魅せる収納・イエナカディスプレイ

最近、キッチンや書斎をリノベしてディスプレイスペースをつくってみました。
時はイエナカ回帰。住空間を素敵に変えたい!という方が増えています。
「見せる収納」ということで、生活用品をキャビネットやクローゼットにしまうのではなく、店舗のように見せる方も増えています。

  • 見せるクローゼット
  • 見せるキッチン
  • 見せる本棚
  • 見せるガレージ

収納に関する本はあるけれど、「見せる収納」に関する本はあまりないので、ここで私事で「見せる本棚」を実際につくってみました。
いつもお店のVMDをやっていますが、家の中のVMDの仕方をお教えします。

まずは、Before Afterをお見せします。

見せる書棚 改善前

これがBefore。

これがAfterです。

ここで使われているVMDのディスプレイテクニックは下記です。

  • 陳列と展示
  • くくり
  • 棚の並べ方
  • 棚の並べ方
  • 壁面ディスプレイ
  • 繰り返し構成
  • テーマ設定の仕方
  • ディスプレイ構成
  • ルック&テイスト
  • フォーカルポイント
  • 展示台の使い方
  • プロップスの使い方

見せる本棚プランニングのフローは、売場リバイスと同じ進行です。
下記をご覧ください。

  1. 本棚診断・・・本棚をいろいろな角度から写真を撮る
  2. コンセプト・・・どんな本棚にしたいかキーワードをつくる
  3. MD分類・・・今ある本の分類をし、いらないものを破棄
  4. VMD分類・・・本を分類する
  5. データシート・・・定量を決める
  6. 什器デザイン・・・什器と棚編成を決める
  7. IP・・・棚割りをする
  8. PP・・・展示を決める

どうですか。
ほとんど売場づくりと家の本棚づくりは変わらないんです。
従来の収納学にないのは、データシート、IP、PP位でしょう。
ここらへんも踏まえて、家でできるディスプレイテクとプランニングと詳しく解説します。
上記の順番で進めていきます。

1.本棚診断・・・本棚をいろいろな角度から写真を撮る

まずは写真撮影と採寸です。
写真は、いろいろな角度から20枚くらい撮ります。
2つのラックがあるので、ラックずつ、棚ずつ撮り、引き出しの中、スライド棚の前後をすべて撮ります。
要は、お店のIPを什器ラックごとに撮影していると仮定してください。
収納も考えるので、文具が入った引き出しの中も撮影しました。

書棚の内容は趣味の本、ライフスタイル、ビジネス書、そして仕事の書類、雑誌など。
これらは種類ごとに固まってはいるものの、飛び飛びになっているところもありました。

書斎にいるときは音楽を聴いているので、ステレオがあり、ヘドラもありますね。その下はダンベル。
ダンベルはは筋トレ用のものですが、これが置く場所がなくて書棚に突っ込んでいました。
とても「見せる本棚」にはなっていませんでした。

2.コンセプト・・どんな本棚にしたいかキーワードをつくる

写真診断の結果、コンセプトは「趣味の本」としました。本当はビジネス本も入ってますが、仕事が趣味のようなものなので、趣味の本棚」としました。
写真は、コンセプトに従って改善するポイントを書いています。
写真の赤い線で囲ってある部分はすべて仕事の書類で本ではなく、ファイル類なので、すべてこれらを隠すことにしました。つまり、キャビネット棚にして仕事の種類は隠すのです。

3.MD分類・・・今ある本の分類をし、いらないものを破棄

いるもの、いらないものを仕分けしました。
いらないものは雑誌が中心です。
本をよく読む私は、昨年から「繰り返し読む価値のない本は捨てる」と決め、お盆と正月とGW(ゴールデンウイー)は、ばっさり本を捨てています。
本の分類は下記にしました。

  • 旅行
  • 海外旅行と美術館で買ってきた美術本
  • ビジネス書
  • 趣味(釣り・スポーツ・コーヒー・ワイン・ビール)
  • VMD本
  • ライフスタイル書
  • 英語
  • 流通ネットワーキング(雑誌)

4.VMD分類・・・本を分類する

さあ、これからが本番です。
MD分類に分けた本を、本棚に置く算段です。
分類しても、そのまま本棚に入らないからです。

上の写真を見てください。
とりあえず、MD分類に分けた本をひもで縛って、棚割りの参考にしています。

各々のひもくくりは、MD分類を下記の観点で棚に置くように分類したものです。
・同じシリーズの本
・同じ著者の本
・同じような課題の本(ビジネスならマーケ、経営、販売など)
・同じサイズの本
など。

特に重要視したのがサイズで、高さが同じものを揃えるようにしました。
その方が棚に本が並んだ時にデコボコに見えないからです。

5.データシート・・・定数・定量を決める

データシートとは、定数(什器の数)、定量(1棚に置ける商品の数)を計算するシートを言います。
ブランドショップに商品が棚にピタッと並んで美しいのは、この定数・定量が決められているからなんです。
定数が多すぎると店は什器で埋まってしまい、通路が狭くなり、店の見通しも悪くなり、窮屈な店に見えます。
定量が多すぎると、棚は商品でギュウギュウになります。

先ほどのBfore Afterの写真を見てください。
Beforeの写真は、ファイルが横になっていたり、棚の隙間に本を横に入れてたりしていて見てくれが美しくないです。
Afterの写真を見ると、棚はすっきりピタッと入っています。オブジェを飾る空間さえあります。
その空間を使って、書棚中央にジャズの展示スペースを設けるようにしました。

では、データシートをお見せします。

表の一番上のインデックスをみてください。
大分類・中分類に本が分けられています。

大分類は、

  • 仕事
  • 雑誌
  • 文庫本
  • 備品
  • 文具
  • ダンベル
  • スタジオ器具
  • 教材箱

です。

中分類は、サイズ別になっています。

中分類の右横のNoは、先ほどお見せしたひもくくりの、くくりの幅です。
つまり小分類と考えてください。
先ほどVMD分類のところでお話しした、
・同じシリーズの本
・同じ著者の本
・同じような課題の本(ビジネスならマーケ、経営、販売など)
・同じサイズの本
でくくった本のカタマリを立てたときの背表紙の合計サイズ、つまり棚にひとカタマリを入れたときの横サイズです。

Noの右横を見てください。
今度はmm単位でその横幅を表記しています。
例えば、大分類/ 本 → 中分類/F → No2は、横幅が225mmということです。

今度は、インデックス上の黄色い部分を見てください。
「総棚延長数」とは、分類ごとの本を並べたときの横幅をいいます。
例えば、大分類「仕事」→中分類「A 大型ファイル」→小分類「No1」の横幅は170mm、つまり17cmということです。

大分類「仕事」→中分類「A 大型ファイル」の横幅は1,428mm(1.428m)ということです。
つまり、大分類「仕事」のAの大型ファイルをズラッと横に並べるには1.428mの棚がいるということです。

同じように、大分類「本」をヨコにズラっと並べるには5.89mの棚がいるということです。

このように、本を横にズラッと並べた距離を「総棚延長数」といいます。
これはVMD担当が商品を棚に並べるときに行う計算方法です。

表の一番下を見てください。
本やファイルを横にズラッと並べた距離は、12.819Mあるということです。
なので、あなたが書棚を買う時に、「内にある本は書棚に全部入るかな?」と悩む必要はなくなります。
家具店で本棚を買う時に、メジャーを持って行き、棚の全体の長さを測ればいいのですから。

注意点は大分類の「ダンベル」~「教材箱」の本以外のものです。
これは、「見せない収納」ですので、収納スペースさえ確保できればいいので、大体の立方体(高さ・幅・奥行き)を明記します。

例えば、ダンベルですが、幅11.5cmで高さが59cm、奥行き25cmの立方体としてみなして、それが入るスペースを確保すればよいです。
下の写真をご覧ください。

6.什器デザイン・・・什器と棚編成を決める

什器デザインは、下記の要素で決めます。

  • 部屋のテイスト
  • サイズ
  • 素材
  • 機能

・部屋のテイスト
私の部屋は、白・茶・緑の3色の部屋なので、本棚は白と茶色を選択。
全体的に白なのですが、本棚中央は展示スペースにし、そこは茶色にしました。
VMDで言うと、IPとPP部分を区別したということです。

・色
先ほど述べたとおり、白・茶・緑の3色の部屋です。
カーテンも鳥のいる緑です。
カーペット見えないですが、これも緑。

・サイズ
これは、家具デザイナーにお任せしました。
データシートを渡して、本がきちんと入るように設計いただきました。
CGを3回くらいつくっていただき、検討しました。
キャビネットの数、棚の数なども打合せしました。
データシートがあるので定数定量は確信でき、不安は全くありません。

この写真はパース図。

この写真は設計図。

これは、データシートの総棚延長数を元に、デザイナーが設計した本棚に本が入るかどうか確認した図です。

・素材
素材は白と茶ですが木目にしました。
素材はメラミンですが凹凸があり、本物の木に見えます。
いわゆる樹脂合板ってやつですね。
今回収納ラボさんに頼んだんですが、素材見本など丁寧に提供してくれました。
ここ「見せる収納」(下の写真)が展示してあってまさにVMDやる人にとって参考になるラボでした。

・機能
ここでいう機能は「収納機能」です。
本以外のモノがきちんと入るかのチェックです。
下段のキャビネ部分のドアヒンジとか、ガチャ受け棚のサイズとかも決めました。
ほとんど、店をつくる際の什器チェックと同じです。

棚編成ですが、キャッピングにしました。
格子編成だと面白みがないからです。
格子編成とは、タテヨコ一線に区切る方法です。
下図左がそうです。

下図右がキャッピング。
棚を上下左右にずらして壁に動きをつけるVMD手法です。
無印良品がよくやっていますね。

キャッピングに関しては下記を参考にしてください。
●店舗視察のコツ~お菓子店事例

7.IP・・・棚割りをする

棚割りは、VMD分類にすでにわけてあるひものくくりをキャッピングした棚に載せるだけ。
その場合、リレーションと言って近くの棚には似たジャンルの本を置くようにします。
その方が探しやすいからです。
例えば、「マーケティング」の横に「VMDの本」、その横は「インテリア」の本というように、内容が近しい本のくくりを隣同士に置きます。

肝心なのは、棚に隙間があるからと言って、関係ない本を置くことはよくないです。
VMD分類が乱れてしまいます。
関連本のみの棚とし、関係ない本は棚区画から排除します。
すると、棚に隙間はでるのですが、大丈夫。
オブジェを置けばいいんです。
私は招き猫が好きなので、それをオブジェにしました。
なんかいいですね。

8.PP・・・展示を決める

最後は、本棚中央の展示スペースをつくります。
展示スペースは書棚中央の茶色い部分。
フォーカルポイントになりました。

下記の要領で進めます。

  • テーマ
  • 展示器具
  • プロップス

・テーマ
テーマはJAZZとしました。
ジャズが好きで毎日聴いているので、展示棚にオーディオを設置しました。

・本
テーマがJAZZなので、ジャズ・フュージョンのCDと本を並べます。

・展示器具
ライザーという展示台やブックスタンドを使用。
ひな壇をつくり、そこにCDなどを置きました。

・プロップス
プロップスはアイビー。
部屋が緑と白と茶色で出来ているので、緑を加えたいところ。
そこでアイビーを下に下らせて、青々しい感じにしました。
アイビーはジグザグの構造線に。
絵葉書も同様にジグザグ。
こうすると動きが出ます。
構造線を考える事をリニアスキームと言い、これ覚えておくとあなたの部屋のディスプレイ、いきいきしますよ。

ちなみに、いろいろテーマを変えてつくった事例を写真に上げます。
プロップスにテーマを持たせました。
まずは私の好きなマリメッコで行きますか。

やっぱ、ゴジラかな。

時計も展示できる!と思いました。

だいたいわかりましたか。
VMDのスキルを活用した、イエナカディスプレイ。
見せる収納好きな人は、ぜひVMDを勉強してくださいね。
毎月、オンラインでディスプレイワークショップを開いています。

●センスアップセミナー 毎月開催

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)