、お店の印象は変わるからです。
VMD部は定数・定量を設定し、どこに商品を何個置いて、什器数はどのくらいにする・・・という目安書、いわゆるデータシートを商品部や販売部、店舗開発部に提示します。
VMD部は、いわば店舗や売場のスペース・コントローラーと思っていただければよいです。

========= 他部署との連携の仕方

(商品部、MD部、販売部、店舗開発部などと連携)
売場・店舗のブランディングを重んじている会社は、定数・定量は必須です。商品部・販売部がたくさん売りたいという気持ちはわかりますが、VMD部はぐっとこらえて空間の大事さを訴えるしかありません。
私のVMDコンサル18年の経験から言うと、商品を少なくして売り上げが減った売場や店舗は1軒もありません。
むしろ商品を少なくして、売上が上がった事例が多いです。

●ゾーニング

VMD部の業務としてのゾーニングとは、フロアにおける大ざっぱな売場区分をプランすることです。

通常ですと、店舗開発部が店舗デザイン事務所や施工会社に丸投げしそうなところを、VMD部がゾーニングプランを行い、それを施工会社や社内デザイナーにオリエンします。ゾーニング図は、フロアの大分類、導線、主通路、リレーションを考えて書いたフロアの簡略図です。
例えば、化粧品店では、大分類を「美肌化粧品」「メイク・ヘアケア」「美容器具・雑貨」「サプリメント・健康食品」などと区分します。
これをフロアのどこに配置させるかを何パターンか考えて一番いいプランを選びます。。
どんなゾーンが隣同士だったらよいのか、レジ近くにはどのゾーンがよくて、エスカレーター近くはどのゾーンがいいのか、シミュレーションは尽きません。

フロアは一度できてしまうと、やり直すのが面倒です。
十分プランしてください。

========= 他部署との連携の仕方

(店舗開発部、店舗デザイン部)
通常、施工会社はいきなり平面図(什器を配置した図面)を持ってきます。
ゾーニング図とは、VMD分類のゾーン分類を図に示し、主導線を示した図のことで、平面図の前段階の図です。
VMD部はゾーン図を施工会社にオリエンすることによって、理想的なフロアレイアウトを完成させるのです。

●什器レイアウト

什器レイアウトの図面は2.3あり、什器デザインと平面図または立面図です。
店舗開発部は、施工会社から什器デザイン図、平面図・立面図などをいただきますが、そのままうのみにせずにVMD部と連携してください。

什器デザインは、商品や設置場所、ブランディング、PPの有無により変わります。
例えば、傘を売る什器とアイスクリームを売る什器は違いますし、島展開の什器と壁面什器は違います。
什器における展示スペースのありなし、壁面オーケストレーションの仕様によっても什器デザインは変わります。
これを知っているのはVMD部です。

平面図は什器の間取りのようなものですが、商品VMD分類・リレーション・導線のプランをベースに考えなければいけません。
VMD部の役割はそれをプランすることです。

立面図はオーケストレーション設計と言っても過言ではないです。
VMD部は棚の高さを決めたり、キャッピングという棚自体をデザインにするプランを立てます。
店舗デザイン部は什器の意匠、商品部は商品フェイス、販促部はPOPのみの作業に陥りがちですので、VMD部がそれらをしっかり監修しながら、什器の意匠・商品フェイス・POPなどの要素をオーケストレーションプランに落とし込んでいきます。

========= 他部署との連携の仕方

(店舗開発部、店舗デザイン部、販促、商品部)
単純な什器デザイン、平面図に陥りがちな図面を精度あるものにするのがVMD部の役目です。
什器は商品が入ってナンボです。
施工会社の平面図を見てOKというようにせずに、商品の入った什器をどのように運用していくか、MDカレンダーに合わせた商品VMD分類・リレーション・導線のプランをベースにした什器レイアウトを52期ごとに立案しなければいけません。

●サイン

サインとは、屋号や商品ブランドサイン、駐車場のサイン、レジのサインなどいわゆる看板のことです。

往々にしてブランド管理部が店に看板を納入して終わり。
ロゴをメールで送って後は任す・・・という単純作業で終わり勝ちのところを、VMD部がしっかり現場監督するわけです。

屋号回りにPOPが貼られていないか。
サインに店舗備品がひっかかっていないか。
デパ地下のテナント店舗の屋号が在庫品によって見えないのは、VMD部のサイン管理の足りなさでしょう。
VMD部はサイン設置のNG集などをつくってショップに配布するとベターです。

また分類サインは、「肉」「魚」「野菜」「練り物」「総菜」という大分類サイン、「ふりかけ」「お茶・コーヒー」「麺」「ジャム」といった中分類の仕様と設置場所の設計は商品部、店舗開発部などが行います。

ところが分類サインは場合によっては、「リラックスしたい方に」「体の中からキレイにした方に」「モチベーションを上げたい方に」など、悩み別サインというような従来のアイテム別以外の発想も求められてきます。このような展開分類サインはVMD部がアドバイスしたほうがよいでしょう。

========= 他部署との連携の仕方

(店舗開発部、店舗デザイン部、販促、商品部)
屋号、商品ブランドサインのロゴやマークの仕切りは主にブランド管理部や広告部が行いますが、VMD部はそのサインの置かれる環境美化を図ります。
また展開分類サインをつくるのもVMD部の勤めです。

●POP

ともすると販促部は販促用品を店に送って終わり。になっています。
そのため、店側が売場にベタベタ、バラパラにPOPを貼る風景が横行しています。
POPも売場の重要な構成要因ですので、それを設計するのがVMD部の役目です。

POP制作は販促部の仕事ですが、販促部は本当に販促部分のみしか見ていないケースがあります。
広告—広く告げる—というフェアやセールの告知POPだけではないのです。

空間ブランディングとしての演出POP、商品説明・ブランド説明といった説明POP、営業時間・ポイント割引といった案内POP、20歳以下厳禁・火気厳禁などといった注意POPなど、POPの種類に応じた仕様・設置場所の確認と実施を行わなければいけません。

========= 他部署との連携の仕方

(販促部、広告部、商品部)
POPをデザインするのは販促部の仕事ですが、POPを適正配置するのはVMD部の仕事です。
りPOPは作ってからが勝負で、配置されてナンボなのです。

と、ここまで一気にVMD作業の役目と他部署の連携の仕方をお話してきました。
VMD部ってディスプレイ制作係じゃないの?と思われた方は古いです。
VMD部は売場づくり全般を司り、その役目は多岐に渡るんです。

VMD部をつくりたい企業の皆さんはぜひ下記のサービス資料を請求してください。
●VMD導入プログラム

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)