よいVMDセミナ―講師になるための秘訣

今日はよいVMDセミナー講師になるための秘訣をお教えしましょう。
当社の運営するVMDの学校「売場塾」は文字通りVMDインストラクターを輩出していて、たくさんの方がVMDセミナー講師として活躍しています。
VMDインストラクターは、集合研修・現場研修・ガイドライン制作、この3つの業務をこなすことができる人なのですが、まずは集合研修を成功させましょう。

さて、参加者を満足させるVMDセミナーとはなにか。
その秘訣は下記です。

  1. 弱点克服セミナーであること
  2. 習ったことは持ち帰ってすぐに試せること
  3. レジメが拠り所になっていること
  4. 経験や実績をベースに話が成り立っていること

順に追って話します。

1.弱点克服セミナーであること

VMDセミナーに参加する人は「当社のどこがダメなのか」わからない方が多いです。
売場づくりに悩んでいるが、具体的に何に悩んでいるのかわからない、といった方です。

「うちの売場はダメだ」と思っていても、ぼやっとしていてどこが悪いのかわからない小売店やメーカーの方は多いです。

講師は参加者の受け持つ売場のどこがダメなのかあらかじめ知り、セミナーでその答えやヒントを出さなければいけません。
「どこがダメなのか」それをまず、教えましょう。
次に「どうやってそれを直すのか」ヒントや答えをお教えします。
すると参加者の心の重みが取れ、すっきりするんです。
スッキリ!!というニュース番組がありますが、あれと同じ。
セミナー終わってすっきりした!という、弱点克服セミナーにするんです。

私自体、たくさんのセミナーをこなしていますが、クライアントから依頼があった時はほとんど「売場の写真をたくさん送ってください」といいます。
私たちVMDインストラクターは、写真を5秒見て売場のどこが悪いのかわかりますので、悪い写真をたくさんピックアップして、「どこが悪くてどう改善すべきか」を詳しくお教えしています。

2.習ったことは持ち帰ってすぐに試せるようにすること

残念ながら、セミナーというもの、受講生はその場で納得してもらえるものの、セミナー後は月日が経つにつれ忘れてしまうもの。
これはセミナーの限界といえましょう。
本来ならば、セミナー後に現場研修、つまりOJTがあることが好ましいのですが、これを怠っている、またはできない企業が多いです。

そこでおススメなのがキーワードを残してくれるセミナーです。
長い文章を教えても、受講生は忘れるもの。
短い文章、つまり単語をキーワードとして残すのです。

  • ネガティブスペース
  • トライアングル
  • リピテーション
  • シンメトリー

この辺は受講者がよく覚えてくれる単語です。
単語というのは実に便利なもので、講師の言ったことをギュッと凝縮してくれるんです。
単語さえ記憶に残れば、容易に持ち帰ることができるんです。
メモも取りやすいですね。

だから私共VMDインストラクターは、フレームワーク用語を徹底して覚えていきます。

  • リレーション
  • オーケストレーション
  • MDテーマ
  • くくり

などなと。

これが売場塾では55用意され、単語が何を示すのかテキストに記載しています。
例えば、くくりというのは陳列された商品を色別サイズ別などにくくって、分類をわかりやすくすること、をいいます。
ですので、セミナーで講師が「くくり」を覚えましょう、といってその方法を伝授すると、受講生は「くくり」という単語を持ち帰ることができるのです。

ちなみ下記の13の単語は、ひんぱんにセミナーで話する単語です。
ぜひ読んでみてください。

●VMDに役に立つフレームワーク

VMD初心者が覚えたい13の課目

3.レジメが拠り所になっていること

よいセミナーにはよいレジメがあります。
そして、そのレジメを拠り所にして受講生は復習できます。

逆に拠り所がないとどうなのるか?
それはセミナーが終わってたら、知りえた知識は忘却の彼方になってしまうということです。
セミナーでとても関心したとしても、所詮は人間の脳に一時的に蓄積されるにすぎません。
その知識を繰り返し使わない限り、日が経つにつれ、忘れてしまうのです。
たとえメモを取ったとしても、後でそのメモを見返す方は少ないです。

レジメは文字だけでも有効なのですが、やはりチャートやイラスト、事例写真などの挿絵が載っているレジメがわかりやすく、文字通り教科書になります。
挿絵が用意できない講師は、せめてスライドの中身だけでもレジメに残すとよいでしょう。

こうすることで参加者は後日、売場で何かわからないことがあったら、レジメを振り返って学習できるます。
拠り所としてのレジメをしっかりつくりましょう。

4.経験や実績をベースに話ができること

講師は経験や実績のある人が好印象を受講生に与えます。
もしご自分に実績や経験があれば、それらを積極的に取り上げましょう。

VMDのことをどんなに詳しく話しても、受講生は「実際にうまくいくのか」「本当に結果が出るのか」知りたいのです。

アメリカの売場の写真やウインドウの写真をいくらたくさん見せても、「このディスプレイはどうやって作るのか」「これがどんな結果をもたらしたのか」がないと、ただのレポートになってしまいます。
VMDってすばらしいんです、と100回言うよりも1回成功事例写真見せたほうが早いです。

ただ、自分はまだ新米のセミナー講師で実績がない場合はどうすればいいか?
残念ながら特効薬はありません。
一にも二にも実績をつくるしかないのです。

実は経験がまったくなくてもセミナー講師はできるんですが、それはほとんど口パクの世界になってしまいます。
つまり、本や他の人に教えてもらったことだけをセリフのように繰り返すだけになってしまい、説得力がありません。
セミナー講師はごまんといる、その中で成功するには実績をベースに、自分の言葉でいうことのできる講師が一番信頼されることはいうまでもありません。

だいたいわかりましたか。
よいVMDセミナー講師のなり方。
VMDインストラクターの皆さん、今年も最後になりました。
来年もよりよいVMDセミナーをして、快場つくり方をたくさんの方に教えていきましょう。

なお、VMD集合研修のやり方は売場塾「VMD教育指導講座」でお教えしています。
興味ある方はぜひ説明会にお越しください。

●VMD教育指導講座

●VMDインストラクター& 売場塾説明会

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

売場塾開校15周年!


VMDの学校、売場塾も来年春で開校15周年になります。
光陰矢のごとし。

お陰様で、今日現在で

  • 売場塾受講生 866名
  • VMDインストラクター資格取得者 783名
  • シニアVMDインストラクター資格取得者 10名

になりました。

これも受講生の皆様、クライアントの皆様、公開セミナーにお越しいただいている皆様、スタッフの皆様のおかげです。
平素の厚いご支援、誠にありがとうございます。

会社をやっていて何がいいかというと、「積みあがるものがある」ということです。
昔のサントリーウイスキーのCMでショーンコネリーのバックに下記のナレーションが入ります。
「時は流れない。それは積み重なる。」

いいCMでした。
CMの中のショーンコネリーは映画007シリーズを引退して髭もはやしていましたが、衰えを感じさせるどころか威風堂々として落ち着いていました。
●サントリークレストCM

年取ったらショーンコネリーみたいな紳士になりたいですね。
ぜひVMDインストラクターの皆さんも積み重ねを実践していただければと思います。

企業の皆さんは

  • 店舗診断をし続ける
  • フレームワーク55を実際にやってみる
  • 自ら研修を企画し実行する
  • 他の部署にVMDを教える
  • OJTを進んでやってみる

そしてVMDで起業した方も

  • クライアントに対して提案に提案を重ねる
  • 受け身にならない
  • 研修も毎回工夫を加える
  • カラーやインテリアなどVMD以外のスキルも習得する
  • 仕事が来ないからといってあきらめないで営業する

こんな感じで。ぜひ実践を続けて積み重ねていっていただきたいと思います。
あと1か月で新年です。
皆様にとって良い年になりますように。

トーンアンドマナーのフィルターで売場デザインを決めよう

あるとき、店内のPOPのデザインを見直す機会があったとします。
POPのデザインがバラパラだからです。

そこでVMDインストラクターであるあなたは、腕の立つデザイナーにPOPを発注するとします。
どのようにしたらよいでしょうか。
下記からひとつ選んでください。

  1. なるべく優秀なデザイナーにデザインを丸投げする
  2. トーンアンドマナーをしっかりデザイナーに提示し監修する
  3. いつもの施工会社に頼んで店舗デザインに沿ったPOPを作成してもらう

答えは2。

そう、トーンアンドマナーをデザイナーに提示して監修するんです。
下記の図を見てください。

●トーンアンドマナーのフィルター

まず、デザインテイストについて説明します。

お客様は買い物をして出るまで店内で短時間を過ごします。
店内で目にするものはPOPだけでなく、商品だったり什器だったり壁紙だったりします。
スタッフも目にしますし、定数定量の佇まいを決めている空間も目にします。
この時、テイストというお客様の感じ方があり、「自然でナチュラル」「クールでモダン」「元気でにぎやか」「フレッシュでみずみずしい」などお店によっていろいろな感じをお客様は受けます。
これを司っているのがデザインテイストであり、デザインテイストはお客様の目に見えるすべてのものが発している感じや気持ちです。
その「感じ」をお客様は五感でハッシ!と受け止めるわけです。

チェーン店VMDは、どこのお店にお客様が行っても同じテイストを感じるように、空間をコントロールしています。
それが空間ブランディングというもので、同じ店なのに一方は都会的で一方は田舎っぽいなんてヘンですよね。
無印良品やユニクロはどこに行っても感じ方は一緒だと感じているはずです。

VMDインストラクターはブランド空間の監修役なので、チェーン店全体のデザインテイストを統一して保つ役目を担っています。

チェーン店においては、POPはPOPデザイナー、商品はプロダクツデザイナー、床・壁・天井は店舗デザイナーなどと役割分担がされています。
ところがデザインにルールがなくて、各デザイナーが好きなようにそれぞれ作ってしまったら、店内はいろいろなデザインでごった煮になります。
そうなると、お客様にとってどの店に行ってもテイストが違うため、店のブランド感はなくなり、よろず屋で買い物している感覚になります。

そうならないために、VMDインストラクターはデザイナーにきちんとオリエンします。
デザインテイストを設定し、トーンアンドマナーを決めます。

「屋根裏部屋のような秘密基地」とか「離島の人のいない自然観」とか「重厚で伝統的だがモダン」のような表現と模写でストーリーボードをつくり、デザインテイストをデザイナーに提示できるようにするなどします。
その上で、下記をチェックします。

「離島の人のいない自然観」の場合では、

  • 「離島の人のいない自然観」テイストが什器デザインに表れているか。
  • 「離島の人のいない自然観」テイストがPOPデザインに表れているか。
  • 「離島の人のいない自然観」テイストが定数・定量に表れているか。
  • 「離島の人のいない自然観」テイストがディスプレイに表れているかどうか。

POPひとつとっても、「離島の人のいない自然観」テイストの下、書体はどうあるべきか、レイアウトはどうあるべきか、POP用具はどんなものがよいのか、考える必要があります。
POPデザイナーにデザイン発注しできたデザインを校正する場合は、デザインがトーンアンドマナーに沿っているかチェックします。

施工会社の設計士と改装について打ち合わせするときは、壁紙の柄、照明の明るさ、什器のデザイン、床のパターンがトーンアンドマナーに即しているのか監修しなければいけません。

これを「トーンアンドマナーのフィルターを通してデザインを見る」といい、店内デザイン物を精査する際、このフィルターを通します。

例えば、下記の茶店は「重快感~伝統の重さと現代的な快感」というデザインテイスを決め、そのフィルターを通して店内空間を監修しました。
●お茶店VMD

ここまで書くと、VMD担当はデザインセンスを身につけ、設計図面を読めたり、コピーを書けたり、色のコーディネート術を身に着けたりと、デザインについての知識やスキルは磨いた方がよいことがわかると思います。
でないとデザイナーや設計者と会話できないどころか、デザイン丸投げになってしまうからです。

「トーンアンドマナーは何か」について分かったと思います。
ところでトーンアンドマナーはショップコンセプトがないと決めることができません。
すべてのトーンアンドマナーは、ショップコンセプトオリエンテッドです。
つまり、「どんなお店にするか」明確化するコンセプトが決まらないと、デザインテイストも決まらず、トーンアンドマナーもつくることができません。

もしあなたの店舗にコンセプトがなかったら、まずはとりあえずでいいのでコンセプトを決めましょう。
でないと、「私はモダンなデザインが好きだから、こんな什器にする」みたいにVMD個人の好みで決めることになりかねません。

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

マッシュアップでVMDハウツーを組み立てよう

VMDインストラクターの皆さん、マッシュアップでVMDのハウツーをつくりましょう。
今日はそのやり方をお教えします。

マッシュアップとは、二つのものをミックスして新しいものにするという意味です。
音楽やビジネス用語として使われています。

VMDインストラクターの方は、日々リバイスに励んで新しい売り場づくりの法則をつくり、それをガイドラインやマニュアルに落とし込んでいると思います。

VMDのハウツーとは、VMDのベーシックな理論をベースにした自社独自の売場づくりのルールと言えます。
ハウツーは、単にVMDの本を丸写しにしただけでは、実践的なものにはなりません。
単なるコピペと同じで、オリジナリティがありません。
したがって、そんなガイドラインやマニュアルを読んでも、具体的にどうしたらいいのか現場スタッフは途方に暮れるでしょう。

では自社のハウツーを確立してツカエるVMDマニュアルをつくるにはどうすればいいのか。
それは日々の報告書をマッシュアップすればいいのです。

皆さんはリバイスをした後、報告書を書いていると思います。
写真や言葉で、本日はこんなリバイスをしました・・・という社内報告書を書いてますよね。

実はこの報告書、賢い使い方があって、ずっと机の中にしまい込まないで、3か月~半年ごとに見直すといいです。

写真や文字を読んでいき、大事なところをマーキングしてみてください。
「これは参考になるな」とか「これは売場づくりのヒントになりそうだ」「これは現場に必だな」という感触でよいです。
その部分をマーキングします。

マーキングしたら、その文章や写真をワードでもエクセルでもいいからコピペします。
3か月で30枚の報告書が上がっているとしたら、マーキングした文章は30くらいは上がると思います。
ここまでマークすると報告書は、実はVMDの参考書になることがわかります。

さて、ここからがマッシュアップです。
マーキングした文章で、似たような内容の文章をくくってください。
例えば、ゾーニングに関すること、色に関すること、フェイシングに関すること・・・などなど、売場塾のフレームワーク用語をベースにしてもよいので、似たような内容を集合させます。
エクセルでチャチャッとソートしてもいいでしょう。

中には、新発見もあります。
「テレビCMしているブランドイメージと店頭のイメージが合わない場合の対処法」とか、「店内で個々のお客様のプライバシーを守るための椅子の配置の仕方」など、既知のVMD理論では計り知れないハウツーも出現します。

ソートされた内容は、報告書の中でいったん解決しているか、未解決、または中途半端な解決になっているものなど結果はさまざま。
解決した場合は、どうやって解決したのか、自分なりに文章を書いてみます。
解決していない場合は、どうすれば解決できるのか、文章を書いてみます。
下記のような書き方の流れが理想的です。

●問題点 → ●解決するための考え方 →●実施の仕方 →●(予想できる)結果
つまり、文章の流れはPLAN DO SEEと考えてください。

論文を書くように気張ることはないです。
最初はメモ書きでOK。

次に日を置いて、今度はそのメモ書きをきちんとした文章に組み立てます。
誰が見ても納得するような理屈にするように組み立ててみてください。

そして最後にきちんと理論化できたら、自社だけのオリジナル・ハウツーができあがりです。

このハウツーをVMD課目あるいは細則として、自社のガイドラインやマニュアルに載せればよいのです。

報告書のマッシュアップは、3か月に一度、半年に一度くらいのペースで続けていくと、1年経てば貴社オリジナルのツカエルVMDガイドラインが出来上がります。

このマッシュアップ、手段としてSNSツールを使うことをおススメします。
下記のようにしてみてください。

●社内SNSで、つぶやいてみる
LINEやツイッターの社内版を活用して、自社のVMDハウツーについてつぶやいてみてください。
「むずかしい商品は箱から取り出して商品見本をつくった方がいいな」
「季節が到来したら、その季節を感じる色を優先的にマネキンに着せ付けたほうがいいな」
「フェアなどのPOPは同一デザインで3回以上、等間隔・同一の高さに揃えたほうが効果的だな」
などなど。
つぶやきはVMDチーム同士で行うとよいです。

●社内ブログに書いてみる
つぶやきがたくさん集まると、ヒントがちりばめられますので、それを元に社内ブログに上記の例をタイトルし、理論化してみます。
例えば、「むずかしい商品は箱から取り出して商品見本をつくった方がいいな」でしたら、下記のように文章をまとめてみます。
●箱出しフェイシング

●マニュアルに掲載する
VMDチームメイト同士でこうした荒いハウツーを確認し、よくできた理論と認定したら、それをマニュアルの文体に書き直して、マニュアまたはガイドラインに掲載します。
マニュアルのひとつの課題、または細則にするのです。

このようにすれば、いつでもマニュアルは更新でき、実戦的で使いやすいハウツーが蓄積していくわけです。

マッシュアップのしくみ、だいたいわかりましたでしょうか。
ソフトバンクさんやセガトイズさんなど、多くの企業では、社内SNSを使用した商品開発やマーケティングが当たり前になっています。
ビジュアル・マーチャンダイジングで、これらを使わない手はないでしょう。

私はVMDの学校「売場塾」のテキストを常に更新しているんですが、マッシュアップを活用してつくっています。
日々のクライアント活動から実際に成功した売場づくりをハウツーに転換して、誰でもツカエルVMD理論に組み立てているんです。
だから、売場塾のテキストは説得力あるんですよ。(^^)

VMDインストラクターの皆さん、報告書のマッシュアップでぜひ独自のVMD理論を組み立ててくださいね。
VMD本をコピペするだけでは、役に立つガイドラインはできないです。

ちなみに報告書からマッシュアップしてガイドラインに落とし込む方法は、売場塾のVMD教育指導講座で詳しくお教えしています。
●VMD教育指導講座

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

VMDガイドラインを使った教育方法


別のブログでマニュアルとガイドラインの違いについて語りましたが、私のブログではガイドラインでスタッフ教育をする方について語ります。

●VMDマニュアルとガイドラインの違い

ガイドラインは、原則をベースとして応用を教えてくれる教科書ですので、文字通りVMDインストラクターはこれを元に教育をしていきます。

原則とは、どんなブランドでもどんな企業でも守らなければならない普遍的な決まりです。
原則は、デパートでも家電店でもホームセンターでもコンビニでも共通している決まりです。
場所が都会だろうが田舎だろうが関係ありません。
お客様が心地よく買い物できる環境にすることが原則が存在する理由なので、それに業種・業態・場所は必要ないのです。

さて、ショップスタッフがガイドラインをベースにしてVMDの応用力を身に着けるためには、OFFJTとOJTという教育が必要です。
OFFJTは、レクチャーとワークショップがあります。
役割は下記です。

・レクチャー 売場づくりの原則を教える。
・ワークショップ 原則の応用シミュレーションをする

また、図を使うと上記のようになります。

VMDインストラクターは、レクチャーでチャート図や写真を使って原則を解き、そのあとにワークショップを行います。
ワークショップは実習のことで、受講者であるスタッフは原則に沿って自分の頭と体をフルに働かせて売場づくりをシミレーションします。
ワークショップでは、VMDインストラクターが評価と手直しをしますので、スタッフは自分の作ったものが応用の範囲外なのか範囲内なのかがわかります。
どこまでがよくて、どこからがダメなのかワークショップで習得できるのです。

売場塾では、40以上のワークショップを行っていますが、いろいろな業種・業態・取扱商品の受講生が来るため、コップや積み木といったわかりやすい教材で行っていますが、社内で行う場合はなるべく自社の事情に合ったワークショップをするといいでしょう。
バック店なら、コップを紙バッグに変えてやってみるとか、電気店なら冷蔵庫のアバターをつくって行うなどです。

OJTは、OFFJTワークショップの実際版と言っていいでしょう。
OFFJTワークショップは研修ルーム内の作業ですので本番を迎えてのリハーサルと言えます。(現場でワークショップを行うこともあります)
OFFJT後、現場で本番というわけです。

OJTにおいては、VMDインストラクターは手は出しません。
文字通り、原則に基づいた応用力をスタッフに発揮してもらう学習の場ですので、売場づくりはスタッフが行わないと意味はありません。
先生は後ろで見守るのが基本です。

そうして、スタッフがどうしてもわからない壁が出できて立ち往生すれば、その時は助け舟を出してやります。
その時もアドバイス位でよいです。
指示になってしまうと「私の言うとおりにやってごらん」または「私のやる通りにやってごらん」になってしまいますので、マニュアルと同じになってしまうのです。

ガイドラインがあると、インストラクターのアドバイスは「この線を越すとNG」が基準になりますから、スタッフは自由に売場づくりができ、応用力を発揮しやすいです。

またOJTの最中で、ガイドラインの線内に入っているけれど何かおかしい・・・という自称にも出くわします。
その場合、VMDインストラクターはその場で解決せず、持ち帰って原則を鑑みて、「セーフかどうか」または「これは例外にして新しい原則をつくるか」決めます。
こうしてガイドラインは更新していき、いつでも現場で活用できるスタッフの教科書になっていくのです

そして、1年の間、OFFJT・OJTを何回もリピートしていき、「ここまで訓練すれば大丈夫」となったところで、スタッフにデリゲーション(権限移譲)すればよいでしょう。
基幹店以外は、報告書なりイントラネットなどで本部VMDが管理すればよいことになります。

デリゲーションがうまくいっているチェーン店は、全国津々浦々どんな店に行っても、スタッフは売場づくりに積極的です。
VMDが社風や文化になっているからです。
それは、「ただ店をきれいにしていればいい」と違います。
ブランド世界観の佇まいをキープしていくのが、ガイドラインの望む成果ですので、「ディスプレイをきれいにつくる」「毎日掃除をする」というレベルのものではありません。

全国のVMDインストラクターのみなさん、ぜひガイドラインをつくってOFFJT、OJTで売場スタッフを教育し、デリゲーションしてくだいね。1年かかると思いますが、それを行っていけば、全国津々浦々どの店もブランドの世界観がキープでき、お店のファンが増えます。

VMD教育について詳しく学びたい方は、こちらの講座で伝授していますので、ぜひお越しください。(^^)

●VMD教育指導講座

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

店舗視察のコツ~お菓子店事例

今日は店舗視察の仕方をお話ししましょう。
ハワイのスイーツ・チェーン店、ホノルルクッキーカンパニーを事例にしました。
まずは、下記のように見るポイントを決めておきます。
だいたいこんなものが得られるのではないか、という予測をします。

  • オーケストレーション
  • キャッピング
  • シンメトリー
  • VMD分類
  • 什器レイアウト

上記のフレームワークを念頭に入れて、各店舗のVMDガイドラインを探求します。
同社がどのような規則でチェーン店のVMDを規制しているのか研究してみるわけです。
だから少なくとも3店舗以上は見学しなければいけません。

店舗視察した店は、ホノルル空港店、ビーチウオーク店、ロイヤルハワイアン店の3つ。
気付いた順に、VMDの違いと統一点を語っていきます。

まずはフロアレイアウト。フロアの取り方は、すべて開口部の幅1に対して奥行きは2の長方形。
3店ともカウンターは突き当り奥にあり、VPは入口にありました。
左右の壁面に売場を設け、フロアの中心にテーブルを置き、その周りを歩く「アイランド回遊型」になっていました。

壁面は、ベストセラー商品と季節ギフト商品売場に大別されていました。
見学した季節はクリスマスだったので、季節ギフト売場は赤いパッケージが目立ちました。
対面の壁はベストセラー売場で、ここは緑の常用パッケージで構成されていました。
ご存知の通り、同店の商品は9つのフレーバーのクッキーのみです。
なので、店はカートンの入り数とパッケージデザインで差別化するしかないのです。
不思議なのは、緑の商品売場に人が集中している点でした。
クリスマスパッケージの赤い売場に客が少ないのはどういうわけでしょう。

二つの売場の、パッケージ以外の違いは什器デザインでした。
ベストセラー商品売場の什器はガラス棚で背景が白いです。
棚はキャッピングしています。
最上段はPPでパインアップルのオブジェがありました。

一方、季節ギフト商品売場の什器は木製で棚の厚さが35mmありました。
キャッピングはなしで最上段のPPは商品のみです。
結論から言うと、季節ギフト商品売場が高級に見え、ベストセラー型商品売場はカジュアルに見える点が大きく違いました。
当然、客は高そうに見える売場は敬遠し、安く人気のありそうな売場に集中します。

入り数、パッケージ代はすべて同じなので、斬新な季節デザインの赤い箱に手を伸ばした方がトクなはずですが、客はカジュアルな雰囲気の売場が好きなようです。

アイランドはどうかというと、ここもベストセラー商品と季節ギフト商品売場に大別されていました。
こちらは、どちらのアイランドも集まる客数は同じですが、ディスプレイ構成が店によって違い、IP・PPテーブルとIPテーブルの2種類がありました。
木製ライザーをテーブル中央に配置して段差を作っている点は同じですが、ライザー上をPPにするかIPにするかは決められていませんでした。

店内売場の商品くくりは垂直で、リピート型かシンメトリー型の二つを採用しています。
シンメトリー型はテーブル売場に多く、リピート型は壁面に多いです。
いずれも商品を立ててフェイスアウトしており、パッケージデザインがよく見え、佇まいは美しいです。

壁面オーケストレーションはその上、PPが最上段にセットされているので、佇まいはさらに美しく、店頭を歩いている人を店内にキャッチしていました。
そのため、店頭はガラス囲いでシースルーにしており、ウインドウがあっても、店内を隠さないように展示物を低く抑えていました。
ロクシタンのようにタペストリーを背後に吊るしたりしていないのです。

以上のことから本部指示書の有無を推察すると、詳しい棚割りの指示書は出ていないようです。
●定番と季節ギフト商品のゾーニング ●くくりのパターン を1~3タイプ明示しているくらいの指示書と判断しました。
PPのオブジェは店によって違うので、PPも明確な指示は出ていません。
オーケストレーション、テーブルプレゼンテーション、キャッピング、くくり、フェイシングは各店で統一しているので、これらの基本ガイドラインは存在しているようです。
ディズニーランドのように、現場スタッフに対して上記5つの研修をやっていることは間違いないでしょう。

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

初心者向きVMD教育は四角四面で行く

VMD初心者に売場づくりを教える時、VMDインストラクターはどのような心がけが必要か、お話します。
ズバリ言うとそれは、四角四面に教えるということです。
この熟語、世間ではあんまりいい意味では使わないんですが、私が初心者に教える場合に心がけていることなんです。

セミナーのようなOFFJTにしろ、現場指導のOJTにしろ、店頭スタッフや本部の新米VMD担当にVMDを教えるときは、まずは基本を教えますよね。
その基本をあやふやに教えると、VMD初心者は理解がほど遠くなるので注意が必要です。

例えば、PP,IPという言葉があり、下記のような原則を教えるとします。

  1. PPはIPを代表するディスプレイ。
  2. PPは展示で、IPは陳列である。
  3. PPはIPの近くに置く。
  4. PPはテーマが必要である。

ここで言う原則とは守らなければならないルール。
初心者は原則を覚えることにより、売場づくりの基本を知ります。
だからVMDインストラクターは、最初のころは、この原則に忠実に売場づくりをするように指導します。

だから、

スタッフ「PPの棚の横のスペースが開いているから、ここにIPを設けていいですか」
vmd-i「仕方ないわね。いいわよ」
などと言わないでください。

また
スタッフ「PPにボリュームをつけたいから、IPにないけど新商品を加えていいですか」
vmd-i「仕方ないわね。いいわよ」
などと言わないでください。

これはもう、「ダメです。原則と違います」と言ってください。

このように、最初は原則で売場づくりを縛っていきますが、初心者から中級者になるにつれ、例外もあるということを徐々に教えます。

例外というものは、売場づくりを臨機応変に行う術が身に着くにつれて知るもの。
初心者のうちは原則も身についてないので、応用はできません。
だから、VMDインストラクターはまずは原則をしつこいくらいに言うしかないのです。

さて、上記に
3.PPはIPの近くに置く。
とありますが、スタッフはどのくらいが「近く」なのか、知りたがります。
その場合は、細かく規則を決めます。

・PPはIPの直上。

次に直上の定義を言います。

・スパン(什器のこと)のすぐ上が一番よく、最低MDカセットの上。

カセットというのはアパレルによくある単位で、1~5スパンの間で1つのMDグループが形成されています。
つまり、5スパンあって右から3スパン目にPPが作られているとしても、原則の範囲に入るのでPPに使っているIPはどこにあってもOKということになります。

このように、原則はあやふやでなく、しっかりと定義として打ち立てることが大事です。

そういうわけで、私がクライアントのOJTにVMDインストラクターを派遣するとき、「指導は四角四面にやってください」と念を押しています。
基本に対していきなり例外をつくってしまうと、スタッフはわけがわからなくなるからです。

売場塾のフレームワークはご存知の通り55あり、科目→課題→課目→細則の順に定義は細かくなっていきます。
フレームワークはPOP・サイン科目のようなところは、細則を定義しています。
PPとIPの位置における定義は課目として教科書に載っていますが、「PPとIPはどのくらいの距離に置いた方がいいのか」までの細則は書かれていません。
それはVMDインストラクターであるあなたが決めてください。(^^)
ガイドラインに書くとよいですよ。

●フレームワークメソッド

こんなに細則でがんじがらめになると、茶髪やソックスを取り締まる生活委員みたいで
いやだな~と思うかもしれませんが、仕方がありません。
最初は四角四面にやっていただくことによって、原則というものを守る癖を初心者に付けていただきます。

初心者はそのうちに、例外というものを知り、応用力を身に着けるようになっていくのです。
温かく教えてやってくださいね。

全国のVMDインストラクターの皆さん、初心者に対しては四角四面で行きましょう。
そのうちに、例外を教えてやって応用力やバリエーションを身につけさせましょう。

祝 令和

令和時代、明けましておめでとうございます。
新しい時代も快場で花を咲かせましょう。

今日のモーニングコーヒーテーブルは、令和を記念して「梅の花」
というテーマで作ってみました。
ディスプレイって楽しいですね。

VMDインストラクターの皆さん、快場の伝道師として
新時代もがんばりましょう~。(^^)

VMDインストラクター認定証が新元号に

今日は少し風変わりな告知です。
新時代の売場づくりの担い手になろう!
ということで、新元号にちなんで「期間限定認定証」を交付することにしました。
VMDインストラクター協会の事務局長である私が考えましたが、いかがでしょうか。(^^)

新元号発表まであと10日。
新しい時代の店舗や売場はどうなっていくのでしょうか。
新元号になって初めて認定されるVMDインストラクターに期待を込めて。
VMDインストラクターの認定証は西暦表示でしたが、改元を記念して、5月発行の認定証のみ新元号表示になります。

今ある売場を時代に沿った新しい売場にしていきましょう。
VMDインストラクターの皆さん、
新時代の売場をますます快場にしていきましょう!!

========================================
新元号印字の認定証交付は下記の期です
========================================
●第65期(5/6合否発表)
●第66期(4/6開講・5/30合否発表)

売場編集=リバイスという言葉を使おう


VMDを行っている人の話を聞くと、売場づくりには下記の3つの言葉が存在します。

  • 売場を制作する
  • 売場を施工する
  • 売場を編集する

また、VMDを行った事例をホームページなどに上げている人もいます。

  • 売場制作例
  • 売場施工例
  • 売場編集例(リバイス例)

3つ目はあまり聞かないと思いますが、当社のホームページにはありますよ。
〇リバイス

リバイスと言うのは、売場の再編集の意味で、revise(revice)と書きます。
これは英語です。
アメリカのビジュアルマーチャンダイザーが普通に使う言葉で、
revise store prototype schematics/product placement
(ゾーンを変えるとか、モノの位置を変える)
revise and present design ideas with assistant merchandisers and staff in stores
(空間デザインを考え直して、店舗スタッフとプレゼンテーションする)
などいろいろな場面で使われてるVMDの用語です。

この用語、日本ではリモデルというVMD用語ほどには浸透していませんが、VMDを営んでいる方はぜひこの言葉を使ってほしいです。

では、●売場を制作する ●売場を施工する ●売場を編集する
こり3つの言葉の意味をひも解いてみましょう。

●売場制作
制作と言う言葉は、クリエイティブな要素が多いです。
SP会社や広告代理店、またはディスプレイスタジオなどが使う言葉で、什器デザイン、POPデザイン、オブジェなどの造作物を伴う場合が多いです。
デザイナーやプランナーが絡んでいるケースに使う言葉です。
ちなみに、これが製作となると、メーカー的・工場的な要素が入るので、什器製作会社、パーツ製作会社などが、什器等売場の構成物ひとつひとつに使う言葉となります。

●売場施工
施工とは、施工会社、マネキンメーカー、建築会社がよく使う言葉で、店舗の床・壁・天井・什器・照明といった大道具を、設計図に基づいて作り上げることを言います。
店という空間、つまりハコをつくる仕事です。
ハコを施工することは店舗施工、平場やコーナーを施工することは売場施工といいます。

●売場編集
編集という言葉は、出版社が使う言葉です。新聞や実施など、タイトル・大見出し・小見出し・リーダー、本文・挿絵など平面デザインを構成するときに使う言葉です。
実は、私たちみたいなVMDインストラクターが行う通常業務こそ、売場編集という言葉がぴったり来ます。
売場づくりは、どんな店でも編集によって、毎季・毎月・毎週・毎日変化させなければいけないです。
アパレル、ドラッグストア、スーパーは52週ごとに売場をつくり替えます。
雑貨店は1か月ごとに柱周り、エンド、テーブルなどのメイン売場をつくり替えます。
これを売場を制作するとか、売場を施工するとかあまり言いません。
売場を編集する、という言葉がぴったり当てはまります。
その時に最適なテーマ、トレンド、見せ方で売場を編集しお客様を魅了、商品買上率を高めています。

それでは売場の編集とは具体的に何か解説しましょう。

●売場のレイアウトを変える
雑誌や新聞は段組というのがあります。
その段組に合わせて、記事やコラム、挿絵などをレイアウトしていきます。
同じように、売場は什器レイアウトというのが存在します。
時期ごとに什器の種類を決め、什器を配置して売場の位置やサイズ、導線を変えていくのです。

●売場のテーマを変える
新聞・雑誌の記事が変わるように売場のMDテーマは変わります。
時期ごとにテーマに合わせて商品を入れ替える、加える、混ぜるまどして売場を変えていきます。

●売場のタイトルを変える
新聞・雑誌には大見出し、小見出し、リーダー、本文があります。
同じように売場の大見出し・小見出しを変えていきます。
それはサインだったり、POPだったりします。
雑誌のリーダーに当たるのはブランド説明POPだったり、セールやフェアの告知POPだったりします。
本文に相当するのは、もちろん商品陳列です。

●売場のディスプレイを変える
編集では、新聞・雑誌にアイキャッチとなる写真を挿入したり、イラストやチャートを入れたりします。
同じように、売場にVPやPPを設置することによって来店客のアイキャッチにします。
またIPもディスプレイの構成要素ですのでVP,PPに従って帰ることもあります。
先述のrevise product placementとは、売場の棚割りを変えることをいいます。

いかがでしょうか。
Revise、売場を編集する、とはこのようなことです。
売場塾ではこの「売場の編集」ができることをマストとしてVMDインストラクターを育成しています。
もちろん、売場を制作・施工するのもいいのですが、編集はコストをかけずに売場を変えたり改善できるところが重宝されているのです。

もちろん制作・施工もVMDの仕事のうちなのですが、その場合、設計図やデザインが書けたり、プランニングできたりというスキルが必要になります。
売場の編集は誰でもすぐにできるVMDの基本中の基本のノウハウなのです。
VMD担当者の皆さん、ぜひ売場編集(リバイス)を現場スタッフをはじめとする売場関係者に教えて、いつお客様が来ても新鮮な売場をキープしてくださいね。