0.プロローグ
今回は理論のつくり方をお話しします。
私は広告代理店時代から多くのプレゼンをしてきました。
特に新規開拓がメインな私はプレゼンは必須で、競合からクライアントを奪取するには新しいアイデアによる提案業務が欠かせませんでした。
ある日、テレビCMのプレゼンを控えている中、同僚にこんなことを言われました。
「●●と同じようなCMを提案したらどうだろう」
「●●の企画書を少し改編して提案しよう」
非常につまらない考えだな~と思いました。
他人の考えや作品をコピペするのが嫌いな私は、
「いやいや、こういう方がおもしろいだろう」
と拒絶しました。
しかし、私担当のクライアントを同僚に引き継ぐ最中だったため、私は折れてそのコピペ案でプレゼンに臨みました。
結果は思った通り、
「よくあるパターンだね」と一蹴されました。
次回に代わりに私の案を提案したら、とても感激されて案は通り、予算もたくさんいただきました。
そんなわけで、私は自分オリジナルな考えがとても好きなんです。
他人の考えをコピペしてどこがおもしろいのでしょうか。
それは広告業務だけでなく、美術作品をつくったり、本を書いたりすることもいっしょです。
やっぱり自分オリジナルな考えがクライアント、ひいては世の中に認められたらうれしいと思います。
VMD講師としてたくさんのブランドVMDに授業をしている私ですが、実はアメリカのVMD理論をそのまま話しているわけではないんです。
売場塾の授業にしても2/3はオリジナル理論です。
例えば、「VMD4分野」にしても「IP・PPテーブル」にしても独自理論です。
たくさんのオリジナル用語もつくりました。
いまみんなが普通に使っている、
●オーケストレーション
●リレーション
●POP編集
なども私がつくった用語です。
オリジナル理論をつくると、他者と差別化できますし、新しいお客様も開拓できます。
なにより、あなたのファンになってくれるのです。
昨今、AIなど他人の考えをそのまま使う流れも加速していて問題にもなっていますが、効率を追及すると誰もが同じ理論になってしまいます。
それだと面白くないし、個性というものも発揮できません。
業界としての発展もないでしょう。
いろいろな理論がぶつかりあい、加工したりそぎ落としたりして新しい理論に発展させ、VMD業界も進化していく。
そして日本が先進のVMDを唱えていくことにより、世界のVMDをリードしていく。
そんな未来を信じてやみません。
それではオリジナル理論をつくる秘訣をお話ししましょう。
1. 普通のことに疑問を持つ
テレビのニュースを見ている時や、新聞を読んでいる時、「なんでこんなことになるのかな」とか疑問を感じたことはないですか。
例えば、
「どうしてインバウンドが増えているのに、海外旅行部門は赤字なのか」
「なんで最近は記憶喪失のドラマが多いのか」
「なんで昭和が若者に受けているのか」
など、?を感じる部分は多いと思います。
答えは新聞やテレビに出た評論家が言うケースが多いのですが、
その答えをそのまま鵜呑みにしてないですか?
例えば、「なんで最近は記憶喪失のドラマが多いのか」に対して、専門家はこう答えています。
「コロナ禍が長かったせいで、自分探しをする人が多くなった。記憶喪失とは一度自分をリセットすることだから」
という人もいれば、
「冬のソナタのように、記憶喪失は世界ヒット作には欠かせない要素。全局ドラマ輸出を見据えているから」
など。
私は「単なる偶然」だと思っています。
そういう理論もあるね、と留まりそのまま鵜呑みにすることはないです。
VMD理論もそうで、例えば「三角構成のディスプレイはいい」という考えがあります。
これも最初は疑問でした。
なんで三角形がよいのか、心にしっくりくる理由がなかったからです。
あるデパートのVMD担当はこう言っていました。
「古代の人間は狩猟が生き残る上で必要だった。高原の獲物を狙う時、密集した動物を狙うのがてっとりばやかった」
「なので、バッファローがバラバラにいる高原に矢を放っても効率は悪く、バッファローが固まって密集しているところに矢を放つ方が効率いい」
だから、人間は三角形にタイトに展示されているディスプレイを思わず見る習性がある、と唱えます。
確かにその通りです。
しかし、それなら三角形でなくて、団子のように丸くてもいいはず。
そんな疑問を感じていました。
そこ、VMD本ではなく、いろいろな美術本を読み三角構成の理論にたどり着きました。
絵画や写真の構図に近い方が自分自身が納得するなと思って、下記の理論を打ち立てました。
さらに三角形の疑問は続きます。
「なぜ上から見ても三角形にしなければいけないのか」
そこで、オフィスでコップを使っていろいろ実験してみました。
そこで導き出した答えは下記でした。
こんな感じで、人から聞いた、メディアで見聞きしたものでも、自分なりに疑問を持ち、その答えを探すとよいです。
すると、新しい発見があります。
その発見が唯一無二の理論構築の土台になるんです。
2. 日頃からテーマを持つ
これからVMDで自分を伸ばしていきたい方は、日ごろからテーマを持つといいです。
テーマはなんでもいいです。
- 道の駅が観光地化しているけど、どこが魅力なのだろうか
- NTTドコモが店舗数を半減すると言うけれど、これからのケータイショップはどうあるべきか
- イケアが都市型店補をたくさんつくっているけれど、郊外型と比べてどこが違うんだろう
など、テーマを持ったら、それを探求するとよいです。
関連本を買って読んでもいいし、店舗に足を運んでもいい。
知り合いがいるならお茶して疑問を尋ねてもいいし、電話して聞いてもいい。
とにかく行動に移して自分なりに解を見つけるといいと思います。
すると、何かが発見できます。
私は広告マン時代からテーマがあると下記の事をしています。
- お店に行ってみる
- 関連本を2.3冊は読んでみる
- 人に聞いてみる
- 理論を書いてみる
3と4を詳しく話しましょう。
3.人に聞いてみる
例えば、「本屋がすたれる中、TSUTAYAはどのような店舗を目指しているのか」というテーマが過去ありました。
どのようにしたかというと、直接CCCに電話し、取材をさせてもらいました。
そうすると、テーマが一気に深堀りできますよね。
CCC広報から六本木TSUTAYAの店長を紹介してもらい、いろいろそのテーマに対して聞くんです。
なぜ色々聞けるかというと、私は雑誌や本を執筆しているからなんです。
お店にとっては宣伝みたいなものなので、内容を詳しく教えてもらえます。
そういう知識が私の中に入ってくるので、テーマも深堀しやすい。
広告マン時代はどうしていたかというと、直接飛び込みをしていました。
関心がある店や会社に直接訪問し担当者を出してもらい、根掘り葉掘り聞くんです。
訪問する理由は適当に作りました。
「新聞広告の料金表をお持ちしました」
「今こういうテレビ番組を考えいるので協力してくれませんか」
「インターネット広告の情報を持ってきました」
など、理由は何でもいいんです。
こういう昭和時代の飛び込みは今でも続けていて、担当者をネットで探し当て電話1本で飛び込みをしています。
こういうやり方は、コールドコールと言います。
悪い言い方をすれば証券会社や保健会社の押し売りコールになりますが、私の場合は物売りをするわけではないので、割と気軽にやっています。
いまや売場塾生も1,000名以上になったし、社会人経験長いのでアウトルックの名簿を検索してまずはメールをし、必要に応じては電話をしています。
意外と人は対応してくれるものです。
対応してくれている売場塾生の皆様、たいへんありがとうございます。(^^)
皆さんもコールドコール、一回やってみてください。
もちろん私に対してでもいいですよ。(笑)
4.理論を書いてみる
こうしていろいろ本を読んだり人に聞いたりしながら、つらづらと理論を書いていくんです。
最初はツイッターを利用し、徒然なるままに書いています。
ツイッターのテキストは、ノートパッドに書いていますから書き終わったら全文が残ります。
今度はそれをブログに書いています。
起承転結にまとめるために、いつもマインドマップをつくっています。
●マインドマップとは
マインドマップで文章構成を整理したら、名とは何日かかけてブログの長さに作成します。
チャート図や写真も入れてみて完成です。
例えば、この前「オンスクの法則」というアイデアをブログにまとめました。
●オンスクの法則
セミナーでも2回くらい話して受講生の様子をみました。
もちろんまだ固まっていない理論なので、余談として話しました。
受講生の様子を見たらある程度よさそうなので、正式な理論にするかもしれません。
さて、こんな感じでブログにした後も、悶々と時間あるごとに理論を書き換えていき、これだ!という論文を完成させます。
それがとてもよい出来だったら、ビジネス誌の編集長に連絡をし、ビジネス誌に掲載し、読者の反応や編集委員会の感想を聞きます。
それが好印象だったら何か月か寝かせて、最終的には売場塾のテキストに組み込むか、本を出版するという流れになります。
そこまでしなくてもその理論を中心としたオープンセミナーをやって考えを披露したりしています。
例えば、昨年「バーチャルマーチャンダイジング」という理論を考えて、講演会で披露し、その理論を月刊VMDにまとめたものを視聴者プレゼントとして配付しました。
ネットのレスポンスを見ると悪くはないかな~という感じです。
とはいえ、理論には当たりはずれがあります。
そんな中、最近「これはとてもよくできている理論だ」と納得する理論がありました。
それが「POP活用体系」というものです。
「POPには6つの種類があり、それぞれに役割が違い、仕様も表現方法も設置方法も違う」という「POP活用体系」理論です。
この理論の出発は点、「POPには種類があるのではないか」という疑問から始まり、上記1から3の活動をしつつ、まとめた理論です。
理論化期間は3カ月くらい。
これ、自分でもよくできた理論だと思っています。
来月セミナーをしますので、ぜひご参加下さい。(^^)
5.理論を応用する
さて、理論はできたものの、これをどうやって会社や自分の収益にするかなんですが、広告マン時代は飛び込みで得た人脈で、テレビ番組やイベント提案をして媒体を獲得し収益にしていました。
今はVMDコンサルタントをしているので、下記のようにしています。
- VMDプランにその理論を入れてみる
- 研修プログラムにその理論を入れてみる
- 売場塾のテキストに入れて授業で講義する
- VMDガイドラインに入れてみる
- 専用のサービスをつくる
などです。
これをマッシュアップといいます。
もともとは音楽用語ですが、実用書を書いている人がよく行う手法です。
例えば、先ほどの「POP活用体系」理論は、もう何回もクライアントにてPOPセミナーを開催していますし、売場塾のテキストにも載せました。
クライアントにPOPデザイン案をプレゼンした時には、その理論を2.3ページに渡って挿入しました。
専用のサービス活用としては、ディスプレイプレイコンテストの中の項目にPOPコンテストをオプションで入れ込んでいます。
すでに家電店やケータイショップのPOPコンテストにも応用しました。
6.理論は本によって大成する
そうやって出来上がった理論はやはり、本として出版するのが最終ゴールだと思います。
売場塾の卒業生は、たくさん本を書いていますので、ここに紹介します。
私は卒業生の書いた本はすべて読んでいます。
よくできているなと思います。
中には売場塾のノウハウを応用・発展したものもあり、売場塾が役に立っていてうれしいです。
ブログやインスタと違い、本こそオリジナル理論を1冊に凝縮し詳しく丁寧にまとめたものとして最高のメディアでしょう。
全国の書店に並んでたくさんの方に伝えられますし、印税として収益が出てきます。
私の場合、私の書いた本を千冊以上まとめてお買い上げいただいたクライアントもいますし、中国語に訳されて海外でも販売されました。
本を出すと箔がつきますし、クライアントへのPRにもなります。
自社の強力なPRにもなるので、おススメします。
出版の本の出し方は自費出版だと100万以上かかりますので、出版社に企画書を持ち込むとよいです。
下記の最初の本は企画を出版社に持ち込みました。
書籍化に当たり多くの売場塾卒業生に協力をいただき、誠に感謝します。
この本、2,000冊くらいはいろいろな法人様にまとめてお買い上げいただきました。
7.まとめ
だいたいわかりましたでしょうか。
理論のつくり方。
アメリカの理論そのものをコピペするよりも自分独自のVMDを構築した方がよいというのがわかったと思います。
日本に合ったVMD、自分の業種・業態・取扱商品・ブランドに沿ったVMD理論を確立するのです。
起業している方は自分独自の理論をつくりましょう。
ヒントはお稽古ごとの守破離をベースにしている、フレームワーキングという考え方です。
大いに参考にしてください。
●フレームワーキング
さて問題は理論ってどうやってアイデアを捻出したらいいか、だと思います。
それは最初言った通り、常に疑問を抱いたり、テーマを持ち探求することです。
じゃあ、どうやって疑問を抱いたりテーマをつくればいいのか、それはまたの機会にお話しします。
それではみなさん、独自のVMD理論、お互いに構築していきましょう~。
(VMDコンサルタント 深沢泰秀)