店舗視察のコツ~お菓子店事例

今日は店舗視察の仕方をお話ししましょう。
ハワイのスイーツ・チェーン店、ホノルルクッキーカンパニーを事例にしました。
まずは、下記のように見るポイントを決めておきます。
だいたいこんなものが得られるのではないか、という予測をします。

  • オーケストレーション
  • キャッピング
  • シンメトリー
  • VMD分類
  • 什器レイアウト

上記のフレームワークを念頭に入れて、各店舗のVMDガイドラインを探求します。
同社がどのような規則でチェーン店のVMDを規制しているのか研究してみるわけです。
だから少なくとも3店舗以上は見学しなければいけません。

店舗視察した店は、ホノルル空港店、ビーチウオーク店、ロイヤルハワイアン店の3つ。
気付いた順に、VMDの違いと統一点を語っていきます。

まずはフロアレイアウト。フロアの取り方は、すべて開口部の幅1に対して奥行きは2の長方形。
3店ともカウンターは突き当り奥にあり、VPは入口にありました。
左右の壁面に売場を設け、フロアの中心にテーブルを置き、その周りを歩く「アイランド回遊型」になっていました。

壁面は、ベストセラー商品と季節ギフト商品売場に大別されていました。
見学した季節はクリスマスだったので、季節ギフト売場は赤いパッケージが目立ちました。
対面の壁はベストセラー売場で、ここは緑の常用パッケージで構成されていました。
ご存知の通り、同店の商品は9つのフレーバーのクッキーのみです。
なので、店はカートンの入り数とパッケージデザインで差別化するしかないのです。
不思議なのは、緑の商品売場に人が集中している点でした。
クリスマスパッケージの赤い売場に客が少ないのはどういうわけでしょう。

二つの売場の、パッケージ以外の違いは什器デザインでした。
ベストセラー商品売場の什器はガラス棚で背景が白いです。
棚はキャッピングしています。
最上段はPPでパインアップルのオブジェがありました。

一方、季節ギフト商品売場の什器は木製で棚の厚さが35mmありました。
キャッピングはなしで最上段のPPは商品のみです。
結論から言うと、季節ギフト商品売場が高級に見え、ベストセラー型商品売場はカジュアルに見える点が大きく違いました。
当然、客は高そうに見える売場は敬遠し、安く人気のありそうな売場に集中します。

入り数、パッケージ代はすべて同じなので、斬新な季節デザインの赤い箱に手を伸ばした方がトクなはずですが、客はカジュアルな雰囲気の売場が好きなようです。

アイランドはどうかというと、ここもベストセラー商品と季節ギフト商品売場に大別されていました。
こちらは、どちらのアイランドも集まる客数は同じですが、ディスプレイ構成が店によって違い、IP・PPテーブルとIPテーブルの2種類がありました。
木製ライザーをテーブル中央に配置して段差を作っている点は同じですが、ライザー上をPPにするかIPにするかは決められていませんでした。

店内売場の商品くくりは垂直で、リピート型かシンメトリー型の二つを採用しています。
シンメトリー型はテーブル売場に多く、リピート型は壁面に多いです。
いずれも商品を立ててフェイスアウトしており、パッケージデザインがよく見え、佇まいは美しいです。

壁面オーケストレーションはその上、PPが最上段にセットされているので、佇まいはさらに美しく、店頭を歩いている人を店内にキャッチしていました。
そのため、店頭はガラス囲いでシースルーにしており、ウインドウがあっても、店内を隠さないように展示物を低く抑えていました。
ロクシタンのようにタペストリーを背後に吊るしたりしていないのです。

以上のことから本部指示書の有無を推察すると、詳しい棚割りの指示書は出ていないようです。
●定番と季節ギフト商品のゾーニング ●くくりのパターン を1~3タイプ明示しているくらいの指示書と判断しました。
PPのオブジェは店によって違うので、PPも明確な指示は出ていません。
オーケストレーション、テーブルプレゼンテーション、キャッピング、くくり、フェイシングは各店で統一しているので、これらの基本ガイドラインは存在しているようです。
ディズニーランドのように、現場スタッフに対して上記5つの研修をやっていることは間違いないでしょう。

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

初心者向きVMD教育は四角四面で行く

VMD初心者に売場づくりを教える時、VMDインストラクターはどのような心がけが必要か、お話します。
ズバリ言うとそれは、四角四面に教えるということです。
この熟語、世間ではあんまりいい意味では使わないんですが、私が初心者に教える場合に心がけていることなんです。

セミナーのようなOFFJTにしろ、現場指導のOJTにしろ、店頭スタッフや本部の新米VMD担当にVMDを教えるときは、まずは基本を教えますよね。
その基本をあやふやに教えると、VMD初心者は理解がほど遠くなるので注意が必要です。

例えば、PP,IPという言葉があり、下記のような原則を教えるとします。

  1. PPはIPを代表するディスプレイ。
  2. PPは展示で、IPは陳列である。
  3. PPはIPの近くに置く。
  4. PPはテーマが必要である。

ここで言う原則とは守らなければならないルール。
初心者は原則を覚えることにより、売場づくりの基本を知ります。
だからVMDインストラクターは、最初のころは、この原則に忠実に売場づくりをするように指導します。

だから、

スタッフ「PPの棚の横のスペースが開いているから、ここにIPを設けていいですか」
vmd-i「仕方ないわね。いいわよ」
などと言わないでください。

また
スタッフ「PPにボリュームをつけたいから、IPにないけど新商品を加えていいですか」
vmd-i「仕方ないわね。いいわよ」
などと言わないでください。

これはもう、「ダメです。原則と違います」と言ってください。

このように、最初は原則で売場づくりを縛っていきますが、初心者から中級者になるにつれ、例外もあるということを徐々に教えます。

例外というものは、売場づくりを臨機応変に行う術が身に着くにつれて知るもの。
初心者のうちは原則も身についてないので、応用はできません。
だから、VMDインストラクターはまずは原則をしつこいくらいに言うしかないのです。

さて、上記に
3.PPはIPの近くに置く。
とありますが、スタッフはどのくらいが「近く」なのか、知りたがります。
その場合は、細かく規則を決めます。

・PPはIPの直上。

次に直上の定義を言います。

・スパン(什器のこと)のすぐ上が一番よく、最低MDカセットの上。

カセットというのはアパレルによくある単位で、1~5スパンの間で1つのMDグループが形成されています。
つまり、5スパンあって右から3スパン目にPPが作られているとしても、原則の範囲に入るのでPPに使っているIPはどこにあってもOKということになります。

このように、原則はあやふやでなく、しっかりと定義として打ち立てることが大事です。

そういうわけで、私がクライアントのOJTにVMDインストラクターを派遣するとき、「指導は四角四面にやってください」と念を押しています。
基本に対していきなり例外をつくってしまうと、スタッフはわけがわからなくなるからです。

売場塾のフレームワークはご存知の通り55あり、科目→課題→課目→細則の順に定義は細かくなっていきます。
フレームワークはPOP・サイン科目のようなところは、細則を定義しています。
PPとIPの位置における定義は課目として教科書に載っていますが、「PPとIPはどのくらいの距離に置いた方がいいのか」までの細則は書かれていません。
それはVMDインストラクターであるあなたが決めてください。(^^)
ガイドラインに書くとよいですよ。

●フレームワークメソッド

こんなに細則でがんじがらめになると、茶髪やソックスを取り締まる生活委員みたいで
いやだな~と思うかもしれませんが、仕方がありません。
最初は四角四面にやっていただくことによって、原則というものを守る癖を初心者に付けていただきます。

初心者はそのうちに、例外というものを知り、応用力を身に着けるようになっていくのです。
温かく教えてやってくださいね。

全国のVMDインストラクターの皆さん、初心者に対しては四角四面で行きましょう。
そのうちに、例外を教えてやって応用力やバリエーションを身につけさせましょう。