VP,PPは必ずしも必要ではない

1.VP,PPが必要でない店

以前、PPには明確な定義が必要と書きました。
●ディスプレイの定義をつくろう

しかし、それ以前にVP,PPが必ずしも必要ではない業態は多いです。
例えば下記です。

  • コンビニ
  • ドラッグストア
  • ホームセンター
  • カー用品店
  • 家電量販店
  • ディスカウント店

これらは、店舗オペレーションが合理的・かつ低コストで運営できるように制約されている点と、生活必需品を販売しているところが特徴です。
VP,PPはそれなりにスキルのある人材が必要で、専用スペースも取ります。
そのため、人やスペースにコストを掛けられないコンビニは不向きです。
アパレルでも、ユニクロや無印良品でさえも、エキナカの小スペースで運営されている場合はVPまたはPPがないケースがあります。
その場合は、演出POP(いわゆるポスター)をPPの代替わりとして活用しているケースが多いです。

ただし、コンビニでもナチュラルローソンのような、「美しく健康で快適なライフスタイルを身近でサポートするお店」を標榜している店は、FC本部がPPを推奨しています。
ローソンでは、びんを置いただけのワイン売場なのに、ナチュラルローソンになると、ブドウのつるやテーブルクロスを利用したワイン食卓のPPをエンドに設けていたりします。

ドラッグストアでも、マツモトキヨシはIPのみですが、「女性が 1 時間楽しめるお店「Enjoy 1 hour with us」」を掲げるアインズアンドドルペのようなセレクトショップは、PPぽいディスプレイが多く見受けられます。

生活用品のお店でも、ライフスタイルショップ寄りの店は、店内演出としてPPが重宝されるのです。

2.VP,PP,IPというものはあいまいな用語

実を言うと、PP,IPは和製用語です。
海外のVMD関係者には無縁の用語といえます。
海外では、日本でいうVP,PP,IPをひっくるめてVPと言っています。
このVP、下記の意味で使っているのです。

●フロアやゾーン、MDグループのフォーカルポイント(注目点)になっているディスプレイのこと

日本では、VPとPPは商品の見本展示、IPは陳列と定義されています。
簡単に言うと、VPとPPはそのままレジに持って行くことはできない、
IPはレジに持って行ける商品、と考えてよいでしょう。

しかしながら、フロアのフォーカルポイントとなっているものは、展示・陳列が混合したカタマリとしてのディスプレイになっていることが多いです。
明確に、これはPPでこれはIPと区別できないケースが多いのです。

例えば、写真はホノルルクッキーカンパニーのクリスマスバージョンのフォーカルポイントです。
中央の赤くなっている売場がそうです。
テーブルと背後のラックがとても目立ちます。
テーブルのディスプレイは陳列状態ですが、ラックは展示ぽくなっています。
でも、テーブルもラックも、商品はそのまま掴んでレジに持って行けそうです。

確かにラックはPPぽいのですが、IPとも言えます。
これを、手前のテーブルはIPで後のラックはPP的なIPと言えば正論かもしれませんが、聴く人が混乱するだけです。
外国のように「赤い売場はVPだ」と片付けてしまうと効率がいいように思います。

3.VP,PP,IPで使いにくかったら、展示と陳列で区別する

私はドラッグストアの研修ではあえて、VP,PP,IPという用語を使わずに、展示・陳列の2語でディスプレイを使い分けるように教えています。
理由は二つあります。

1.店舗オペレーションの問題でわざわざVP,PPをつくるのが困難な店だから。
棚の空いたところに展示をつくる事が多い。

2.先ほどのホノルルクッキー売場のように、PPとIPの区別がしにくい。

このドラッグストアは、女性に好まれるオシャレな店舗にしたい、特定の商品を展示でクローズアップしたい、との希望があるので、陳列の少し空いたスペースに展示を入れる方法を教えています。
ほとんどの展示物がPOP付きで、化粧品の効果・効能を謳っています。

例えば、雪肌精やトワニーなど、店側にとってただパッケージを並べて売りたくない、商品の魅力を訴えたい。
そんな場合は棚に商品展示をPOP付で設置するようにしています。

デパ地下のガラスケースでスイーツを販売しているお菓子店はどうでしょう。
Gケース内に置いている商品はIPでしょうか、PPでしょうか。
これも判断むずかしいですよね。

ショートケーキのような生菓子はIPと言えます。
客が掴むことは出来ないけれど、店舗スタッフが掴んで客に差し出してくれます。
イチゴ、メロン、モンブラン・・・などといろいろなショートケーキから自分の好みを選択・購入できます。
だからIPと言えます。

ところが、焼き菓子が入っている箱入りアソートギフトのGケースは、見本展示です。
値段別に並んでいて、客は選択購入できるけれど、Gケースの中の展示品を包むわけではなく、背後のストック棚の商品を包みます。
すると、Gケース内商品群はIPでなくPPなのでしょうか。
たちまち、頭がこんがらがってしまいます。

このように、デパ地下のスイーツ店でVP,PP,IPを特定することは困難です。
しかし、あえてVP,PP,IPを使っても悪くはありません。
きちんと定義すればよいのです。

私の場合、ある店では、Gケースの中の生菓子および見本展示商品はすべてIP、お菓子の盛り付け例はPPと定義しています。
そしてカウンター背後の壁面ディスプレイをVPと定義しています。

このようにIP,PP,VPは業種・業態・取り扱い商品によって見方は違ってきます。
IP,PP,VPは実にあいまいなものなので、用語を使う場合は、VMDインストラクターがしっかり定義することをお勧めします。
展示と陳列、という2語で処理しても、もちろんよいです。

4.VMD用語は記号論で処理する

記号論という理論があります。
言葉は記号である、という考え方です。

日本では、蝶と蛾の区別はあるけれど、フランスにはありません。
フランスは蝶も蛾もpapillon(パピヨン)と言います。
日本では「うさぎ」というけれど、イギリスでは「ラビット」と「ヘアー」の2種類に区別されています。

参考)外国のVMD担当にVP,PPと言っても通じない

このように、用語は使い方次第でどうにでも変わります。
あなたのブランドや店で、スタッフが理解しやすいように定義するとよいでしょう。

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

土産店・キャラクターショップの売場づくりのコツ

映画館のお土産コーナー

先週から、外国人の入国規制緩和、そしてGoToの全国旅行支援と観光地も盛り上がってきました。
ディズニーランド、ユニバーサルスタジオもいいが、個人的にはゴジラが好きなので、西武ゆうえんちにぜひ行ってみたいです。

ということで、今日はテーマパークや観光地の土産店やキャラクターショップのVMDについて話します。
当社の経営するVMDの学校「売場塾」にもたくさんのキャラクターショップのVMD担当が学びに来ています。
日本はキャラクターの聖地なので、キャラクターグッズのメーカー・卸・小売店の方はVMDが大事。
世界中から集まるが外国の方を売場に引き付け、買わせるVMDを学びましょう。

では、さっそくキャラクターグッズのVMDフレームワーク行ってみましょう。
売場の改善点の主なものは、ざっと下記になります。

  • フェイシング
  • オーケストレーション
  • ディスプレイ構成
  • テーマ設定
  • PP,IPの設置方法
  • くくり
  • VMD分類
  • 什器デザイン
  • 什器レイアウト

この中から外せないものをいくつか選んでお話ししましょう。

1. フェイシング

この前、映画館に行ったとき、キャラクターグッズコーナーを覗きました。
シンウルトラマン、面白かったです。(シンウルトラセブンもぜひ作ってほしいです)
まずは上の写真のガボラとネロンガを見てみましょう。
ガボラは一番左。ネロンガは右。

これ、袋に入っている上に怪獣が寝ています。
これだと、怪獣の顔がよく見えません。
ぬいぐるみを起こして顔が見えるようにした方がいいでしょう。

左から三番目のネロンガのフィギュアは立っていますが、タグで肝心の顔が隠れています
これだとただのトカゲにしか見えないですね。。。

これは別の映画館。
ジュラシックパークを見に行った時の売場ですが、やっぱり左上のぬいぐるみはほとんどわからなかったです。
ステゴザウルスはなんとなくわかるかな。。。
最初、これポケモンの怪獣だと思いましたよ。

商品の顔をきちっと見せることをフェイシングといいます。
キャラクターの顔は見えるように置くようにします。
ガボラの場合はサヤに顔が入っているのと、入っていないのと2種類フェイシングするとよいでしょう。
後はやっぱりビニルが反射して中身がよく見えないので、袋から出して展示見本(PP)をつくるといいでしょう。

これはハワイの土産店で見たぬいぐるみ売場。
やっぱりぬいぐるみは顔がきちっと見え、体のシルエットも分かりやすい方がよいですね。

2. VMD分類とくくり

キャラクターグッズは棚に載せればいいと思ってはいけません。
展開が大事です。展開とはVMD分類のことです。

例えば、あなたがウルトラセブンの売場をつくったとします。
ウルトラセブン、味方の怪獣、怪獣、宇宙人、武器、戦闘機などに分類したほうがいいかもしれません。
バービーは、バービーのフィギュア、着せ替え用の服、服飾雑貨、家族、友達、家の中、街の中、旅行などに分類した方がいいかもしれません。

そのように分類したら、その分類がわかるように陳列をくくるんです。
くくりがわかると分類がわかり、お客様が選択しやすく、買いやすくなります。

これはハワイの土産売場。1スパン、ドナルド・トランプグッズです。
見るからにくくり、わかりやすいですよね。
くくりの線を入れてみます。

5つのグッズに分類されているのがわかります。
一番上のペンは2棚、他は1棚ずつ横にくくられているので、とてもわかりやすいです。

来月、中間選挙ですね。中間選挙でトランプが勝つとこれ売上倍増するかもしれません。
パーーンチ!! (^^)

3. 什器デザイン・什器レイアウト

商品がどどーっと入荷したりすると、あわてて什器を売場に足すお店があると思います。
その時に、会議机にただ布を掛けて什器代わりにしていないでしょうか。

キャラクターって世界観があるので、什器やディスプレイ用品のデザインは大事です。
さっきのネロンガの売場も会議机の上でした。
やっぱりそれだと、商店街のガラガラの景品置き場にしか見えないかな・・・。

私のハワイの好きな店のひとつにココ・コーヴというのがあります。
ここのキャラクターグッズ売場見てみましょう。
パイナップルキャラ、いいですね。
マルシェ風に什器を配置して、ライザー(木箱のこと)に商品を投げ込み陳列しています。
雰囲気いいですよね。ハワイの風が吹いている感じ。
什器やライザーがウッディでナチュラル。
白い木の箱も釘が見えていてクラフトぽいです。

什器レイアウトも、ただ壁際に置いただけではなく、アイランド(島)形式でぐるっと回って買い物できるようにレイアウトされています。
これだと、ハワイに来た~って感じで来店客が注目してくれそうです。

4. オーケストレーション

オーケストレーションは壁面の集合ディスプレイのことで、これはハワイのディズニーストアの店内。
壁面いっぱいに商品を陳列・展示することで、キャラクターの世界観を醸し出せるんです。
こんな感じで、遠くからも壁面のディスプレイが見えるので、お客様は壁面に寄ってきてくれます。
壁面が白いままだと、遠くから見て白い壁が目立ち、下記の点で魅力が半減します。

  • 展示ディスプレイが見えない。
  • 壁の白が目立つ。
  • キャラクターの世界観が醸し出せない。
  • 何の売場かわからない。
  • 壁面自体がデザインにならない。

例えば、セブンイレブンを見てください。店奥の壁が白いですよね。
コンビニはオーケストレーションやらなくていいんです。
目的買いの人が多く、さっと入ってさっと出るお店だからです。

でも、お客様に楽しく店内回遊してキャラグッズを探させたいお店は、壁が白いままだとダメなんです。
オーケストレーションで壁面いっぱいにディスプレイしないと。
特に、下記の店は壁面いっぱいにオーケストレーションするといいでしょう。

  • アパレルショップ
  • バラエティショップ
  • 玩具店
  • 雑貨店
  • スポーツショップ
  • ライフスタイルショップ

5. キャラクターの世界観とは

おまけとして、ゴジラのディスプレイ作ってみました。
どこかの売場でぜひこういうPP(展示のこと)作ってほしいです。
怪獣フィギュア売場、盛り上げてください~!!

と、いうことで、今回はキャラクターグッズのVMDを論じました。
お話しできなかったフレームワークは他のブログ見るとわかります。

ディスプレイ構成

テーマ設定

だいたいわかりましたでしょうか、お土産売場の改善の仕方。
キャラクターグッズ売場、玩具店VMDを担当している方は、ぜひ当社セミナーでディスプレイのセンスをアップしてください。

●VMDセンスアップセミナーは毎月開催

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

売場づくりにツカエル!「閉合」の法則

「閉合」という言葉をご存じでしょうか。
群化の法則7のうちの一つの法則です。
●群化の7つの法則

閉合とは、上図のように何かを閉じるということです。
インターネットで検索すると、グラフィックの事例が多く出てきます。
ホームページのボタンをデザインするときや、文章をまとめる際に役に立つ法則です。

しかし、この閉合、売場づくりにツカエルこと多大です。
下記の様に使うことができます。

  1. 特設コーナーを作るときに使える
  2. ブランドのインショップを作るときに使える
  3. 待合スペースを作るときに使える
  4. 商品展示の整理に使える
  5. フォーカルポイントを作るときに使える

ひとつひとつお話ししていきます。

1.特設コーナーを作るときに使える

母の日コーナーやバレンタインコーナーを小売店が作るとします。
しかし、ただ単純にお菓子の什器の上に「バレンタインコーナー」とPOPを掲げるだけでは、閉じたコーナーになりません。
什器をコーナーにしなければいけないのです。
まずはL字型の什器配置にしましょう。
いわゆる入隅(いりすみ)という什器配置です。
そうすることによって、2方向からお客様が来るので、角でぶつかり客だまりができやすくなります。

上図のようにコーナーは閉じています。
これが本当のコーナー(かど)です。
さらに、コーナーの前にテーブルを置きます。
すると、コーナーはエアポケットのようにますます閉じてきます。

これに通り化を加えましょう。(上図)
奥に向かって浅草の境内通りのように、左右に什器が並んで閉じていますよね。

このように、什器配置を閉合することによって、特設コーナーを際立たせることができるんです。

2.ブランドのインショップを作るときに使える

ブランドの店内店は、ABCマートなどでよく見ると思います。
ナイキの売場、アディダスの売場はショップインショップになっています。

メーカーは、小売店のフロア内のショップインショップをつくるときに、デザインエレメンツで売場を閉じればよいのです。
サインやPOP等のデザインを統一し、それらで売場を囲えば閉合になります。

上図を見てください。

「ビタミンワッキー」のキャラクターラインを柱や什器にデザインします。

すると、柱周りの売場は「ビタミンワッキー」の店内店になりました。

3.待合スペースを作るときに使える

クリニックやコンタクトレンズの待合い、カーディーラーやヘアサロンの待合いスペースは、オープンよりもクローズした方が人目にはばかることなく、落ち着きます。

そこで、

  • 観葉植物で閉合する
  • 置物ラックで閉合する
  • ついたてで閉合する

などした方が、閉合された空間となり、他と区別ができます。

4.商品展示の整理に使える

商品陳列を棚で閉合すると、商品のVMD分類がわかりやすくなります。

下の写真を見るとわかります。
木のボックスで壁面売場をつくっています。
商品が区画整理されているので選びやすいです。

また、商品ディスプレイを閉合することによって、商品分類を明確にできます。
下の写真を見てください。

丸いランチョンマットでディスプレイが閉合されているので、とてもメリハリがついています。
特にテーブルの上の商品展示を整理するのにおススメです。

5.フォーカルポイントを作るときに使える

自動販売機で「ぜひこの商品に目を留めてほしい」という依頼があった場合、あなたはどうしますか。

下の写真のように閉合してしまえばよいです。
「ほっとあたたかーい」という帯POPで、温かいドリンクが閉合されています。
遠くから自販機を見たときに、このくくりがとても目立つフォーカルポイントになります。

フォーカルポイントとは、客の目をある一点に引き付けることを言います。
●フォーカルポイントとは

まとめ

閉合の使い方、だいたいわかりましたでしょうか。
群化の法則って便利ですね。

今後も追及していきたいと思っています。

なお、群化の法則セミナーは、年に2回センスアップセミナーで行っています。
タイミングありましたら、ぜひお越しください。
●センスアップセミナー 群化の法則

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

PPとインテリアディスプレイの見分け方


この写真をみてください。
ABCストアの酒売場です。
すごくきれいですね。

くくりはわかりやすいし、ハーモニゼーションもいいです。
(くくりとハーモニゼーション、忘れた方はこちら)

さて、クエスチョンです。

●最上段のディスプレイは、AまたはBのどちらでしょう。
A PP
B インテリアディスプレイ

答えは、「B」。

そう、最上段のボトルは単なるインテリアディスプレイなんです
PPと言っても間違いではないのですが、厳密に言うと、インテリアディスプレイなんです。

改めて、PPとインテリアディスプレイの定義を振り返りましょう。

●PP
ポイント・プレゼンテーションと言い、売場の商品ディスプレイのこと。
IP(陳列のこと)の商品を紹介するための展示物で、IPの上部の棚につくることが多い。
役割は、店内のお客様を回遊させるためにある。


●インテリアディスプレイ
店舗・売場・商品の世界観を醸成するために設えたディスプレイ。
商品や店舗ブランドのイメージを増幅させる働きがある。


もうひとつ、別のABCストアを見てみます。
この最上段にあるディスプレイは、PPでしょうか。

いいえ違います。
これもインテリアディスプレイなんです。

PPのルールを振り返ってみましょう。
IP(陳列のこと)の商品を紹介するための展示物で、IPの近くにつくる。
特に売場の最上部につくることが多い。

あなたはこう思うかもしれません。

いいや確かに、PPだ。
最上段のボトルはIP部分にもあるよ。
しかも什器の最上段にあるし。
だからこれはPPだ。

でも、PPの定義を振り返りましょう。
「役割は、店内のお客様を回遊させるためにある」

そう、PPは店内を歩いているお客様を売場に引き寄せる力がないとダメなんです。
さっきのお酒売場から8mは離れて撮影した写真を見てみましょう。

離れてPPを見てみると・・・。
そうだな~、びんがあるのはわかるけど、何が置いているかわからない・・・。
酒を売っている売場というのはわかるけど。

そう、このPPは遠くから見てもわからないんです。
原因は、商品が小さすぎることにありました。
だから、このPPはPP足りえないんです。

下の写真を見てください。
今度はこのPPをズームアップしました。

これでも何の商品を訴求しているか、わからないですよね。
それでいいんです。
これはインテリアディスプレイなので、お酒を飲んでいる楽しいシーンが感じられればいいんです。

このように、小さな商品はPPにそもそも不向きなんです。
8m離れてPPを見ても商品がよくわからないので。
酒、メガネ、スマホ、ジュエリー、目覚まし時計、カメラ、ワイングラス、化粧品・・・。
このような商品は小さいのでPPに不向きな商品なんです。

じゃあ、PPに向いている大きな商品て何なの?
その質問にお答えします。
今度は、別のABCストアのTシャツ売場のPPを見てみましょう。


このPPを6m離れてみてみます。

こちらはTシャツのPPが6m離れても、デザインとか色はわかりやいですよね。

わかりましたか。
ボトルとTシャツの違いは、商品の大きさです。
Tシャツの方がボトルより断然大きいので、遠目から見ても商品がわかりやすいんです。

なので、ボトルをPPとして最上段においても、遠目から何が置いてあるのかわからないため、インテリアディスプレイにしているんです。

今度はインテリアディスプレイの利点を見てみましょう。

1. 売場の商品の世界観を醸成する
2. 店舗デザインの一部にすることができる


ひとつひとつ、事例を挙げて説明します。

1. 売場の商品の世界観を醸成するインテリアディススプレイ

例えば、このお菓子のガラスケースのディスプレイ。
「ショコラ・オ・ウィスキー 」という、ウイスキーが素材として入っている生チョコのインテリアディスプレイです。


ガラスケースの中に、ショコラ・オ・ウィスキーの商品が展示されています。
でも目立つのは、商品よりも本とウイスキーボトル。
ジャムのびんのようなものが「ショコラ・オ・ウィスキー」なのですが、ほとんどディスプレイの主役になっていません。

そう、これはインテリアディスプレイなので、商品が目立たなくてもいいんです。
書斎でひとりゆっくり読書を飲みながらウイスキーを飲むシーンのような世界観を醸し出しています。
大人男子のチョコと言うことですね。

もしこの商品のPPを正しく作るならば、生チョコを主役にし、下記の商品特徴をディスプレイ表現しなければいけません。

●アルコール分の高いガナッシュ(生チョコ)
●世界の有名ウイスキーが素材として入っている
●スプーンですくって食べる


そのために、ガナッシュのソフトなペースト感が感じられるサンプル展示、または演出POPが必要ですし、商品が主役になるように、たくさん並べて商品ボリュームを出すことが必要でしょう。

しかし、この展示を見る限りでは、前出した3つの特徴はまったくわかりません。
「ウイスキーを販売しているのかな」「ウイスキー会社とタイアップしているのかな」
と思ってしまうのがオチです。

しかし、インテリアディスプレイと捉えるならば、これでよいのです。
なぜならインテリアディスプレイはイメージ訴求のためにあるからです。



これは「ファウンドリー」というお菓子屋さんですが、りんごが並んでいますよね
その下にフルーツを漬けてあるびんが並んでいます。

これは別にりんごを売っているわけではないです。
フルーツポンチを売っているわけでもないです。
そう、アップルパイをイメージしたインテリアディスプレイなんです。
このお店、この時期はアップルパイを看板商品にしているんですね。

このりんごとびんは、文字通り店内インテリアディスプレイになっています。


2. 店舗デザインの一部にすることができるインテリアディススプレイ


これは、タリーズコーヒーのインテリアディスプレイ。
これならインテリアディスプレイとわかると思います。
喫茶スペースの落ち着いていてノーブルなイメージを醸し出しているインテリア的なディスプレイです。

文字通り、店舗デザインの一部になっています。
店内の販売商品は絡んでいないので、純粋なインテリアディスプレイですね。


これはPP、それてもインテリアディスプレイ??



これはハワイのディーンアンドデルーカですが、このディスプレイ、微妙ですね。
一見、インテリアディスプレイぽいのですが、しっかりハワイ特製のオリジナルバックを訴求しています。

そう、これはPPなんです。
商品が主役になっていて、「HAWAII DEAN & DELUCA」という文字がばっちりわかります。
これはトートーバックのPPでした。

私もハワイに行ったときに、これゲットしました。
このトートー、お土産として人気高いです。


今回はインテリアディスプレイとPPの違いをお話ししました。
PPをつくる前に、本当にPPにするのか、インテリアディスプレイをつくるのか、はっきり決めて制作してくださいね。
あやふやなディスプレイは、お客様にその意図が伝わりにくいです。

関連ブログはこちら

●PPの役割

●PPは写真で代用もできる


(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

オーケストレーション設計の仕方

壁面ディスプレイの作り方
今日は、オーケストレーション設計の仕方について論じます。

銀座の東急プラザに行ってきたのですが、オーケストレーション設計がうまい店が何軒もありました。
売場塾卒業生が関わっている店も何軒かあり、とてもうれしく思いました。

まず、オーケストレーションとは何かということですが、
わかりやすく言えば、「壁面の集合陳列」のことです。

お店で何が一番目立つか知っていますか。
それは壁なんです。
建築用語で鉛直面といい、お客様は売場を見渡すときに
鉛直面、つまり垂直の面に目が行くんです。
垂直の面とはまさに壁なんです。

さて、このオーケストレーションですが、ただ商品を陳列してしまうと、倉庫の在庫置き場になってしまうんです。
「あのお店、なにかごちゃごちゃしているな」と思う理由は、壁の陳列が雑になっていることが多いです。

オーケストレーションをプランすることをオーケストレーション設計といい、VMDインストラクターの重要な仕事でもあります。
ショップデザインの要になりますので、しっかりした棚割りとスケッチで企画書をつくります。

オーケストレーションは下記の3つの要素を企画します。
それは、くくり、ハーモニゼーション、フェイシングです。

○くくり・・・陳列の分類のことです。
これがしっかりしていないと、お客様は商品が選びにくくなります。
くくりにはネガティブスペースとグリッドラインという要素があり、これをつくらないと、くくりがわかりにくくなります。

○ハーモニゼーション・・・商品をどのように置いていくかいうことです。
かっこいい置き方があり、下記の方法に分けられます。

  1. リピート陳列
  2. シンメトリー陳列
  3. ウエーブ型陳列
  4. タイト陳列
  5. 等間隔陳列

このうち、等間隔陳列は必須です。

○フェイシング・・・これは商品のフェイスをどうつくるかというプランです。
シェルビング、スリーブアウト、フェイスアウトがあり、ユニットフェイシングというやり方があります。
日本人が不得意でアメリカ人が得意なのは、このフェイシングという技術です。
アメリカの売場にいくとフェイスが優れているのがよくわかります。

この4つの要素に付け加えるのが、PPやインテリアディスプレイです。
PPは展示のことですが、PP固定棚方式にするかキャッピング方式にするか、決めなくてはいけません。
もしくはまったくPPやインテリアディスプレイを使わない、
ウオーターフォール陳列という方法もあります。

インテリアディスプレイとは、プロップスのみを使用した展示のことです。
プロップスとは小道具のことで、マテリアル(布のようなもの)、オーナメント(ガーランドのようなもの)、オブジェ(置物)があります。
これらは、商品やお店の世界感を醸成する役目があります。

ちょっと今日はVMD用語が多いのですが、お許しください。

オーケストレーションはかなりシステム化できるので、VMD担当の方はMDの期ごとに企画してみてください。
システム化できるということは、指示書にして全店に指導ができるということです。

VMD担当の方は、ぜひ壁面の集合陳列であるオーケストレーションをマスターしてくださいね。