マーケティング戦略で売れるVMD本を出版しよう

VMDの教科書

今日は本の出版の仕方についてお話しします。
単なる本の出し方ではなくて、あなた個人や会社のビジネス戦略としてどう本を企画するか?についてお話しします。

起業した方なら誰しも「本を出したい」と思ったはずです。
売場塾生も個人として、会社として本を出版している方がいます。
それはこの間のブログでも紹介しました。
●VMDインストラクターの書いた本

私自身も本を出版していて市販本は3冊、自費出版1冊になります。
私の場合、売場塾をやっているので圧倒的にテキストが多くてこちらは9冊。
こちらはこの19年途切れることなく改訂し、出版し続けています

0.本を出す目的と手順

まず本を出したい方は目的を明確にした方がよいです。
単に本を出したいなら自費出版で十分だと思います。

以前ある出版社の自費出版説明会に行ったことがあるんですが、参加者は熱気むんむん、すぐに出版したいという方が多く集まっていました。
占い本を出したい人、旅行記を出したい人など、いろいろな方がいて、次々に出版社と契約されていました。

自費出版というものの、書店の流通に載り小売店に自分の本が置かれ、国立国会図書館にて永遠に保存されるという特典付きです。

ただ、ほとんどの方が、本で儲けるというよりは自分の証を世に出してみたいという動機が多いような感じがしました。
難しいイラストや写真などがないテキストだけの本なら100万円台で出版出来るということで、本を出したい人の夢をかなえてくれる、そんな出版社のシステムでした。

こんなわけで、単純に「本を出す」という既成事実を作りたい方ならこれで十分。
自費出版と言わなければ、「著名な出版社から本を出した!!」ということになるので、人に誇れます。

しかし、自費出版会社も今や大なり小なり出現しているので油断は禁物、準備金や制作費まで取る出版社もあって最終的には高くなる危険性もあります。
そこは十分気をつけてください。

VMD本企画書表紙

さて、今回は私の本「展示と陳列の法則」を題材にして、本の出版をどのように進めたらいいか、手順をお教えします。

  1. 出版社に企画を持ち込む
  2. 競合本を研究する・・・「企画の前提」
  3. コンセプトを決める・・・「本書の内容」
  4. 読者モデルを決める・・・「本の対象」
  5. ポジショニングを決める・・・「ターゲット別シリーズ企画」
  6. コンテンツを決める・・・「構成案」
  7. コンテンツを作る・・・「体裁と要望」
  8. 出版社に入稿する

実はこの順番、書籍企画書を出版社にプレゼンした企画書のページタイトルに準じています。(上の写真は企画書の表紙です)
この項目を見てあなたは「なんか、マーケティングみたい」と思ったことでしょう。
そう、本を出版することはまさにマーケティングなんです。

ほとんどの方が「本を出したい」と思っても、あまり企画を錬らずに出版しているのではないでしょうか。
そして出したことに満足して、ホームページやSNSで紹介しそれで終わり、なんて感じになっていると思います。

それではもったいない。
本を出すことは、下記の効果があるんです。

  • 会社や自分の広報になる
  • 商品やサービスのPRになる
  • 本が商品になる
  • 本が広告媒体になる
  • 本が論文発表の場になる

本を出す前に、これらを念頭に入れてじっくり企画を練りましょう。
そうすれば、「出して終わり」にならずに上記の効果を十二分に獲得できます。

それでは前述の手順通りに解説していきます。

1.出版社に企画を持ち込む

上記手順1~7のタイトルで構成された28ページの企画書を持って、出版社に提案しました。
出版社の選定について、私の場合は知り合いを通じましたが、好きな出版社に飛び込みでもいいと思います。
電話でアポを取ったり、事前に企画書をメール添付するなどしましょう。
私の場合は前職が広告代理店でしたので、出版社に知り合いがある程度いました。
なので、企画書を提案するのは数社に絞り、最後に1社に決めたのでした。

出版社で企画書の説明をした後、編集者からいい返事をもらいました。
出版はすぐに決まりました。
大手出版社の場合、出版の可否は社内稟議になるので、やっぱり精度の高い企画書は作った方がよいです。

2.競合本を研究する・・・「企画の前提」

VMD本「企画の前提」

本を作るにあたって、現状でどんなVMD本が書店やアマゾンで販売されているか調査しました。
普段からVMD本はくまなく読んでいましたので、どの本もだいたい内容は分かっていました。
出版社も「売場づくり」や「ビジュアルマーチャンダイジング」などのキーワードで市場調査してくれるので、だいぶ市場が掴めました。
それには各VMD本の読者モデル別・月別売上推移が提示されているので、どのジャンルの本がどの読者に好まれているかがわかりました。

また、大手書店に行き、どの分類の書棚にどのVMD本が並んでいるか探ってみました。
その結果は、上記の1ページに組み込みました。

VMD本はだいたい次の2つに分類されていました。

●お店・売場づくりの本
  ・・・経営・マーケ・流通業の棚に多く、テキスト中心のカタイ本
●ディスプレイ・VMDの本
  ・・・VMDといってもほとんどディスプレイの本でファッション・趣味的な本

この2つの中間が狙い目だな、と思いました。
そして出す本を下記のように定義しました。

高級店ではない、スーパーや商店のような
 普通の店の売場づくりをオシャレに恰好よく
 アート的に教える本は皆無です。
 当本は、アート・デザインとビジネスの中間
 を行く、新ジャンルの売場づくりの本です。」

つまり、小売りの売上を上げるのが目的のカタイ実務本ではなくて、ビジネス・ノウハウと、アート・スキルを兼ね備えたマルチな書籍を目指しました。

3.コンセプトを決める・・・「企画主旨」「本の内容」

VMD本「企画主旨」

上のページを見てください。
本を出す目的をコンパクトにまとめました。

企画意図)
「売場塾」を本にしたい
企画の背景)
「VMD」はオシャレな職業となりつつある

この企画書って、東日本大震災前に提案した2010年当時でした。
そのころの売場塾生はまだ150名。
今でこそ1,000名近くいるんですが、当時は今の15%。
当然、この本は売場塾のPRのために出しました。

単純な売場塾PRでなく、下記の目的もありました。

  • 会社や自分の広報にする
  • 商品やサービスのPRにする
  • 本自体を商品にする

そこで、切り口を下記のようにしました。

MD本「本書の内容」

そう、VMDインストラクターが教える「VMDの教科書」にしたんです。
つまり、売場塾の卒業生はこの時点で150名しかいないけれど、優秀なブランドのVMD担当が多いので、私というよりも卒業生を取材して売場づくりを語ってもらう本にしました。
シャルマンやエミスフェール、ダッドウエイやダーバンといったブランドVMD担当に協力いただき、たくさんの売場・ディスプレイ写真と共に売場づくりのノウハウを教える教科書としました。

編集者のイメージが湧きやすいように、帯広告のキャッチフレーズを企画書ページに入れました。

それには

「売れる売場をつくり続けているプロ(VMDインストラクター)が教えるVMDの教科書」

とあります。

これがまさに本のコンセプトでした。
最終的にこれらキャッチフレーズをまとめた表紙は下写真のようになりました。

VMD本の表紙

4.読者モデルを決める・・・「本の対象」

VMD本読者モデル

誰を読者にするか?
これは本を出す上でけっこう大事なことです。

皆さんは本を書く時、漠然と「売場づくりに興味がある人」「店員さん」「小売店」などと、対象をしっかり絞らずに内容決めていませんか。

VMDの本を出すから小売店の人、というのはあまりにも対象範囲が広すぎます。

本屋でどの棚に置いてほしいか?そこにはどんな人が来てほしいのか?
アマゾンでは、どのジャンルやページに掲載されるべきか?

を想定しないといけません。

つまり、読者モデルです。
最初、私は上記の企画書ページのように読者モデルを考えました。
それは、小売店、VMD担当者という軸ではありませんでした。

  • ホワイトカラー自分磨き社員
  • ライセンス・カルチャー女性
  • 売上一直線現場販売員
  • こじゃれた店大好き買い物女性

このポジショニングマトリクスを作って、「こじゃれた店大好き買い物女性」以外をターゲットとしました。
「こじゃれた店大好き買い物女性」だと一般女性になってしまい、VMD学校・売場塾とは、ほど遠い縁だと思ったからです。

また、よく考えると「売上一直線現場販売員」も本のコンセプトに合わないと思いました。
前述の通り、売上を上げるのが目的のカタイ実務本ではなくて、ビジネス・ノウハウと、アート・スキルを兼ね備えたマルチな書籍を目指していたからです。

そこで、2次元マトリクスをこのように変えました。

VMD本読者モデル2
  • ホワイトカラー自分磨き社員
  • ヒューマンアカデミー・カルチャー女性

ヒューマンアカデミーというのは、カルチャーセンターというよりも社会人向け各種学校で、読売カルチャーとかNHKカルチャーと違い、深く学びスペシャリストになりたい女性が行く学校です。
なので、少し企画書にその名前を借りました。

こんな感じで対象を絞ってください。
すると、ページ構成やデザインなどのコンテンツの方向性がおのずと出てきます。

5.ポジショニングを決める・・・「ターゲット別シリーズ企画」

VMD本ターゲット別シリーズ企画

次にどんな業界をターゲットにコンテンツを考えるか?をマトリクスに示しました。
やっぱり最初は(1)の「女性」「百貨店・専門店」にしました。
スーパーマーケットやコンビニも流通業界の雄だけど、最初に出すVMD本はやはり百貨店や専門店の売場やディスプレイの方がウケる、と思いました。

確かに売場塾の授業やテキストは、その業界以外にスーパーゃホームセンター、家電量販店、自動車用品店やコンビニなど、業種・業態・取扱商品問わないオムニバスなコンテンツなんですが、企画する本は「アート・デザイン的」という方向性を持っているので、やはり華やかな店の方がよいと思ったわけです。

コンビニやスーパーの方、大変申し訳ありません。
貴社の売場がアート敵ではない、というわけではありませんので、誤解しないでください。

なので、掲載対象にした店はこのように、ブランドショップ、セレクトショップ、百貨店内専門店、になった次第です。

VMDの教科書

さて、上記企画ページを見てお気づきの方は、この企画、シリーズ展開を狙っていることが分かったと思います。(^^)

6.コンテンツを決める・・・「構成案」

次はいよいよ構成案です。
その前にもう一度、コンセプトを整理しましょう。

「当本は、アート・デザインとビジネスの中間を行く、新ジャンルの売場づくりの本」「売れる売場をつくり続けているプロ(VMDインストラクター)が教えるVMDの教科書」

これがコンテンツ全体を覆うフィルターになっています。
冒頭の「快場の章」はまさに当社が目指す売場のあるべき姿。
心地よい売場「快場」とは何かについて語りました。

「陳列の章」と「展示の章」は、大いに売場塾生に協力いただき、売場塾生のブランドショップを取材して、彼ら彼女らのVMDを写真で紹介。
どのように日ごろ売場づくりをしているか語っていただきました。

「ディスプレイの章」は企画書の時点ではあったんですが、陳列と展示とダブるのでやめました。

そして「あなたもVMDインストラクターになれる!」の章では、売場でなくVMDインストラクターその人を取材しました。
売場塾生の皆さん、取材協力ありがとうございました。

7.コンテンツを作る・・・「体裁と要望」

VMD本のページ体裁

具体的にイラストレーターでページをつくってみました。
本のサイズはA4版と大きめのページにしました。
売場写真をふんだんに、なるべく大きく使いたいからです。

この本、VMDのレッスン本という体裁で全部で19レッスンつくりました。
1レッスン4ページとし、最初の見開きが「基本編」、次の見開きを「応用編」としました。
基本編は、売場塾の名物となっているコップ・ワークショップを紹介しました。
コップを使って陳列や展示をつくるというシンプルな表現を採用しました。
コップは、色・柄・サイズ・素材・用途・年齢・季節などいろいろなMD分類要素があるので、万能のVMD教材なんです。
このノウハウを惜しげもなく提供しました。

このページは売場塾の普段やっているワークショップの一部も垣間見えるので、学校のPRにもなりました。
そして売場塾生の所属している会社16社をリストアップして、「基本編」のコップのワークショップで培ったスキルが売場でどのように生かされているか、丁寧に取材し写真をたっぷり使い「応用編」として紹介しました。

企画意図)
「売場塾」を本にしたい
企画の背景)
「VMD」はオシャレな職業となりつつある

つまり前述のこれを具現化したわけです。

8.出版社に入稿する

こんな感じで企画しを練って1年かけて作りました。
とても大変でした。。。。

文章を書くだけならまだいいんですが、

  • カメラマン
  • デザイナー
  • インタビュアー
  • プロモーター

と、すべて1人でやりました。
取材するVMDインストラクターは大手ブランドに所属している人が多いので、まず広報部を通さなければいけません。
その交渉と打合せが大半のページに必要で、本の制作で一番時間がかかりました。

また、本の基本デザインや写真レイアウトも自分で作りました。
広告代理店時代からトコトンやらないと気が済まない性格がよけいな労力を生みました。(笑)

ですので、ページ入稿はすべてイラストレーター、写真のトリミングもフォトショップで調整して入稿しました。
カメラマンもしたので、撮影用にオリンパス一眼レフカメラも買いました。

取材先各社の広報部とやりとりする、取材・写真・本文・色校・ゲラは、私の広告代理店時代を思い出させました。
いい作品を残したいという構えは、起業してからも同じでした。

広告代理店時代のエピソードは下記を読んでください。
●好きなことを仕事にするには

9.本でどんな恩恵を受けたか

VMD本キャンペーンによる売場塾推移

そんなことで本は全国で売り出されました。
結果、下記の目的は「本が広告媒体になる」以外は達成しました。

  • 会社や自分の広報になる
  • 商品やサービスのPRになる
  • 本が商品になる
  • 本が広告媒体になる
  • 本が論文発表の場になる

初回4,500部出版しましたが、2年くらいで売り切れました。
「本が商品になる」機会が多く、1/3は大手ブランドの研修本として売れました。
コンセプトが「VMDの教科書」ということもあり、VMD研修のテキストとして、社員の教養本としてお買い上げいただくケースが続出しました。

この本から売場塾を知り、入学いただく方も多かったです。
売場塾卒業生で起業している方は、自分のセミナーのテキストとして使っていただく方もいました。

上記のグラフは売場塾のコース別生徒数推移です。
緑線がVMD基本コースです。
売場塾サービスが認知され、急激に上昇しているのがわかります。

皆様、大変ありがとうございました。
そして、そして取材に応じていただいたVMDインストラクターに大変感謝します。
クライアントの皆様にもお時間を取っていただいたり、広報へつなげていただいたりと骨を折っていただき厚く御礼申し上げます。

やがてこの本は海外からも出版オファーが入り、中国語に翻訳され、海外出版されました。(下写真)

10.後日談

「シリーズでやっていこう」と意気込んだ私でしたが、あまりにも制作が過酷だったため、2シリーズ目はトーンダウン。。。
とりあえず翌年もう1冊、別の出版社から「商品陳列 最強のルール」を出して、執筆はビジネス誌に戻りました。

最初の本はあまりにも手を入れ過ぎました。。。
通常業務が忙しくなったのもビジネス誌にシフトした理由の一つです。
ビジネス誌執筆は本と違いページ少ないので・・・。

そして今は出版社に頼らない自費出版にシフトしています。
これもなかなかよいですよ。(^^)
自分で製本する自費出版の出し方に関しましては、またの機会にお話ししようと思っています。

ちなみに下記が昨年出した自費出版本です。

●商空間ディスプレイ教本

なお、「陳列と展示の法則」は今は絶版になってしまいましたがアマゾンでは中古で手に入ります。
こちらのリンクから探ってみてください。
●魅せて・買わせる 陳列と展示の法則

ということで、VMDプロの皆さん、本の出し方分かりましたでしょうか。
ぜひ、マーケティング戦略をしっかり立てて出版してくださいね。
すると、自分や自分の会社にプラスになること間違いなしです。
新しい本出したら教えてください~。

最後に、印税がどのくらいあったかお教えします。
印税10%として1,600円の本は160円、×4,500部なので72万なんです。
印税だけで儲けようと思ったら、5万部は最低売れないとダメです。

なので、本を出すのは広告・販促の一種だと思ってください。(^^)

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

VMDコンサルのサービス内容

VMD研修の様子

1.VMDコンサルビジネスは3つからできている

今回はVMD専門会社、オーバルリンクのサービス内容を紹介します。

当社の宣伝というよりも、VMDインストラクターや他のVMDプロのお仕事の参考になると思います。
店舗トレーニングや臨店指導、起業したときのVMDビジネスの参考にしてください。

オーバルリンクのサービスはたったの4つ。

・売場塾
・店舗診断
・リバイス
・リモデル

リバイス(その場で売場改善するサービス)は店舗診断の延長みたいなものなので、実質下記の3つだと思います。
・売場塾
・店舗診断~リバイス
・リモデル

この3つだけで20年会社を運営しています。(^^)
では簡単にVMDビジネスの本質をお話ししていきましょう。

2.VMDコンサルティングは抽象的なオファーから始まる

ほとんどの小売店は、下記のような漠然とした悩みがあります。

「なんかうちのお店、おかしい」
「店舗スタッフのスキルなんとかしたい」
「お店づくりのコツが知りたい」

ほとんどのメーカーは、下記のような漠然とした悩みがあります。

「なんかうちの売場、おかしい」
「営業担当のスキルなんとかしたい」
「売場づくりのコツが知りたい」

なので、当社に来るクライアントオファーの70%は下記です。

「うちの売場、なんとかしたい」

そう、クライアントのVMDに対するオファーは漠然としているんです。

「VMD研修して」
「店舗デザインを変えて」
「美しいディスプレイつくって」

という具体的なオファーはあまりありません。
すなわち、悩み解決のひとつとしてVMDが役に立つのでは?
と思って当社にメールや電話をしているのです。

オーダーは実にあやふや。
そんなクラアイントに対して

「VMDセミナーやりましょう」
「店舗ディスプレイつくりましょう」
「改装しましょう」

みたいに単純に返すことはありません。
それらはあくまで単発サービスの羅列にすぎません。
会社のサービス内容を言っているだけです。

「売場づくりに悩んでいる」

でも、どこがダメでどのようにしたらいいのかわからないので、なんとかしたいと言ってきているんです。
医者を思い出してください。
患者は「なんか最近体がだるくて」と言っていねのに、いきなり風邪薬出さないですよね。

VMDも医者と同じように問診するんです。

3.お悩みを問診する

なので、「どうしました?」とクライアントの話をじっくり聞き、
悩みはどうやったら解決できるのか話し合います。

下記の様に問診していき、解決に導きます。

「なんかうちの売場、おかしい」 → 「どうおかしいのか」「どう改善したいのか」
「営業担当のスキルなんとかしたい」 → 「今のスキルの程度はどうなのか」「どのレベルに達したいのか」
「売場づくりのコツが知りたい」 → 「どういうコツが知りたいのか」「コツを知ってどうしたいか」

などなど、悩みを問診によってほぐしていきます。
とはいえ、クライアントから「どうおかしいのか」と聞いても「なんかおかしいです」と具体的な答えは返ってきません。
商品のこと、サービスのこと、店内販促のこと、いろいろ問診したあと、おおまかなことは掴めますが、核心は持てません。

一番いいのが、写真を20枚くらい見せてくれるとありがたいです。
なければ、レントゲン写真を撮ります。

4.売場のレントゲン写真を撮る

レントゲン写真とは、店内というカラダのレントゲン写真です。
つまり、店内の写真を撮るんです。
胃カメラも撮りますよ~。
棚の隅々まで撮るんです。

我々VMDプロは、売場の写真をレントゲンを見る医者さながらじっくり見ます。
すると、悪い個所が見つかり、それを直すにはどうすればよいのか、明確になっていきます。

レントゲンを撮らずに、売場を回ってここがおかしい、ここが悪いという指導はできますが、それだと漏れがたくさんあります。
売場は広いのでたまたま目に入らなかった部分が多いからです。
全体俯瞰だけでなく、棚の陳列、POPのデザインや文句、什器の位置や通路、照明など見るところはたくさんあるんです。
30坪の店舗に対しては平均200枚くらい写真を撮ることになります。
人間ドックならぬ、店舗ドックを行うと考えてください。

5.店舗診断は売場の人間ドック

どんなにキレイに見える売場でも50は直し箇所があります。
それを全体ソートして一覧表にしたのが店舗診断シートです。
それは健診表と処方箋で構成されています。
これがオーバルリンクの「店舗診断」です。

●店舗診断

単なるあらさがしと違うのは、ブランディングの要素が入っていること。
事前に問診でショップブランドや商品ブランドなどをお聞きするので、そのブランドの世界観や店舗コンセプトに店の状態が合致しているかも健診表に現れます。

なので処方箋は、この企業やブランドに沿ったものになるということです。
コンビニだったらセブンイレブンとローソンのショップブランドは違いますし、ドラッグストアだったらマツキヨとアインズ&トルペのショップブランドはかなり違います。
ドラッグストアだったらどこも同じというわけではないのです。

ブランディングを店に落とし込むってどういうこと?と思った方は下記のサイトを参考にしてください。
●自店の店舗デザインはどうあるべきか

6.リバイスは店舗診断の延長線

リバイスとは、短時間で売場を直すことを言います。
店舗診断で処方箋が出ますので、それに沿って行うのが順当ですが、品揃えをチェンジする時、拡張や縮小をする時にタイミングよく行うこともあります。
その時は、店舗診断しなくても最低店舗の写真をいただき、悪いところはすべて直すようにしています。

●リバイス

リバイスは完全リバイスと部分リバイスがあります。
完全リバイスはフロアのゾーニング変更から、部分リバイスは1コーナーのみ。
店の面積と人員によって2種類に分けられます。
詳しくは下記をご覧ください。

●完全リバイスと部分リバイス

店の売上を上げたい場合は部分リバイスをお勧めします。
長年VMDをやっていますが昨今ディスプレイを変えただけではなかなか売上は上がりません。
やはり、品揃えや体験販促、売場デザインも変えないと売上が上がらない例が多いです。
ディスプレイを変えると有利なのは、売場の見てくれがよくなることです。
詳しくは下記です。

  • 商品フェイスがわかりやすくなる
  • 商品が選びやすくなる
  • 陳列がキレイになる
  • 空間を取ることで商品がそれなりに映える
  • カラーが美しくなる
  • POPの配置が整理整頓される
  • 棚編成がデザインになる

などです。
ディスプレイを変えるだけでもよいのですが、肝心のフロアレイアウトや導線、打ち出し商品などは変えていないので、VMD効果は最大にはなっていないです。

部分的な直しにしろ、全体的な直しにしろ、とにかくよくなった店舗を実感したい、というクラアイントにはおススメです。
数時間から1日でできますので、手軽に頼めるサービスと言えます。

このリバイスのいいところは、店舗スタッフが売場改善の仕方を会得出来ること。これにつきます。
我々コンサルが去った数日後、店が元の悪い姿に戻っていることはありません。
店員さんがキープしてくれるからです。
私たちは、ディスプレイをつくりに行くのではなく、売場改善の仕方を店員さんや幹部に教えに行っているんです。
ディスプレイはほぼ店員さんにやっていただいています。
そこがディスプレイスタジオと大きく違う、VMDコンサルの本質なんです。

7.売場塾でリバイスの技術が習得できる

売場塾はVMDの学校で、VMDインストラクターの資格を認定しています。
このVMDインストラクターはVMDを学んで何ができようになるのか?
それはズバリ、リバイスなんです。

売場改善のインストラクターとして、臨店指導や研修ができるようになります。
そしてもちろん店舗診断も。

先ほどのクライアントの悩みを思い出してみてください。

「なんかうちの売場、おかしい」
「営業担当のスキルなんとかしたい」
「売場づくりのコツが知りたい」

これらを自分たちで解決できるのがVMDインストラクターということです。
具体的には下記を力点としています。

・店舗診断
・リバイス
・ガイドライン制作
・研修

単にディスプレイがうまい人を育てるわけではなく、売場解決を前提にしたカリキュラムになっています。
なので、メーカーの方はより自分たちの商品が売場で売れる、小売店の方は自社ブランドらしいたたずまいと品揃えがキープできます。

VMD基本講座は3日間、専門1日講座は4つあります。
リーダーや幹部の方はぜひ4つの指導講座も受講してほしいです。
基本3日間をベースにして5日間、7日間じっくり学習した方がより深く知識やスキルを得ることができます。

売場塾の特記すべきところは「55の売場づくりの型」を教えていること。
空手やヨガに型があるように、VMDの基本形55を3日間で学べ、専門講座でその応用が習得できること。
これが当社のメソッドなんです。

詳しくは売場塾の資料をお求めください。

●売場塾資料請求

なお、当社の法人研修はこの売場塾がベースになっています。
サービス名を「オーダーメイド売場塾」と言います。

●オーダーメイド売場塾

ちなみに、「個人的に安くディスプレイだけ教わりたい」という方は、オンラインセミナーの「センスアップセミナー」を受講するとよいです。
毎月テーマが変わっディスプレイ制作にもトライできます。

●センスアップセミナー

8.リモデルはモデル店をつくるためのサービス

リモデルだけはコンサルではなく、プランニングサービスとなっています。
上記までは、「ノウハウを教える」というコンサルサービスだったのですが、リモデルは実際に店舗や売場を設計するサービスです。
もともと当社は、改装の依頼を受ける際、設計事務所に外注していたのですが、自社ですべて賄うようになりました。

コンセプトからパースモデル、定数定量のデータシートづくり、フロアレイアウト、什器デザイン、ディスプレイ、POP制作までVMDをトータルにプランします。
11のプラン項目からなり、改装の場合は店舗診断から始めます。

●リモデル

施工会社や設計会社とどこが違うのか。
それは、VMDプランをつくることです。
平面図や立面図に落とし込むだけではないのです。

VMDプランとは、VMD分類、ゾーニング、定数・定量、什器デザインとレイアウト、POPデザインと設置、IP,PP,VPなど11項目あります。

このサービスのいいところは、11プランひとつひとつ丁寧にプレゼンしていくこと。
企画書も重なっていきます。

VMDマニュアル

企画書は50ページくらいになり、最後はそれが店づくりのマニュアルになるところが特色。
実験店をつくりながら、リモデルノウハウも重ねていける、一石二鳥のサービスと言えます。

そんなわけで、ただ改装だけならは、当社でなく施工会社に頼むといいと思います。
リモデルは、コンセプトから店を変える、売り方から店を変える、実験店企画設計サービスと考えてください。

9.実際は各サービスの組み合わせとなる

いままで、4つのサービスをお知らせしてきました。
この4つのサービスは、モジュール化されていて、バラしたり統合したりできるんです。
企業がVMDプロジェクトを推進して、VMD部を発足したり、VMDノウハウをわが社のものにしたいなど、単発の研修やリバイスではなく、総合コンサルする場合にはこの4つか3つのサービスを統合します。

4つのサービスはパッケージになっているので、クライアントの業種・業態・取扱商品・ブランドに合わせカスタマイズし、年間計画で進行していく。
プロジェクトが終わった後は、VMD部が完成、またはブランドガイドラインが完成していることが多いです。

このサービスを数年前「VMD導入プログラム」と名付けました。

●VMD導入プログラム

4つのサービスに関心ある方はぜひ資料請求してください。
下記のページに行くと、いろいろ無料で資料がゲットできます。

●資料請求

どなたさまもお待ちしております。

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

スターバックスはマネできない

スターバックスがロシアから撤退後、ロシアは新しいコーヒー店をオープンさせました。
その名はスターコーヒー。
マークもやたら似ています。

●スターコーヒー

従業員はそのまま正規雇用となり、同じようなメニューを顧客に提供しスタバだった店舗を「スターコーヒー」として運用していくようです。
新オープンにはたくさんの客が並んだそう。

お店づくりという点に関しては、他店をマネするということはよくあること。
ただこの場合、商標が酷似しているのでほぼ違法でしょう。
スタバも静観を保っています。

クリティカルコアという言葉があります。
これは、「他社がマネできないほど非合理な核心」という意味です。

スターコーヒーがいくら店の外観・内観をまね、商品をまねても所詮はスターバックスになることはできないということです。
果たして、下記のスタバのクリティカルコアをまねできるでしょうか。

  1. 売れなくなったコーヒーを2週間で破棄し、チャリティーに回せるのでしょうか。
  2. 顧客のメニューにない注文をスタッフがわざわざ受け入れてくれるでしょうか。
  3. コーヒー以外のランチやディナーを出さずに運営していけるでしょうか。
  4. 店内のBGMや壁にかかった絵画をわざわざオリジナルでつくって展開できるのでしょうか。
  5. 従業員に自社株を持たせるというモチベーション維持はできるんでしょうか。
  6. タバコを吸う人を一切入れないという決まりを維持できるでしょうか。

上記を遂行するのはかなり難しいのではないでしょうか。
これがスターバックスの持つクリティカルコアだからです。
これをマネしても、あまりに不利なことが続いてしまいます。

普通のコーヒー店の経営者だったら以下のことを考えてしまいます。

  1. 売れなくなったコーヒーを2週間で破棄し、チャリティーに回すなんてもったいない。
    利益を出すために、半年はコーヒーは在庫として使うべきだ。
    お客は2週間の味でも1年の味でもわからないから大丈夫だ。
  2. 顧客のメニューにない注文をわざわざ受け入れるだと? 入れる氷の量を調整する? ホイップをコーヒー味にする? ココアパウダーを振りかける?
    そんな面倒なことはしたくない。今あるメニュー以外は提供なしだ。スタッフの効率化を考えればいい。
  3. コーヒー以外のランチやディナーを出さないだと? ゆったりコーヒーを飲める空間を保つのも理解できるが、うちは利益重視だ。
    ランチやディナーのメニューもたくさん出して客単価を上げないと。
    多少ワイガヤするけど、その方がにぎやかな空間になって逆にいいだろう。
  4. 店内のBGMや壁にかかった絵画をわざわざオリジナルでつくる?
    そんな非効率的なことはしたくない。絵画はそれらへんで売っているポスターでも貼っておけ!
    BGMは有線(ロシアにあるはわからないですが)を使え。それで十分だ。
  5. 従業員に自社株を持たせるだと。会社が儲けた利益は我々経営者のものだ。
    スタッフはバイトでいい。一番安い時給でいいぞ。
  6. タバコを吸う人を一切入れないだと。ロシア人は喫煙率が高いんだ。
    ロシアは喫煙者は男性6割の女性2割の、世界トップレベルの喫煙大国なんだぞ。
    最低でも喫煙ルームは確保しろ。

とまあ、こんな調子を続けると、うわべだけマネしても中身は全然スタバでなくなるでしょう。
そのうち、ウオッカも出して、フツーのコーヒー屋である上に居酒屋と化すでしょう。

これがクリティカルコアの「ライバルのうわべだけマネしても決して追いつくことはできない」理由なんです。
店が長く続き、お送りのファンを抱えているブランドにはクリティカルコアがあるんです。

2.日本の小売店のクリティカルコア

今までVMDの会社20年やってきましたが、よくあるのが、
「ユニクロのような店舗にしたい」
「ドン・キホーテのようにしたい」
「イケアみたいな家具屋にしたい」
と、うまくいっているブランドの売場をまねたい経営者の言葉です。

売場を詳しく分析すればある程度まねることはできと思います。
床・壁・天井・什器・照明などの構造や素材・意匠、ディスプレイの仕方、POPの作り方などを解析し、似せることはできるでしょう。

しかし、そこまでです。うわべは似ていても中身はマネすることはできないのです。
逆にマネをしてしまうと、ライバルである同店に客はどんどん流れてしまい、まねた自店は自滅の道をたどることになるでしょう。

ロシアみたいにスタバがなくなったので、仕方なくスターコーヒーに行く、という客は残るでしょうが、日本からユニクロやドン・キホーテの店がなくなるということは考えられません。

あるとき、「もちクリーム」という和菓子ブランドが話題になったことがありました。
デパ地下に出店すると週に数百万を売るブランドで、全国の百貨店で引く手あまた。
たちまち直営店も増えていきました。

ウインドウには色とりどりのおいしそうな大福が並んでいて、中身はあんこだけでなく、メロンやイチゴ、チョコなどいろいろなフレーバーのクリームがきっしり入った、大福のようなお菓子です。

数か月たち、従来の和菓子店の中で、似たような商品を出す店が出てきました。
デパ地下のその店のガラスケースには、もちクリームのような大福のサンプルが並びました。
しかし、その店は程なくして、もとの姿に戻りました。

もちクリームのクリティカルコアは、下記です。

  • それだけ販売している単商品のみの店である
  • 冷凍して販売し解凍して食べる商品である
  • 冷凍しても風味が変わらない独自のソースを自社工場で開発している
  • フランチャイズではなく直営店のみを出している
  • 短周期で新フレーバーを出し続けていく持続性がある

まだあるかもしれないですが、少なくても上記は決して一介の和菓子メーカーはマネをすることはできないでしょう。

冷凍でも風味を閉じ込める特許技術が必要な上に、単品売りだけで商品を売り続けていくというむずかしさ。大福を凍らせるだけでは餅と中身の風味が落ちしまう。
だいふくをイチゴの色をつけてピンクにしたとしても、その鮮度や風味はけた違いに違うものになるはずです。

しかも、冷凍庫をガラスケース下に設置しなければならない手間とコストがかかります。
餅クリームをGケースに置いた分、他の商品は置けなくなりますからリスクも半端ないでしょう。

次第に店の売上が下がっていき、耐えきれなくてもとに戻したのだと思います。
このような事例はよくあることだと思います。

クリティカルコアを持つことは、他店の追随を許さないどころか、模倣した他店を大きく引き離すことができます。

3.話題のものがうまくいっているとは限らない

24時間、世界中のあらゆる情報が自由に手に入るようになった今、表面的な判断でものごとを決めないほうがいいと思います。
特には、店舗DXですね。

コロナ禍の今、流通企業のすべてがDXを導入しています。
無人レジ、売らない店、ライブコマース、VR店舗、スマートショッピングカートなどなど、話題は事欠きません。
テレビCMもコロナ前よりIT会社の放映が多くなったような気がします。

しかし、DXの話題すべてがうまく行っているいるわけではありません。
例を見ていきましょう。

  • アメリカのb8ta(ベータ)が日本上陸し、売らない店として店舗を拡大
  • アマゾンがECサイトと連動したリアル書店をチェーン化推進
  • セブン&アイがセブンペイをリリース、オムニチャンネル加速

など、近年始まった華々しい話題も下記のようになりました。

  • コロナで来店客が伸びなくなり、b8taは全米すべての店舗を撤退
  • アマゾンは今年、英国と米国で始めたリアル書店68店をすべて閉鎖すると発表
  • セブンペイの撤退は一昨年ありました。みんなよく知っているから話すこともないでしょう

b8taは日本事業はうまくいっているようなので、日本は問題ないです。
日本は丸井がb8taに出資していて、丸井だけでなくSCにも出店しているのですが、これはまだ成功しているかどうかはわかりません。
なのに、この「売らない店」を救世主とばかりにわが店舗に導入しても、うまくいくかはわかりません。

このように、マスコミで話題に載っていることがすべてうまくいくとは限らないことに注意しましょう。
「他店がDX化しているのでヤバい!!乗り遅れないようにわが社も導入しよう」と決める前に、本当にその方向がよいのかPLANする必要があります。

新規の話題は多いものの、その後の経過についてはあまり話題に上がらないので注意しましょう。
または、企業が広告をたくさん打っているからといって、その商品やサービスが売れているとは限らないのです。

4.オリジナルVMDを開発しよう

そもそもVMDには4つの分野があり、これを相関させながらオリジナルなノウハウにしないと、店舗ブランド(メーカーの場合は売場ブランド)としてやっていけないと思います。

4つの分野とは

  • 品ぞろえと展開
  • ショップデザイン
  • ディスプレイ
  • 体験販促

です。

●VMD4つの分野とは

こんな話が昔ありました。お茶店の改装をすることになり、設計士を呼んで打合せしました。
すると設計士は「お茶店だから{「富士山と茶畑」の写真をどかんと壁に設置しますか」と言いました。
その後、設計士は交代、他の設計士によい店舗を作ってもらいました。

新しい設計士と茶店とお茶工場をつぶさに見学、歴史や社員の人柄などいろいろヒヤリングしながら、コンセプトを作り出しました。品ぞろえも変え、店舗も変え、2階で体験ができるように工夫し、ディスプレイも美術館と提携してその店でしかできないものをつくりました。

こういうのがオリジナルと言えるでしょう。そう、ブランドは他社にない独自のVMDを開発すべきだと思います。

店舗や売場にVMDを導入するとき、どこそこの店のVMDを研究するのはいいとして、そっくりそのまま導入しても、所詮二番煎じ、顧客は定着しないでしょう。
または衰退の一途をたどるかもしれません。
VMDのオリジナリティがないからです。

VMDをクリティカルコアまで昇華する必要はないけれど、やっぱりマネだとお客様はすぐにわかってしまいます。
ぜひ、あなたの店ならではのオリジナルVMDをつくってください。

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

にわかVMD講師を脱出するための7か条

今回はVMD講師の受講生への伝え方についてお話しします。

VMDインストラクターとは、売場づくりを教える人のことです。
もう870名以上の方が文字通りVMDの先生として活躍しています。
ある人は企業のVMD担当として。ある方は独立して。

私自身は、2003年にVMDの会社をつくったのですが、実際に講師として教壇に立ったのはそれから3年後です。
それまでVMDプランナーとしていろいろな売場やお店をつくっていましたが、「VMDの話をしてほしい」という依頼が次第に増えてきました。
そうして教壇に立つ日が多くなりました。

最初のうちは、自分のつくった売場の事例を話していました。
その方が楽だからです。
事実を述べればいいので、誰でも出来る事だと思います。

でも話していくうちに、事実だけ話してもあまり聴講者のためにはならないな、と思うようになりました。
私のやったことをただ聴講者がマネしてもうまくいかないと思ったからです。
アパレルショップのVMD事例を話しても、家電VMD担当者はそのまま事例をコピペできません。

どんな業種・業態・取扱商品でも、マネすることができる理論というのが必要だと考えましてた。
そしてその理論を発揮する場が売場塾だったんです。

あなたは、他人の理論を工夫しないでそのまま活用していませんか?
セミナーがワンパタに陥っていませんか?
他人と違う、自分だけのオリジナルを持ちたいと思っていませんか?
そんな方のために、題して「にわか講師を脱出するための7か条」をお教えします。
始まり始まり~。

1.自分の考えを言う

あなたが何かの本を読んだとします。
またはセミナーに参加したとします。
「この本のこの理屈、すごくためになった」
「この先生、いいこと言っているな」
こんな瞬間はあるでしょう。

でも、その理論の本質を知らずに形だけ汲み取って、それを受講生に話しても、単なる本や他社のセミナーの紹介になってしまいます。

例えば、「パラダイムシフト」という言葉があります。
物の見方を違う角度から考える事なんのですが、「7つの習慣」という本にも書いてあります。
でも、本に書いてあることをそのまま言っても仕方がないです。
その本を紹介すればよいからです。

私はこう思う。
私はこう解釈した。

と自分の考えを付け加えましょう。
そうすることにより、他人の理論にあなたという個性の血と肉が加わり、自身の考え方として説得性が出て来るんです。

例えば、私はこの「パラダイムシフト」をホノルル空港で見たディスプレイの体験を元にブログで論じています。
●顧客目線にパラダイムシフトしよう

ディスプレイ制作者にはディスプレイに見えても、他人にはゴミに見えるという言い回しです。
これこそが「自分の考えを言う」に他ならないのです。

2.腑に落ちない理論を話しても、よさは伝わらない

まだ腑に落ちていない理論でも、腑に落ちないまま生徒に言っていませんか
世の中には人気の理論がたくさんあります。

  • アイドマの法則
  • 群化の法則
  • ブルーオーシャン戦略
  • ペルソナ etc

こんな感じで、トレンディな法則用語が次から次に世に出てきます。
トレンディな自分を演出するために、直観を信じて「この法則を使うといいよ」と生徒に薦めていませんか。
自分でその法則を試してもいないのに、直感だけでいい理論と思い、生徒に薦めても説得力はありません。

例えば、「群化の法則」いう理論。
これもデザイナーなどにウケているデザインの法則で、いろいろなデザイン従事者がインターネットで推薦しています。

この理論、当然VMDにも活用できると思いました。
ただ、その段階で生徒に群化の法則の話をしても、いまいちピンと来ないだろうなと思いました。
それが果たしてVMDに本当にマッチするか、ど具体的にう使うのか確証がないからです。

だからすぐに受講生に薦めないで、確証することにしました。
試しに群化の法則を利用したディスプレイをコーヒーテーブルでつくってみました。
●「群化の法則」活用の仕方

6の「面積の法則」がよくわからなかったのですが、珈琲茶碗でつくってみたら「なーるほど」と思いました。
そして、商業施設で撮影したディスプレイに面積の法則が使われていないか、過去のディスプレイの写真を振り返ってみました。

すると、あるわあるわ。
あのVPも、あのPOPも、あの什器レイアウトも、すべて面積の法則にかなっている!!
「共同運命」も「閉合」もすべて自分の経験や体験に当てはめて考えることができました。
ここまで腑に落ちたら、もう大丈夫。
実を持って、受講生に教えることができるんです。

3.他人の定義をうのみにしない

世の中にはいろんな情報が氾濫しています。
ブログでも本でもセミナーでもいつでもどこでも情報を手にできます。
ですが、そのまま情報をうのみにして「その理論は正しい」と思っていませんか。

理論は情報のひとつで生き物のよう。
なので時間が経つにつれ、変わっていきます。
社会トレンドや政治情勢、ライフスタイル、自然現象なども理論を変える要因になります。

さてここでは、理論を定義と置き換えてお話しすることにします。
定義って次第に変わっていくと思いませんか?
女性の定義、会社員という定義、学校という定義。
これらはもう変わってきていますよね。
コロナという定義さえコロコロ変わっていると感じていると思います。
このように、定義はその時々や国、会社、個人等の変化に合わせて変わっていくんです。

例えば、VP,PP,IPというディスプレイの定義があったとします。
これって、すべてのお店に当てはまる定義ではないんです。
VPやPPがつくれるのはほとんどアパレル店舗で、それ以外の業態、ドラッグストアやコンビニなどはあまり当てはまりません。
なのに、あなたはコンビニに対し、VPやPPをつくるべきだ、と唱えていませんか。
(そもそも、PPとIPは和製用語ですので、外国ではVPという定義しかありません)

  • コンビニにVPとPPの概念はいらないから、こことは展示物と陳列物という定義に置き換えよう
  • POPをディスプレイの一部と考えてもいいのではないか
  • ドラッグストアではポスターがPPの役割をするので、ここではポスターがPPである
  • 入口付近は「店頭PP」といい、店内は「店内VP」と言おう。PPという言葉は使わない

などと、あなたなりの解釈を加えて自分オリジナルにしてもいいんです
定義というものは、あなたやあなたの受講生が使えるように変えなければいけないのです。

4.一段一段、理論の精度を上げていく

あなたは、同じセミナーを繰り返し行うことがあるでしょう。
売場塾も毎回同じ講座を繰り返しています。
しかし、理論の精度は上げていっています。
毎回、全く同じ理論を繰り返して伝えるのではなく、理論は更新してさせていくものなのです。

  • 「もしかしたらこのように話した方が伝わりやすいのでは」と思って比喩を取り入れて話してみる
  • 「この話のこの部分は必要ないな」と思ったら、次は外して理論を簡素化する
  • 「ここに売場のこういう写真を入れたら、理解が深まるな」と、写真を添付してレクチャーする

などなど、理論の精度を上げていってください
するとあなたの理論は研ぎ澄まされていき、受講生はますます理解しやすくなります。
納得度も上がるはずです。

やることは、レクチャー終わった後に必ず振り返りをすること
振り返って理論やレクチャーの精度をアップさせるんです。
すると、次回セミナーは、さらに受講生に理解しやすくわかりやすい内容になっているはずです。

5.引き出しを徐々に増やしていく

人は経験を重ねることによって日々事例を増やしていきます。
いいことも悪いこともケーススタディとして積みあがっていくんです。
同じようなケーススタディが積みあがっていくと、やがてそれらはひとつの引き出しにまとまり、法則として人に発信できるようになります。
この法則というのは、テクニック・ノーハウ・ハウツーと言われるものです。

私事で言えば引き出しを増やしていくうちに、ディスプレイ改善指導の引き出しは多くなりました。
売場塾で何百回も生徒のディスプレイを直していくうちに、直し方がひとつのパターンに集約されてきます。
すると、「この直し方は法則化できるな」と思い、その都度名前をつけるようにしています。

  • ダイヤモンド・テクニック
  • ディメンショナル・テクニック
  • パイリング
  • 菜の花展示テクニック などなど。

ネーミング、なんか笑っちゃいますよね。
こんな感じで勝手に名前をつけて自分で遊んでいます。(笑)
でも少しの時間をかけて、しっかり法則のパターンにまとめてキチンと理論化しています。
すると、生徒にテクニックとして教えることができるようになりました。
テキストの1ページとして加えることもできました。

どんな細かい直しでもその場のアドリブやその場しのぎで直すことはあると思います。
でも「これは行ける!」と思った理論は、そのままスルーことなく自分の引き出しに入れて忘れないようにしてください
いつかその引き出しを使って、人に物事を教える機会をつくれるからです。

巷に言う「あの人は引き出しが多い」というのは、実はケーススタディを積み重ねていって、きちんと頭の引き出しに整理し、いつでもその引き出しを出し入れできる、そんな人のことを言うのだと思います。

6.いつもと違うやり方を試みる

皆さんは、自社でVMDセミナーを定期的に開いたり、クライアントにお伺いしてVMD研修をされていると思います。
けれど、毎回ワンパターンで同じことの繰り返しにしていませんか
確かにその方が楽だし、事前準備もかかりません。
でも、ワンパタというのはいつか個人や会社に合わなくなっていくし、理論の厚みも増えません。
いつも違う考え、違うやり方を加えていくと、個人や会社のニーズに合っていくし、理論の厚みも増します。

ロングセラーの本でも中身は100%創刊当初と同じではないし、歌手でも昔と違う歌い方をします。
理論というものは、いつもまったく前と同じではないんです。

米国オンライン靴販売のザッポスの社長の言葉ですが、「毎日1%変える努力をしよう」と社員に言い続けているそうです。
ワンパタを続けていっていつも同じ・いつも変わらない、だと企業や人は成長しないと言うことを言いたいのだと思いました。

私自身も売場塾を17年運営していて、もう85期同じ講座を繰り返しています。
でも、レクチャーやワークショップ、テキストや進行の仕方は毎回変えています。
テキストは年間最低3%は変わるし、レクチャースライドの中身も変わります。
毎回同じではないんですね。
例えば、

  • グーグルインドアビューでレクチャーしてみる
  • 動画を取り入れてみる
  • ワークショップに絵葉書を入れてみる
  • フレームワーク用語の言い方を変えてみる

など、新しいことを毎回加えていて、ひとつとして同じ繰り返しのレクチャーはないんです。
確かにクライアントは「前と同じでいい」というけれど、それでも最低1%は変えます
何らかの新しい試みや改良を加えています。
でないと、自分自身がおもしろくないんです。
同じことのワンパタ。これのどこが面白いのでしょうか。

あなたのセミナー、無理に変える必要はないけれど、新しいチャレンジ・新しいアイデアを必ず1%加えることをお勧めします。

7.マッシュアップしながら理論を組み立てていく

マッシュアップとは、曲をつくる際に、いくつもの楽譜から徐々に組み立てていき、一つの楽曲をつくることをいいます。
エンヤがそうですね。
彼女、自分の音声やコーラス、ピアノ、シンセサイザー、自然音を幾重にも組み合わせて1つの曲を組み立てています。
あまりにマッシュアップが複雑なために、リアルでコンサートを開いたことは一度もないとか。すごいですね。
エンヤ好きの私としてはいつかは生で聴きたいと思っていますが、それも夢となりました。

あなたは、自分オリジナルの理論をつくるときに、時間をかけてつくっていませんか。
それは時間の無駄というものです。
確かに生半可な理論で受講生にレクチャーしたくない、というのはわかります。
でも、きちんと理論化できるまで人に話したくない、というのはナンセンス。
理論というものは人に話しながらブラッシュアップするものです。

お酒を飲みながら知り合いに自論を披露してもいいし、ツイッターでつぶやいてもいい。
人の反応や意見を聞きながら次第にブラッシュアップしていくのが理論というものです。
ある意味、組み立て前の理論は間違っていてもいいんです。

私は、思いついたアイデアを出し惜しみすることなく人に伝え、このツイッターでも書いています。
また、コールドコールと言って、いきなり人に電話して自論の感想を聞くこともあります。
そうすることによって、「こんな解釈があるんだな」「この人のアドバイスも貴重だな」と感じて理論を改訂していくのです。
これを理論のマッシュアップと呼んでいます。

あなたは自論を長い間温めていませんか。
人に伝えないで温めたままだと、レンジに置きっぱなしのおかずのように萎えて食べられなくなります。
ぜひ、人に伝えたりSNSで発信して、理論をブラッシュアップしてください。
すると、いつかはちゃんとした理論としてあなたのセミナーの一部に加えることができます。

最後に

わかりましたでしょうか。
にわかVMD講師を脱出するための7か条。

もっと聞きたい~と言う方は、相談会を実施しています。
VMDの先生になって成功するための相談会を毎月実施しています。
もちろん、VMDインストラクターでない方、売場塾受講していない方でも歓迎です。(^^)
セミナー形式になっているので、ただ聴講するだけでもいいですよ。
リアルとオンラインで行っていて、オンラインは顔出しする必要はないのでさらに気軽です。

●VMDインストラクターで起業・副業 相談会
ご参加、お待ちしております!!

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)

コロナ禍の売場づくりはマップラバーが有利

分類サイン

■マップラバーとヘイターとは

maploverは、地図を好む人と言う意味です。
お店に入ったら、店頭のフロアレイアウトでだいたい行く売場を決めて、お目当ての売場に行き、モノを買う。
時間をかけて店内を回遊するよりも、短時間で効率的に買い物したい人のことを言います。

maphaterとは、地図が嫌いな人、と書きます。
とりあえず、お店に入っていろいろな売場を物色し、ゆったりともの探しをして、買って帰る人のことを言います。



■マップラバーに対しての売場づくり

マップラバーに対しての売場づくりは、店内案内板や売場インデックスをしっかりつくることです。
天井から下がっている大分類サインや、什器上の中分類サイン、棚の中の仕切り版の小分類サインが文字通り、目的の売場への道しるべになりますので、これら案内POP・サインのフロア設置がとても重要になります。

什器レイアウトもわかりやすくします。
什器がまっすぐ整列されていて、主通路・副通路が見ただけでわかり、分類サインも高低差・前後のグリッドが合っていて、売場の番地を探しやすくします。

■マップヘイターに対しての売場づくり

一方、マップへイターは、店内案内板や売場の分類サイン・POPに目もくれずに我が道を行きます。サインやPOPを見るのが面倒で、カンや雰囲気で歩いているのですが、最後にはちゃんと目的のものを見つけます。

こういう人は、雑貨店やクラフトショップなど、売場がきれいに整列していないお店でも大丈夫です。なんとなく、行きたい方向に行ってなんとなくモノを探します。
マップへイターにとって重要なのはリレーションになります。

つまり、売場と売場のつながり、モノとモノのつながりです。ワイン売場の横に食器売り場がある、食器売り場の横にレシピ本やグルメ本がある・・・・そんな売場配置です。


■コロナ禍の売場づくりはマップラバーが有利か

さて、コロナ禍の今、お客様の店内滞在時間が下がっています。
凸版印刷の調査では、買い物客の滞在時間は下記の様に変化しています。

数値は コロナ前 → コロナ後
・20分未満の客の割合 ・・・32% → 46%
・30分以上の客の割合 ・・・32% → 21%
・毎日買い物する割合 ・・・22% → 12%

コロナ禍においては、なるべく買い物に行かない、行ってもあまり店内に長居したくないようです。

さっと店に入ってさっと帰るという購買形態では、やはりマップラバー型の売場づくりが有利。
当社のフレームワークでは下記を有効に活用するといいです。

・見通しの良い店内
・通路はまっすぐ
・PPや分類サインが目につく
・商品の陳列くくりが明確
・導線は単純に
・商品フェイスを多くする


などです。

あなたのお店の来店客はマップラバー、マップへイター、どちらですか?
買い物客を考察して、どちらを取りこんだら自店に有利か、一度考えてみましょう。

(VMDコンサルタント 深沢泰秀)