VMDインストラクターの学校「売場塾」をつくってはや18年。
940人以上のVMDインストラクターを輩出していますが、今日は逆説的に「インストラクターってそもそも必要なの?」という観点からお話ししていきます。
まずは私の高校時代のエピソードから。
1.ひたすらリピートすれば成就する
それは、高校生の時でした。
映画研究同好会というサークルに入っていて映画を作っていたんですが、前々からスポーツ部にあこがれていました。
はつらつとした野球部員やバスケ部員を見ると、運動苦手な私はなぜか劣等感が。
そこで思いついたのは、「毎日ジョギングしたら、走ることだけはうまくなれるかも」ということでした。
校内で誰にも負けない長距ランナーになったら、「文化部でもスポーツダメ男にならないだろう」と単純に考えました。
思い立ったら吉日。その日から毎日20分位帰宅後に家の近くを走ることにしました。
ただ、「毎日20分走れば長距離で1位になれる」という単純な発想で、うまくいくかどうかまったくわかりませんでした。
しかしながら、なんとかなるだろう、と楽観的な気持ちでもくもくと雨の日も風の日も走っていました。
なんか映画のロッキーみたいで気持ちよかったです。
1年が経ち、体育祭のクラス対抗1500m走に出場してみたら、1位になれました。
ここで「なるほど毎日コツコツやれば成就できるんだ」と実感したんです。
次に思いついたのは、「みんなが苦手な歴史で学年で一番とれば目立つかも」でした。
そこで、中間試験も期末試験も数学や国語など他教科はあまりテスト準備はせず、ひたすら歴史のテキストや参考書を丸暗記してみました。
ジョギングと同じように、同じことをリピートして毎日やればなんとか1位になれるだろう、というシンプルな考えでした。
最初の中間試験の歴史テストの結果は2位でした。
次の旺文社試験は静岡県内で4位でした。
残念ながら1位ではありませんでした。
しかしながら、ここで、
●何かを目標に掲げひたすらリピートすれば、なんとか成就できる
という定義めいたものが生まれます。
2.足りなかったもの。それはインストラクター
この定義はもしかしたら、恋愛や将来の職業にも応用できるかも。
と、したたかな思惑がアタマを出します。
とはいえ、ウブで将来についてあまり興味なかった私は、そちらの方向に舵を取りませんでした。
とりあえず1月の10kmマラソン大会で1位を目指すことにしました。
相変わらず毎日走り続けていましたので、ある程度はいい成績を残せるだろうと高をくくっていました。
しかし結果は79位。
なぜかこの数字、今でも覚えています。
それは「泣く」と読めるからです。
この結末を友人に話すと、バレーボール部員の彼はこう言いました。
「そりゃあ、そうだよ。20分繰り返し走っているだけでは、10kmマラソンは持たないよ」
「距離を次第に長くしたトレーニングに変えなければいけない」
と諭してくれました。
私はこの時、「なるほど」と思いました。
そう、私に足りなかったのは彼のように指南してくれるインストラクターでした。
3.プチインストラクターとの出会い
他人に頼りたくない性格、自分のやり方でコツコツ続ける性格。
そんな私の性格にはメリットとデメリットがありました。
メリットは三日坊主で終わらないこと。
そしてある程度は成就するということ。
デメリットはある程度まで行ったらそれ以上は進化しないこと。
つまり壁にぶち当たること。
でした。
やがて社会人になり広告代理店に勤務しました。
その広告代理店もインストラクターはいませんでした。
商店やビル群を片っ端から飛び込み訪問するスタイルのその会社は、100軒飛び込み訪問・100件電話追い込み、ということを標語にしていました。
しかし、誰もそんなことをする人はいませんでした。
そう、上司でさえも。
中小広告代理店ではよくあることですが、億単位の売上のクライアントを持つ営業は、決して広告主を手離さない。
他人に譲ったり引継ぎせずに、ずっと社内商店経営している人が多いんです。
なので、飛び込み新規開拓する必要もなく、部下には「1日100軒飛び込め」というものの、自分は何もしない人が多かったです。
100軒飛び込み訪問・100件電追い込みが苦にならない私は、試しに毎日やってみました。
そのやりかたは誰も教えてくれないので、自己流で工夫を加えながらやっていくうちに、新規客が集まりだしてきました。
縁とは不思議なもので、私を見込みのある営業マンだと思ったクライアント1人が、「君は見込みがある」ということで、会うたびに「明日のための10か条」をメモして私に教えてくれたのです。
このプチインストラクターは「あしたのジョー」の丹部段平みたいな人でした。
「あしたのための10か条」は営業のトークの仕方がメインでした。
・値引き強要された時の会話
・お茶の飲み方
(あと、すみません。忘れました)
毎回、おもしろいように新規が開拓できると、ふと気がついたことは、小口クライアントはたくさん集まるけど、何千万や億のクライアントは集まらないということでした。
大手企業でも零細でも、静岡県をAからD地区に分けて自転車でルート営業していたのですが、それが限界でした。
私に足りなかったのは、数千万から1億の新規開拓を指南してくれるインストラクターでした。
4.パーソナルインストラクター時代
限界を知った私は人の推薦もあり、二社目の大手広告代理店に転職しました。
飛び込み営業がスタイルではないその会社では、直属の上司はつきませんでした。
その代わり、私を入れてくれた部門長が手取り足取り、新規客へのアプローチの仕方やプレゼンの仕方を教えてくれました。
そして飛び込み中心の面の新規開拓から、点の新規開拓に変わったのです。
つまり、クライアントターゲットを絞って、集中的にそこだけアタックするというやり方です。
その部門長はOJTで教えてくれるので、私のパーソナルインストラクターという感じでした。
前の会社と大きく違うところは「すべての仕事の成果は私に戻ってくる」ことでした。
前の会社は下働きの弟子みたなもので、上司のクライアントへの仕事を手伝っても給料に反映することはありませんでした。
前の会社では、上司のクライアントの売上はすべて上司の成果だったからです。
2軒目の会社では、新規はすべて私の客となり私の成果としてくれました。
もちろん、1社数千万から億のクライアントになりました。
おかげで、2度社長賞を取ることができました。
アカウントエグゼクティブ(責任広告代理店制)という広告スタイルを身につけたのもこの会社でした。
その部門長が転勤した後、私に直属の上司がつき、その方も手取り足取り企画の仕方や書き方、プレゼンの仕方など教えてくれました。
プレゼンもすべて立会いしてくれたのでうまくいきました。
こちらも、前の上司と同様、手柄や成果を私に帰結してくれる上司でした。
こんな感じで、インストラクターとしてぴったり寄り添って仕事のノウハウを教えてくれる人がいたのはとても幸運でした。
20年もの間の広告代理店勤務の中で、合計3年くらいトレーニングいただいたのですが、これは貴重な価値となりました。
こんな感じで、仕事で自分を高めるためには、ノウハウを持っている社内の人材をうまくインストラクターにするとよいです。
もちろん、ただ利用するのではなく、下記の条件が必要です。
●自分のためになるし、会社のためになる
これを詳しく見ていきましょう。
5.社内で自分を高める条件とは
社員個人も含めて会社の持つノウハウって、さすがハンパじゃないですよね。
あなたはただがむしゃらに仕事をしているけど、実は会社の持っている知識資産をいただいているんです。
いただいていない方は、積極的にノウハウを掴みに行った方がいいです。
そして、
●自分のためになり、会社のためになることをする
これを私が会社に社員として居続ける理念にしました。
サラリーマンである以上、会社に貢献しなければいけないのは定めです。
そしてノウハウをいただいていることに感謝すべきです。
私の場合は新規開拓、売上で貢献しました。
それが
●会社のためになるけど、自分のためになっていない
場合は、ノウハウがあるワンランク上の会社を目指すか、ノウハウを持っている部門に移った方がいいと思います。
やっぱり仕事ってお互いにWIN WINじゃないと成り立たないからです。
私はそんな考えでサラリーマンをしてきました。
だから3回くらい転職、部門転換したんです。
で、もうひとつのパターンもありますよね。
●自分のためになるけど、会社のためにならない
そんな場合は、残念ながらリストラか左遷の憂き目に会うかもしれません。
私も一度経験ありました。
6.インストラクターはどこで探すか
さて、自分のためになるインストラクターはどこで探すか、なんですが、社内の「これだ」という人を頼るといいでしょう。
部が違っても、遠くの支店にいても会いに行くべきです。
私は新幹線を使って会いに行きました。
「弟子にしてくれ」ということではなくて、話を聞いてみるという目的です。
まずは話を聞いてみる、相談してみる事が肝心です。
その上で得るものはありました。
それが今後どうするか、の道しるべを描けます。
実は最初の会社で、「会ってみたい」という人がいました。
その方は、山のふもとに家があり、電話も通っていない家に住んでいました。
玄米を食べているというマクロビオテックな人ですが、快く会ってくれました。
その他、相撲の記者をやっている先輩に会いに国技館に行ったり、交流会で知り合った海外広告会社勤務の方に会いに行ったりと、「この人に会えば何か得られるかも」という気持ちで軽く行動に移していました。
メンターみたいな人を探していたかもしれません。
とにかく躊躇しないで即行動に移すといいです。
意外と人は初対面でも会ってくれるものです。
7.自らがインストラクターになる
月日は流れ、私はやがてVMDの会社をつくることになります。
しかし、VMDの知識はそれほどありません。
やはりここで、VMDを教えてくれるインストラクターが必要になります。
どうしたかというと、やはりパーソナルインストラクターを探していっしょに仕事をするようになりました。
2年くらいは、自ら新規開拓した仕事をインストラクターに頼んで、OJTしていただきながらVMDを実施させていきました。
VMDの仕事をすべてそのインストラクターとやりながら、VMDの極意を覚えていったのです。
仕事はすべてお渡しするので利益率は半分しかありませんでしたが、貴重な経験になりました。
今でもそのインストラクターに大変感謝しています。
そんなことで短期間でVMDのノウハウを身に着けた私は、アパレルや百貨店のVMDというよりも、電気や化粧品、車などいろいろな業種・業態のVMD理論構築が急務だと考えるようになりました。
そこで業界を絞ってクライアントを発掘し、頼みもしないのにいろいろな分析やプランを提出しては、その仕事を遂行してきました。
要は実験に実験を重ねていきました。そうしてノウハウを構築していったのです。
同時にビジネス誌の編集委員になり、新聞記事等でVMDに熱心な会社を選出、取材し論文を書いていきました。
その数100社くらいです。
そのおかげで、業種・業態・取り扱い商品を問わないVMD理論が構築でき、それを「55のフレームワーク」としてまとめました。
よかったら、どのくらいの論文を書いているか下記を見てください。
そして起業してから3年目で売場塾をつくったという次第です。
ニッポンにはインストラクターが少ないので、インストラクター自体を作りたいというのが、私の狙いでした。
VMDを教えてもらったけれど、逆に教える立場となり、今はインストラクターを育成している、ということです。
8.インストラクターはどこでも必要
私はそんなわけで、VMDインストラクターという資格制度をつくったんですが、実はこんなことはどこの業界でも当たり前になりました。
●鮨アカデミー
寿司職人になるには10年は親方の見習いにならなければいけないというのは昔の話。
いまや鮨アカデミーに通えば、2か月で寿司職人になれる。
インストラクターが仕込みから寿司の握り方や開店の仕方まで教えてくれる。
●ライザップ
これもう言わずもがな。
パーソナルトレーナーが筋トレだけでなく食事や生活管理まで教えてくれる。
●プログリット
英語のパーソナルトレーニング会社。
あなたに合った学習法で英語を教えてくれる。
上記のような授業料が高い学校に通わずとも、You Tubeでタダで勉強できる、とあなたは思うでしょう。
でも、やっぱり手っ取り早くノウハウを身につけるには、インストラクターに指導してもらうのが一番いいと思います。
究極はパーソナルインストラクターを起用するといいでしょう。
ということで、VMDインストラクターはいま全国に943名。
下記のような、いろいろな方がいます。
またネットで「VMDインストラクター」と検索すると、たくさんの人が出てきます。
だれに依頼するか迷ったら、VMDインストラクター協会にお問い合わせください。
「VMDパートナー」という制度があり、VMDインストラクターを紹介したり、派遣することができます。
そしてもちろん、あなた自身がインストラクターになりたい場合は、ぜひ売場塾をご利用ください。(^^)
(VMDコンサルタント 深沢泰秀)