顧客戦略「インテリジェント・コンシューマー」とは

顧客戦略マトリクス

コロナ禍で百貨店や専門店が取るべき道は、ズバリ顧客のインテリジェント化です。
消費者を賢くし、結果生活が豊かになるインテリジェント・コンシューマーにしましょう。

インテリジェント・コンシューマー戦略は、顧客をいつまでもお店につなぎとめておける策なんです。
そのためには、百貨店・専門店は上図の「自己満足客」を育成し、まずは「レビュワー」に成長させ、チューターに導かなければいけません。
上図はそれを表しています。

今回は、ワインをよく飲んでいる私が顧客モデルになりました。(笑)
ワイン専門店における顧客4つのクラスターについて解説していきます。

●自己満足客
接客を伴う専門店・百貨店で買い物をすることが満足という客。
ワインを買いに行くのはスーパーやコンビニだったけれども、ヴィノス山崎に行ったり、百貨店のエノテカコーナーで買ったりした客。
専門性の高い店員がいるので、安心して買えるとともに、勧められたワインがおいしので、とても満足!!という客。

ここでおいしいワインを提供された客は、次もその店にいくかもしれません。
価格はいつもより高いけど行くだけの価値はあるので、ハレの日(誕生日やクリスマス)だけ行ってもいいなと思うようになります。
しかし、まだスーパーや通販で買う比率が高く、そちらにドロップアウトしてしまうかもしれません。

この客をキープされてリピート率を高めるには、レビュワーに客を昇華させなければいけません。
自己充実客でもいいのですが、レビュワーにした方がお店の宣伝になるからです。
自己充実客はクローズド、つまり店や商品の情報を公にするということはしません。

●レビュワー
買い物行動や買った商品、店内体験などを発信してくれる客。
ツイッターやfacebbok、ブログなどでレビューしてくれる。

  • おいしいワインを買った!と言ってSNSで商品や店を紹介する
  • 友達や知り合いとの会話の話題に、商品や店を出す
  • グーグルマップやぐるなびに投稿し店を紹介してくれる

ただ、すべての顧客が情報を発信するわけではありません。
SNSは見るだけという人もいるし、今まで通りスーパーのワインで十分という人は、何かのきっかけがない限り店に訪れるということはないでしょう。
ドロップアウト、つまり全く行かなくなる、ということもあり得ます。

●自己充実客
店が顧客管理を怠らない限り、自己満足顧客のワイン生活はますます充実していきます。

  • ワインに合ったつまみをペアリングするのも覚えたし、甘い・辛いなどその日の気分で味をセレクトもできるようになった
  • クリスマスワインとして食卓に出すといつも家族に喜ばれる
  • ワインブックを作って記録している

など、ワインに関して自己充実している客。

お店や商品の情報はまったくオープンにしないけれど、店や商品との関係において充実している客です。
この場合、店は顧客がますます充実できるサービスや情報、体験を提供すればよいのです。

●チューター
インテリジェント・コンシューマー戦略のゴールはここです。
客がワインのにわか先生になって他の客を集め、ワインの楽しさを教示してくれます。

  • パーティをするときにワインの由来や産地の豆知識を教えたり、ワインの買い方を参加者に教える
  • お茶会など何かの集いの時に、店の話題を出していいワインを教えてくれる
  • 店主宰のワインセミナーに、友人をたくさん集めて参加してくれる

チューターとは、ちょっといいことを教えてくれるにわか先生のことです。
チューターは店のPRを担ってくれる上に集客してくれるので、最重要顧客に位置します。

このような客は、店内体験を主宰する側に回らせるとよいです。
つまり顧客の代表として発表の機会を与え、インテリジェントな気分にさせてあげる、そうすることで店とチューター客は太いパイプで結ばれるのです。

顧客戦略マトリクス2

とはいえ、上図を見てください。
チューター層はごくわずかな客なんです。
すべての客が、にわか先生になりたいと思ってないからです。
顧客は自己満足・自己充実客が大半を占めると思って過言ではないでしょう。

なので、お店はすべてのお客様をチューターに導く意識はあっても、強制的に導くことはできないのです。
客の性格は人それぞれだからです。
店は、獲得した顧客をこの4つのクラスターのどこに落とすか、客と付き合いながら考えていかなければなりません。

さて、余談です。
ここで私が通っている、私の家の近くのワイン店の店内体験を紹介します。
私はどのクラスターに属すでしょうか。

●ヴィノス山崎
生産地・生産者・品種、味と香りなどこと細かに書かれた「持ち帰り商品POP」を商品棚に設置している。
接客も丁寧、ときどきワイン試飲会をしており、顧客のレビュワー化、チューター化に余念がない。
例えば、このPOPでワインブックを作っている私は、おいしいワインをツイッターにアップしている。
私はヴィノス山崎のレビュワーだった。

●成城石井
種類が豊富で、コスパのいいワインが多く、商品切れが少ない。
成城石井はスーパーだが、私の中ではワイン専門店の部類に入っている。
ただしこの店での接客はまったくなく、環境的にスーパー。
成城店や麻布十番店くらいに行かないと、接客する人はいないし、ワインを持ち込めるバーもない。(グローサラント形式)
私は自己満足客である。
私が麻布十番店の顧客だったら、レビュワーになったかもしれない。

●信濃屋
ここも種類が豊富で、コスパのいいワインが多く、商品切れが少ない。
ただ店内の雰囲気は昔の酒屋のよう。
販促用のマネキンスペースは大きく取られていて、いつも行くとワイン通でない人がマネキンや店員をしている。
10年の間、ここで店員と話したのは1回くらいしかない。(笑)
ただ、コスパのいいワインは8種類くらいあり、その常連客になっている。
私は店をレビューするよりも、商品をレビューする方が多いレビュワーである。

●柳屋
うちの日本橋オフィスの近くにあるワイン店。
カリフォルニアとニュージーランド産ワインに特化している。
定期的にワイン飲み会を2階で開いており、近くのOLもよく参加をしている。
売場塾の生徒になにかと話題にしているので、ここのレビュワーになっているかもしれない。
ただ一元さんの店ぽいので、ワイン飲み会に参加するのに勇気が必要で、まだ参加していない。

まとめです。
顧客を自己満足客からチューターまで進化させることによって、より顧客をつなぎとめることができ、店の売上も安泰になります。

どこの専門店も自己満足まではキープできているものの、レビュワーやチューターへ客を進化させるには、いろいろな策がいるということです。
そのためには、店内買い物体験を企画・実施することです。
企画の仕方はこちらを振り返ってみましょう。

●オリジナル買い物体験企画の仕方

いかがですか、インテリジェント・コンシューマー戦略。
今日はワイン店を例にとりましたが、ワインが紅茶・お茶・化粧品・時計・文具・メガネ・食器・・・などなど別の専門店になっても活用できます。
ぜひ考えてみてください。

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

オリジナルな店舗体験をつくろう

買い物体験のつくり方 バーチャルマーチャンダイジングの図

先々月は、リアル店内体験のタイプについてお話ししました。
さて、ここで皆さんが知りたいのは、店内体験ってどうやって企画すればいいのか。
お金かけずにできる体験はどのタイプか。
どのタイプの体験が自店に相性がいいのか、などだと思います。
順を追って話しましょう。

●●●● 体験は空間体験が前提 ●●●●

上図を見てください。
店舗の中には「空間体験」「ナレッジ体験」「コミュニティ体験」があります
「空間体験」というのは、店舗というハコで売っている小売店が顧客に提供する必須の体験です。

空間体験は、ハコをどのようにデザイン演出するかがキーとなります。
いくら商品に人気あるからと言って、蛍光灯の天井下に会議机を並べて売っているような店は気を付けた方がよいです。
自店のブランド感とは何なのか、いま一度考え直してみましょう。

ただ、勘違いしてはいけないのが「改装にカネをかけてハコをカッコよくつくればいい」という安直な考え方です。
それに、店舗デザイナーや施工会社に外注する金銭的余裕がない店舗もたくさんあります。

コストをかけずにハコを変えるにはどうすればいいか。
それは、ある程度のキレイさは保ちつつ、ディスプレイと組み合わせてハコのたたずまいをきれいにするということです。
床・壁・天井・什器・照明の5大大道具のうち、壁と什器に注目し、それにディスプレイを加えます。

  • 壁・・・壁紙を変える
  • 什器・・・什器デザインを変える
  • ディスプレイ・・・オーケストレーション(壁面の集合ディスプレイ)を設計する

これだけで空間は見違えるようになります。
かかるのは什器代くらいで、あとはDIYでできます。
オーケストレーション設計の仕方はこちらを読んでください。

●オーケストレーション設計

●●●● ナレッジ体験 ●●●●

再び上図を見てください。
「空間体験」がなんとかできたら、残りは「ナレッジ体験」「コミュニティ体験」です。
しかし、あとは「ナレッジ体験」だけを考えればけっこうです。

「コミュニティ体験」は顧客を店内に一堂に集めなければできないので、スペースが必要でコストがかかります。
しかも、前回言った通りデジタルと相性がいいので、バーチャルマーチャンダイジングに任せるといいです。

さて、「ナレッジ体験」とは、お酒やお茶、化粧品やカー用品など、暮らしや健康、趣味といった自己に役立つ知識を得られるという体験です。
特に専門店は商品を売るだけでなく、商品を通してどんな暮らしができるかというソリューションを提供する店なので重要です。

ナレッジ体験を推進するためには、ずばりプロフェッショナルプロモーターが必要です。
ただのプロでなくて、プロプロです。

化粧品は美容部員、お茶はお茶インストラクター、ワインはソムリエ、カー用品はエンジニア・・・とプロのプロモーターをお店に駐在、あるいは定期駐在させることが必要です。
これらの人がいないと、ナレッジ体験施策はできません。
ナレッジ体験を来店客にさせたい小売店の方は、自分か従業員をプロプロにすることが必要です。

例えばあなたが酒店店主でクラフトビールに関してのナレッジ体験を作りたかったら、最低一人のプロプロが必要です。
クラフトビールを100種飲んで自分なりに理屈をつくるとか、クラフトビールテイスターの資格を取るとか、プロプロになることが必要です。
単に「俺はビールを飲んでる」だけじゃダメなんです。

プロプロの例は前回の100社調査でもたくさんあって、例えば下記のような感じです。

事例(企業名/店名/店舗名/内容) =========================

●ヤマダ電機/LABI LIFE SELECT/立川/ヤマダ電機の体験型店舗業態。デジタルサポートステーションと称したカウンタがありデジタル機器の相談や修理を行う。近隣に訪問するコンシェルジュ訪問サービスも試験的に導入していて、電気に詳しいプロがコンサルしてくれる。
●ウイングドドウイール/ウイングドドウイール/表参道/1000種類ある紙を試すことができる。ガラスケースの中に標本のように紙が並ぶ。ウエディング需要が8割だったが、大切な手紙を書くという需要に応じている。
●東急ハンズ/東急ハンズ/新宿店4F/4階コーヒー器具売場に販促ブースを設置。向井さんというスタッフがコーヒーのプロプロになっていて、定期的にコーヒーの淹れ方を披露している。おいしいコーヒーも堪能できる。

ナレッジ体験のキーワードは、体験スペースをつくること、そして座らせることです。
店内の空いたスペース、例えば90cm幅の通路でスタッフと顧客が立ち話・・・というのでは、ナレッジを伝えることができません。
他の客の迷惑になるし、あまり長話になると「ここは一元さんだめなのかな」と他のお客様は思ってしまいます。

体験するのに、相談カウンタを置く、洗顔用シンクを設置する、ミニセミナーコーナーをつく・・・などのスペースの確保が必要ですし、パーテーションをつくる、やぐらを設置する、ブース化する・・・などの体験スペースらしい見た目の工夫が必要です。

例えばこんな感じです。

事例(企業名/店名/店舗名/内容) =========================

●ロフテー/ピローウイーカフェ/東武百貨店池袋店/スイーツみたいなピンク色の売場。まくらがさながらお菓子のように陳列されていて見るだけで楽しい。
●インク/インクのコーナー/港北TOKYUショッピングセンター/シャープペンやホチキス、消しゴム、紙などお試しできる。その数10万点。「各社のボールペン験し書き」などイベントも行う。
●ファンケル/ファンケル/銀座スクエア/血管測定で血管内の健康状況を教えてくれる。体力測定ができるフロアもあり、健康ドリンクも有料で飲むことができる休憩スペースもあり。

早い話が、体験を「見える化」するということです。
私が以前企画したインテリアショップは、「すわり心地」というテーマで体験できるスペースをつくりました。

●すわり心地体験

ラフィネリビングさんの場合は、座り心地のプロを店内に配置し、ソファの中身のバネや緩衝材、間取り、ファブリックのデザイン、足の種類を選べるようにオーケイストレーション設計しました。

さて、社内プロをつくって体験を見える化できるスペースをつくったら、あとはプロモーション化するだけです。
ナレッジ体験をなんとなく行うのではダメで、台本をつくらなければいけません。

●企画する ●シナリオをつくる ●セリフをつくる ●小道具を用意する ●回数と時間、参加人数などのKPIを決める

あなたが一商店主でも、企業のプロモーション部長のように企画書を作り、台本をつくってください。

●●●● オリジナルな体験のつくり方 ●●●●

ナレッジ体験のつくり方がわかったら、いよいよ貴店独自のナレッジ体験を立案する番です。
それには、ブランドの7ポジショニングを整理するといいです。
それは、
①企業 ②商品 ③販売チャネル ④サービス ⑤財務 ⑥人材 ⑦広告 です。

ブランドの7ポジショニングはショップコンセプトをつくる際のフレームワークなんですが、体験企画を考える時にも使えます。

早い話、これを自店オリジナル体験のリソース項目として使うんです。
自店の7つのリソースをまず書き出すといいでしょう。
そこが出発点になります。

この7つのリソースの活用例は、店ではなくホテルの例を挙げて話します。

「一泊二日でねぶた祭りを体験できる」というナレッジ体験を施している星野リゾート「青森屋」の例が一番わかりやすいと思います。

この体験企画のリソースは、7ポジショニングのうち、①企業 から来ています。
星野リゾートは、「その立地にある文化と伝承を使って旅人を魅了する」という企業ですから、当然発想は、青森にある立地からして「ねぶた祭」に行きつきます。
これは④のサービスにもリンクしていて、「文化を体験する」という星野リゾートのサービスに帰結しています。

次に⑤財務と⑥人材なんですが、「人件費をかけずにイベントを行う」ということから、当然ホテルスタッフが直接祭を執り行うこととなり、黒子としてではなく、自ら踊ったり唄ったりしています。
これは星野リゾートの⑤の人材の「マルチタスク」という理念がベースになっているからできることなんです。
他のホテルなら踊り子を雇うところなんでしょうが、星野リゾートは一人が複数の役割を兼務しています。

体験のつくり方、だいたいわかりましたか。
このように、ブランドの7ポジショニングを企画のリソースに使えばいいんです。
安易に、「縁日の金魚すくい」や「塗り絵をして遊ぼう」なんて企画しないでくださいね。
体験は、あなたのお店だからこそできるオリジナル企画ではないと意味はないですから。

今日は、店内体験を同企画するかについてお話ししました。
キーワードは下記です。

  • 空間体験
  • ナレッジ体験
  • プロモーション化
  • プロプロ
  • 体験7つのリソース

ぜひ、あなたのブランドならではの体験を企画してみてください。

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

買い物体験のつくり方

今回はダブルVMDの続編です。
リアルな体験とバーチャルな体験はどうやってつくったらよいかについて触れます。

そもそも体験とは何でしょうか。

当社の保持している日経MJの2013年から今日までの記事スクラップの中で、個性的な体験施策をしている店舗を100社抜粋してみました。
そしてこれらを、空間体験・ナレッジ体験・コミュニティ体験・プロモーション体験という4タイプに分けてみました。
これは前回の買う・学ぶ・交わるという体験行為をより整理しやすくしたものです。

買い物体験4タイプ

それでは体験をタイプ別にみてみましょう。

●●●● 空間体験 ●●●●

100社の中ではこれが一番多く、全体の66%、つまり3/2でした。
店舗デザインやMDP(ディスプレイ)を変えることによって、ブランドの世界観に浸れたり、テーマパークのような楽しさを味わうことができます。

    ・店舗デザインを堪能する

床・壁・天井・什器・照明・通路などの大道具が店舗デザインの構成要因になる。
これが変わることによって、劇場的な効果を得られ非日常の世界を味わうことができる。

    ・MDPを楽しむ

カラフルな陳列や美しいショーイングなど、ディスプレイを楽しむことができる。
スーパーやコンビニなどで見慣れた陳列ではなくて、ディスプレイ自体を見て楽しむ。

事例(企業名/店名/店舗名/内容) =========================

●カインズ/スタイルファクトリー/ららぽーと海老名店/内装テーマは「ライフスタイルDIYショップ」。アイテム別ではなく、例えば「楽カジ」テーマの売場があり、家事を楽にできる道具が、リビングや庭を模したスペースに展開されている。同社のPB商品の見せ方を変えた店舗。
●Sparty/メデュラ/有楽町マルイ1階/オーダーメイドシャンプーブランド「メデュラ」が体験できる店舗をマルイ1階に設置。個人の髪に合ったシャンプーを配合してくれる。物販は二の次という。店内中央に大きなシンクがあり、モノトーンの店内と調和している。
●オートバックスセブン/A PIT/オートバックス東雲/オートバックスの、家族を対象としたトキ消費店。旅と車、スポーツと車、自然と車、家族と車、安心と車、キレイと車、ガレージと車のゾーンに分かれている。ウッディなラックとミドリの人工芝に囲まれたアウトドア的なスペースの中でお茶を飲むこともできる。

●●●● ナレッジ体験 ●●●●

ナレッジとは知識のことで、ナレッジ体験は知識を得る行為と定義します。
これは全体の49%の会社が行っていました。
ナレッジ体験の傾向としては接客の延長線上にあるのが大半で、下記二つの見方があります。

●店舗側からだと

    ・カウンセリング
    ・コンサルティング
    ・アドバイス
    ・レクチャー

●顧客側だと

    ・相談する
    ・質問する
    ・勉強する
    ・知識を得る
    ・商品を試す

などになります。
通常の接客と違うところは、単なるお客様の応対ではなく、会社としてシステム化・シナリオ化しているところです。
お客様が店内に入ってから出るまでをカスタマージャーニー設計していて、その中に組み込んでいます。

事例(企業名/店名/店舗名/内容) =========================

●ロフテー/ロフテー枕工房/本社/SF映画「コクーン」の宇宙船のような場所で1時間位いろいろな枕を試せる。睡眠改善インストラクターが最適の眠りを提案してくれる。
●そごう・西武/きれいステーション/池袋店/化粧品・化粧品雑貨・美容飲料・パナソニック美顔器などを置いた、美と健康の自主編集売場。THREEなど人気のブランドがセルフで試せる。予約をすればショートコースの無料カウンセリングやお験しを体験させてくれる。
●ヤオコー/クッキングサポート/東大和市/時短を求める主婦を対象に手軽に作れる料理法を提案。手作りギョーザキットを使った調理実演では、思わずギョーザを手に取る主婦がたくさん出現。

●●●● コミュニティ体験 ●●●●

顧客同士が店頭で交流するということです。
バイク店やディーラーの試乗会、酒店の試飲会は顧客同士を一堂に会するのでこれに当てはまります。
書店での作家のトークショーなどはファンは集まるのですが、ファン同士の交わる構成ではありません。
その場合はこれにあてはまらず、そういう意味での顧客交流は全体の6%しかなく、意外と少なかったです。
やはり見ず知らずの人といきなり店頭で交わるのは抵抗があるのでしょう。

事例(企業名/店名/店舗名/内容) =========================

●ル・クルーゼジャポン/ル・クルーゼ/ホーロー鍋をカレーで販促。カレー教室をスタジオ併設店舗で開く。参加者同士、楽しみながらクッキングできる。
●クラフティ/蔦屋書店・フライングタイガーなど/ものづくり体験サイトのクラフティが、工芸家に体験講師の場を提供。アクセサリー工芸や革小物工芸などが好きな人が集まり、ワークショップにいそしむ。
●ラッシュジャパン/LUSH/原宿表参道店/一人2.3千円のパーティ券を購入してグループで90分間、ソープ体験ができる。泡ぶろのつくり方や顔や手足の手入れ方法などをプランナーから受講できる。

このコミュニティ体験ですが、事例を見返してみてデジタルの方が適していると思いました。
一堂に顔が見られ、話をするのが恥ずかしい人もチャットは参加してくれるので、デジタルの方がよりコミュニティが深まりそうな気がします。
ただコミュニティ体験は、プロモーショナル体験やナレッジ体験とリンクできます。
トークショーが終わったら顧客同士の交流を促すとか、チームでワークショップをさせるとか、店側が積極的に他の店内体験に仕込めばよいでしょう。

●●●● プロモーショナル体験 ●●●●

店側が販促的に行う体験のことで、イベント、キャンペーン的な要素があるものととらえてください。
店側がイベントとして仕掛ける体験です。
これは全体の38%でした

    ・ディーラーで、家族で塗り絵をするなど、商品と関係ない参加型のワークショップ
    ・VRで工場での製造工程を見る、体験スペースで音と光を堪能する、などのエキビジョン
    ・クイズに答える、アンケートに答えるなどのアトラクション

などがあります。

事例(企業名/店名/店舗名/内容) =========================

●旭化成/へーベルハウス/展示場/アウトドアリビングフェア。展示場にアウトドアライフスタイルを提案。屋上のキャンプサイトでハンモックに揺られることもできる。
●ABCマート/グランドステージ/原宿店/スニーカーを試着し、そのまま記念写真が撮れる「Try On & Show It」。その場にない商品を取り寄せできるロッカー完備。ゾーンも「CENTER STAGE」「BACK STAGE」など個性的。
●イオン/イオンリカー/自由が丘/サイネージを駆使してワインの情報を発信する。ワインボトルをテーブルに置くと、持ち込み可能な付近の店を案内してくれる。

4つの体験をグラフにしてみました。

企業における買い物体験の企画頻度

頻度は空間体験→ナレッジ体験→プロモーショナル体験→コミュニティ体験の順でした。
やはりコミュニティ体験は少ないです。
店頭では限界あるのでしょう。

リアル体験はそのままバーチャル体験に応用できるか

次に、これらリアル体験はそのままバーチャル体験に移行できるか探ってみました。
すると、空間体験以外は33%がバーチャルでも移行可能ととらえました。
つまりリアル体験は、工夫すればデジタルで家にいながらも体験可能なのです。
例えば、下記の事例はデジタル化できるでしょう。

事例(企業名/店名/店舗名/内容) =========================

●サミット/総菜総選挙/「総菜総選挙」は各部門が開発したメニューを、選挙ポスターのようなスタイルで、部門担当者がチラシに登場して訴求する人気企画。
●GU/GUスタイルスタジオ/原宿店/サイネージを駆使して好きな服を試着できる。画面に自分のアバターを設定して着せ替えが可能。GU独自のVRサービス。
●JR東日本/のもの/上野店/地域の生産者が3週間店頭に立つ。新鮮な情報が得られる。方言で接客など臨場感のある面白いシーンに出くわせる。

確かに空間体験はそこに行かなくては体験できないけれど、残り3つの体験は工夫をすれば、オンラインでできそうです。
となると、今後はリアル体験を企画する際は、リアル・バーチャル2方向を見据えたほうが効率的と言えるでしょう。
実際に、ライブコマースやオンライン試飲会などはもう普通になってきています。
今行っている店内体験がデジタルでも可能かどうか、今後は企画しといた方がよさそうです。

空間体験はバーチャルに置き換えられない

さて、バーチャルに置き換えられない体験は、空間体験となりました。
空間体験は、床・壁・天井・什器・照明・通路などの舞台大道具が構成要因になるので、劇場の中にお客様はいるようなものです。

グーグルインドアビューという手がありますが、店内をパソコンで見たくらいでは臨場感がありません。
まあ、VRの精度がディズニーランドのスターツアーズ並みになったらそうではないかもしれませんが。

例えば、売場塾のグーグルインドアビューを見てみましょう。

●売場塾のインドアビュー

どうですか。そんなに臨場感はないですよね。(笑)

今日論じたことを図でまとめます。

買い物体験の4つのタイプの図式化

これからのVMDには二つのVMDがあり、それはビジュアルマーチャンダイジングとバーチャルマーチャンダイジングでした。
空間体験・ナレッジ体験・コミュニティ体験・プロモーショナル体験の4タイプはこんなポジションになります。
空間体験は店舗のみ。
コミュティ体験はバーチャルの方が効率がよさそう。
ナレッジ体験とプロモーショナル体験は工夫すれば、リアル・バーチャルどちらでもできそう、ということです。

VMD担当はどのように買い物体験に関わるべきか

ここであなたはこう思うでしょう。
なんだか面倒くさいな、VMD担当は店頭販促も考えなければいけないの?

もしあなたがVMD専門部署にいるなら、販促部か広告会社に任せてもよいでしよう。
VMD専門部署がやることは、体験スペースを店内に組み込むという作業です。
「店内の空いたところで何かイベントやる!」という業務ではないのです。
体験をショップデザインに組み込んで視覚化することがVMD担当の役目なのです。

ただ「店内の空いたところでイベントをやる」という店は多いです。
プロモーショナル体験を行った38社のうち19社が空間体験とリンクしていませんでした。
つまり、半分の会社が「店の空いたところで何かやる」という状況に陥ってました。
これではもったいないです。
施工会社に空間デザインを丸投げせずに、来店客を体験させる場所への導線を考え、場所もゾーンに組み込み、場所のデザインも特別なものにする・・・ということをVMD担当は考え、施工会社といっしょに行うべきです。

日本のVMD担当者はほとんど販促部の中にいるので、もしかしたら体験そのものを考えるのもVMDの役目でありましょう。
空間デザインを変えてその中に他の3つの体験、ナレッジ・コミュニティ・プロモーションを組み込んだ店舗の方がより私の印象に残りました。。
集計するとその数は37社あり、うまく体験をビジュアル化させて顧客を楽しませていました。

なぜ当社のVMDは、MDP、ショップデザイン、MD、販促体験の4分野になっているのか、これで分かったと思います。

●VMDの4つの分野

「体験自体をビジュアル化する」。
これについては、また機会ある時にお話ししまょう。

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

コロナ後のVMDはバーチャルマーチャンダイジングとの併用

アフターコロナの新しい生活様式が模索される中、今日はコロナ後の売場づくりはどうなるかについてお話しします。

私が書いているVMDの書籍では冒頭で、「体験はリアルな売場でしかできない」と述べていました。
セミナーの冒頭でもよく口にする言葉でした。

●オーバルリンクのVMD書籍

最近は同じ様な体験が家でもバーチャルにできるようになってきました。
すなわち、バーチャルマーチャンダイジングの登場です。

体験はリアル、バーチャルどちらでしても顧客は「買う行為」はできるようになってきました。
今後は二つのVMDが両立するようになるでしょう。
買い物は下記のような構造になると考えます。

●VMD=ビジュアルマーチャンダイジング
場所/ 店舗
体験/ リアル体験
体験の3要素/
・買う
・交わる
・学ぶ

●VMD=バーチャルマーチャンダイジング
場所/ 店舗以外・主に家
体験/ バーチャル体験
体験の3要素/
・買う
・交わる
・学ぶ

チャートにすると上記になります。

ビジュアルマーチャンダイジング、バーチャルマーチャンダイジング、この二つのVMDを両立させることがこれからのVMDの在り方だといえます。
店舗で何かを買うことは体験そのものですが、体験はリアル体験とバーチャル体験のタイプがあり、両方とも3つの体験の要素があります。
まず、リアル体験から述べていきます。

●●●● リアル体験の買う・交わる・学ぶ ●●●●

買う Pharchase Experimece

買うというのは、単に金を払うだけでなく、店内を歩いていろいろな売場に接し、たくさんの種類の中から好きな商品を選ぶという行為で、それはまさに体験です。
例えば下記のようなものです。

  • 心地よいBGMをバックに店内をそぞろ歩く
  • 素敵なディスプレイに目を見張る。
  • いろいろな柄の中から自分の好きなものを選ぶ

交わる Communication Experience

交わるというのは、ショップスタッフの接客もありますし、顧客同士が交わるということもあります。
交わることによって商品のよさがわかったり、使い勝手も理解でき、ファンの育成・持続にもなります。

  • ショップスタッフから説明を聞く (通常の接客)
  • サロンに通されて話をじっくり聞く (VIPな接客)
  • 生産者・設計者から話を聞く (専門家のトークショー)
  • 顧客同士の交流 (ファンの集い・試食イベント)

例えば、酒店はワイン試飲会を店舗のカウンターで行っていて、たくさんの顧客の交流を促進しています。
バイク店は試乗会を開いてバイク好きなファンの交流と育成を行っています。

学ぶ Knowledge Experience

学ぶというのは、商品と商品を取り巻くものについて学ぶということです。
コーヒーひとつ、アロマひとつとっても、学ぶことによって知識を深め、商品を使ってよりよい生活に結び付けていくというのは現代人の買い方と言えます。
学ぶとは、StudyというよりもKnowledge、つまり知識を得るための行為と考えてみてください。

  • グローサラント化したスーパー店内の料理人からレシピを学べる
  • 美容部員を通じて自分の健康増進策を化粧品店美容カウンターで学べる
  • コーヒー淹れ方POPパネルで、コーヒーの抽出法を学べる

これらリアル体験の3要素、買う・交わる・学ぶは、コロナ下の昨今、店外のバーチャル空間に引っ張ることが必要になってきています。
今度はバーチャル体験の3要素を見ていきます。

●●●● バーチャル体験の買う・交わる・学ぶ ●●●●

買う Pharchase Experimece

アマゾンや楽天などを利用して最初からネットで買う行為とは別に、店とネットで連動する買い方とは下記のようなものがあります。

  • 店内で試着・試飲して、専門店サイトで後で買う (ショールーミング)
  • 持ち帰りのものと、重いもの・かさばるものは分けて買う (ネットスーパー)
  • 店頭で興味が沸いた商品のQRコードをスマホに記録して、後で検討して買う (家電店のQR・POP)

交わる Communication Experience

コロナ下で、ZoomやMeetsを使ってショップスタッフとやり取りしたり、ファン同士を集いが交わる機会が加速しています。

  • 店頭での肌のお手入れプロモーションをネットで中継する (ライブコマース)
  • ソムリエと顧客同士のワイン試飲会 (Zoomによるウエブミーティング)
  • 車メーカー設計者によるネット交流会 (Meetsによるウエビナー)

学ぶ Knowledge Experience

上記の「交わる」には「学ぶ」要素も含まれており、買う・交わる・学ぶはリンクするものと考えてください。
いろいろな業態のうち、専門店は特にこれら体験の3つの要素を深く用いていますが、コンビニでさえも、RFIDやQRコードで商品情報をゲットできるので、店を出た後でゆっくりスマホで閲覧して商品を学ぶことができます。
しかもわからないころがあれば、ライン等で店とすぐにつながり面と向かって質問もできるようになりました。

買う場は、リアル・バーチャルどちらでもよい

ビジュアルマーチャンダイジングでは、いかに通行人を店内に導きモノを買わせるかに重点を置いてきました。
買わせることがVMDの最終目的だったわけですが、必ずしも店内で買わなくてもよい時代になりつつあります。
これからは買うスペースはリアル・バーチャルどちらでもいいのです。
こんな時代、VMDインストラクターはどのように売場づくりを行えばよいのでしょうか。
デジタルの専門知識も携えなければダメなのでしょうか。

答えはNOです。
あくまでビジュアルマーチャンダイジングはリアル店舗のノウハウなので、バーチャルの方は別の担当・専門部署に任せればよいでしよう。
ただし、ある程度の知識を身につれることと、別の担当や専門部署との連携は必要です。

大事なのはバーチャル部署との連携

リアルはリアル部署、バーチャルはバーチャル部署だけで販売業務を行うよりも、それらをリンクさせた方が相乗効果が期待できます。
いわゆる、OMOやオムニチャネルの考え方ですが、二つのVMD理論は、二つの担当部署あるいは担当者の連携という、ヒューマンリソースを土台にした理論だと思ってください。

つまり、今まではオンラインはIT部、またはCRM部に任せきりで、店舗はそれの販促をちょっとやるというスタンスでしたが、リアルVMD←→バーチャルVMDは担当者同士、相互依存の形で進まないといけないです。
例えば、今後考えられる施策を二者がどのように連携したらよいか、下記に述べてみます。

例1 グーグルストリートビューによる連携
インドアビューで店内を見ることができる昨今、店舗に行く前または後で店内商品を吟味することができるようになります。
アプリFlic360を使用すれば、ビュー内の写真をクリックすればそのまま買うことが出ます。
この場合のリアルVMD・バーチャルVMD担当の連携の仕方は下記になります。

・リアルVMD担当は、インドアビュー店内の導線・マグネット売場・オーケストレーションをプランし、打ち出し商品に目が行くように店内インスタレーションを行う。
・バーチャルVMD担当は、画面の商品クリックから自社の購買サイトにシームレスに移行する軌道をつくり、効果測定をする。
ビュー内歩行距離とクリック数、コンバージョン数などの測定を図り、効果が薄い時はVMD担当と話し合い、導線や什器レイアウト、ディスプレイなどを変えていく。

例2 facebookとインスタグラムのShops機能による連携
アメリカでは今年、facebookとインスタグラムにて店舗オーナーが無料で販売サイトをつくることができるようになります。
機能アプリ「Shops」をダウンロードして、売りたい商品写真を画面上に自由にレイアウトし、そこから自社の販売サイトに導くことができます。
この場合のリアルVMD・バーチャルVMD担当の連携の仕方は下記になります。

・リアルVMD担当は、打ち出し商品をVP,PP,テーブルプレゼンテーションに展示し、そこに「Shops対応商品」という名目でShopsカタログ商品掲載ページののQRコードを設置する。
・バーチャルVMD担当は、自社のfacebook、インスタグラムで店の展示を紹介するとともに、画面下に「Shopsカタログボタン」を設置し、クリックすることにより商品ページにジャンプでき購入できるようにする。
店頭QRコードからの購買率とバーチャルのみの購買率を比較することによる効果測定をし検証する。

このように、コロナ後の世の中は、二つのVMD、ビジュアルマーチャンダイジングとバーチャルマーチャンダイジングをセットで考えて行くことが必要になってきます。
VMDインストラクターの皆さん~、そんな世の中に対応できるように情報武装していきましょう!!

来週行われる「オンライン大阪売場塾VMDなるため説明会」では、これからのビジュアルマーチャンダイザーはどうあるべきか?も語ります。
興味ある方はぜひご参加ください。

●オンライン大阪売場塾VMDなるため説明会

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

VMD学習のために店内写真を撮ろう

何年か前のメルマガで、売場の写真は撮りづらい、と書きましたが、今はそんなことはなくなりました。
インスタグラムなどSNS全盛の時代、店内撮影に遠慮している人はいなくなりました。

ヨドバシカメラは、全面的に店内撮影OK。
茅場町にある、オサレな家具店、リグナも全面解禁になったそうです。

あの伊勢丹でさえも店内VPの写真撮影OKです。
各フロアのVPにはディスプレイの写真撮影OKのサインがあります。インスタグラムのアイコンがVP下の床にあって、「アートフレームは撮影OK」となっています。

あのヨドバシさんが撮影OKというのは驚きました。
当社は電気メーカーのクライアントが多いんですが、クライアントの売場をつくっても
ほとんど写真を撮れませんでした。
今は撮れるんですね~。

ストアコンパリゾンやフレームワーキングのために店舗視察をする場合、隠し撮りをすることはありますが、それは余裕がある場合。ほとんどスケッチやメモでした。
それはそれでいいのですが、ビジュアル・マーチャンダイジングの場合、ビジュアルに勝つ情報はありません。写真は撮れたら撮れたにこしたことはありません。

今までは、店舗やフロアをざっと回遊して、それから外に出て喫茶店などでメモ書きをしていたのですが、今そんな必要はなくなったかもしれません。
店内でパチリと写真を撮って終わり。情報の取得、とても早そうです。

とはいえ、写真撮影OKの理由は、SNSでお客様がわが店、わが商品を拡散してくれること。プライスカードや品揃えなど、販売や商品を競合店舗に撮られたら、やっぱりそこはいやな気がするでしょう。
ビジュアルマーチャンダイザーによる店舗視察は、売場自体の撮影なのでやっぱりそこはお客様ではなく、業者の隠し撮りの域を越えないことは確か。
相変わらず、撮影しにくいお店はスケッチ、メモの日々です。

ともあれ、スマホでカシャがOKとなった昨今、店内写真は撮りやすくなってきたことは確かです。
VMDの勉強をしている皆さん、写真を撮ったら必ず家で見直して、フレームワーキングしてくださいね。

●フレームワーキングの仕方
https://vmd-blog.oval-link.co.jp/archives/825

お客様は買う理由を欲しがっている

今の時代、ネットでもリアル店舗でも、いろいろな商品が発売されています。
チョコレート、靴、カバン、勉強机、防災用品、オーディオ、車・・・。
商品の種類は多岐に渡るので、お客様はその中から選択しなくてはいけません。

リアル店舗において、いろいろある中から何かを選ぶのは面倒と考える人は多いものです。
例えば、ワイン売場なのですが、あまたの中からどのワインを選んでいいのか迷う人は多いでしょう。

スタッフに訊くしかありませんが、それさえ躊躇している人は多いでしょう。
お店側もたくさんのワインをきれいに棚に置けばいいというだけでは、売り逃しが多発するだけです。

そこで、テーマというものが役に立ちます。
数ある商品を探しあぐねて結局買わないお客様が多い中、お店側に売るテーマがあれば、お客様は買いやすくなります。

テーマというのは、イチオシの商品や商品群をお客様に売る理由をつけて陳列・展示することを言います。
お客様は買う理由を欲しがっていますので、買う理由をお店側がつけてやればよいのです。

テーマは、その時来店するお客様の琴線に触れることがテーマでなければいけません。
単に「安い」「フランスワイン」「新入荷」だけでは買う理由になりません。
もっと買う理由にあたるテーマに掘り下げなければいけないのです。
例えば下記のように。

●テーマ
フランスの品評会でグランプリを取った日本の甲州ワイン特集

●テーマ
広島カープが優勝。やっぱり今日は鯉のボトル。ペッシェヴィーノ社特集。

●テーマ
銀座のほとんどの一流レストランが出しているワイン、シャブリ特集。

●テーマ
アルコール度数は普通のワインの半分でスイーツに合うワイン。
アルコール度1/2特集。

とこんな感じです。

やり方は簡単。
下記の方法をとるとおススメ感がお客様に伝わりやすいです。
甲州ワイン特集を例にとります。

●甲州ワインくくりの売場を作り、甲州のフェイスを多くして、A4のPOPと棚の背面パネル、およびトーカー(帯POP)を棚のサンにつける。
つまり、ワイン売場の中にひときわ目立つフォーカルポイントをつくる。

●テーブルを用意し、ライザーを駆使して展示をつくり、B4のPOPをそこに添え、フェイスを多くしたIPをつくる。
つまり、テーブルをウエルカムディスプレイにして、おすすめ商品だと強調する。

●告知POP「甲州ワインフェア」を店内に等間隔、等高度に配列し、甲州ワインのフェイスを多くし、ボトルに「甲州ワインフェア」のメダルをぶら下げる。
つまり、店内をイベントのようにする。

●特設カウンターを用意し、そこにスタッフを配置し、甲州ワインの試飲会を開く。

こんな感じです。上の4つを掛け合わせてもいいでしょう。
イチオシの売場が目立つので、スタッフも説明しやすくお勧めしやすいです。

売場がコンビニだったら、こんなことはできませんので、

  • フェイス数を多くする
  • ひときわ大きなPOPを掲げ、お客様の琴線に触れる文章を書く
  • 展示と陳列をセットでディスプレイする
  • 棚の背面ボード、トーカーでそのワインのところだけ売場デザインを変える

などを行うと、お客様にお薦めする理由が伝わります。

お客様は買う理由を欲しがっています。
いろいろな方法で買う理由を明確にしてあげましょう。

VMDマニュアルって更新するもの


VMDインストラクターのまずのゴール、それはVMDマニュアル。
いわゆるガイドラインというものですが、ガイドラインには落とし穴があります。

その落とし穴とは、「マニュアルはつくって終わり」と思っていること。
マニュアル自体を目的にしてはいけません。
マニュアルは更新することで使えるマニュアルになるのです。

もう5年も10年も触られていないマニュアルをたくさん見てきました。
マニュアルは更新しなければいけないのに、そのまま放置しているケースが多いです。
マニュアルが机の端、ブックレットに置いたまま何年も過ぎている・・・、
それはマニュアルではないのと同じです。

なぜVMDマニュアルは更新しなければいけないのか。
それは、更新することによって、現場の問題に次々対処できるからなんです。

VMDインストラクターが初めて作ったVMDマニュアル。
確かにうれしいです。
あなたが、独立起業しているVMDインストラクターなら、クライアントのマニュアルを納品して、「ゃった」と思っていることでしょう。

でも待ってください。
できたてほやほやのVMDマニュアルはまだテキストみたいなもんです。
つまり、「売場はこうあるべきだ」の始まりのテキストに過ぎないんです。
店に納品したテキストのようなマニュアルを見て、店舗VMDは必死にがんばります。

でも、待てよ。
個々に書いてあることって基本じゃん、この店はこういう地形になっているから、どうやってレイアウトすればいいのかしらん?
とマニュアルを見ても、わからないところ続出です。

そこで店舗VMDは本部VMDに「この場合はどうすればいいの?」と聞き返します。
「その場合は、してあーして」と、本部VMDは店舗VMDといっしょに考え、2人で問題を解決します。

そして。
その行動と結果を報告書にまとめます。
そこからが、マニュアル更新のスターンです。
違うパターンのレイアウトが報告書からきちんとしたマニュアルのページに生まれ変わるんです。

そう、マニュアルは日々の活動で変わっていくものなんです。
変わることによって、マニュアルは進化し、使い勝手の良いものになっていく。

そういう意味では、無印良品のマニュアルはよくできてます。
MUJIGRUMという店舗運営マニュアルで数巻あり、そのひとつがVMDマニュアルなんですが、これがよくできていて、いつでも更新できるようにバインダー形式になっています。
足したり、削除したりできるんですね。

マニュアルって更新するもの。
マニュアル納品して終わり!でなくて始まるものなのです。

VP→PP→IPの次にAPが来る

VMDのディスプレイに、VP、PP、IPというのがあります。
これは店内ディスプレイの種類をいいます。
詳しくは下記をご覧ください。

●VP、PP、IPとは

さて、AP(アーチクルプレゼンテーション)とは、当社独自の考え方でして、手っ取り早く言うと、「商品サンプルと展示台とPOPを一体化したディスプレイ」のことです。
化粧品、家電、調理器具など、見ただけではわからない商品に適したディスプレイ方法で、APを導入すると、機能・効能・効果をディスプレイのみでお客様にわからせることができます。

例えば、下記のような時にAPは力を発揮してくれます。「商品サンプル」「展示台」「POP」、この3つの要素を使って説明します。

●タイヤの展示
カー用品店で、ただタイヤを床においても、見ただけでは何もわからない。そこで下記のようなディスプレイをつくる。
・商品サンプル/ タイヤを半分に切った構造模型とタイヤそのものをユニットでディスプレイする。
・POP/ タイヤの内部構造を説明したPOPを商品サンプルに貼りつける。例えば、「トレッド部の特殊な溝がグリッドをよくする」などの特徴を示した文字とイラストをPOPに表現する。水はけをよくする構造なら、雨天時の車走行シーンの演出POPを加えてもよい。
・展示台/  トレッドの溝が特徴なら、お客様が少ししゃがんで、手を載せられる位置にタイヤのフェイスが来るような構造の展示台デザインにする。

●シリコン調理器の展示
食材や調味料を入れてレンジでチンしてできるシリコン調理器も、ただ置いただけではわからないケースが多い。そこで下記のようにAPを考える。
・商品サンプル/ シリコン調理器のふたが閉じた状態と開いた状態をユニットでディスプレイする。開いた商品に、オニオンと人参、サーモンのサンプルとシチューの子袋を入れて置く。
・POP/ 「石狩シチューの作り方」レシピを、商品説明POPとセットに置く。商品説明POPは、シリコン調理器の利点である、手軽、短時間、そのまま食卓に出せる…などの説明をする。また、今流行りのアヒージョやコンフィなどの調理完成写真も、背景に演出POPとして置く。
・展示台/ シリコンは軽いという観点から、商品が浮くように展示できる台を考える。ふたの開いた商品と閉じた商品が、ふたの中のみぞと外側のラウンドした部分が見える角度に収まるように作る。

こんな感じです。私は過去に、360個のビーズをどのようにしてバングルにするかの、アクセサリーメーカーのAPや、プリンタやタブレットといった電子機器のAPを手掛けてきました。いずれも、印刷会社やSP会社に制作を依頼するというよりも、市販のライザーや家庭用プリンタで簡単に出力できるAPの作り方マニュアルをお渡しして、それを本部VMDがヘルパーやラウンダーに教えるというコンサルティング方法を取りました。

先達も、公開セミナーで化粧品ブランドの方から、化粧品什器制作はどのようなところに気を付けたらいいか?というご質問がありましたので、下記のようにお答えしました。

●化粧品APの作り方
・お客様の購買アクションと販売員の販売アクションをベースに、商品を取り出しやすくて、戻しやすいかを検証する。商品サンプルは、使用順位順に並べる。(洗顔→化粧水→乳液etc)
・商品のくくりを明確にする。メイクなら、目・口・顔と使用部位別にサンプルをくくって選びやすいようにする。各々のくくりに分類POP(例えば、「EYE」「LIP」「SKIN」などというPOP)を付けるとわかりやすい。
・色の順番を決める。例えば、寒色・暖色・中性色順にするとか、色相順にするとか決める。
・フェイシングを決める。商品をどのように置くかを決める。お客様が、一目瞭然に商品特性がわかるサンプルの置き方を考える。商品を取り出しやすくて、戻しやすいような展示台を考える。

アーチクルプレゼンテーションは、アーチクル(商品自体のこと)をよりわかりやすく見せるためのディスプレイの工夫です。売場のPP(ポイントとなるディスフレイ)にもなり、来店客の注目率抜群です。お客様が手に取りやすく戻しやすい90cm~120cm位のところに置くといいでしょう。

仕入れた商品をセルフの棚に置いても、誰も買ってくれない場合は、そのまま置いただけではわからない商品だから・・・という場合が多いです。そんな時は、ぜひアーチクルプレゼンテーションを導入してみましょう。売れる商品になるはずです。

店舗視察の仕方

普段、皆さんは新しい商業施設や店舗を見に行きますよね。
その時、どのようにお店を見ればよいのかについてお話します。

それには二つあり、

  1. フレームワーキング型店舗視察
  2. テーマハンティング型店舗視察
  3. 1と2の併用

があります。

順を追って説明します。

1.フレームワーキング型店舗視察

これは、買い物客目線でお店を視察し、買い物客目線で考えること。
そして売場を見てフレームワーク用語(VMD用語)を想起することです。

★フレームワーキングとは

例えばこの間、品川駅の「FOOD & TIME ISETAN」リモデル店舗に視察に行きましたが、私の好きな売り場はビールとワインです。ここは買い物客目線になります。
実際に自分が客として買い物をする場合、他店と何が違い、何がメリットなのかについて考えるのです。
例えば、昨日は下記のようなことが分かりました。

○品揃え
商品は半分以上が伊勢丹オリジナル入荷の商品。したがって他にない品揃えがある。品川にはマルエツがあるがナショナル商品と伊勢丹商品と分けて買う客が多そう。店頭FKUは減ったので、見た目のボリュームは以前の半分だが個性的な品ぞろえとリーズナブルな価格なので独身女性にも買いやすく、旅行者にもいい。
特に、書籍やアロマ、バス用品などを入口に入れて、食べて美しくなる、健やかになるなどいうテーマ売場を自然に設けたこと。これらがリレーショナルにオープンな形で続いていること。

○体験型店舗
その場で試飲試食、店員との触れ合いばかりか人と出会ったりその場にいておしゃべりなども弾むので、居心地のいいスーパーになっているということ。よくあるSCのフードコートのようになっていないこと。
ところどころでイベントをしているので、場を盛り上げたり楽しめること。ヌーボーの試飲、外国牛のハンバーガーなど、エンドを利用していろいろなイベントをしていること。
クラフトビールのバーはアメリカクラフトビールが圧巻でその場で食事をすることもできる。

こんな感じです。
もちろん、FOOD & TIME ISETAのフロアはくまなくざっと歩きますが、気になる売り場、好きな売場は長くいて、それ以外はサッと見ます。

さて、次は腰を落ち着けてどこかで、ためになったフレームワーク用語をメモします。
昨日は下記のようにメモしました。
ショップデザイン、見通し、MD、分類サイン、体験、照明、インテリアディスプレイ、フェイシング、くくり、導線、フォーカルポイント・・・。

この用語ごとに写真を撮るといいです。
文字より写真の方がモノを言います。
気を付けるのはカシャカシャ撮らないことです。
ここでは6枚くらいしか撮りませんでしたが、それで十分です。

フレームワーク用語と写真を紐づけると記録すると、復習にもなり、事例として勉強や研修もできます。

2.テーマハンティング型店舗視察

私は毎年アメリカ視察に行っていますが、こちらはほとんどテーマハンティング型視察です。毎回定点観測に行っているので、同じ商業施設を見ることが多いです。そこで、下記のように売場を見て写真を撮るテーマを決めています。
例えば昨年は下記でした。

○撮影テーマ

  • GP ・・・とくにメーカーのもの 特別売場のもの
  • マグネット売場 ・・・研究用
  • VP,PP,IPが一直線で見えるもの。VPテーマを反映している売り場
  • モザイク陳列
  • コンセントレーション
  • 核バリエーションスタイル売場
  • AP 
  • GP 
  • ツインシンメトリー
  • コントラスト配色

こんな感じです。
これは日ごろ事例を探したり、深く研究したい分野なので、どんな施設でも勤めてこの売場を探しています。
とはいえ、探偵のようにしらみつぶしにフロアを回ることはしません。
マグネット売場はMacysに多いですし、コントラスト配色はアントロポロジーに多そうだとか見当が付くので、だいたい見て回るルートは決めています。

施設ではなくお店の場合では、下記のようにテーマを決めて見学に行きます。

  • ウイリアムソノマ →テーブルプレゼンテーションとビルボードを見る
  • ブルーミングデール →ブランドコーナーの世界観の要素を見る
  • ウオールグリーン →衣食住密接のリレーションを見る

このようにある程度テーマを決めないと、時間の無駄が多いことに留意しましょう。

1と2を話してきましたが、店舗視察に慣れてきたら、3に移行するといいです。つまり、テーマを持ちながらフレームワーキングするということです。
3が私の日常の視察スタイルです。

さて、このフレームワーキング、インスタグラムでは、こちらでトレーニングできます。

●VMDインストラクター協会インスタグラム

IDはshop_space_stylistです。
スマホでトレーニングてきます。
美しいアメリカのディスプレイを見ながらVMDを鍛えてください。

VMDのディスプレイ、PPの勘違い

 

MDPの基本、VP,PP,IP。
セミナーを聴いてわかったつもりでも、PPを間違って解釈している人多いです。

どんな間違いなのか、下記に列記してみます。

  1. ポスターやビルボードをPPと勘違いしている
  2. サンプルをPPと勘違いしている
  3. インテリアディスプレイをPPと勘違いしている
  4. タイト陳列をPPと勘違いしている
  5. AP(アーティクルプレゼンテーション)をPPと勘違いしている
  6. キャンペーン告知展示をPPと勘違いしている

などです。
ひとつひとつ解説していきます。

1.ポスターやビルボードをPPと勘違いしている

例えば、ユニクロ店内の壁面上部の大きなポスターをPPと思っている人多いです。
あれはただのPOPです。
PPは商品が展示していないといけません。

同じように、ドラッグストアの雪肌精のガッキーのポスターはPPじゃないです。

2.サンプルをPPと勘違いしている

洋菓子店のガラスケースに入っているお菓子のサンプル。
ちょこんとお菓子箱の上に載っているサンプルはPPじゃないんです。
お菓子は小包装のため、生身のお菓子が見えません。
そのため、サンプルというお菓子の模型を、箱の上に置いています。
これをPPと勘違いしている人多いです。
同様に、雑貨店で陳列のフェイスの前に置かれているサンプルもPPではありません。

3.インテリアディスプレイをPPと勘違いしている

インテリアディスプレイは、お店の装飾品です。
例えば、レストランに花や壷が壁の棚に飾られていますよね。
同じように、物販店でも棚の上に装飾品が飾られているケースがあります。
これをPPと勘違いする人多いです。
これは単なる飾りです。
PPは商品が伴わなくてはいけません。

このインテリアディスプレイ、実は曲者で、装飾品の中にちょこんと商品が入っている場合があります。
例えば、フルーツビール売場の什器最上段に、りんごやパインなどを盛り付けたボールがあり、その中にフルーツビールのびんが1本刺さっている場合。

これをPPというのでしょうか。
残念ながらこれはインテリアディスプレイです。

PPは商品自体が目だっていなくてはならず、最低、商品ラベルやデザインがお客様に認知されなくてはいけません。
この場合、ビールの瓶は商品ですがオブジェのような役割をしているので、PPじゃないんです。

このような、商品を少し混ぜただけのインテリアディスプレイはいたるところで見受けられます。
キッチン212の壁の上、R・1/Fのカウンターの背後など、商業施設で見かけることは多いです。

インテリアディスプレイは、ディスプレイをショップデザインの一環として配置しているため、MDP(マーチャンダイズプレゼンテーション)としてではなく、SD(ショップデザイン)の役割を担っています。

特に小さく細かい商品は、PPとして展示しても遠目からわかりにくいため、プロップスと混ぜて作るケースが多いです。
商品展示を確信犯的にPPとしてではなく、インテリアディスプレイとしてつくっているケースが多いことに留意しましょう。

4.タイト陳列をPPと勘違いしている

バッグや財布など、タイトに商品を寄せて陳列している売場は多いです。
これをPPと勘違いしている人多いです。

特にラックの最上段に置いてあるバッグをPPと勘違いしている人がいるんですが、これもIPなんですね。
PP的なIPといえましょう。

5.AP(アーティクルプレゼンテーション)をPPと勘違いしている

アーティクルプレゼンテーションとは、商品と展示台とPOPが一体化されたディスプレイのことで、デジカメ売場や化粧品売場などたくさんあります。

デジカメは、展示台にモックや実機が置かれていて、そこにPOPがあって商品を詳しく説明しています。

化粧品は、メイベリン売場のように、リップをたくさん展示台に指して、その下にPOPを置いて商品を説明し、その上にモデルのポスターを置いてブランドイメージを醸し出しています。

これらはPPではありません。IPです。
化粧品や家電のような、商品説明が必要な難しい商品は、AP方式で陳列されているんです。
靴でも説明が必要な機能靴なら、AP方式で置かれています。
展示の様に見えますが、IPと心得ましょう。

6.キャンペーン告知展示をPPと勘違いしている

試供品やノベルティを伴うキャンペーン告知は、棚の上で行われることが多いです。
例えば、2,000円以上買えばトートーバッグがもらえるとか、キーホルダーがおまけでついているとか、そんなキャンペーンがあるとします。
その告知は、POPとノベルティと装飾品とで、棚の上に大きく作られています。

これらはPPではありません。
ただのノベルティ告知ディスプレイです。

・・・と、ここまで書いてきましたが、短時間のVMDセミナーでPPというものは、さらっとわかっても、深く会得するというのは難しいです。
物事は、自分で見て知って体験して、深く知るようになるもの。
社内社外でいろんなケーススタディを知って知見を蓄積していけば、半年経ってPPとはどんなものか本当に理解できるでしょう。

最近はこんなことをしています。
セミナー会場近くに専門店があったら、生徒と見に行きます。
実際に売場に行ってあれがPPだ、これはIPだと、現場で教えています。

MUJIやアフタヌーンティーなどのチェーン店は、PPがわかりやすいので見学に利用するといいです。
その後、ユニクロに行き、あれはPPでなくてただのポスター、プラザに行き、あれはPPでなくてただのPOP・・・と説明していきます。
すると、生徒はだんだんわかってきます。

私が使うスライドやイラストは、IPやPPのわかりやすい売場が多いので、それで生徒はわかったつもりになっていますが、いざ商業施設に行ってみるとPPか何かわからないディスプレイは無数にあります。

だから、実際にみんなで売場見学に行って、ディスプレイがどうなっているのか、論じるのもいいです。
「百聞は一見に如かず」というわけです。

正しいVMD用語を知ることは、VMDを正しく他の方に伝えるのに役立ちます。
間違っていると、間違ったまま伝わります。
VMD用語、きちっと理解して人に伝えましょう。