コンセプトとは
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今回は、コンセプトとキャッチフレーズを比較してみたいと思います。
まずはコンセプトから。
コンセプトとは「概念」のことです。
私は広告代理店に長く勤務していたからか、学生から社会人になって今日に至るまで、このコンセプトという言葉と長い付き合いをしています。
それほど重要な言葉なんです。
広告コンセプトというと、
- 広告が意図する主体的な考え
- 広告を表現する意味合い
- 広告が訴えたいベースの思想
みたいに思っていただければOKです。
コンセプトがないと、広告は骨がないペラペラの表現になってしまいます。
例えば、売場塾の生徒募集を広告表現したとします。
「ただいま、春の生徒募集中。VMD習いたい人みんな集まれ!!」
これだと単なるキャッチフレーズ。
コンセプトではありません。
売場塾の広告が訴えたい、ベースの思想を書いてみます。
「世の中のお店はデジタルにシフトしている。
だからお店はわざわざ行く場所になっている。
だから、お店はよりよい買い物体験ができる場所でないといけない」
という思想から、「心地よく買い物体験できる場所」=「快場」と定義し、
「ただ今、快場をつくる人、快場請負人募集」
とすれば、コンセプトに近くなります。
でも、これでもまだキャッチフレーズです。
そこで、「売場塾は快場請負人を育成する学校だ」
「お客様に心地よい買い物体験を提供する快場請負人をつくる学校だ」
に直すと、コンセプトになります。
広告キャッチを考えるとき、このようなコンセプトワードは表に出なくてもいいんです。
コンセプトはあくまで物事の本質を捉える言葉。武士の鎧の中身です。
ですので、外の鎧はコンセプトそのものでなくてもいいです。
ただし、外の鎧が「ただいま、春の生徒募集中。VMD習いたい人みんな集まれ!!」となってしまうと、タダの広告キャッチになりますので、少なくとも鎧の中身の本質がじわっと出て来るような広告フレーズを考えないといけないんです。
だから、「快場請負人募集中」というようなキャッチに直したり、「心地よい買い物体験を演出できる人、それが快場請負人」にしなければいけません。
広告キャッチフレーズは、外の人、つまり一般人を意識して言葉を考えるんですが、コンセプトは「わが社はどうありたいか」「わが店はどうありたいか」を言葉に表すことですので、外向きというよりも内向きの言葉です。
意志みたいなもんですね。
スターバックスのコンセプト
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例えば「スターバックスは第三の場所」というコンセプトがあります。
これは事業コンセプトとも言えるし、店舗コンセプトとも言えます。
「第三の場所」というのは、家、会社、そしてその間にある第三の場所という意味です。
つまりくつろげる場所であるということです。
このコンセプトワード自体は、スタバがオープンするときに大々的に出す広告のキャッチには入ってません。
銀座に出店するときに「銀座に第三の場所、現る!!」とも、少し砕けて「くつろげるカフェが銀座にオープン」とも謳いません。
「第三の場所」はスタバにとって内向きの言葉だからです。
社長や広報室がマスコミからインタビューを受けたときなどに、初めて出る言葉なんです。
「「第三の場所」というコンセプトをベースに出した店だ」と社長は語るでしょう。
ユニクロの「Life Wear」はコンセプトか?
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さて、ユニクロの「Life Wear」はコンセプトでしょうか。広告キャッチでしょうか。
答えは広告キャッチ。
これは「究極の普段着を着る生活を提供する店」というのがコンセプトであって、「Life Wear」はそれをちょっと外向きにおしゃれにしたキャッチコピーと言えます。
タイトルの写真を見てください。
北千住マルイにあるユニクロ店のLife Wearのコピーです。
ここに、「究極の普段着を着る生活を提供する店」がにじみ出ているのが、ボディコピーを読むとわかります。
さすがに、「究極の普段着」という言葉をそのまま広告に出すとベタなので、美しく響く表現に変えたといえるでしょう。
でも、Googleで「究極の普段着」を検索してみてください。
●「究極の普段着」を検索
「究極の普段着」という言葉が、広報の言葉、社長の言葉にたくさん出ていますよね。
そう、身内では「究極の普段着」がコンセプトワードなんです。
この言葉が商品コンセプトなのか、事業コンセプトなのかわかりにくいのですが、たぶん商品コンセプトなのでしょう。
ショップコンセプトなら「究極の普段着を着る生活を提供する店」にしないといけないし、事業コンセプトなら「究極の普段着を着る生活を提供する会社」にしないといけません。
オーバルリンクのコンセプトとは?
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さて、オーバルリンクの「VMDで売場を買場へ、そして快場へ」はコンセプトでしょうか?それとも広告キャッチでしょうか。
●オーバルリンクのHP
答えは広告キャッチでした。
コンセプトは「生活者と企業を快場で結ぶ」という事業コンセプトです。
このワード、マスコミインタビューや私の論文では、常に書いている言葉です。
名刺にも書いてありますよ。
つまり、「生活者と企業を快場で結ぶ」は「究極の普段着」と同じ身内の言葉。
広告に出すときは、少しカジュアルにわかりやすく表現する必要がありました。
だから、「VMDで売場を買場へ、そして快場へ」とか、「ただ今、快場をつくる人、快場請負人募集」とかいうキャッチフレーズになるんです。
つまり外向きの言葉になるんです。
わかりましたでしょうか。
コンセプトワードとキャッチフレーズの違い。
コンセプト、興味ある方はこちらをご覧ください。
●ショップコンセプトがお店の品揃えを決定する
●自店の店舗デザインはどうあるべきか
(VMDコンサルタント 深沢泰秀)